弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人Eの上告趣意について。
 論旨(一)は、被告人が如何なる行為によつて強盗の実行行為に加担したかを具
体的に説示していないから原判決には理由不備の違法があるというに帰するが、原
判示の「共謀」というのは原判決に掲げている証拠と対照すると、被告人において
Bと共に強盗を行う意思の通謀のあつたことをさすことが明かであるから、被告人
はBと共同して強盗を行う意思で行為を共にしA方に侵入して『Bは携えた出刃庖
丁、、、、、、を右Aの胸元に突付けて「金を出せ」と威し同人の反抗を抑圧して
同人等所有の現金約一千円を強取したものである』ことが明瞭である。すなわち、
原判示事実によれば、被告人は自己の犯意を実現するためにBと行動を共にし同人
の行為を利用したことが認められるので、被告人に対する強盗罪の共同正犯の判示
としては十分であつて原判決には理由不備の違法はなく論旨は理由がない。
 論旨(二)は、原判決には「同人等所有の現金約一千円を強取し」とあつて被害
法益の複数性を示しているが、A以外の被害者の表示を欠いている原判決には理由
不備の違法があるというに帰する。しかし、原判決は本件強盗を単純一罪として判
示したのであるから被害者の一人であるAについて原判示のように説示して強盗罪
の構成要件に当る具体的事実を明かにした以上他の被害者の表示を明かにしなくと
も原判決には理由不備の違法はなく論旨は理由がない。
 弁護人横田隼雄の上告趣意について。
 勾留状の方式について違法があれば、勾留に関する訣定に対する抗告その他法律
の定める手続によつてこれが是正を求むべきであつて、これをもつて原判決を攻撃
する理由とすることはできない。又論旨は、本件公訴は勾留状の請求があつた日か
ら十日を過ぎて為されたのであるから被告人等は直ちに釈放せらるべきであつたに
拘らず被告人等を拘束したまゝ続行した第一審公判における共同被告人Bの供述を
記載した公判調書を証拠に採用した原判決は違法であると主張している。
 よつて記録を調べてみると、第一審の検察官が被告人及びBに対して横浜地方裁
判所小田原支部に勾留状の発付を請求したのは昭和二二年一一月二四日であつて、
検察官は同年一二月三日附で同裁判所支部宛の公判請求書を作成している。右公判
請求書に押されている裁判所の受理日附印のアラビヤ数字は書き改められた形跡が
あつて、これのみによつてはその受理が一二月三日とも一二月八日とも両様に判読
されて明かでない。しかし、記録に編綴されている横浜地方裁判所検察庁小田原支
部の被告人等に関する移監指揮書は昭和二二年一二月三日附で作成され公判を請求
したから即日身柄を小田原刑務所へ移監されたいと記載されており、横浜地方裁判
所小田原支部判事Cは同日附でこれに同意しているし、同書面に押された看守長D
の収容者領収証印も同日附となつている。更らに又記録には弁護人E外一名から昭
和二二年一二月五日附で被告人の弁護人選任届が横浜地方裁判所小田原支部宛に提
出されている。さればこれらの書面と前記公判請求書に押されている裁判所の受理
日附印とを参酌して判断すると、本件公訴は昭和二二年一二月三日に提起されたも
のと認めることができる。従つて、被告人等の勾留は刑訴応急措置法第八条第五号
に違反するものではなく、原審が所論の公判調書中のBの供述記載を証拠に採用し
たことは適法であつて原判決には所論のような違法はない。それ故論旨は理由がな
い。
 よつて刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 以上は、裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二三年一一月一〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官岩松三郎は差支えにつき、署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義

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