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平成25年2月19日判決言渡
平成22年(行ウ)第665号外務員登録取消処分取消等請求事件(第1事件)
平成22年(行ウ)第679号外務員登録取消処分取消等請求事件(第2事件)
平成23年(行ウ)第472号追加的併合事件(第3事件)
平成23年(行ウ)第476号追加的併合事件(第4事件)
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1第1事件請求
被告が平成22年4月13日付けでa証券会社に対してした金融商品取引法
64条の5第1項の規定に基づく原告bの外務員登録取消処分を取り消す。
2第2事件請求
被告が平成22年4月13日付けでa証券会社に対してした金融商品取引法
64条の5第1項の規定に基づく原告cの外務員登録取消処分を取り消す。
3第3事件請求
(1)原告bが被告の「協会員の従業員に関する規則」(平成22年5月18
日に改正される前のもの)12条1項の規定に基づく不都合行為者でないこ
とを確認する。
(2)被告は,原告bに対し,2200万円及びこれに対する平成23年8月
16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4第4事件請求
(1)原告cが被告の「協会員の従業員に関する規則」(平成22年5月18
日に改正される前のもの)12条1項の規定に基づく不都合行為者でないこ
とを確認する。
(2)被告は,原告cに対し,2200万円及びこれに対する平成23年8月
16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
被告は,内閣総理大臣から外務員の登録に関する事務の委任を受けた認可金
融商品取引業協会であるところ,被告の協会員であり金融商品取引業者であっ
たa証券会社(a。以下「a社」という。)のd支店に勤務し外務員登録を受
けていた原告らにおいて,同支店の顧客であった株式会社e(以下「e社」と
いう。)が行った転換社債型新株予約権付社債の発行とスワップ契約を組み合
わせた取引について,e社が金融商品取引法(以下「金商法」という。)に基
づく法定開示書類を提出するに当たり,e社の財務評価や株価等に影響を及ぼ
す情報であるところの上記スワップ契約に係る情報を開示しないようe社に対
して働きかけたことが「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」に該当す
るなどとして,a社に対し,金商法64条の5第1項2号に基づき,原告らの
外務員登録を取り消す旨の各処分をするとともに,被告の内部規則である「協
会員の従業員に関する規則」(平成22年5月18日に改正される前のもの。
以下同じ。)12条1項に基づき,原告らを不都合行為者と取り扱う旨の決定
をした。
本件は,原告らが,原告らは上記スワップ契約に係る情報を開示しないよう
働きかけてはいないことなどからすれば,上記各外務員登録取消処分は違法で
あり,原告らは不都合行為者にも当たらないと主張して,上記各外務員登録取
消処分の取消しを求める(行政事件訴訟である抗告訴訟)とともに,原告らが
不都合行為者でないことの確認を求め(民事訴訟としての確認訴訟),また,
被告が原告らを不都合行為者と取り扱う旨の決定をしたことが違法であると主
張して,不法行為に基づき,損害賠償金の一部である2200万円及びこれに
対する不法行為後の日である平成23年8月16日から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1関係法令の定め
本件に関係する法令の定めのうち主たるものは,別紙1「関係法令の定め」
記載のとおりである(同別紙中の略称は本文においても同様に用いる。)。
2争いのない事実等(証拠等により容易に認められる事実は,末尾に証拠等を
掲記した。)
(1)当事者等
アa社は,香港法に基づき設立された外国会社であり,金商法29条に規
定する登録を受けた金融商品取引業者であった(弁論の全趣旨)。
なお,a社は,平成23年5月1日をもって,a証券株式会社(以下
「a証券」という。)に対し,日本における全ての営業を譲り渡した(弁
論の全趣旨)。
イ原告bは,平成18年7月にa社d支店に入社し,平成20年6月当時,
資本市場ソリューション統括本部長兼資本市場ソリューション部共同部長
の職にあった(甲20,乙16)。
原告cは,平成18年6月にa社d支店に入社し,平成20年6月当時,
資本市場ソリューション部共同部長の職にあった(甲20,乙15)。
ウ被告は,金商法67条1項に規定する認可金融商品取引業協会であり,
同法64条の7に基づき,内閣総理大臣から,被告に所属する金融商品取
引業者の外務員の登録に係る事務の委任を受けている。
a社は被告の協会員であり,原告らは,金商法64条1項に基づき被告
に備えられた外務員登録原簿にa社の外務員として登録されていた。
(2)被告の内部規則の定め
本件に関係する被告の内部規則の定めは,別紙2「被告の内部規則の定
め」記載のとおりである(甲25,乙2,3。なお,同別紙中の略称は本文
においても同様に用いる。)。
(3)e社が行った転換社債型新株予約権付社債の発行等
アe社は,a社d支店の資本市場ソリューション部(以下,単に「資本市
場ソリューション部」という。)の原告らによる提案を受け入れて,平成
20年6月から同年7月にかけて,fグループのフランス本社であるg社
(以下「g本社」という。)との間で,2010年満期転換社債型新株予
約権付社債(以下「本件転換社債」という。)の発行とスワップ契約(以
下「本件スワップ契約」という。)を組み合わせた取引(以下「本件取
引」という。)を行った。
本件転換社債は「有価証券」(金商法2条1項5号,同条2項)に該当
し,e社による本件転換社債の発行は「有価証券の募集」(同条3項2
号)に該当するところ,原告らは,a社d支店の外務員として,「有価証
券の募集の取扱い」(同法64条1項1号イ,同法2条8項9号)を行っ
たものである(乙7,弁論の全趣旨)。
イ本件取引の概要は以下のとおりであるところ,これを図示したものが別
紙3である(乙7,8,11,弁論の全趣旨)。
(ア)本件転換社債の発行
e社は,平成20年6月26日,g本社を割当先として300億円の
本件転換社債を発行する旨の取締役会決議を行って,同年7月11日,
本件転換社債を発行し,g本社から,本件転換社債の払込金として30
0億円(発行諸費用の概算額を差し引いた手取金は299億5000万
円)を受領した(乙7,8,弁論の全趣旨)。
(イ)本件スワップ契約
e社とg本社は,平成20年6月26日及び同年7月8日に,以下の
内容の本件スワップ契約を締結した(乙8)。
本件スワップ契約の概要は,別紙4「本件スワップ契約の概要」記載
のとおりであるが,本件スワップ契約は,①e社が,平成20年7月1
1日,g本社に対し,当初支払金として300億円を支払い,②g本社
が,同年6月27日から平成22年7月7日までの間を計算期間として,
e社に対し,e社株式の平均市場価格に応じて計算された金額を変動支
払金として支払うことなどを内容とするものであった(乙8,弁論の全
趣旨)。
なお,本件スワップ契約においては,別紙4「本件スワップ契約の概
要」記載のとおり,「ヘッジ比率」が「12%~18%」などと定めら
れていたが,本件取引では,g本社がe社株式の1日の取引株数に「ヘ
ッジ比率」を乗じた株数のe社株式を証券市場で売却することが予定さ
れていた(乙8,11,弁論の全趣旨)。
(ウ)本件転換社債の発行と本件スワップ契約の関係
本件転換社債の発行に併せて本件スワップ契約が締結されたことによ
り,本件転換社債の発行のみであれば,e社は,g本社からその対価と
しての払込金を受領して資金調達の目的が完遂されることになるが,本
件スワップ契約が併せて締結されることによって,e社に支払われた払
込金300億円全額が,一旦e社からg本社に当初支払金として支払わ
れ,その後aからe社に対して,e社株式の取引株数や平均市場価格等
に応じた支払金が順次支払われることになるため,e社にとっては30
0億円の資金調達という目的は直ちには達成できないことになり,加え
て,本件スワップ契約に基づいてg本社からe社に順次支払われる支払
金は,e社の株式の市場価格によって変動する不安定な額になり,その
市場価格が一定額を下回って推移した場合には,上記変動支払金が支払
われないリスクを内在するものとなった。そして,このような内容の本
件スワップ契約が本件転換社債の発行に併せて締結されたことは,e社
の財務評価や株価等に影響を生じさせるものであった。(乙7,8,弁
論の全趣旨)
(4)e社による臨時報告書の提出等
アe社は,平成20年6月26日,改正前金商法24条の5第4項に基づ
き,関東財務局長に対し,同日開催の取締役会において本件転換社債の発
行を決議したこと,本件転換社債の発行による手取金の使途が「財務基盤
の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予
定」であることを内容とする臨時報告書(以下「本件臨時報告書」とい
う。)を提出するとともに,その旨のプレスリリースをしたが,本件臨時
報告書及び上記プレスリリースには,本件転換社債の発行による払込金3
00億円全額が本件スワップ契約における当初支払金300億円に充てら
れることはもちろんのこと,本件スワップ契約の存在そのものについても
何ら記載されていなかった(乙7,31)。
また,e社は,平成20年6月30日,改正前金商法24条1項に基づ
き,関東財務局長に対し,平成19年4月1日から平成20年3月31日
までの事業年度に係る有価証券報告書(以下「本件有価証券報告書」とい
い,本件臨時報告書と併せて「本件臨時報告書等」という。)を提出した
が,同報告書には,「重要な後発事象」として,同年6月26日の取締役
会において本件転換社債の発行を決議したこと,本件転換社債の資金の使
途が「債務の返済」であることが記載されていたが,本件スワップ契約に
ついては何ら記載されていなかった(乙32)。
イe社は,平成20年8月13日,関東財務局長に対し,本件転換社債の
発行による手取金の使途について「割当先との間で締結するスワップ契約
に基づく割当先への支払に一旦充当し,同スワップ契約に基づく受領金を
財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用
する予定」であると訂正する旨の訂正報告書を提出した(乙33)。
また,e社は,平成20年8月13日,本件スワップ契約を締結してい
たこと,当初のプレスリリースでは本件転換社債の発行により調達する手
取金の最終の資金使途のみを開示したこと,株価が本件スワップ契約締結
時の想定を超えて大幅に下落したことにより本件スワップ契約に基づくg
本社からの支払額が当初の想定を大幅に下回ったこと,民事再生手続を行
ったことが本件スワップ契約の終了原因に該当すること,その結果g本社
からの支払を債務の返済に充当することができないことが確定し,本件ス
ワップ契約に基づきe社に58億円の営業外損失が発生したことをプレス
リリースした(乙8)。
ウe社に対する課徴金納付命令
(ア)金融庁は,平成20年11月7日,e社による本件臨時報告書の提
出は,改正前金商法172条の2第2項に規定する「重要な事項につき
虚偽の記載がある」臨時報告書を提出した行為に該当すると認められる
との理由で,e社に対する150万円の課徴金納付命令を決定した(乙
9,弁論の全趣旨)。
(イ)金融庁は,平成20年11月28日,e社による本件有価証券報告
書の提出は,改正前金商法172条の2第1項に規定する「重要な事項
につき虚偽の記載がある」有価証券報告書を提出した行為に該当すると
認められるとの理由で,e社に対する1081万円の課徴金納付命令
(以下,上記(ア)の課徴金納付命令と併せて「本件課徴金納付命令」と
いう。)を決定した(乙10,弁論の全趣旨)。
(5)a社d支店による外部検討委員会の設置等
アa社d支店は,平成20年9月16日,本件取引に関する情報開示の在
り方について事実調査を行い,同支店の内部管理態勢や諸規範の遵守状況
等に問題点があるかを調査し,それに基づいて再発防止に向けた提言をす
ることを目的として,社外の弁護士等で構成される外部検討委員会(以下
「本件外部委員会」という。)を設置した(乙11,36)。
イ本件外部委員会は,本件取引の関係書類,電子メール記録及び電話録音
記録等の確認や原告らを含む関係者からの事情聴取等の調査を実施し,平
成20年11月11日,調査結果報告書(以下「本件外部委員会報告書」
という。)をa社d支店に提出したが,同報告書には,本件外部委員会の
判断として,「e社はスワップ部分の開示の意思を明確に持っていた。」,
「ところが,ad支店の資本市場ソリューション部のA氏(注:原告b),
B氏(注:原告c),C氏(注:資本市場ソリューション部マーケティン
グ部長)の3名は,・・・(略)・・・e社に対して,本件CB発行(注:本件
転換社債発行)の事実のみを開示し,本件スワップ契約部分を開示しない
ように働きかけた。3名は,ad支店の顧問弁護士に対して『調達したも
のが・・スワップの支払いに充てるとの部分は開示しなくてもよいのでは
ないか?』と問いかけ,これに沿う回答を得て,6月19日,e社に対し
て『スワップ部分は開示して欲しくない。弁護士も究極的な資金使途がわ
かればよいと言っている』と伝えた。その結果,e社は6月20日に至り,
一転してスワップ契約部分を『非開示』とすることに方針転換した。」,
「ad支店のA氏ら3名が,適切に情報開示をすることを考えていた発行
体,顧客に対して,自分たちの利益をはかるために,非開示とするように
働きかけた行為は,顧客に対して善管注意義務を負っている証券会社の担
当者として,極めて不適切な行為であり,顧客への背信行為というべく,
強く非難されてしかるべきものである。」,「顧客である発行体,e社の
先には,その発行株式を取引している多数の一般投資家が存在している。
資本市場は直接金融の根幹をなし,国民経済上極めて重要な役割を果たす
ものであり,そこに集う一般投資家に適時適切な情報を開示することこそ,
証券会社の基本的な責務であるところ(・・・(略)・・・),ad支店のA氏
ら3名にはこうした一般投資家に対する配慮,関心はほとんど見受けられ
ない。この点も証券会社の担当者として極めて不適切な姿勢であり,強く
非難されるべきと考える。」と記載されていた(乙19,36)。
(6)a社d支店に対する業務改善命令等
アa社d支店は,本件外部委員会報告書が提出された後,金融庁から金商
法56条の2第1項に基づく報告徴取命令を受け,平成20年11月14
日,金融庁に対し,本件外部委員会報告書を添付した報告書を提出した
(弁論の全趣旨)。
イ金融庁は,平成20年11月28日,上記報告徴取命令の結果,別紙5
「業務改善命令等の内容」記載第1の1のとおり,e社が本件転換社債の
発行に係る法定開示書類を提出するに当たっては,本件転換社債発行によ
る調達額の全額を直ちに債務の返済に充当することができるわけではない
ことを投資家が自ら推察し,投資判断をすることができる程度まで,本件
スワップ契約の内容を引用して記載すべきであり,a社d支店は,e社に
対し,そうした適切な情報開示を行うよう助言を行うべき立場にあったが,
資本市場ソリューション部の営業担当者はグループ全体としての利益確保
を優先させ,e社に対し,本件スワップ契約に関する情報を開示しないよ
う要請し,その際,本件転換社債の引受審査担当者も同じ資本市場ソリュ
ーション部に在籍していたこと等により,当該営業担当者への内部牽制は
全く機能しなかったことが不適切な業務運営に当たり,このような「不適
切な業務運営を看過するなど,経営管理態勢・内部管理態勢に重大な欠陥
があると認められる状況」があったとして,a社d支店に対し,金商法5
1条に基づき,同別紙記載第1の2の内容の業務改善命令(以下「本件業
務改善命令」という。)をした(乙13の2)。
ウ金融庁は,平成21年10月23日,別紙5「業務改善命令等の内容」
記載第2の1のとおり,a社d支店が提出した上記報告書の記載内容に不
足及び事実に反する記載があること,同支店は,調査・検証が不十分なま
ま当該報告書を作成して提出したこと,また,本件業務改善命令において,
「法人関係情報に基づいて,自己の計算において当該法人関係情報に係る
有価証券の売買その他の取引等をする行為」に該当すると認定された取引
のうちには,「当該スワップ契約の履行過程の一部として,機械的に当該
顧客の発行する株式の取引を行った」ものとは認められない取引が認めら
れたことは,金商法56条の2に基づく金融庁長官の報告徴取命令に違反
したものと認められるなどとして,同法51条及び52条第1項第6号に
基づき,a社d支店に対し,同別紙記載第2の2の内容の業務停止命令及
び業務改善命令(以下,併せて「本件業務停止命令」という。)をした
(甲15)。
(7)被告によるa社に対する過怠金の賦課等
a社は,平成20年12月11日,被告に対し,本件業務改善命令を受け
た旨の報告書を提出した(乙13の1)。
被告は,平成21年10月20日,本件取引に関するa社の一連の行為が
全体として「取引の信義則に反する行為」に該当すると認定し,a社に対し,
被告の定款28条1項4号に基づき,過怠金の賦課1億円及び会員権の停止
6か月の処分を行った(乙14)。
(8)a社による原告らの解雇等
アa社は,平成20年12月18日付けで,原告らに対し,原告らが本件
取引に関与する過程で従業員として不適切な行為を行っていたことを理由
に,原告らを懲戒解雇し,退職一時金等を支払わない旨の意思表示をした
(甲12,13)。
イ原告らは,a社を相手方として労働審判の申立てを行い,東京地方裁判
所は,平成21年4月2日,a社がした上記懲戒解雇の意思表示を撤回し
て,原告らが同日をもって会社都合により合意退職したことを相互に確認
し,a社が原告らに対して解決金及び退職一時金等を支払うことなどを内
容とする労働審判をした(甲14)。
上記労働審判は,a社が異議を申し立てたことにより訴訟に移行したが,
原告らとa社は,平成22年3月31日,a社が上記懲戒解雇の意思表示
を撤回して原告らが同日付けで会社都合により合意退職すること,a社が
上記懲戒解雇から同年5月までの給与の60パーセントに相当する額の解
決金及び退職一時金等を支払うことなどを内容とする裁判外の和解をし,
原告らは上記訴訟を取り下げた(乙25,26,35)。
(9)被告によるa社に対する外務員登録取消処分等
アa社は,従業員規則9条1項に基づき,被告に対し,原告cに関する事
故連絡書を平成20年12月17日に,原告bに関する事故連絡書を平成
21年1月21日にそれぞれ提出した(乙15,16)。
原告cに関する事故連絡書には,「本件取引において,cは6月19日,
当該スワップ契約を開示しないようe社に働きかけた」と記載され,原告
bに関する事故連絡書には,「本件取引において,当社資本市場ソリュー
ション部長であるcが6月19日,当該スワップ契約を開示しないようe
社に働きかけた。その過程において,bは資本市場ソリューション統括本
部長としての適切な監督を怠ったのみならず,非開示とする取扱いを望む
旨をcに伝え,e社への働きかけの一つの要因を作った」と記載されてい
た(乙15,16)。
イa社は,従業員規則10条1項に基づき,平成22年3月10日,被告
に対し,原告らに関する各事故顛末報告書を提出した(乙17の1,18
の1)。
上記各事故顛末報告書には,別紙6「事故顛末報告書の内容」記載のと
おり,事故の内容及び原告らの動機等が記載されていたが,事故の内容と
して,原告らが平成20年6月19日に本件スワップ契約を開示しないよ
うe社に対して働きかけたと記載され,原告らの動機として,本件スワッ
プ契約を開示することについては,g本社が証券市場でのe社株の売却を
円滑に進めることが阻害され,また,e社株式の株価下落を招き,g本社
の収益も減少するというデメリットがあったと記載されていた(乙17の
1,18の1)。
ウ被告は,平成22年3月11日,a社に対し,金商法64条の5第2項
に基づき,聴聞の期日及び場所等とともに,原告らが本件スワップ契約を
開示しないよう顧客に対して要請したことが不利益処分の原因となる事実
に該当し,金商法64条の5第1項に基づき原告らの外務員の登録取消し
等を命じる処分が予定されていることなどを記載した聴聞通知書を送付し
た(乙20)。
a社は,聴聞の期日への出頭に代えて,平成22年3月24日付けで,
被告に対し,不利益処分の原因となる事実と同社の理解の間に相違がなく,
不利益処分についても特に意見はないとする陳述書を提出した(乙21,
22)。
エ被告は,平成22年4月13日,a社に対し,原告らが,「平成20年
6月,顧客に提案した貴社グループ会社との間で行う転換社債型新株予約
権付社債の売買及びスワップ契約について,当該顧客が当該取引に関して
法定開示書類を提出するにあたって,当該スワップ契約の内容について記
載すべきであり,当該顧客に対し,そのような適切な情報開示を行うよう
助言すべき立場にあったにも関らず,貴社グループ全体としての利益確保
を優先させ,当該顧客に対し,当該スワップ契約に関する情報を開示しな
いよう要請した」行為が,「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」
(金商法64条の5第1項2号)と認められ,また,「金融商品取引業の
信用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12条1項)と認められると
の理由で,金商法64条の5第1項2号に基づき,原告らの外務員登録を
取り消す旨の各処分(以下,併せて「本件登録取消処分」という。)をし,
また,従業員規則12条1項に基づき,原告らを不都合行為者として取り
扱う旨の各決定(以下,併せて「本件不都合行為者決定」という。)をし
た。
3争点
(本案前の争点)
(1)本件登録取消処分の取消しの訴え(以下「本件取消しの訴え」とい
う。)に関する原告適格の有無。
(本案の争点)
(2)本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の実体上の適法性及び有効
性。具体的には,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して
働きかけたか否か,並びに原告らが同働きかけを行ったことが「外務員の職
務に関して著しく不適当な行為」(金商法64条の5第1項2号)及び「金
融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12条1項)に
該当するか否か。
(3)本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の手続上の適法性及び有効
性。具体的には,本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定をするに当た
り,原告らに対する聴聞の手続及び弁明の手続が必要であったか否か。
(4)原告らの損害賠償請求権の有無。具体的には,被告が本件不都合行為者
決定をしたことが原告らに対する不法行為に該当するか否か,及び被告の不
法行為により原告らが被った損害は幾らか。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件取消しの訴えに関する原告適格の有無)について
(原告らの主張)
以下のとおり,原告らには,本件登録取消処分の取消しを求めるにつき
「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)があるから,本件取消しの訴
えは適法である。
ア本件登録取消処分は金商法64条の2第1項2号所定の登録拒否事由と
なり,原告らは,同処分日から5年間外務員として稼働することができな
くなるものであるから,同処分の実質的な相手方は原告らである。
イまた,原告らは,本件登録取消処分の直接の相手方ではないとしても,
同処分により,権利利益上最も重大な影響を受ける者であり,法令の規定
の文言,趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容
及び性質(行政事件訴訟法9条2項)に照らして,同処分の取消しを求め
るにつき法律上の利益を有する。
(被告の主張)
以下のとおり,原告らには,本件登録取消処分の取消しを求めるにつき
「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)がないから,本件取消しの訴
えは不適法である。
ア外務員の登録取消処分について規定した金商法64条の5は,同法第3
章「金融商品取引業者等」の中の第7節「外務員」に含まれているところ,
同法第7節の規定は,全て金融商品取引業者又は登録金融機関(以下「金
融商品取引業者等」という。)を対象としており,同条も被処分者を金融
商品取引業者等としていることは明らかである。
すなわち,外務員登録原簿に当該外務員の氏名・生年月日その他内閣府
令で定める事項の登録を申請する者は金融商品取引業者等であり(金商法
64条1項),登録の拒否の際の審問(同法64条の2第2項)の対象者
や登録事務についての審査請求(同法64条の9)の主体についても明確
に金融商品取引業者等とされている。このように金商法第3章第7節の規
定から明らかなように,外務員の登録申請及びその後の手続に外務員の関
与は一切予定されていない。
イまた,金融商品取引業者等がその役員又は使用人に外務員の職務を行わ
せるためには,金融商品取引業者等において,当該役員又は使用人につい
て外務員登録を受ける必要がある(金商法64条2項)が,外務員登録は,
当該金融商品取引業者等が,投資者保護のため外務員の職務の適切性を確
保しつつ,金融商品取引業者等としての諸活動を行うためにするものであ
って,外務員個人のためにされるものではない。
外務員は全て金融商品取引業者等の役員又は使用人であることが前提と
なっており(金商法64条1項柱書),外務員登録の申請主体も金融商品
取引業者等である。そのため,金融商品取引業者等の役員又は使用人以外
の者は外務員登録を受けることはできず,金融商品取引業者等の役員又は
使用人であっても,金融商品取引業者等が申請しない限り外務員登録を受
けることはできない。
そうすると,外務員登録制度は,外務員の登録申請者である金融商品取
引業者等がその役員又は使用人に外務員の職務を行わせるためのものであ
って,外務員個人が外務員登録によって受ける利益を保護するものではな
い。外務員登録による利益は,金融商品取引業者等が有する利益であって,
個人の氏名等が外務員登録原簿に登録されることにより,当該個人が外務
員の職務を行うことができるという面があるとしても,それは,当該個人
が所属する金融商品取引業者等が当該個人について外務員登録を取得した
ことによる反射的利益にすぎない。
ウしたがって,金商法の規定の文言に加え,外務員登録制度の趣旨及び目
的,外務員登録によってもたらされる利益の内容及び性質を考慮したとし
ても,原告らに本件登録取消処分の取消しを求める「法律上の利益」は認
められない。
(2)争点(2)(本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の実体上の適法性
及び有効性)について
(被告の主張)
ア外務員登録取消事由及び不都合行為者取扱事由の有無について
(ア)外務員登録取消事由及び不都合行為者取扱事由について
a外務員登録取消事由(金商法64条の5第1項2号)について
金商法64条の5第1項2号は,外務員に対する監督上の処分を行
う事由として,「法令に違反したとき」と併記して,「その他外務員
の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認められるとき」と規定
しており,同号所定の「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」
とは,金商法や内閣府令に規定される義務違反以外の,外務員の職務
に関して著しく不適当な行為を包括的に指すものというべきである。
したがって,金商法64条の5第1項2号は,法令違反の確証はな
くとも一般に法令違反に近い行為を行ったときや,不正又は著しく不
当な行為をした場合においてその情状が特に重いときには,具体的な
明文上の義務違反がなくとも,外務員登録取消処分を行うことを予定
しているものである。
b不都合行為者取扱事由(従業員規則12条1項)について
従業員規則9条1項は,「従業員として遵守すべき法令等に違反す
る行為」を不都合行為者の取扱いの前提となる「事故」に該当するこ
ととしている。従業員規則9条1項が「法令」ではなく「法令等」と
規定する趣旨は,同規則の目的が「金融商品取引業の公共性及びその
社会的使命の重要性にかんがみ,協会員の従業員について,その服務
基準等を定めるとともに,従業員に対する協会員の監督責任を明らか
にし,もって投資者の保護に資すること」(同規則1条)であること
を考慮して,明確な法令違反ではないが,金商法の趣旨や外務員の職
責にかんがみて不正又は著しく不当な行為をも事故として取り扱うこ
とにある。
したがって,広く「法令等」に違反する行為が,「金融商品取引業
の信用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12条1項)に該当し,
不都合行為者決定の理由となるものというべきである。
(イ)原告らが行った行為について
a原告らは,a社d支店の外務員として本件取引を取り扱うに当たり,
e社が本件転換社債の発行に係る法定開示書類を提出する際,本件ス
ワップ契約を開示する意向を有していたe社に対し,本件スワップ契
約を開示しないよう働きかけたものである。
そして,原告らが上記働きかけを行ったことについては,金融庁に
よるe社に対する本件課徴金納付命令やa社d支店に対する本件業務
改善命令,公正中立な本件外部委員会が電子メール記録や電話録音記
録等の調査に基づき作成した本件外部委員会報告書,a社が提出した
事故顛末報告書等の関係資料から明らかである。
b原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけ
た経緯は,以下のとおりである。
(a)e社が行った本件取引においては,本件転換社債の発行により
一旦調達した手取金のうち幾らを変動支払により実質的に得ること
ができるのか,その時期がいつになるのかが不確定であり,これに
伴い,手取金の使途の実現可能性も実現時期も不確定であった。そ
のため,e社としては,本件取引の本件スワップ契約部分も開示す
る意向を有していた。
ところが,原告らは,e社が本件スワップ契約を開示する意向で
あることを知り,a社d支店の顧問弁護士(以下「d支店顧問弁護
士」という。)に問い合わせて,同弁護士から本件スワップ契約部
分の開示の要否はe社が決めることであるとの指摘を受けていたに
もかかわらず,同弁護士から,本件スワップ契約の詳細な記載を避
ける方向でのコメントを引き出した。
(b)その上で,原告cにおいて,e社に対し,「私どもの意見とし
てはスワップに関しては出来れば公表して欲しくない」という意向
を電話で伝え,また,「当該スワップ取引の詳細まで開示する例を
伺っておりません。経済的に資金使途を示せば足りるとのスタンス
でここの開示の程度を簡略化できないでしょうか。少なくとも簡潔
な記載からはじめ,取引所様に早めにご連絡し,コメントがあった
場合には,その都度詳細化を図っていくという方法を希望いたしま
す」との内容の電子メールを送信し,本件スワップ契約を開示しな
いよう働きかけた。
(c)このような経過により,当初は本件スワップ契約を開示する意
向を示していたe社は,最終的に本件臨時報告書等及びプレスリリ
ースにおいて,本件スワップ契約を開示しないこととし,その結果,
金商法に違反したものとして本件課徴金納付命令を受けることとな
った。
(ウ)原告らの行為の「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金
商法64条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜
させるもの」(従業員規則12条1項)該当性について
ae社は,本来,本件転換社債の発行により調達する手取金の使途の
実現時期及び実現可能性について,投資家が自ら推察し,投資判断を
することができる程度まで,本件スワップ契約の内容を引用する等し
て,本件取引の内容を開示するべきであった。
しかし,e社が実際に行ったのは,投資家及び証券市場に対してe
社の財務基盤の安定性確保を期待させる本件転換社債の発行のみを開
示する一方,その期待を減退させ得る本件スワップ契約については開
示しないことであった。
投資家及び証券市場は,本件スワップ契約の非開示により,本件ス
ワップ契約の存在及びその内容を知らされることなく,本件転換社債
の発行の事実のみに基づく誤った認識及び投資判断を基にe社株式を
取引せざるを得ないことになる。このことが,e社株式の公正な取引
及び価格形成並びに円滑な流通を阻害し,証券市場の根本を揺るがす
重大な影響を及ぼすであろうことは,本件スワップ契約の開示につい
て検討していた時点でも明らかであった。
b原告らは,a社d支店の外務員として,e社から資金調達方法につ
いての依頼を受けて本件取引の提案を行い,本件取引の実行からその
情報開示に至るまで相談を受けていた。そのため,原告らは,e社が
どのような情報開示を行うかを知り得る立場にあることはもちろん,
その情報開示について言及すれば,重大な影響を与え得る立場にあっ
た。
このような立場にある原告らとしては,e社に対し,e社の調達額
の全額を直ちに債務の返済に充当することができるわけではないこと
を投資家が自ら推察することができる程度まで開示するよう働きかけ
るべきところ,むしろ本件スワップ契約を開示しないよう働きかけた
ものである。
c証券市場の健全性を確保することによって国民経済の健全な発展や
投資家の保護に資するといった金商法1条の目的からすれば,原告ら
による本件スワップ契約の非開示の働きかけは,証券市場の根本を揺
るがす重大な影響を引き起こすものであり,投資家及び証券市場を軽
視し,証券市場全体に対する投資家の信頼を著しく失墜させるもので
ある。また,e社は,本件スワップ契約を開示しないこととしたこと
により,金融庁から本件課徴金納付命令を受けており,原告らの働き
かけは,e社による本件臨時報告書等の虚偽記載を唆したとも評価し
得る重大なものである。
dしたがって,原告らの行為が「外務員の職務に関して著しく不適当
な行為」(金商法64条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信
用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12条1項)に該当するこ
とは明らかである。
イ本件登録取消処分の適法性及び本件不都合行為者決定の有効性について
(ア)外務員登録取消処分及び不都合行為者決定における被告の裁量につ
いて
a金商法64条の5第1項2号は,監督上の処分を行う事由について,
「外務員の職務に関して著しく不適当な行為をしたとき」という抽象
的な文言で規定している。これは,外務員の職務が非常に高度な専門
性を有するものであると同時に,証券市場や投資家に影響を与えるも
のであることから,その行為の妥当性を判断するに当たっても,高度
な最新の専門的知見に基づく総合的判断と公益上の判断が必要となる
ため,あらかじめ具体的に規定することが困難であり,処分者の裁量
に委ねるほかないためである。
また,外務員登録取消処分を含む外務員登録制度は,そもそも証券
業界の自主規制として確立してきたものであり,証券取引法及び同法
を引き継いだ金商法においても,被告の自主規制団体としての性質及
び上記の外務員登録制度の性質から,外務員登録取消処分の権限は,
内閣総理大臣から認可金融商品取引業協会である被告に委任されてい
る(金商法64条の7)。
そうすると,外務員登録取消処分については,被告に広範な裁量が
認められるというべきであって,判断の基礎とされた重要な事実に誤
認があること等によりその判断が全く事実の基礎を欠くか,又は事実
に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりその判断が社会通念
に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り,違法と
なるというべきである。
bまた,不都合行為者制度は,法令に基づくものではなく,有価証券
の売買その他の取引等を公正かつ円滑ならしめ,金融商品取引業の健
全な発展を図り,もって投資者の保護に資するという被告の設立目的
を達成するために,協会員に対する自主規制上の措置として行われて
いるものであるから,不都合行為者の取扱いの決定をどのような場合
に行うかは,制度を定めた被告の広範な裁量に属するものである。
(イ)本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定について
a原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけ
た行為は,「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金商法6
4条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜させ
るもの」(従業員規則12条1項)に該当するものであって,その行
為は,証券市場の根本を揺るがす重大な影響を引き起こすものである
とともに,投資家及び証券市場を軽視し,証券市場全体に対する投資
家の信頼を著しく失墜させるものである。
そうすると,本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定について,
判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等によりその判断が
全く事実の基礎を欠くか,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠
くこと等によりその判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くこと
が明らかであるとは到底いえない。
bしたがって,原告らが行った行為が「外務員の職務に関して著しく
不適当な行為」(金商法64条の5第1項2号)に該当するとしてさ
れた本件登録取消処分は適法であり,また,原告らが行った行為が
「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12
条1項)に該当するとしてされた本件不都合行為者決定は有効である
というべきである。
(原告らの主張)
ア外務員登録取消事由及び不都合行為者取扱事由の有無について
(ア)外務員登録取消事由及び不都合行為者取扱事由について
a外務員登録取消事由(金商法64条の5第1項2号)について
金商法64条の5第1項各号は,外務員登録取消し等の事由につい
て規定しているところ,1号は,外務員が欠格要件に該当することと
なったとき又は欠格要件に該当していたことが判明していたときを上
記事由として規定し,2号は,法令に違反したときその他外務員の職
務に関して著しく不適当な行為をしたと認められるときを上記事由と
して規定している。
外務員登録及び同取消制度は,登録の欠格要件を定めるとともに,
法令違反の場合に不適格者を排除することができるようにする制度で
あり,また,外務員登録の取消しが金融商品取引業者等や外務員に重
大な不利益を及ぼすことからすれば,「外務員の職務に関して著しく
不適当な行為」に該当するというためには,他の取消事由である欠格
要件又は法令違反に準じ,不適格者であることが具体的かつ明確な事
由をもって裏付けられなければならないというべきである。このこと
は,金商法の立法担当者が,「外務員の職務に関して著しく不適当な
行為」とは,法令違反の確証はなくとも,一般に法令違反に近い行為
を行っている場合であると述べていることや,金商法の解説書におい
て,「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」の意義について,
被告の従業員規則に定める禁止行為などに違反するものが該当すると
されていることからも裏付けられる。
したがって,金商法64条の5第1項2号に基づき外務員登録取消
処分を行うためには,法令上の義務又はこれに準ずる程度の具体的か
つ明確な義務の違反,具体的には,被告の従業員規則や外務員規則等
に違反する行為がされたことが必要であるというべきである。
b不都合行為者取扱事由(従業員規則12条1項)について
従業員規則における不都合行為者制度においては,従業員が従業員
規則7条3項各号に列挙された禁止行為,同8条各号に列挙された不
適切行為,外務員規則5条に規定する行為,又は従業員として遵守す
べき法令等に違反する行為を行ったことが前提となっており,これに
加えて,当該行為が「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるも
の」に該当するときに,不都合行為者とされる。
そうすると,従業員規則12条1項に定める不都合行為者に該当す
るためには,法令等に違反する行為等を行ったことが前提となるとこ
ろ,ここにいう法令等の違反とは,法令上の義務又はこれに準ずる程
度の具体的かつ明確な義務の違反をいうものと解される。
したがって,不都合行為者決定を行うためには,従業員規則に列挙
された禁止行為や不適切行為,法令上の義務又はこれに準ずる程度の
具体的かつ明確な義務の違反が認められることが必要であるというべ
きである。
(イ)原告らが行った行為について
a原告らにおいて,e社が本件転換社債の発行に係る法定開示書類を
提出するに当たり,本件スワップ契約を開示しないようe社に対して
働きかけた事実は存在しない。
b本件取引に関する経緯は以下のとおりである。
(a)原告cは,本件取引を担当する立場で,e社の財務部長(以下
「e社財務部長」という。)との間で,a社d支店とe社における
社内の状況の情報交換を行っていたところ,e社財務部長から,本
件転換社債の払込金の使途として,当初は本件スワップ契約の支払
に充てた上で,徐々にe社に振り込まれるとプレスリリース案に記
載することを検討しており,また,e社の一部の役員が,本件スワ
ップ契約のタームシート(契約内容等を項目別にまとめた別紙4の
ような表のこと)をそのまま開示する必要があるとの意見を述べて
いると伝えられた。
そこで,原告らは,d支店顧問弁護士と電話会議を行ったところ,
同弁護士からは,本件転換社債の払込金が最終的には何に向けて使
われるかを記載すればよいとの意見が述べられた。そして,原告ら
は,d支店顧問弁護士に対し,本件スワップ契約のヘッジ比率等の
詳細な条件をそのまま開示することを希望しない意向があることを
伝えた上,e社から送付されたプレスリリース案を修正することを
依頼した。
(b)その後,原告cは,e社財務部長に対し,a社d支店内には,
本件スワップ契約,特にヘッジ比率等の詳細な条件をそのまま開示
することを希望しない意向があることを伝えるとともに,本件スワ
ップ契約の開示については,本件転換社債の払込金が最終的には何
に使われるかを記載すればよいというd支店顧問弁護士の意見を伝
えたが,本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけ
た事実はない。
c原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけ
た事実がないことは,以下の各事情からも明らかである。
(a)原告らが所属していた資本市場ソリューション部は,平成18
年8月1日に設置された当初は案件が少ない状況であったが,平成
20年になると取り扱う案件が増えるようになり,同年6月の時点
では,1500万ユーロの年間予算のほぼ半分を達成しており,そ
れ以降も年内に数件の案件が見込まれていて,年間予算を優に超え
る可能性が高かった。
このような資本市場ソリューション部の実績はg本社から評価さ
れ,原告bは,ストラテジック・エクイティー部門の東京責任者か
らアジア責任者に昇進するなどしていた。
したがって,原告らは,本件取引当時,本件取引をどうしても成
立させて業績を上げなくてはならないというプレッシャーを受けて
いる状況にはなかった。
(b)本件取引については,本件取引実施後にヘッジ取引を行うa社
d支店の株式・派生商品トレーディング部(以下「d支店トレーデ
ィング部」という。)から,本件スワップ契約,特にヘッジ比率等
の詳細な条件の開示を希望しないという意向が示されていた。原告
らは,d支店トレーディング部と調整をした上で,本件スワップ契
約のヘッジ比率の下限を低い数字にするのであれば本件取引を成立
させることは可能であると考え,ヘッジ比率を変更した内容で本件
取引の承認を得るための手続の準備も行っており,本件スワップ契
約自体を開示することはそれほど問題ではなかった。
そして,原告cは,e社財務部長との情報交換において,a社d
支店としては,ヘッジ比率等の詳細な条件を開示することを希望し
ておらず,仮にヘッジ比率を開示するのであれば,ヘッジ比率の下
限を引き下げることを希望する旨伝えており,ヘッジ比率等の詳細
な条件が重要であり,本件スワップ契約自体を開示することはそれ
ほど問題ではないことはe社にも伝わっていた。
(c)本件外部委員会報告書には,原告らとd支店顧問弁護士やe社
財務部長の間の電話会話内容が記載されている。しかし,上記記載
は,全体の会話の一部の抜粋や要約にすぎないし,a社d支店から
営業の全部を譲り受けたa証券は,本件訴訟において原告らが申し
立てた文書送付嘱託及び文書提出命令について,電話録音記録の送
付及び提出を拒み,電話録音記録は全て残存していないと主張して
いることからすれば,上記記載が原告らの会話内容を正確に反訳し,
その趣旨を正確に伝えているものであるかについては疑問がある。
(d)本件取引を実行するに当たっては,a社d支店の各部門の責任
者で構成される取引承認委員会が開催され,本件スワップ契約を開
示する必要があるかについても議論された。上記取引承認委員会で
は,a社d支店の法務部長(以下「d支店法務部長」という。)及
び同支店のコンプライアンス部長(以下「d支店コンプライアンス
部長」という。)から,本件スワップ契約の開示は必要ないという
意見が述べられて本件取引が承認されたが,本件外部委員会報告書
では,原告らが独断専行で本件スワップ契約を開示しないようe社
に対して働きかけたという事実誤認がされている。
また,金融庁が本件業務停止命令において認定したとおり,d支
店トレーディング部は,本件取引に当たって,インサイダー取引を
行っていたが,本件外部委員会報告書では,このような事実が看過
されている。
そうすると,本件外部委員会報告書には上記のような重大な事実
の誤認及び看過があったものというべきである。そして,本件外部
委員会報告書は,本件スワップ契約の開示の要否の判断がa社d支
店の幹部等の承認の下で行われたことや,d支店トレーディング部
がインサイダー取引を行っていたことを隠ぺいするため,a社d支
店の幹部によって利用され,原告らはいわゆるスケープゴートとさ
れたものである。
(e)a社は,本件取引に関与する過程で不適切な行為を行ったとし
て原告らを懲戒解雇したが,東京地方裁判所が,懲戒事由に該当す
る事実がないことを前提とする労働審判をし,訴訟移行後も上記労
働審判と同様の内容の和解を勧告したため,原告らとの間で,懲戒
解雇を撤回する内容の裁判外の和解をした。このようにa社が原告
らの懲戒解雇を撤回したことは,原告らが本件取引に関与する過程
で不適切な行為を行ったものではないことを強く推認させるもので
ある。
(ウ)原告らの行為の「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金
商法64条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜
させるもの」(従業員規則12条1項)該当性について
a本件取引当時,関係法令,金融庁のガイドライン又は従業員規則や
外務員規則等の被告の内部規則において,外務員には,転換社債型新
株予約権付社債の発行とスワップ契約を組み合わせた本件取引のよう
な取引について,顧客に適切な情報開示を行うよう助言する義務はな
かった。そうすると,原告らの行為が金商法64条の5第1項2号に
規定する外務員登録取消事由又は従業員規則12条1項に規定する不
都合行為者取扱事由に該当するというためには,少なくとも,原告ら
が,e社が本件転換社債の発行に係る法定開示書類を提出するに当た
って,本件スワップ契約を開示しなければ投資家に誤解を生じさせな
いために必要である重要な事実の記載が欠けることを知りながら,本
件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけた事実があっ
たことが必要というべきである。
b本件取引当時,d支店コンプライアンス部長及びd支店顧問弁護士
は,本件スワップ契約の開示の必要がないという意見を述べていた。
そのため,原告らは,上記意見に基づき,本件スワップ契約が投資家
にとって重要な事項であり,本件スワップ契約を開示しないことが投
資家に誤解を生じさせるおそれがあるとは認識しておらず,本件転換
社債の発行に係る法定開示書類において,本件スワップ契約を開示す
る必要があるとは考えていなかった。
そして,上記(イ)のとおり,原告らが本件スワップ契約を開示しな
いようe社に対して働きかけた事実も存在しない。
したがって,原告らの行為が金商法64条の5第1項2号に規定す
る外務員登録取消事由又は従業員規則12条1項に規定する不都合行
為者取扱事由に該当するとは認められない。
イ本件登録取消処分の適法性及び本件不都合行為者決定の有効性について
(ア)原告らについては,外務員登録取消事由及び不都合行為者取扱事由
は存在しない。
仮に,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働き
かけた事実が存在したとしても,原告が過去に被告による処分を受けた
ことがないことや,本件取引に関する事実経緯からすれば,本件登録取
消処分は重きに失するものとして社会通念上妥当性を欠くものであるし,
金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものともいえない。
(イ)したがって,本件登録取消処分は違法なものであり,また,本件不
都合行為者決定は無効なものというべきである。
(3)争点(3)(本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の手続上の適法性
及び有効性)について
(原告らの主張)
ア本件登録取消処分について
外務員登録取消処分がされると,5年間にわたり外務員の登録が拒否さ
れ(金商法64条の2第1項2号),当該外務員に著しい不利益が生じる
のであるから,登録取消しの対象となる外務員個人に対して聴聞の手続が
行われなければならない。
それにもかかわらず,本件登録取消処分については,原告らに対する聴
聞の手続がされていないから,手続上の違法があり,取り消されるべきも
のである。
イ本件不都合行為者決定について
不都合行為者決定がされると,5年間にわたり被告の協会員に採用され
ることができず(従業員規則5条2項),当該従業員に著しい不利益が生
じるのであるから,不都合行為者決定の対象となる従業員個人に対して弁
明の手続が行われなければならない。
また,被告は,本件不都合行為者決定の約1か月後である平成22年5
月18日に従業員規則を改正し,不都合行為者決定の対象となる従業員個
人に対する弁明の手続等を定めた規定(改正従業員規則13条,13条の
2,不都合行為者取扱手続細則3条から5条まで,8条,10条)を設け
ており,従前の不都合行為者決定の手続が著しく適正を欠くものであった
ことを認めているから,従業員規則の上記改正を待ってから本件不都合行
為者決定の手続を開始するか,あるいは上記改正以前であっても弁明の手
続を行うべきであった。
それにもかかわらず,本件不都合行為者決定については,原告らに対す
る弁明の手続がされていないから,手続上の瑕疵があり,無効というべき
である。
(被告の主張)
ア本件登録取消処分について
金商法上,外務員登録取消処分の被処分者が,外務員個人ではなく,金
融商品取引業者等であることは明らかであり,聴聞の手続も金融商品取引
業者等に対して行うものであって,外務員個人に対して行う必要はない。
したがって,被告が本件登録取消処分を行うに際し,原告らに対して聴
聞の手続を行わなかったしても,何ら手続的瑕疵は存在しない。
イ本件不都合行為者決定について
(ア)不都合行為者制度は,法令に基づくものではなく,有価証券の売買
その他の取引等を公正かつ円滑ならしめ,金融商品取引業の健全な発展
を図り,もって投資者の保護に資するという被告の設立目的を達成する
ために,協会員に対する自主規制上の措置として行われているものであ
るから,不都合行為者決定をどのような手続を経て行うかは,制度を定
めた被告の広範な裁量に属するものである。
したがって,本件不都合行為者決定の時点では,弁明の手続が制度化
されていなかった以上,弁明の手続を行わなかったことによって,同決
定が無効となるものではない。
(イ)被告が従業員規則を改正して弁明手続等の手続保障を充実させた趣
旨は,従前の採用禁止期間を5年間とする不都合行為者制度を拡充し,
新たに,採用禁止期間を無制限とする不都合行為者(一級不都合行為
者)の区分を設けて処分を厳格化したことに伴い,より慎重な手続を行
うことにある。
そして,本件不都合行為者決定時の不都合行為者制度では,採用禁止
期間が無制限となることはなく,手続保障を充実させる合理的理由がな
いから,弁明の手続を行わなかったことによって,同決定が無効となる
ものではない。
(4)争点(4)(原告らの損害賠償請求権の有無)について
(原告らの主張)
原告らは従業員規則12条1項に規定する不都合行為者取扱事由に該当す
る行為を行っておらず,また,原告らに対する弁明の手続が行われていない
にもかかわらず,被告が原告らに対して本件不都合行為者決定をしたことは,
原告らに対する不法行為に該当する。
そして,原告らは,被告の上記不法行為により,以下の各損害を被ったと
ころ,その合計の一部である2200万円の支払を求める。
ア逸失利益
a社d支店において,原告bは月額347万8417円,原告cは月額
168万1284円の給与の支払を受けていたところ,原告らは,a社d
支店を退職した平成22年4月1日以降,金融商品取引業者に採用されて
少なくとも上記各金額の給与を得ることができたにもかかわらず,本件不
都合行為者決定がされたことにより,金融商品取引業者に採用されること
ができない。
したがって,原告らは,本件不都合行為者決定がなければ得べかりし利
益として,平成22年4月から本判決確定の日に至るまで,原告bは月額
347万8417円,原告cは月額168万1284円の損害がそれぞれ
生じている。
イ慰謝料
原告らは,本件不都合行為者決定が撤回されない限り,金融商品取引業
者に採用されることができないところ,これによる精神的苦痛に対する慰
謝料は,それぞれ500万円を下らない。
ウ弁護士費用
本件訴訟と因果関係のある弁護士費用は,上記各損害の合計額の10パ
ーセントを下らない。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件取消しの訴えに関する原告適格の有無)について
被告は,原告らには本件登録取消処分の取消しを求める原告適格がないと主
張するので,以下検討する。
(1)行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定しているとこ
ろ,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有す
る者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵
害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該処分を定めた
行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消さ
せるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護す
べきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにい
う法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然
的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を
有するというべきである(最高裁平成17年12月7日大法廷判決・民集5
9巻10号2645頁参照)。
そして,行政事件訴訟法9条2項は,裁判所は,処分又は裁決の相手方以
外の者について同条1項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっ
ては,当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,
当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容
及び性質を考慮するものとし,この場合において,当該法令の趣旨及び目的
を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるとき
はその趣旨及び目的をも参酌するものとし,当該利益の内容及び性質を考慮
するに当たっては,当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされ
た場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様
及び程度をも勘案するものとする旨規定している。
(2)そこで,上記の見地に立って,原告らが本件登録取消処分の取消しを求
めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当するといえるかについて検討
する。
アまず,本件登録取消処分の名あて人が誰であるかについて検討するに,
金商法64条の5第1項は,外務員登録取消処分を含む外務員に対する監
督上の処分について,「内閣総理大臣は,登録を受けている外務員が次の
各号のいずれかに該当する場合においては,その登録を取り消し,又は2
年以内の期間を定めてその職務の停止を命ずることができる」と規定して
おり,監督上の処分の名あて人が誰であるかを明確に規定してはいない。
しかし,金商法は,金融商品取引業者等が外務員登録の申請をする旨規定
し(同法64条3項),外務員に対する監督上の処分については,登録申
請者,すなわち金融商品取引業者等に通知し(同法64条の5第3項),
金融商品取引業者等は上記処分について審査請求をすることができる旨規
定している(同法64条の9)。
そうすると,金商法64条の5第1項に規定する外務員に対する監督上
の処分の名あて人は,当該外務員の所属する金融商品取引業者等であると
解すべきである。
したがって,本件登録取消処分の名あて人は,登録の取消しの対象とな
る外務員である原告らではなく,原告らが所属していたa社であると認め
られる。
イ次に,本件登録取消処分の名あて人ではない原告らが,本件登録取消処
分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当するといえ
るかを検討する。
(ア)ここで,金商法64条1項は,金融商品取引業者等は当該業者等の
役員又は使用人のうち当該業者のために一定の金融商品取引業務を行う
者について外務員の登録を受けなければならない旨規定し,同法64条
の2第1項は,一定の要件に該当する者の登録を拒否しなければならな
い旨規定し,同法64条の5第1項は,外務員登録欠格事由に該当する
こととなったときや金融商品取引業務に関し法令に違反したとき等には,
外務員登録取消処分又は2年以内の外務員職務停止命令をすることがで
きる旨規定している。そして,これらの規定に基づく外務員登録制度及
び同取消制度は,金融商品取引業者等の役員又は使用人を監督官庁が正
確に把握し,外務員として不適格な者を排除することにより,金融商品
取引業者等に対する信頼の確保と取引の公正を図り,もって投資者の保
護に資することを目的とするものと解される。
そうすると,金商法に規定する外務員登録制度及び同取消制度の目的
及び趣旨からすれば,これらの制度が外務員登録やその取消しの対象と
なる外務員個人の個別的利益を保護するものと直ちに解するのは困難で
ある。
(イ)しかしながら,金商法は,登録を受けた金融商品取引業者でなけれ
ば金融商品取引業を行うことができず(同法29条,2条9項),金融
商品取引業者等は登録を受けた外務員以外の者に外務員の職務を行わせ
てはならない旨規定している(同法64条2項)ところ,同法64条の
2第1項2号は,同法64条の5第1項の規定により外務員登録を取り
消され,その取消しの日から5年を経過しない者の外務員登録を拒否し
なければならないと規定している。
このように金商法においては,同法64条の5第1項の規定により外
務員登録を取り消された者が,取消しの日から5年間にわたって外務員
の登録を受けることができず,その結果,外務員登録を取り消された者
が5年間にわたって金融商品取引業者に雇用されるなどして金融商品取
引業に一切従事することができないという不利益を受けることになるこ
とが予定されているものということができる。そして,外務員登録取消
処分が違法にされた場合には,当該外務員は,5年もの長期間にわたっ
て金融商品取引業に一切従事することができず,収入源が絶たれるなど
して生活全般にわたる重大な不利益を受けるおそれがあるものというべ
きである。
このように外務員登録取消処分によって生じる不利益の性質及び内容
並びにその態様に照らせば,金商法64条の5第1項が,外務員登録取
消処分によって外務員に生ずる不利益について,当該処分により一般的
あるいは反射的に生じる事実上の不利益にすぎないものと扱っていると
解するのは相当ではなく,当該処分を行うに当たっては外務員個人の不
利益についても考慮すべきものとしていると解するべきである。そうす
ると,金商法は,外務員が違法に外務員登録を取り消されないという利
益についても法律上保護しているものと解するのが相当である。
(ウ)以上によれば,外務員登録取消処分の対象となる外務員は,当該処
分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必
然的に侵害されるおそれのある者に該当するということができるから,
当該外務員は,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する
者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当で
ある。
そして,本件においては,原告らは,本件登録取消処分により外務員
登録を取り消される者であるから,本件取消しの訴えにおける原告適格
を有するものというべきである。
2争点(2)(本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の実体上の適法性及
び有効性)について
(1)被告は,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働き
かけた行為が「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金商法64条
の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」
(従業員規則12条1項)に該当する旨主張するので,まず,原告らが本件
スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけた事実の有無について
検討する。
ア前記争いのない事実等及び証拠(各段落末尾に掲記する。)によれば,
以下の各事実が認められる。
(ア)e社は,平成20年6月12日(以下,平成20年の出来事につい
ては年を省略する。),原告bに対し,他の証券会社を通じて発行した
転換社債型新株予約権付社債の発行金額が最大で500億円から270
億円に減額され,7月及び8月頃の資金繰りに余裕がなくなる可能性が
あり,6月末までに一定の資金を調達したいので,急いで資金調達の提
案をしてほしい旨依頼した。(甲20,乙36)
原告らは,新株予約権付コミットメントラインによる資金調達の方法
を提案するなどしたが,この方法が実現困難であったため,6月18日
午後10時頃,e社に対し,本件転換社債の発行と本件スワップ契約を
組み合わせた本件取引を提案し,e社もこれを了承した。(甲20)
(イ)原告らは,e社から本件取引を早く実行したいとの要望があったた
め,本件取引の実行に向けたキックオフミーティング(プロジェクトの
開始時に行う会議)として,6月19日午前1時頃,e社の担当者,e
社の顧問弁護士(以下「e社顧問弁護士」という。),d支店顧問弁護
士が参加した電話会議を開催した。同電話会議においては,本件スワッ
プ契約の開示の必要性についても検討され,d支店顧問弁護士から,記
憶する限りではスワップ取引そのものを転換社債発行と同時に開示して
いる事例はないと思う旨の発言があった。また,原告らも本件スワップ
契約の開示の必要性はないと考えていた。(甲20,乙36,原告c本
人)
その後,原告らの依頼を受けたd支店顧問弁護士は,「調達する資金
の具体的な使途」の項目について「本件新株予約権付社債の発行による
調達資金につきましては,主として財務基盤の安定性確保に向けた短期
債務の返済に200億円を充当する予定です。また,開発用不動産の仕
入資金として約100億円の投入を予定しております。」と記載され,
本件スワップ契約を開示しない内容のプレスリリース案を作成し,6月
19日午後2時30分頃,e社財務部長に対して上記プレスリリース案
を電子メールで送信した。(甲5,20,乙36)
(ウ)これに対し,e社は,e社顧問弁護士と相談するなどして,本件ス
ワップ契約を開示せざるを得ないと考えており,e社財務部長は,6月
19日午後10時頃の電話で,原告cに対し,本件転換社債の発行に係
る払込金を単に債務の返済に充てると記載することはできず,一旦本件
スワップ契約に基づく支払に充てた後に,順次e社に対して支払われる
と記載せざるを得ないと述べていた。また,e社は,6月19日午後1
0時13分頃,a社d支店に対し,プレスリリース案の修正案を電子メ
ールで送信したが,上記修正案には,「調達する資金の具体的な使途」
の項目について「本新株予約権付社債の発行により調達した資金につき
ましては,最終的には財務基盤の安定性確保に向けた短期債務の返済に
充当する予定でありますが,本新株予約権付社債の引き受け先であるh
(以下h)および当社との間に締結したISDAMasterAgreem
ent契約に基づき,一旦hへの『預け金(?)』とします。その後,
hの本新株予約権付社債の権利行使に連動して,その3営業日後に当社
宛に資金が再度振り込まれることになります。」などと記載されており,
表現としては不正確ながらも,本件スワップ契約を開示する内容となっ
ていた。(乙36)
(エ)e社が本件スワップ契約を開示せざるを得ないと考えていたことを
受け,原告bは,6月19日午後10時32分頃,d支店顧問弁護士と
の電話会議を行った。同電話会議において,原告bは,「実は資金使途
については書いて欲しくないんですね」,「それに関しては開示の義務
があるのか?」,「僕たちの希望としては入れないで欲しいんだけど」,
「僕たちの理解ではスワップに関してはCB(注:本件転換社債)発行
要項に関して開示義務はない」などと述べ,d支店顧問弁護士は「スワ
ップという近似的な書き方ではなくて,究極的に何に使用するかという
観点でご記載くださいとか」などと述べた。(乙36)
そして,原告cは,6月19日午後11時21分頃,e社財務部長と
の間の電話で,e社財務部長から本件スワップ契約の開示の要否につい
て尋ねられたのに対し,「あれから甲法律事務所弁護士先生(注:d支
店顧問弁護士。本件外部委員会報告書(乙36)において仮名処理され
ている。)交えていろいろ話をしていたんですが,今甲法律事務所弁護
士先生に見て貰っているんですが,私どもの意見としてはスワップに関
しては出来れば公表して欲しくないな,というのもありまして,甲法律
事務所弁護士先生と話して,彼が言っていたのは究極的に何に使うのか
と,資金調達はスワップのアップフロントペイメント(注:本件スワッ
プ契約に基づく払込金)を払うためにしているのか,という様なことは
言っておりました。」と述べた。(乙36)
その後,a社d支店は,e社に対し,6月20日午前0時18分頃,
e社から送信された本件スワップ契約を開示する内容の上記プレスリリ
ース案の「調達する資金の具体的な使途」の項目について,「本新株予
約権付社債の発行による調達資金につきましては,その全額を財務基盤
の安定性確保に向けた短期債務の返済に充当する予定であります。」と
再修正し,本件スワップ契約を全く開示しない内容とするとともに,
「当該スワップ取引の詳細まで開示する例を伺っておりません。経済的
に資金使途を示せば足りるとのスタンスでここの開示の程度を簡略化で
きないでしょうか。少なくとも簡潔な記載からはじめ,取引所様に早め
にご連絡し,コメントがあった場合には,その都度詳細化を図っていく
という方法を希望いたします。」とのコメントを付して,再修正したプ
レスリリース案を電子メールで送信した。(乙36)
(なお,上記で認定した原告らとd支店顧問弁護士及びe社財務部長と
の間の電話会話内容については,本件外部委員会報告書(乙36)に引
用された電話会話内容に基づき認定したものであるところ,原告らは,
本件外部委員会報告書に引用された電話会話内容が原告らの会話内容を
正確に反訳し,その趣旨を正確に伝えているものであるかについては疑
問がある旨主張する。しかし,本件外部委員会はa社と利害関係を有し
ない外部の弁護士等で構成されており,本件外部委員会報告書に記載さ
れた電話会話内容は,a社d支店の内部監査部が電話録音記録を正確に
反訳したものから本件外部委員会が引用したものであること(乙35),
原告cは,電話での会話が録音されていたこと自体は認めており,本件
外部委員会報告書に引用された電話会話内容について,その内容や趣旨
に誤りがある点を具体的に指摘してはいないこと(甲20,原告c本
人)からすれば,本件外部委員会報告書に引用された電話会話内容は正
確なものと認めるのが相当である。)
(オ)e社は,a社d支店からプレスリリース案の再修正案を受領した後,
本件スワップ契約を開示しない方針に転換し,6月20日午前0時32
分頃,e社顧問弁護士に対し,「『資金使途』の部分に関しては,aと
も協議し,添付のような形式でシンプルにまとめたいと考えております。
(最終的には何に資金が充当されるかを重視)」と記載するとともに,
「調達する資金の具体的な使途」の項目について,「本新株予約権付社
債の発行により調達した資金につきましては,財務基盤の安定性確保に
向けた短期債務の返済に順次充当する予定であります。」と記載したプ
レスリリース案を添付した電子メールを送信した。(甲3,乙36)
そして,e社顧問弁護士は,6月20日午前1時42分頃,「CBで
調達した資金の使途は,正確にはスワップの元本払込であり,そのよう
に開示しないことは投資家・株主に誤解を与えるおそれがあると考えて
おります。上記の通りではございますが,貴社においてはそのような開
示はしないということですので,その前提のもとでより良い表現にすべ
く,添付のような修正を加えました。ご確認ください。」と記載すると
ともに,「調達する資金の具体的な使途」の項目について,「本件取引
により調達する資金につきましては,最終的には事業資金及び財務基盤
の安定性確保に向けた短期債務の返済等に使用する予定であります。」
と修正したプレスリリース案を添付した電子メールを送信した。(甲3,
乙36)
e社は,6月26日,「調達する資金の具体的な使途」の項目につい
て,「本件取引により調達する資金につきましては,財務基盤の安定性
確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定であり
ます。」と記載したプレスリリースをするとともに,本件転換社債の発
行による手取金の使途が「財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を
始めとする債務の返済に使用する予定」であることを内容とする本件臨
時報告書を提出した。(前記争いのない事実等(4)ア,乙7)
イ以上の各事実によれば,①本件取引の実行に向けた原告らとe社との間
での検討においては,本件スワップ契約を開示する必要があるか否かが当
初から問題となっていたところ,原告ら及びd支店顧問弁護士は本件スワ
ップ契約を開示する必要がないと考え,その旨をe社に対しても伝えてい
たが,e社は,同社の顧問弁護士と相談するなどして本件スワップ契約を
開示せざるを得ないと考えており,d支店顧問弁護士が作成したプレスリ
リース案についても,本件スワップ契約を開示する内容に修正していたこ
と,②e社が本件スワップ契約を開示する意向を有していたことから,原
告bは,d支店顧問弁護士に対し,本件スワップ契約を開示したくないと
いう意向を伝え,同弁護士から,本件スワップ契約を開示するのではなく,
本件転換社債の払込金を究極的に何に使用するのかという観点でプレスリ
リース案に記載するという意見を得たこと,③原告cは,原告bとd支店
顧問弁護士との間の会話を踏まえて,6月19日の深夜,e社に対し,a
社d支店としては本件スワップ契約はできれば公表してほしくないという
意向を伝えた上で,d支店顧問弁護士から本件転換社債の払込金を究極的
に何に使うのかを記載するという意見があったことを伝え,また,本件ス
ワップ契約を開示する内容であったe社修正に係るプレスリリース案につ
いて,本件スワップ契約に全く触れずに,本件転換社債の払込金の使途を
短期債務の返済とのみ記載する内容に再修正し,本件転換社債の払込金の
経済的な資金使途を示せば足りるという考え方で開示を簡略化したいとの
コメントを付した上で,e社に対してこれを送信したこと,④e社は,上
記プレスリリース案の再修正案を受領した後に,本件スワップ契約を開示
しない方針に転換し,e社顧問弁護士に対しても,a社d支店と協議した
上で,最終的な資金の使途のみを示すことにした旨を伝え,その後,本件
スワップ契約を開示しない内容の本件臨時報告書等の提出及びプレスリリ
ースを行うに至ったことがそれぞれ認められる。
そして,このような事実経緯に照らせば,原告らは,本件取引を実行す
るに当たっては,本件スワップ契約が開示されることを避けたいという意
向を有していたことから,本件スワップ契約を開示せざるを得ないと考え
ていたe社に対し,6月19日の深夜,本件スワップ契約を開示してほし
くないというa社d支店の意向を伝えるとともに,本件転換社債の払込金
を究極的に何に使うのかを記載するというd支店顧問弁護士の意見を伝え,
同意見に沿って,本件スワップ契約を全く開示しない内容にプレスリリー
ス案を修正して送信するなどすることによって,本件スワップ契約を開示
しないよう働きかけたものであり,原告らの働きかけが一因となって,e
社は本件スワップ契約を開示しない方針に転換するに至ったものと認める
のが相当である。
そうすると,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して
働きかけたという事実が認められるというべきである。
ウ(ア)これに対し,原告らは,本件取引当時,資本市場ソリューション部
は年間予算のほぼ半分を達成しており,その実績はg本社から評価され
ていたから,本件取引をどうしても成立させて業績を上げなくてはなら
ないというプレッシャーを受けている状況にはなかった旨主張するとこ
ろ,原告らの陳述書(甲20)の記載及び原告cの供述は上記主張に沿
うものである。
しかしながら,原告らの陳述書の記載及び原告cの供述を裏付ける的
確な証拠は存在せず,かえって,上記アで認定した各事実に加え,前記
争いのない事実等(3)及び証拠(甲16,17,乙11,36,原告c
本人)によれば,①g本社は,平成20年初め頃,a社d支店に対し,
資本市場ソリューション部が設置当初に期待されたほどの実績を上げて
いないことについて苦言を呈しており,原告bは,同支店の人事評価書
において予算達成及び顧客基盤の拡大の項目で厳しい評価がされ,同支
店の副支店長から業務の改善を指示されていたこと,②原告らは,e社
から資金調達提案の依頼を受けて本件取引の提案を行ったものであり,
同社が急いで資金調達をする必要があったことからすれば,取引の条件
さえ整えば,同社との間で取引が成立する可能性は高かったこと,③資
本市場ソリューション部では,e社との間の本件取引に至るまで,東京
証券取引所一部上場企業の転換社債発行を取り扱ったことはなかったこ
と,④原告らは,資本市場ソリューション部の中心となる役割を果たし
ていて,平成20年の時点で原告bは年間約8900万円,原告cは年
間約7900万円の給与・賞与の支払を受けており,原告らの給与・賞
与は業績と一定程度連動していたこと,⑤本件取引においては,g本社
はe社株式を証券市場で売却した代金の約10パーセントを利益として
取得することができ,実際に,本件取引によってfグループは,約11
億8000万円の利益を得たことが認められ,これらの事実によれば,
e社に対して本件取引を提案した当時,原告らとしては,東京証券取引
所一部上場企業であったe社から資金調達提案の依頼を受け,同社との
間の本件取引を成立させて,fグループに利益を得させることによって,
資本市場ソリューション部の実績を上げ,ひいては自らの待遇を維持す
るなどしたいと考えていたものと推認するのが相当である。そして,後
記(イ)のとおり,本件スワップ契約が開示されることは,本件取引を成
立させる上での支障となるものであったことを考え合わせれば,原告ら
には本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかける動機が
あったものと認められるから,原告らが上記働きかけをしたとしても何
ら不自然ではないというべきである。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)また,原告らは,d支店トレーディング部からはヘッジ比率等の詳
細な条件の開示を希望しないという意向が示されていたが,本件スワッ
プ契約自体を開示することはそれほど問題ではなく,そのことはe社に
伝わっていた旨主張するところ,原告らの陳述書(甲20)の記載及び
原告cの供述は上記主張に沿うものである。
しかしながら,上記アで認定した各事実に加え,証拠(乙36)によ
れば,①e社が作成したプレスリリースの修正案においては,本件転換
社債の発行により調達した資金は,一旦預け金とし,その後,本件転換
社債の権利行使に連動してe社に資金が振り込まれることになるなどと
記載され,表現は不正確ながらも本件スワップ契約について開示するこ
ととする一方,本件スワップ契約におけるヘッジ比率については何ら記
載されていなかったにもかかわらず,原告らは,上記修正案について,
本件スワップ契約に関する記載を全て削除する再修正をしていること,
②原告らは,d支店顧問弁護士及びe社財務部長との間で行った電話で
の会話において,本件スワップ契約を開示してほしくないとは述べてい
るが,本件スワップ契約のヘッジ比率等の詳細な条件の開示だけは避け
たいという趣旨の発言はしていないこと,③原告cは,本件スワップ契
約が締結された後に,e社から本件スワップ契約を開示していないこと
に法的な問題がないのかを聞かれたため,d支店顧問弁護士と電話で会
話をしているところ,その会話においても,本件スワップ契約は開示し
てほしくないなどと述べつつ,本件スワップ契約のヘッジ比率等の詳細
な条件の開示だけは避けたいという趣旨の発言はしていないことがそれ
ぞれ認められる。また,前記争いのない事実等(9)イ及び証拠(乙17
の1,18の1,原告c本人)によれば,ヘッジ比率等の詳細な条件を
明らかにしなくとも,本件スワップ契約自体を開示することによって,
e社が実質的に300億円の資金調達をすることができていないことが
開示され,e社株式の株価下落を招き,ひいてはe社の資金調達が困難
となり,fグループの収益も減少するおそれがあったことが認められる。
これらの事実によれば,原告らとしては,e社との間で本件取引を成
立させるためには,本件スワップ契約が開示されない方が都合がよいと
考えていたものと推認されるから,ヘッジ比率等の詳細な条件さえ開示
しなければ本件スワップ契約を開示することには問題がなく,そのこと
をe社に対しても伝えていたとは到底認められず,むしろ,本件スワッ
プ契約自体を開示しないようe社に対して働きかけていたものと認める
のが相当である。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(ウ)さらに,原告らは,本件外部委員会報告書について,a社d支店の
各部門の責任者で構成される取引承認委員会において,d支店法務部長
及びd支店コンプライアンス部長から,本件スワップ契約の開示は必要
ないという意見が述べられて本件取引が承認されたにもかかわらず,原
告らが独断専行で本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働き
かけたという事実誤認をしているし,d支店トレーディング部が本件取
引に当たってインサイダー取引を行っていたという本件業務停止命令で
認定された事実を看過しており,本件外部委員会報告書は原告らをいわ
ゆるスケープゴートとするために利用されたものである旨主張する。
しかしながら,本件取引に関する取引承認委員会において,本件スワ
ップ契約の開示は必要ないという意見が述べられたことを示す証拠は,
原告らの陳述書(甲20)の記載及び原告cの供述しか存在しないとこ
ろ,a証券は,被告による照会に対し,上記委員会の議事録等に基づき,
上記委員会においては,e社の倒産及び債務不履行リスクについての議
論等が行われたが本件スワップ契約の開示の要否が議題となったことは
なく,d支店法務部長及びd支店コンプライアンス部長から本件スワッ
プ契約の開示は必要ないという意見が述べられたこともないと回答して
いること(乙35)からすれば,原告らの陳述書の記載及び原告cの供
述を直ちに信用することはできない。そうすると,本件取引に関する取
引承認委員会において,本件スワップ契約の開示は必要ないという意見
が述べられたという事実自体が認められないから,上記の点について本
件外部委員会報告書に事実誤認がある旨の原告らの主張は前提が欠ける
ものというほかない。
また,前記争いのない事実等(6)ウによれば,金融庁は,a社d支店
が本件外部委員会報告書を添付して提出した報告書について,その記載
内容に不足及び事実に反する記載があるなどとして,本件業務停止命令
をしたものの,本件業務停止命令は,a社d支店が本件スワップ契約を
開示しないようe社に対して働きかけた旨の本件業務改善命令における
認定を何ら変更するものではないことが認められる。そして,本件外部
委員会はa社と利害関係を有しない外部の弁護士等で構成されていたこ
と(乙35)からすれば,本件外部委員会報告書が,a社d支店がイン
サイダー取引を行っていたことを隠ぺいするなどの目的で,原告に不利
益な事実を殊更認定するなどしたものとも認め難い。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(エ)また,原告らは,a社が原告らの懲戒解雇を撤回したことは,原告
らが本件取引に関与する過程で不適切な行為を行ったものではないこと
を強く推認させるものである旨主張する。
確かに,前記争いのない事実等(8)によれば,a社は,原告らが本件
取引に関与する過程で従業員として不適切な行為を行っていたことを理
由に,原告らを懲戒解雇する旨の意思表示をしたが,上記懲戒解雇の意
思表示を撤回することなどを内容とする労働審判及びその後の訴訟手続
を経て,裁判外の和解において,上記懲戒解雇の意思表示を撤回したこ
とが認められる。
しかしながら,懲戒解雇が有効にされたというためには,懲戒解雇事
由に該当する事実が存在するだけでなく,当該懲戒解雇が,当該懲戒解
雇に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,社会通
念上相当であると認められること(労働契約法15条参照)が必要であ
り,懲戒解雇に関する労働審判や訴訟においては,懲戒解雇事由が存在
しても,懲戒解雇は重きに失するとして懲戒解雇が無効とされることも
少なくないことは当裁判所に顕著である。
そうすると,原告らに対する懲戒解雇の意思表示を撤回することなど
を内容とする労働審判がされ,その後,裁判外の和解において,a社が
上記意思表示を撤回したからといって,直ちに,労働審判委員会やa社
が原告らに懲戒解雇事由に該当する事実が存在しなかったと判断したと
はいえないことは明らかである。かえって,a証券は,被告による照会
に対し,a社が原告らと裁判外の和解をしたことは,原告らが本件スワ
ップ契約を開示しないようe社に対して働きかけた事実がないと認めた
ことが理由ではない旨回答していること(乙34,35)からすれば,
a社が原告らに対する懲戒解雇の意思表示を撤回したことをもって,原
告らが上記働きかけを行っていないと推認することは到底できないとい
わざるを得ない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
エ以上によれば,a社d支店の外務員として本件取引を取り扱うに当たっ
て,原告らは,本件スワップ契約を開示せざるを得ないと考えていたe社
に対し,本件スワップ契約を開示しないよう働きかけたものと認められる。
(2)次に,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きか
けた行為が「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金商法64条の
5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」(従
業員規則12条1項)に該当するか否かについて検討する。
アまず,原告らの行為が「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」及
び「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」に該当するか否かを
検討する前提として,e社が本件スワップ契約を開示しなかったことがど
のような意味を有するかについて検討する。
前記争いのない事実等(4)アのとおり,e社は,本件転換社債の発行に
当たって,改正前金商法24条の5第4項及び同法24条1項に基づき本
件臨時報告書等を関東財務局長に対して提出したが,本件臨時報告書等に
は,手取金の使途として「財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始
めとする債務の返済に使用する予定」又は「資金の返済」とのみ記載され,
本件転換社債の発行による払込金が本件スワップ契約における当初支払金
に充てられることはもちろんのこと,本件スワップ契約の存在そのものに
ついても何ら記載されていなかったものである。
しかし,前記争いのない事実等(3)イのとおり,本件取引においては,
本件転換社債の発行に併せて本件スワップ契約が締結されたことにより,
本件転換社債の発行による払込金がe社に対して直ちに全額支払われるこ
とはなく,e社が得られるのは本件スワップ契約に基づく変動支払金であ
り,その変動支払金もe社株式の市場価格によって変動し,その市場価格
が一定額を下回って推移した場合には,変動支払金が支払われないリスク
を内在するものとなった。そして,本件転換社債の発行によるe社が払込
金全額の支払を直ちに受ける場合と,本件スワップ契約に基づく変動支払
金の支払を受ける場合では,債務の返済という目的の達成時期に大きな相
違が生じることはもとより,変動支払金の額の不安定さやそれが支払われ
ないことになるリスクが内在するものとなったことはe社の財務評価や株
価等に大きな影響を生じさせるものであるから,本件転換社債の発行に併
せて締結された本件スワップ契約の存在及びその内容についての情報が,
株主,債権者及び投資家等の合理的な投融資,権利行使等の判断に際して
重要であったことは明らかである。
そうすると,このような重要な事実について誤解を生じさせないために
は,本件臨時報告書等において,少なくとも本件転換社債の発行による手
取金の全額を本件スワップ契約に基づく支払に充てること,及び本件スワ
ップ契約に基づく変動支払金を債務の返済に充てる予定であるが,変動支
払金の支払の時期と額は不確定であることを推察することができる程度ま
で本件スワップ契約の概要を記載する必要があったというべきである。
それにもかかわらず,本件臨時報告書等には,本件転換社債の手取金の
全額が直ちに債務の返済に充てられる予定であるかのような記載がされて
いたものであるから,本件臨時報告書等は「重要な事項につき虚偽の記載
がある」(改正前金商法172条の2第1項,同条第2項,197条1項
1号,197条の2第6号)ものに該当するものというべきである。
そして,金商法は,一般投資家が有価証券について合理的な投資判断を
することができるように,有価証券の発行者等に対して有価証券に関する
投資判断に必要な重要情報を開示することを義務付けており,その情報開
示の実効性を確保するために,「重要な事項につき虚偽の記載がある」有
価証券報告書又は臨時報告書を提出する行為について,課徴金納付命令の
対象となるだけでなく,刑事罰の対象ともなる違法行為としているところ
(改正前金商法172条の2第1項,第2項,197条1項1号,197
条の2第6号),e社が本件スワップ契約について何ら記載されていない
本件臨時報告書等を提出した行為は,上記のような違法行為に該当するも
のである。なお,前記争いのない事実等(4)ウのとおり,e社は,本件臨
時報告書等を提出したことを理由に,金融庁から本件課徴金納付命令を受
けている。
イ上記アを踏まえて原告らの行為について検討するに,そもそも外務員は,
金融商品取引業者等の行う業務の多くをその職務とする者であり,その職
務について,所属する金融商品取引業者等に代わって一切の裁判外の行為
を行う権限を有する(金商法64条1項,同法64条の3第1項)ため,
外務員の職務を遂行するに当たっては,金融商品取引業者等に課されてい
る誠実公正義務(同法36条1項),断定的判断の提供その他の禁止(同
法38条),損失補てん等の禁止(同法39条1項),適合性の原則(同
法40条)等の義務を遵守しなければならないところ,損失補てん等が禁
止されていることからも明らかなとおり,金融商品取引業者等及びその外
務員は,単に顧客の利益になるように行動すれば足りるわけでなく,国民
経済の健全な発展及び投資者の保護(同法1条参照)に資するように行動
する責務を有しているというべきである。
それにもかかわらず,上記(1)で述べたとおり,原告らは,顧客である
e社が本件取引について本件臨時報告書等を提出するに当たり,本件スワ
ップ契約を開示しないようe社に対して働きかけたものであるから,この
ような原告らの行為は,e社に対して「重要な事項につき虚偽の記載があ
る」本件臨時報告書等を提出するという違法行為を行うよう働きかけたも
のと評価すべきものであって,上記のような外務員の責務に照らして著し
く不適当なものであることは明らかである。
また,金商法が有価証券の発行に関する情報開示を義務付けている趣旨
にもかんがみると,e社が「重要な事項につき虚偽の記載がある」本件臨
時報告書等を提出した行為は一般投資家の合理的な投資判断を誤らせるお
それを有するものであって,金融商品取引業者の外務員である原告らにお
いて,上記のような行為を行うようe社に対して働きかけた行為は,金融
商品取引業者及びその外務員,ひいては証券市場全体に対する一般投資家
の信頼を損なうものであるとともに,「金融商品等の公正な価格形成等を
図り,もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資する」という金
商法の目的(同法1条参照)を損なうものであったということができる。
そして,上記(1)で述べたとおり,e社は,原告らからの働きかけを一
因として,本件スワップ契約を開示しないことに方針転換し,本件スワッ
プ契約を開示しない内容の本件臨時報告書等を提出したものであるから,
原告らの働きかけに起因して,一般投資家が合理的な投資判断を誤り,そ
の利益が不当に害されるなど証券市場に重大な悪影響が生じた可能性も否
定することができない。
以上によれば,金商法に基づく外務員登録取消制度が,外務員として不
適格な者を排除することにより,金融商品取引業者に対する信頼の確保と
取引の公正を図り,もって投資者の保護に資することを目的とするもので
あり,また,被告の従業員規則が,金融商品取引業の公共性及びその社会
的使命の重要性にかんがみ,協会員の従業員の服務基準等を定めるなどし,
もって投資者の保護に資することを目的とするものである(同規則1条)
ことにもかんがみれば,a社d支店の外務員として本件取引を取り扱って
いた原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけた
行為は,「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金商法64条の
5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜させるもの」
(従業員規則12条1項)に該当することは明らかというべきである。
ウ(ア)これに対し,原告らは,外務員登録取消処分を行うためには,法令
上の義務又はこれに準ずる程度の具体的かつ明確な義務の違反,具体的
には,被告の従業員規則や外務員規則等に違反する行為がされたことが
必要である旨主張する。
しかしながら,金商法64条の5第1項2号は,監督上の処分を行う
事由として,「金融商品取引業(・・・(略)・・・)のうち第64条第1項
各号に掲げる行為を行う業務又はこれに付随する業務に関し法令に違反
したとき,その他外務員の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認
められるとき」と規定しているから,その文言上,「外務員の職務に関
して著しく不適当な行為」は,外務員登録事務を委任されている被告の
内部規則において明文で規定された外務員の義務に違反する行為に限ら
れるものではないことは明らかであり,金商法の目的(同法1条)や同
法に基づく外務員登録制度等の諸規制の趣旨・目的等に照らし,不正又
は著しく不当な行為であってその情状が特に重いものも含むものと解す
るべきである(金商法52条1項9号参照)。
そして,上記イで述べたところによれば,原告らの行為は,法令又は
被告の内部規則に明文で規定された外務員の義務に違反するものでなく
とも,金商法の目的(同法1条)や同法に基づく外務員登録制度等の諸
規制の趣旨・目的等に照らし,不正又は著しく不当な行為であってその
情状が特に重いものに該当することは明らかであるから,原告らの上記
主張は採用することができない。
(イ)また,原告らは,不都合行為者決定を行うためには,従業員規則に
列挙された禁止行為や不適切行為,法令上の義務又はこれに準ずる程度
の具体的かつ明確な義務の違反が認められることが必要である旨主張す
る。
しかしながら,従業員規則9条1項は,従業員又は従業員であった者
が,同規則7条3項各号に規定する禁止行為,同規則8条に規定する不
適切行為,又は外務員規則5条に規定する資格外行為を行ったことに加
え,「従業員として遵守すべき法令等に違反する行為」を行ったことを
「事故」として規定し,従業員規則12条1項は,協会員から提出され
た上記「事故」に関する事故顛末報告書を審査し,当該従業員の行為が
金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものと認めたときは,当該従
業員を不都合行為者とする旨規定しているから,「法令等」に違反する
行為を行った者は不都合行為者として取り扱われることがあり得るもの
である。そうすると,従業員規則が,「法令」ではなく「法令等」と規
定していることからすれば,「金融商品取引業の信用を著しく失墜させ
る」行為は,法令又は被告の内部規則において明文で規定された外務員
の義務に違反する行為に限られるものではないことは明らかであり,金
商法の目的(同法1条),同法に基づく外務員登録制度等の諸規制の趣
旨・目的,従業員規則の目的(同規則1条)等に照らし,不正又は著し
く不当な行為であってその情状が特に重いものも含むものと解するべき
である。
そして,上記イで述べたところによれば,原告らの行為は,法令又は
被告の内部規則に明文で規定された外務員の義務に違反するものでなく
とも,金商法の目的(同法1条),同法に基づく外務員登録制度等の諸
規制の趣旨・目的,従業員規則の目的(同規則1条)等に照らし,不正
又は著しく不当な行為であってその情状が特に重いものに該当すること
は明らかであるから,原告らの上記主張は採用することができない。
エまた,原告らは,本件取引当時,d支店コンプライアンス部長やd支店
顧問弁護士の意見に基づき,本件スワップ契約を開示する必要があるとは
考えていなかったから,原告らの行為は「外務員の職務に関して著しく不
適当な行為」(金商法64条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信
用を著しく失墜させるもの」(従業員規則12条1項)には該当しない旨
主張する。
確かに,証拠(甲20,乙36,原告c本人)によれば,原告らは,本
件スワップ契約の開示の必要性についてd支店顧問弁護士に確認し,同弁
護士からは本件スワップ契約を開示する必要はない旨の意見を得ており,
本件取引当時,金商法上本件スワップ契約を開示する必要はないと考えて
いたことが認められる。なお,原告らがd支店コンプライアンス部長から
本件スワップ契約を開示する必要はない旨の意見を得ていたことを認める
に足りる的確な証拠は存在しない。
しかしながら,上記(1)アで認定した各事実によれば,原告らは,e社
から,本件スワップ契約を開示せざるを得ないのではないかと考えている
ことを聞いていたほか,自らも本件スワップ契約の開示の必要性について
疑義があり得るためd支店顧問弁護士に対して意見を求めたのであり,ま
た,本件スワップ契約の開示の必要性について何らかの公的見解が示され
ていたわけでもない以上,同弁護士が本件スワップ契約の開示は必要ない
旨の意見を述べていたからといって,上記イで述べたような責務を有する
外務員であった原告らが,本件スワップ契約を開示してほしくないという
自らの意向を実現するため,上記意見を安易に採用し,本件スワップ契約
を開示せざるを得ないと考えていたe社に対して,あえてこれを開示しな
いよう働きかけたことが何ら正当化されるものではないことは明らかであ
る。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
オ以上によれば,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対し
て働きかけた行為は,「外務員の職務に関して著しく不適当な行為」(金
商法64条の5第1項2号)及び「金融商品取引業の信用を著しく失墜さ
せるもの」(従業員規則12条1項)に該当するものというべきである。
(3)原告らは,原告らが本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働
きかけた事実が存在したとしても,本件登録取消処分は重きに失するものと
して社会通念上妥当性を欠くなどと主張する。
ア(ア)ここで,金商法64条の5第1項は,「内閣総理大臣は,登録を受
けている外務員が次の各号のいずれかに該当する場合においては,その
登録を取り消し,又は2年以内の期間を定めてその職務の停止を命ずる
ことができる」と規定しているところ,このような規定の文言に加え,
外務員登録取消制度が外務員として不適格な者を排除することにより,
金融商品取引業者に対する信頼と取引の公正を図り,もって投資者の保
護に資することを目的とするものであって,同項各号の規定に該当する
場合に外務員登録取消処分又は外務員職務停止命令をするか否かについ
ては,外務員が行った行為の種類,性質,内容,違法性の程度,動機,
目的,証券市場に対する影響等諸般の事情を考慮して判断すべきもので
あることに照らすと,外務員登録取消処分又は外務員職務停止命令をす
るか否か,どのような処分を選択するかについては,内閣総理大臣又は
内閣総理大臣から事務の委任を受けた認可金融商品取引業協会の合理的
な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。
(イ)そうすると,金商法64条の5第1項各号の規定に該当する事由が
ある場合に,内閣総理大臣又は内閣総理大臣から事務の委任を受けた認
可金融商品取引業協会が行った外務員登録取消処分又は外務員職務停止
命令については,その判断が社会通念に照らし著しく相当性を欠くもの
と認められる場合に限って,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した
ものとして違法となると解するべきである。
(ウ)そこで,本件登録取消処分が社会通念に照らし著しく相当性を欠く
ものと認められるか否かについて検討する。
上記(2)で述べたとおり,原告らが行った行為は,顧客であるe社に
対し,金商法に違反する違法行為を行うよう働きかけたものであって,
金融商品取引業者及びその外務員,ひいては証券市場全体に対する一般
投資家の信頼を損なうとともに,「金融商品等の公正な価格形成等を図
り,もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資する」という金
商法の目的を損なうものであり,その行為は強い非難に値するものとい
うべきである。また,前記争いのない事実等(4),(6),(7)及び証拠
(乙36)によれば,原告らの働きかけを一因として,e社が本件スワ
ップ契約を開示しなかったことにより,e社は本件課徴金納付命令を受
け,e社の役員らは投資家から損害賠償請求訴訟を提起されていること,
原告らが所属していたa社も本件業務改善命令や被告による過怠金の賦
課等を受けたことが認められ,原告らが行った行為が及ぼした影響も重
大なものであったということができる。そして,上記(1)ウ(ア)で述べ
たとおり,原告らは,a社d支店,ひいては自らの利益を図るために,
本件スワップ契約を開示しないようe社に対して働きかけたものであり,
その動機や目的についてしんしゃくすべき点があるとはいえない。
そうすると,原告らは,d支店顧問弁護士から本件スワップ契約の開
示の必要性はない旨の意見を得ていたことや原告らの行為について過去
に監督上の処分がされたことはないことを考慮したとしても,本件登録
取消処分が重きに失するものとして社会通念上著しく相当性を欠くもの
とは認められない。
したがって,被告が原告らに対して本件登録取消処分を行ったことに
ついて,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であ
るということはできない。
イ一方,従業員規則12条1項は,「本協会は,前条の規定により事故顛
末報告書を審査した結果,当該従業員が退職し又は当該協会員より解雇に
相当する社内処分を受けた者で,かつ,その行為が金融商品取引業の信用
を著しく失墜させるものと認めたときは,これを不都合行為者」とする旨
規定しており,被告の協会員の従業員が行った行為が金融商品取引業の信
用を著しく失墜させるものと認めた場合に,当該従業員を不都合行為者と
して取り扱うか否かについて,被告の裁量を認めていないものと解される。
そして,前記争いのない事実等(8)によれば,本件不都合行為者決定が
された当時,原告らは,被告の協会員であるa社を退職していたものであ
り,また,上記(2)で述べたとおり,原告らが行った行為は「金融商品取
引業の信用を著しく失墜させるもの」に該当するものと認められるから,
従業員規則12条1項に基づき原告らを不都合行為者として取り扱う旨決
定した本件不都合行為者決定は有効なものというべきである。
3争点(3)(本件登録取消処分及び本件不都合行為者決定の手続上の適法性及
び有効性)について
(1)本件登録取消処分について
ア原告らは,本件登録取消処分に当たり,外務員登録取消しの対象となる
原告らに対して聴聞の手続がされるべきであったから,本件登録取消処分
には手続上の違法がある旨主張する。
イしかしながら,上記1(2)アで述べたとおり,金商法64条の5第1項
に基づく外務員登録取消処分の名あて人は,登録取消しの対象となる外務
員の所属する金融商品取引業者等であるから,同条2項に基づく聴聞の手
続についても,金融商品取引業者等に対して行われるべきものであって,
登録取消しの対象となる外務員に対して聴聞の手続を行う必要はないもの
と解するべきである。そうすると,本件登録取消処分については,名あて
人となるa社に対して聴聞の手続を行うべきところ,前記争いのない事実
等(9)ウのとおり,被告は,a社に対して聴聞の手続を行っていることが
認められるから,本件登録取消処分に手続上の違法があるということはで
きない。
また,行政手続法13条1項は,不利益処分をしようとする場合の手続
として聴聞等の手続を規定しているが,同項は,不利益処分の名あて人と
なるべき者に対して聴聞等の手続を行うこととしており,行政手続法上,
不利益処分の名あて人となるべき者以外については,同法28条1項に規
定する例外的な場合を除き,聴聞の手続を行うことは必要ではないという
べきである。そして,上記のとおり,本件登録取消処分の名あて人はa社
であって原告らではないから,原告らについて,行政手続法13条1項に
基づき,聴聞の手続を行う必要があったともいえない。
ウしたがって,本件登録取消処分を行うに当たり原告らに対する聴聞の手
続がされなかったことについて,手続上の違法性があるとはいえず,本件
登録取消処分は手続上も適法にされたものというべきである。
(2)本件不都合行為者決定について
ア原告らは,本件不都合行為者決定に不都合行為者決定の対象となる原告
らに対して弁明の手続がされるべきであったから,本件不都合行為者決定
には手続上の瑕疵がある旨主張する。
イしかしながら,不都合行為者決定は,従業員規則12条1項に基づいて
行われるものであり,被告を構成する協会員に対してのみ効力を有する内
部的な自主規制上の措置にすぎず,法令上の根拠を有するものではないか
ら,どのような手続で不都合行為者決定を行うかについては,被告におい
て自律的に定めるべきものであって,法令に基づき一定の手続が当然に要
求されるものではないというべきである。そうすると,被告があらかじめ
自主的に定めた手続にのっとって不都合行為者決定を行えば,それが手続
上の瑕疵を生じさせ同決定が無効となることにはならないというべきであ
る。
そして,前記争いのない事実等(2)によれば,本件不都合行為者決定が
された当時の従業員規則においては,不都合行為者決定の対象となる従業
員に対する弁明の手続は何ら規定されていなかったことが認められるから,
被告が本件不都合行為者決定を行うに当たり,原告らに対する弁明の手続
を行わなかったからといって,同決定が無効であるということにはならな
い。なお,原告らは,従業員規則が平成22年5月18日に改正され,不
都合行為者決定の対象となる従業員に対する弁明の手続が規定されたこと
を指摘するが,上記改正は本件不都合行為者決定の後にされたものである
から,本件不都合行為者決定の手続上の有効性に影響を及ぼすものとはい
えない。
ウしたがって,本件不都合行為者決定を行うに当たり原告らに対する弁明
の手続がされなかったことについて,手続上の瑕疵があるとはいえず,本
件不都合行為者決定は手続上も有効にされたものというべきである。
4争点(4)(原告らの損害賠償請求権の有無)について
上記2及び3で述べたところによれば,原告らを不都合行為者と取り扱うこ
ととした本件不都合行為者決定は実体上も手続上も有効であるから,被告が本
件不都合行為者決定をしたことについて不法行為上の違法性があるとはいえな
い。
したがって,被告の故意過失の有無や原告らの損害額等について判断するま
でもなく,原告らが被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有すると
は認められない。
第4結論
以上によれば,本件登録取消処分は実体上も手続上も適法なものというべき
であるから,本件登録取消処分の取消しを求める原告らの請求はいずれも理由
がない。また,本件不都合行為者決定は実体上も手続上も有効なものというべ
きであるから,原告らが不都合行為者でないことの確認及び不法行為に基づく
損害賠償を求める原告らの請求についても,いずれも理由がないというべきで
ある。
よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,
訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項
本文を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官定塚誠
裁判官竹林俊憲
裁判官馬場俊宏
別紙1
関係法令の定め
第1金商法
11条(目的)
この法律は,企業内容等の開示の制度を整備するとともに,金融商品取引業
を行う者に関し必要な事項を定め,金融商品取引所の適切な運営を確保するこ
と等により,有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし,有価証券の
流通を円滑にするほか,資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正
な価格形成等を図り,もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資する
ことを目的とする。
22条(定義)
(1)8項
この法律において「金融商品取引業」とは,次に掲げる行為(・・・
(略)・・・)のいずれかを業として行うことをいう。
一から八まで・・・(略)・・・
九有価証券の募集若しくは売出しの取扱い・・・(略)・・・
十以下・・・(略)・・・
(2)9項
この法律において「金融商品取引業者」とは,第29条の規定により内閣
総理大臣の登録を受けた者をいう。
329条(登録)
金融商品取引業は,内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ,行うことが
できない。
452条(金融商品取引業者に対する監督上の処分)1項
内閣総理大臣は,金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合に
おいては,当該金融商品取引業者の第29条の登録を取り消し,第30条第1
項の認可を取り消し,又は6月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の
停止を命ずることができる。
一から八まで・・・(略)・・・
九金融商品取引業に関し,不正又は著しく不当な行為をした場合において,
その情状が特に重いとき。
十以下・・・(略)・・・
564条(外務員の登録)
(1)1項
金融商品取引業者等は,勧誘員,販売員,外交員その他いかなる名称を有
する者であるかを問わず,その役員又は使用人のうち,その金融商品取引業
者等のために次に掲げる行為を行う者(以下「外務員」という。)の氏名,
生年月日その他内閣府令で定める事項につき,内閣府令で定める場所に備え
る外務員登録原簿(・・・(略)・・・)に登録を受けなければならない。
一有価証券(・・・(略)・・・)に係る次に掲げる行為
イ第2条第8項第1号から第3号まで,第5号,第8号及び第9号に掲
げる行為
ロ・・・(略)・・・
二以下・・・(略)・・・
(2)2項
金融商品取引業者等は,前項の規定により当該金融商品取引業者等が登録
を受けた者以外の者に外務員の職務(同項各号に掲げる行為をいう。以下同
じ。)を行わせてはならない。
(3)3項
第1項の規定により登録を受けようとする金融商品取引業者等は,次に掲
げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一登録申請者の商号,名称又は氏名
二登録申請者が法人であるときは,その代表者の氏名
三登録の申請に係る外務員についての次に掲げる事項
イ氏名及び生年月日
ロ役員又は使用人の別
ハ外務員の職務を行つたことの有無並びに外務員の職務を行ったことの
ある者については,その所属していた金融商品取引業者等又は金融商品
仲介業者の商号,名称又は氏名及びその行った期間
ニ金融商品仲介業を行ったことの有無及び金融商品仲介業を行ったこと
のある者については,その行った期間
四その他内閣府令で定める事項
664条の2(登録の拒否)第1項
内閣総理大臣は,登録の申請に係る外務員が次の各号のいずれかに該当する
とき・・・(略)・・・は,その登録を拒否しなければならない。
一第29条の4第1項第2号イからトまでに掲げる者
二第64条の5第1項の規定により外務員の登録を取り消され,その取消し
の日から5年を経過しない者
三登録申請者以外の金融商品取引業者等又は金融商品仲介業者に所属する外
務員として登録されている者
四第66条の規定により登録されている者
764条の3(外務員の権限)1項
外務員は,その所属する金融商品取引業者等に代わって,第64条第1項各
号に掲げる行為に関し,一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす。
864条の5(外務員に対する監督上の処分)
(1)1項
内閣総理大臣は,登録を受けている外務員が次の各号のいずれかに該当す
る場合においては,その登録を取り消し,又は2年以内の期間を定めてその
職務の停止を命ずることができる。
一第29条の4第1項第2号イからトまでのいずれかに該当することとな
ったとき,又は登録の当時既に第64条の2第1項各号のいずれかに該当
していたことが判明したとき。
二金融商品取引業(・・・(略)・・・)のうち第64条第1項各号に掲げる行
為を行う業務又はこれに付随する業務に関し法令に違反したとき,その他
外務員の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認められるとき。
三過去5年間に次条第3号の規定により登録を抹消された場合において,
当該登録を受けていた間の行為(当該過去5年間の行為に限る。)が前号
に該当していたことが判明したとき。
(2)2項
内閣総理大臣は,前項の規定に基づいて処分をしようとするときは,行政
手続法第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわら
ず,聴聞を行わなければならない。
(3)3項
内閣総理大臣は,第1項の規定に基づいて処分をすることとしたときは,
書面により,その旨を登録申請者に通知しなければならない。
964条の7(登録事務の委任)1項
内閣総理大臣は,内閣府令で定めるところにより,協会(認可金融商品取引
業協会・・・(略)・・・をいう。以下この節において同じ。)に,第64条,第6
4条の2及び前3条に規定する登録に関する事務(以下この条及び第64条の
9において「登録事務」という。)であって当該協会に所属する金融商品取引
業者等の外務員に係るものを行わせることができる。
1064条の9(登録事務についての審査請求)
・・・(略)・・・第64条の7第1項の規定により登録事務を行う協会の第64
条の5第1項の規定による処分について不服がある金融商品取引業者等は,内
閣総理大臣に対し,行政不服審査法(・・・(略)・・・)による審査請求をするこ
とができる。
第2平成20年法律第65号による改正前の金商法(以下「改正前金商法」とい
う。)
124条(有価証券報告書の提出)1項柱書
有価証券の発行者である会社は,その会社が発行者である有価証券(・・・
(略)・・・)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には,内閣府令
で定めるところにより,事業年度ごとに,当該会社の商号,当該会社の属する
企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その
他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事
項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を,当該事業年度経
過後3月以内(・・・(略)・・・)に,内閣総理大臣に提出しなければならな
い。・・・(略)・・・
224条の5(半期報告書及び臨時報告書の提出)4項
第24条第1項(・・・(略)・・・)の規定による有価証券報告書を提出しなけ
ればならない会社は,その会社が発行者である有価証券の募集又は売出しが外
国において行われるとき,その他公益又は投資者保護のため必要かつ適当なも
のとして内閣府令で定める場合に該当することとなったときは,内閣府令で定
めるところにより,その内容を記載した報告書(以下「臨時報告書」とい
う。)を,遅滞なく,内閣総理大臣に提出しなければならない。
3172条の2(虚偽記載のある有価証券報告書等を提出した発行者に対する
課徴金納付命令)
(1)1項柱書
発行者が,重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書等(・・・
(略)・・・)を提出したときは,内閣総理大臣は,次節に定める手続に従い,
当該発行者に対し,第1号に掲げる額(・・・(略)・・・)に相当する額の課徴
金を国庫に納付することを命じなければならない。・・・(略)・・・
(2)2項
発行者が,重要な事項につき虚偽の記載がある四半期・半期・臨時報告書
等(・・・(略)・・・)を提出したときは,内閣総理大臣は,次節に定める手続
に従い,当該発行者に対し,前項第1号に掲げる額(・・・(略)・・・)の2分
の1に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならな
い。・・・(略)・・・
4197条1項
次の各号のいずれかに該当する者は,10年以下の懲役若しくは1000万
円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一・・・(略)・・・第24条第1項・・・(略)・・・の規定による有価証券報告
書・・・(略)・・・であって,重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出し
た者
二以下・・・(略)・・・
5197条の2
次の各号のいずれかに該当する者は,5年以下の懲役若しくは500万円以
下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一から五まで・・・(略)・・・
六・・・(略)・・・第24条の5第4項・・・(略)・・・の規定による・・・(略)・・・
臨時報告書・・・(略)・・・であって,重要な事項につき虚偽の記載のあるもの
を提出した者
別紙2
被告の内部規則の定め
第1協会員の従業員に関する規則(平成22年5月18日に改正される前のもの。
以下「従業員規則」という。)
11条(目的)
この規則は,金融商品取引業の公共性及びその社会的使命の重要性にかんが
み,協会員の従業員について,その服務基準等を定めるとともに,従業員に対
する協会員の監督責任を明らかにし,もって投資者の保護に資することを目的
とする。
25条(採用の禁止)2項
会員は,第12条第1項の規定により本協会が不都合行為者として決定した
ものについては,その者が不都合行為者の決定を受けた日から5年間は,いか
なる名称を用いているかを問わず,これを採用してはならない。・・・(略)・・・
37条(禁止行為)3項
協会員は,その従業員が金商法及び関係法令において金融商品取引業者の使
用人の禁止行為として規定されている行為(・・・(略)・・・)のほか,次の各号
に掲げる行為を行うことのないようにしなければならない。
1号有価証券の売買その他の取引(・・・(略)・・・),有価証券関連デリバテ
ィブ取引(・・・(略)・・・)又は特定店頭デリバティブ取引(・・・
(略)・・・)につき,当該有価証券,有価証券関連デリバティブ取引又は
特定店頭デリバティブ取引(・・・(略)・・・)について顧客(・・・
(略)・・・)に損失が生ずることとなり,又はあらかじめ定めた額の利益
が生じないこととなった場合には自己又は第三者がその全部又は一部を補
填し,又は補足するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨
を,当該顧客又はその指定した者に対し,申し込み,若しくは約束し,又
は第三者に申し込ませ,若しくは約束させること。
2号から26号まで・・・(略)・・・
48条(不適切行為)
協会員は,その従業員が次の各号に掲げる行為(以下「不適切行為」とい
う。)を行うことのないように指導及び監督しなければならない。
1号有価証券の売買その他の取引等において,銘柄,価格,数量,指値又は
成行の区別等顧客の注文(・・・(略)・・・)内容について確認を行わないま
ま注文を執行すること。
2号から4号まで・・・(略)・・・
59条(事故連絡)1項
協会員は,その従業員又は従業員であった者に第7条第3項各号及び「協会
員の外務員の資格,登録等に関する規則」(以下「外務員規則」という。)第
5条に規定する行為又は従業員として遵守すべき法令等に違反する行為若しく
は前条に規定する不適切行為(以下「事故」という。)のあったことが判明し
た場合は,前条に規定する不適切行為が過失による場合を除き,直ちにその内
容を記載した所定の様式による事故連絡書を本協会に提出しなければならない。
610条(事故顛末報告)1項
協会員は,前条に規定する事故(・・・(略)・・・)の詳細が判明したときは,
当該従業員について当該事故の内容等に応じた適正な処分を行い,遅滞なく,
その顛末を記載した所定の様式による事故顛末報告書を本協会に提出しなけれ
ばならない。
712条(不都合行為者処分)
(1)1項
本協会は,前条の規定により事故顛末報告書を審査した結果,当該従業員
が退職し又は当該協会員より解雇に相当する社内処分を受けた者で,かつ,
その行為が金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものと認めたときは,
これを不都合行為者とし,外務員規則に規定する外務員資格並びに「協会員
の内部管理責任者等に関する規則」に規定する営業責任者資格及び内部管理
責任者資格を取り消す。
(2)2項
本協会は,前項の規定により従業員又は従業員であった者を不都合行為者
としたときは,遅滞なく,その旨を当該協会員に通知する。
第2協会員の従業員に関する規則(平成22年5月18日に改正された後のもの。
以下「改正従業員規則」という。)
112条(不都合行為者の取扱い)
(1)1項
本協会は,前条の規定により事故顛末報告書を審査した結果,当該従業員
等が退職し又は当該協会員より解雇に相当する社内処分を受けた者で,かつ,
その行為が金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものと認めたときは,
決定により,当該従業員等を不都合行為者として取り扱うこととし,外務員
規則に規定する外務員資格並びに内部管理責任者規則に規定する営業責任者
資格及び内部管理責任者資格を取り消す。このうち,金融商品取引業の信用
への影響が特に著しい行為を行ったと認められる者を一級不都合行為者とし
て,その他の者を二級不都合行為者として,それぞれ取り扱う。
(2)2項
前項の規定による不都合行為者としての取扱いは,前項の決定の日をもっ
て開始する。
213条(弁明の手続)
(1)1項
本協会は,従業員等を不都合行為者として取り扱おうとするときは,弁明
の手続を行うものとする。
(2)2項
本協会は,前項に規定する弁明の手続を行う場合は,その旨を当該弁明の
手続に係る従業員等及び当該従業員等の不都合行為者としての取扱いの原因
となる事故に関して第10条に規定する事故顛末報告書を提出した協会員
(以下「提出協会員」という。)に通知する。
313条の2(不都合行為者決定通知)
本協会は,前条第1項の手続に係る従業員等を不都合行為者として取り扱う
ことを決定した場合又は取り扱わないことを決定した場合は,遅滞なく,その
旨を当該従業員等及び提出協会員(・・・(略)・・・)に通知する。
415条の2(細則への委任)
第13条から前条までの手続について,必要な事項は,細則で定める。
5付則
(1)1項
この改正は,平成22年7月1日(以下「施行日」という。)から施行す
る。
(2)3項
改正後の一級不都合行為者に係る規定は,施行日以後の事故について適用
する。
(3)4項
改正前の第12条第1項の規定により不都合行為者とされた者は,本協会
がその者につき当該取扱いを決定した日において,改正後の第12条第1項
の規定により二級不都合行為者として取り扱うことが決定されたものとみな
す。
第3協会員の外務員の資格,登録等に関する規則(以下「外務員規則」とい
う。)
14条(外務員資格)
協会員は,その役員又は従業員のうち,次の各号に掲げる要件を具備した者
でなければ,外務員の登録を受けることができない。
(1)一種外務員「外務員等資格試験に関する規則」(以下「試験規則」と
いう。)による一種外務員資格試験の合格者
(2)から(6)まで・・・(略)・・・
25条(資格外の外務員の職務の禁止)
協会員は,その役員又は従業員のうち,第4条各号に掲げる要件を具備した
者でなければ,第2条第2号から第7号までに規定する外務員の職務を行わせ
てはならない。
第4「協会員の従業員に関する規則」第4章に規定する不都合行為者の取扱いに
係る手続に関する細則(平成22年5月18日に制定されたもの。以下「不都
合行為者取扱手続細則」という。)
13条(弁明通知書)1項
規則第13条第2項の通知は,次に掲げる事項を記載した書面(以下「弁明
通知書」という。)により行う。
(1)不都合行為者として取り扱おうとする従業員等の氏名
(2)予定される不都合行為者決定の内容及び根拠となる規則の条項
(3)予定される不都合行為者決定の原因となる事実
(4)弁明の手続に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
24条(弁明書等の提出)1項
前条の弁明通知書を受領した当事者は,当該弁明通知書が到達した日から1
4日以内に,次に掲げる事項を記載した書面(以下「弁明書」という。)を本
協会に提出しなければならない。
(1)前条第1項第2号及び第3号に掲げる事項に対する認否
(2)前条第1項第2号及び第3号に掲げる事項に対する主張
35条(弁明の期日)1項
本協会は,前条第3項の規定により当事者のいずれかから弁明の期日の開催
を求められた場合,弁明の期日を決定し,弁明の期日及び場所を記載した書面
を当事者に通知する。
48条(文書等の閲覧)1項
当事者は,弁明の手続が終結する時までの間,本協会に対し,当該弁明の手
続に係る事案に関する規則第10条第1項に規定する事故顛末報告書及びその
添付書類並びに規則第11条第2項に規定する証拠書類等の閲覧を求めること
ができる。この場合において,本協会は,第三者の利益を害するおそれがある
ときその他正当な理由があるときを除き,その閲覧を拒むことができない。
510条(弁明の期日における審理の方式)
(1)1項
主宰者は,最初の弁明の期日の冒頭において,本協会の職員に,予定され
る不都合行為者決定の内容及び根拠となる規則の条項並びにその原因となる
事実を弁明の期日に出席した者に対し説明させるものとする。
(2)2項
当事者は,弁明の期日に出席して,意見を述べ,及び証拠書類等を提出し,並び
に主宰者の許可を得て本協会の職員(・・・(略)・・・)に対し質問を発することが
できる。
別紙5
業務改善命令等の内容
第1平成20年11月28日の業務改善命令
1金融庁が認定した事実
○不適切な業務運営を看過するなど,経営管理態勢・内部管理態勢に重大な
欠陥があると認められる状況
(1)平成20年6月,当支店(注:a社d支店。以下同じ。)資本市場ソ
リューション部(以下「CMS部」という。)は,顧客からの求めに応じ,
以下の方法による資金調達の提案を行った。
ア当該顧客が,fグループのg本社(以下「g本社」という。)を割当
先として,転換社債型新株予約権付社債(以下「CB」という。)を発
行する。
イ当該顧客は,g本社との間で締結するスワップ契約に基づき,当該C
Bの発行による手取金に相当する額をg本社に支払い,当該顧客の発行
する株式の株価等に影響されるため不確定な時期に,当該株価等によっ
て変動する額を,g本社から受領する。
(2)当該顧客が当該資金調達に関して法定開示書類を提出するに当たって
は,上記(1)アのCB発行による調達額の全額が直ちに当該顧客の債務の
返済に充当できるわけではないことを投資家が自ら推察し,投資判断をす
ることができる程度まで,上記(1)イのスワップ契約の内容を引用して記
載すべきであり,当支店は,当該顧客に対し,そうした適切な情報開示を
行うよう助言を行うべき立場にあった。
しかしながら,CMS部の営業担当者はグループ全体としての利益確保
を優先させ,当該顧客に対し,当該スワップ契約に関する情報を開示しな
いよう要請した。その際,当該CBの引受審査担当者も同じCMS部に在
籍していたこと等により,当該営業担当者への内部牽制は全く機能しなか
った。
(3)当支店の経営陣や内部管理部門は,利益相反等の問題を適切に管理す
る観点から,上記(2)のようなCMS部の不適切な業務運営を指導・監督
する立場にあった。
しかしながら,当支店においては,営業部門の独断専行のおそれを防止
するための経営管理態勢が欠如していたことに加え,コンプライアンス部
等内部管理部門による十分な牽制機能が果たされていなかった。さらに,
顧客保護・投資家保護に係る問題意識が欠如していたことから,当該資金
調達案件の実行に関する最終的な意思決定機関においても,当該スワップ
契約に関する情報の開示といった重要な点について十分な議論が行われな
かった。
(4)当該顧客が平成20年6月26日及び6月30日に提出した法定開示
書類では,上記(1)イのスワップ契約に関する情報は記載されなかった。
こうした中,当支店は,6月27日以降,g本社による当該スワップ契約
の履行過程の一部として,機械的に当該顧客の発行する株式の取引を行っ
た。当支店の経営陣や内部管理部門は,法令等遵守の観点から,当該取引
の適切性についても検討すべき立場にあったが,当時はその認識が不十分
であった。
上記のように,当支店においては,証券市場の公正性確保の観点が欠如
し,顧客及び一般投資家を軽視する極めて不適切な業務運営が行われてい
る。証券市場の信頼性を著しく損ないかねないこのような問題を放置した
当支店の経営管理態勢及び内部管理態勢には重大な欠陥が認められ,こう
した状況は,法(注:金商法。以下同じ。)第51条の規定による業務の
運営の状況の改善に必要な措置をとることを命ずることができる場合の要
件となる「業務の運営の状況に関し,公益又は投資者保護のため必要かつ
適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
また,上記(4)の取引は,法第38条第6号に基づく金融商品取引業等
に関する内閣府令第117条第1項第16号に規定する「法人関係情報に
基づいて,自己の計算において当該法人関係情報に係る有価証券の売買そ
の他の取引等をする行為」に該当するものと認められる。
2業務改善命令の内容
(1)今回の問題に関する責任の所在を明確化すること。
(2)今回の問題を受けた再発防止策を策定し,実施すること。特に,「金融
サービス業におけるプリンシプル」の趣旨に沿って,自律的な業務運営の適
正性を確保する観点から,経営管理態勢を整備すること。また,顧客保護・
投資家保護の観点から,利益相反等の問題を適切に管理するため,内部管理
態勢を再構築すること。
(3)役職員に市場仲介者としての社会的責任を自覚させ,及び法令等遵守意
識を徹底させるため,研修その他必要な方策を実施すること。
(4)上記(1)~(3)について,その実施状況を平成21年1月7日(水)まで
に,及び必要に応じて随時に,書面により報告すること。
第2平成21年10月23日の業務停止命令等
1金融庁が認定した事実
○報告徴取命令に対する対応の不備
当支店は,平成20年11月28日付で金融庁長官から,「不適切な業務
運営を看過するなど,経営管理態勢・内部管理態勢に重大な欠陥があると認
められる状況」に該当するとして,行政処分(以下「前回行政処分」とい
う。)を受けている。前回行政処分においては,当支店が「契約の履行過程
の一部として,機械的に当該顧客の発行する株式の取引を行った」ことが,
金融商品取引法(以下「法」という。)第38条第6号に基づく金融商品取
引業等に関する内閣府令(以下「府令」という。)第117条第1項第16
号に規定する「法人関係情報に基づいて,自己の計算において当該法人関係
情報に係る有価証券の売買その他の取引等をする行為」に該当すると認定さ
れている。こうした事実認定は,法第56条の2に基づく金融庁長官の報告
徴取命令を受けて,前回行政処分に先立ち当支店が提出した報告書の記載内
容が,重要な要素となっている。
しかしながら,今回検査において,当該報告書に関する検証を行ったとこ
ろ,(1)当該報告書の記載内容に不足及び事実に反する記載があること,(2)
当支店は,調査・検証が不十分なまま当該報告書を作成し,これを提出して
いたことが認められた。また,(3)前回行政処分において,「法人関係情報
に基づいて,自己の計算において当該法人関係情報に係る有価証券の売買そ
の他の取引等をする行為」に該当すると認定された取引のうちには,「当該
スワップ契約の履行過程の一部として,機械的に当該顧客の発行する株式の
取引を行った」ものとは認められない取引が認められた。
当支店が行った上記行為は,法第56条の2に基づく金融庁長官の報告徴
取命令に違反しており,かかる当支店の行為は,法第52条第1項第6号に
規定する「金融商品取引業に関し法令に基づいてする行政官庁の処分に違反
したとき」に該当するものと認められる。
○特定の上場金融商品の相場を固定させる目的をもって,買付けの申込み等
を行う行為
当支店株式オプション部トレーダーは,その業務に関し,平成20年11
月5日,特定の上場銘柄の株式について,ストップ高買い気配に固定させる
目的をもって,大引け間際に,ストップ高の1円下の指値及びストップ高と
なる指値での大量の買付注文を行い,当該銘柄の株価を固定させた。
当支店及び当支店株式オプション部トレーダーが行った上記行為は,法第
38条第6号に基づく府令第117条第1項第19号に規定する「取引所金
融商品市場における上場金融商品等若しくは店頭売買有価証券市場における
店頭売買有価証券の相場若しくは相場若しくは取引高に基づいて算出した数
値を変動させ,若しくはくぎ付けし,固定し,若しくは安定させ,又は取引
高を増加させる目的をもって,当該上場金融商品等若しくは当該店頭売買有
価証券に係る買付け若しくは売付け若しくはデリバティブ取引又はこれらの
申込み若しくは委託等をする行為」に該当するものと認められる。
「報告徴取命令に対する対応の不備」は,金融行政の適切な遂行に支障を
与えかねない重大な問題であり,また,「特定の上場金融商品の相場を固定
させる目的をもって,買付けの申込み等を行う行為」も,市場の公正性・透
明性を損なう悪質な行為である。
特に,当支店株式派生商品統括本部は,前回行政処分において「法人関係
情報に基づいて,自己の計算において当該法人関係情報に係る有価証券の売
買その他の取引等をする行為」に該当すると認定された取引を行い,「報告
徴取命令に対する対応の不備」との関係も認められるトレーダーが所属して
おり,また,「特定の上場金融商品の相場を固定させる目的をもって,買付
けの申込み等を行う行為」に関与した当支店株式オプション部トレーダーが
所属しており,その適切な業務運営を確保するため,法令遵守意識の徹底等
に専念させる必要があると認められる。また,経営陣・内部管理部門がこれ
らの問題を看過したことを踏まえ,経営管理態勢・内部管理態勢を抜本的に
強化する必要があると認められる。
2業務停止命令等の内容
(1)業務停止命令
平成21年11月2日(月)から平成21年11月16日(月)までの間,
当支店株式派生商品統括本部が行うすべての業務の停止(既往の契約の履
行・結了に伴う業務その他当庁が個別に認めたものを除く。)
(2)業務改善命令
ア今回の法令違反行為に係る役職員の責任の所在の明確化を図ること。
イ全役職員に対し,研修等を通じて,法令遵守意識の徹底を図ること。特
に,株式派生商品統括本部の役職員に対して,金融商品取引法等が定める
有価証券取引における禁止行為について,周知徹底を図ること。
ウ内部調査・監査の適切な機能発揮に向けて,手続の整備や体制の充実・
強化など,必要な方策を実施すること。
エ売買審査体制の抜本的な見直しを図ること。
オ経営管理態勢・内部管理態勢を抜本的に強化するため,平成20年11
月28日の業務改善命令を受けて実施中の改善策について必要な見直しを
行い,適切に実施すること。
カ上記ア~オについて,その実施状況を平成21年11月24日(火)ま
で(さらに同日後の進捗状況について,平成22年1月29日(金)まで
及びその後3月毎)に,及び必要に応じて随時に,書面で報告すること。
別紙6
事故顛末報告書の内容
第1原告bに関する事故顛末報告書
1動機
当社の理解としては,株式会社e(以下「e社」という。)とのスワップ取
引に関して,当該取引を開示することに以下のデメリットがあったため。
①スワップ部分の条件であるヘッジ比率の開示によりヘッジファンド等か
らの狙い撃ちを招き,市場でのe社株の売却を円滑に進め,安定的なヘッ
ジ取引の執行を行うことが阻害される。
②スワップ契約に基づく300億円のaへの支払を開示することで,e社
が実質的に300億円の資金調達が出来ていないことが開示され,e社株
式の株価下落を招きかねない。e社株式売却停止条件である下限価格を下
回ると,e社の資金調達が困難となり,aの収益も減少する。
2事故の内容
本件取引において,6月19日,当該スワップ取引を開示しないようe社へ
働きかけた。その過程において,bは,6月26日付けe社プレスリリースに
おいて非開示とする取扱を望む旨を資本市場ソリューション部長cに伝え,e
社への働きかけを行った。e社は,当該プレスリリース,臨時報告書及び6月
30日付有価証券報告書において,当該スワップ契約について記載しなかった
(・・・(略)・・・)。最終的には,当該プレスリリースにおける開示については,
できるだけ簡潔な記載を以って東証に確認し,その要請にしたがって最低限の
開示に留めることをe社へ要請した。それまでのbの行為は外務員の職務に関
して著しく不適当な行為であったと考える。
第2原告cに関する事故顛末報告書
1動機
上記第1の1と同じ。
2事故の内容
本件取引において,cは6月19日,当該スワップ取引を開示しないようe
社へ働きかけた。e社は,当該プレスリリース,臨時報告書及び6月30日付
有価証券報告書において,当該スワップ契約について記載しなかった(・・・
(略)・・・)。最終的には,当該プレスリリースにおける開示については,で
きるだけ簡潔な記載を以って東証に確認し,その要請にしたがって最低限の開
示に留めることをe社へ要請した。それまでのcの行為は外務員の職務に関し
て著しく不適当な行為であったと考える。

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
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今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛