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裁判例


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○ 主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が昭和四九年六月四日原告に対してしたたばこ小売人不指定の処分を取り
消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は昭和四九年三月二六日被告に対したばこ小売人指定の申請をしたとこ
ろ、被告は同年六月四日不指定の処分(以下「本件処分」という)をした。そこ
で、原告はこれを不服として同年七月二八日行政不服審査法に基づき審査請求をし
たが、日本専売公社総裁は昭和五〇年八月一一日付で右請求を棄却する旨の裁決を
し、右裁決は同月一九日以降原告に送達された。
2 (一)本件処分の理由は、たばこ専売法(以下「法」という)三一条一項三号
の「予定営業所の位置不適当」、同四号の「標準取扱高不足」並びにたばこ小売人
指定関係規程(以下「規程」という)五条一項二号の「標準距離不足」、同五号の
「標準取扱高不足」に該当するというものである。
(二) しかし、次に述べるように、被告のした本件処分は違法であるので、取消
を免れない。
(1) 原告は昭和四六年から毎年のように被告に対したばこ小売人指定の申請を
してきたが、その都度、法三一条一項四号及び規程五条一項五号の各「標準取扱高
不足しを理由として不指定となり、本件処分に先立つ昭和四八年八月にも同様の申
請をしたが、同年一〇月五日同じ理由で不指定となつた。しかるに、その後間もな
くの昭和四九年一月一七日原告の予定営業所から約七〇メートル離れたところに住
居を有するAがたばこ小売人指定の申請をしたところ、同年三月一六日その指定が
なされた。
(2) 原告の予定営業所とA方とは右のようにきわめて近い距離関係にあり、当
時、たばこの販売量に影響を及ぼすような付近住宅の増加もなかつたから、A方が
標準取扱高に達するものとして指定がなされたとすれば、原告の場合も右取扱高に
満たないという合理的理由はないはずである。それ故、原告について標準取扱高不
足ということはありえない。
(3) 被告は、右のとおりAに先立つて申請していた原告を不指定としながら、
Aの申請を容れて同人をたばこ小売人に指定したうえ、本件処分においては不指定
の理由として「標準距離不足」を追加した。しかし、右理由は被告が前記経緯でA
を小売人に指定した結果発生したものであり、その不利益を原告に負わせることは
できない。従つて、これを理由として本件処分をするのは被告の有する指定権の濫
用であつて、許されないものである。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の(一)の事実は認める。同(二)の(1)の事実中、原告方とA方との
距離の点を除き、その余は認める。右両者間の距離は約九〇メートルである。同
(2)及び(3)の主張は争う。
三 被告の主張
1 (一)たばこ販売の権能は国に専属し(法二条)、この権能は日本専売公社
(以下「公社」という)が行使する。公社は指定したたばこ小売人にたばこを販売
させることができ、公社または指定小売人以外の者は販売してはならない(法二九
条)。従つて、公社の行うたばこ小売人の指定はいわゆる特許に属し、公社の自由
裁量行為である。すなわち、右指定は消費者に対する偏りのないたばこの供給とよ
り多くの売上げという勝れて企業政策的考慮に基づいてなされるものであるから、
いかなる場合に何人を小売人に指定するか否かは公社の企業政策的見地からする自
由裁量が許されるといわなければならない。
法三一条はたばこ小売人指定の規準を定めているが、右規準は右のような企業政策
的見地に基礎をおく合理的裁量権行使の方策として設けられたもので、訓示的な準
則と考えるべきものであり、公社による補充を要するもの、あるいは適用に幅のあ
るものがあり、その具体的適用においては公社の裁量に委ねられる部分が多い。右
規準はこのような趣旨から解釈されなければならないし、小売人の指定にあたり実
質的にみて裁量権の逸脱濫用にわたることがない限り、適法な指定処分がなされた
ものと解すべきである。法三一条は右のように公社による補完あるいは具体化を予
定しているところ、公社は、たばこ小売人指定の準則として規程を定め、規程の運
用に関し「たばこ小売人指定関係規程運用要領」(以下「運用要領」という)を設
けている。これらの規程、運用要領の制定、改廃及び解釈適用についても公社の企
業政策的見地からする裁量に委ねられているのであつて、これらの準則は裁量権の
行使が適正であつたか否かの判断の目安となるものではあるが、それが逸脱濫用に
わたるか否かは、法三一条の適用の場合と同様に、それのみで決しうることではな
いといわなければならない。
(二) 以上の点を本件処分に関係する指定規準についてみると、次のとおりであ
る。
本件処分は法三一条一項三号、四号に該当するという理由でなされているが、右三
号の「営業所の位置が・・・・・・・・・・・・たばこの小売業を営むのに不適当
と認められる場合」という規準は、たばこ専売の担当者としての公社の企業政策的
考慮からする専門的知識によらなければ具体的判断は不可能であり、同四号の「取
扱の予定高が公社の定める標準に達せず、・・・・・・・・・・・・」という「公
社の定める標準」は公社の企業政策的見地から定めるのでなければ意味をなさない
ものである。また、右の点に関し規程に定められた規準として標準距離あるいは標
準取扱高なるものがあるが、これらは住宅の密集度、繁華街か否かなどを指標とす
る環境区分または等地毎に定められており、そこでは公社の裁量に基づき幅のある
認定や区分を避けることができないし、予定営業所の取扱予定高が「公社の定める
標準」に達するか否かの判断は、同営業所周辺の住宅分布状況、商店街か住宅街
か、人の流れ、購買傾向など公社の専門的知識と経験に基づく裁量によつてせざる
をえないものである。
ところで、規程(五条二項、八条二項)及び運用要領(3・6)によると、たばこ
小売人の指定について競願制度の定めがあり、一定の標準距離内または供給対象を
同一にする地域内にあつて同月中及び実地調査前に提出された申請及び争訟継続中
の処分にかかる申請については、競願として取り扱い、予定営業所の位置、店舗の
構造等を比較し、優位にある方を指定することとしている。もし小売人指定処分が
覊束処分であり、申請者に規準に定める最低の条件さえ整つていれば必ず指定しな
ければならないとすれば、右のように申請者を一定の時期でくくつて優劣を比較す
るという競願制度を採ることとは理論上調和し難いものがある。この面からみて
も、右処分の企業政策的配慮による裁量性を否定することができない。競願制度に
関連し、運用要領(3・6)は、当該申請の前月を第一月とし第六月までさかのぼ
つた期間内に提出された申請のうち現状において規程に定める欠格条件(但し、標
準取扱高に達しない場合を除く)に該当しない者を含めて優劣の比較を行い、優位
にある方に欠格事由がなく、かつ前の申請が優位の場合は申請者に営業意思のある
ことを条件として指定する(一たん不指定にした方が優位にあるときは不指定処分
を取り消して)という参考競願の定めを設けている。右規定の趣旨は、小売人指定
につき、より多くの売上げ、偏りのない供給を目指しあわせて前の申請の欠格条件
該当性の判断について見直しをしようとするもので、企業政策的考慮に基づく自由
裁量性が端的に表われているということができる。
2 本件処分は、以下に述べるように適法になされたものである。
(一) 標準距離不足(法三一条一項三号、規程五条一項二号)について
右の規準となる標準距離は規程三条によつて環境区分毎に定められているが、さら
に環境区分の認定には運用要領(2・1)に標準が定められており、地域の実情を
十分勘案して認定される。この標準にあてはめると、原告申請の予定営業所の所在
地は市制施行地の住宅地(B)に該当し、標準距離は三〇〇メートルであつた。し
かるに、原告の予定営業所と既設小売人の大迫店との距離は約九〇メートルしかな
く、標準距離が不足していた。
(二) 標準取扱高不足(法三一条一項四号、規程五条一項五号)について
規程四条一項には各等地毎に標準取扱高が定められているところ、その等地は運用
要領(2・3(2))によつて市制施行地の住宅地(B)は六ないし一〇等地の範
囲内で決められることとなるが、右運用要領の取扱いについての通達によつて、環
境区分を同じくする地区内の既設小売人の一店あたり平均取扱高に〇・八を乗じて
得た金額の直近下位の標準取扱高に対応する等地とすることができることになつて
おり、これによると、原告申請の予定営業所所在地区内の既設小売人六店の一店あ
たり月平均取扱高に〇・八を乗じて得た金額が一五万円を超えているので七等地と
決定された。従つて、本件申請に適用される標準取扱高は一か月一五万円であつ
た。しかして、原告の予定営業所の取扱予定高は、現地の道路、住宅の分布状況等
によつて供給見込範囲内の住宅数に類似小売人の一戸あたり月平均消費高を乗じて
算出したところ、九万五〇〇〇円と算定され、前記標準取扱高に達しなかつた。
(三) 右(一)及び(二)に関し、環境区分の認定、すなわち住宅地(A)か同
(B)かの判断、等地決定の際の同一環境として平均取扱高を求めた地区の範囲や
供給見込範囲の認定、標準とした類似小売人の選定などいずれも公社の専門的知
識、経験に基づいた裁量によつてなされたものであり、本件の処理について特段の
不合理な点は存しないし、裁量権の行使に逸脱ないし濫用はない。
原告は、特に標準距離不足の点について、原告の本件申請と前回申請との中間で大
迫店を指定したため距離不足が発生したのであるから、これを理由として不指定に
するのは指定権の濫用であると主張する。しかし、公社は大迫店の申請につき法及
び公社の諸規定に定める規準を満たしていると判断して指定したのであり、仮に違
法事由があつたとしても、その指定が権限ある機関によつて取り消されない以上有
効として扱われるのであるから、いかなる意味においても指定権の濫用となる理由
を見出すことはできない。
なお、大迫店の申請は原告の前回の申請と前記参考競願の関係になつたので、被告
は運用要領に従つて両者の優劣比較を行つた。その結果、予定営業所の位置が、大
迫店は錫山県道に面し、しかも三叉路の角地にあるのに対し、原告申請のものは右
三叉路から約九〇メートル南に入り、さらに道路から約五メートル入り込んだ高い
ところにあつて、錫山県道からは見通しがきかない状況にあつたので、大迫店が明
らかに優位にあつたものである。このように、参考競願において大迫店の申請が優
位にある点も考慮して同店を指定したのであり、裁量権の逸脱ないし濫用はない。
四 右三の主張に対する原告の認否と反論
1 右三の1の主張は争う。
たばこ小売人の指定は公社の自由裁量に任されているというべきではなく、むし
ろ、公社による小売人の指定が行政の一環としてなされるものである以上、公正、
平等になされなければならず、そのよるべき規準を定めたのが法三一条一項の規定
であると解するのが相当である。要するに、小売人の指定は法規裁量に属するもの
というべく、公社は申請者が法三一条一項各号のいずれかに該当するときは小売人
に指定しないことができるが、右各号のいずれにも該当しない場合には必ず小売人
に指定すべきであり、もし不指定の処分をしたときは右処分は違法な処分となるの
であつて、自由裁量に属するということはできない。
2 同2の事実は争う。
規程等によれば、たばこ小売人が準市街地・住宅地(A)にある場合その標準距離
は二〇〇メートルとされ、市街地の場合は一五〇メートルとなつている。
鹿児島市<地名略>付近は右規準による準市街地・住宅地(A)もしくは市街地に
該当するとされるところ、昭和三二年頃、同所で約二五メートルを隔てて二軒のた
ばこ小売人が指定されている。
また、昭和四九年六月には、大迫店から二四七メートルの距離にある坂元酒店がた
ばこ小売人に指定されたが、右距離が規程等にいう住宅地(B)の制限距離三〇〇
メートルに足りないことは明らかであり、仮に同店付近につき住宅地(B)から同
(A)への環境区分の変更があつたとしても、当時の状況からみて右変更の要因を
欠いていたものである。
被告の主張する自由裁量の実態は右のようなものであつて、標準取扱高不足あるい
は標準距離不足は規程等の運用によりどうにでもなることを示している。
五 右四の2の主張に対する被告の認否及び再反論
1 右四の2の事実中、昭和三二年頃鹿児島市<地名略>付近で二店の小売人指定
がなされたこと、及び昭和四九年六月坂元酒店に対し小売人の指定がされたことは
認めるが、その余の点は争う。
2 鹿児島市<地名略>付近に指定された二店舗間の距離は約四〇メートルであ
る。当時はたばこ小売人指定関係の規準として「製造たばこ販売事務取扱手続」が
あり、その一三条一項三号に小売人の指定ができない場合として、「予定営業所と
既設小売人の営業所の距離が次の標準に達しない場合、但し製造たばこの取扱高が
一一条の標準に達すると認められる場合はこの限りでない。」と定められている。
当時の指定申請に関する書類が残されていないので詳細は明らかでないが、おそら
く右但書により取扱見込高が標準に達すると認められて指定されたものと推測され
る。
また、坂元酒店と大迫店との距離は約二七〇メートルであるところ、坂元酒店付近
は当時住宅が増加しつつあり、ほどなく住宅密集地となることが明らかに予想され
たので、昭和四九年四月以降住宅地(A)として環境区分された。同地区の標準距
離は二〇〇メートルであるから、坂元酒店の指定処分に何らの問題もない。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因1及び2の(一)の各事実は当事者間に争いがない。
二 たばこ小売人指定処分の法的性質について判断する。
法二条は、製造たばこの販売等の権能は国に専属すると規定し、同三条は、国に専
属する右権能等は公社に行わせると定め、同二九条一項では「公社は、その指定し
た製造たばこの小売人に製造たばこを販売させることができる。」とし、同条二項
で「公社又は小売人でなければ、製造たばこを販売してはならない。」旨を定めて
いる。このように、法がたばこの販売等について専売制を採用し、公社に小売人指
定の権能を与えていることからすると、公社によるたばこ小売人の指定は、申請者
に対し同人が当然には有していないたばこ販売の権利もしくは資格をあらたに付与
する行為であるということができる。
しかしながら、このことから小売人の指定が直ちに公社の自由裁量に委ねられてい
るといえるかは問題であり、なお検討が必要である。
右のとおり、たばこの販売等について専売制が採用されているのは、国の財政上の
見地から必要な収入を確保することを主たる目的とするものであるが、それととも
に、消費者に対しいかなる土地においても同一品質、同一価格のたばこを販売する
ことによつて、その需要を均等に充たす機会を与え、公衆の日常生活の利便を図ろ
うとする・目的に出たものである。従つて、公社の行うたばこ小売人の指定につい
ても、右の趣旨、目的に副う勝れて企業政策的あるいは専門技術的な見地に立つた
考慮がなされることは当然であるが、反面、右の指定制度が適正かつ公平に運用さ
れることにより、小売人となろうとする者や消費者が受ける利益を保護すべき要請
の存することも否定できない。
法三一条一項は、公社によるたばこ小売人の指定について、その規準を設けてお
り、その一号ないし六号で小売人の指定をしないことができる各場合を規定してい
る。法がこのように、小売人指定の規準に関し抽象的包括的に公社の裁量に委ねる
ことなく、具体的個別的な規定を設けているのは、前述の企業政策的配慮に基づく
ことは勿論であるが、同時に、小売人指定制度の適正かつ公平な運用を確保するこ
とによるものであると解される。そうだとすると、たばこ小売人を指定するか否か
については、右規定の趣旨からする一定の覊束性を免れないのであつて、右指定処
分が専ら公社の自由裁量に属するということはできず、また、法三一条一項各号の
規定が公社の裁量についての訓示的な準則を定めたものにとどまるということもで
きない。それ故、公社は、申請者が右各号のいずれかに該当するときは小売人に指
定しないことができるが、そのいずれにも該当しない場合には不指定とすることは
できないものであり、もし右の場合に不指定の処分をしたときは、違法な処分とな
るといわなければならない。
ところで、本件処分の理由は、法三一条一項三号の「予定営業所の位置不適当」、
同四号の「標準取扱高不足」に該当するというのであるが、右三号には「営業所の
位置が・・・・・・・・・・・・不適当と認められる場合」、四号には「製造たば
この取扱の予定高が公社の定める標準に達せず、・・・・・・・・・・・・」との
文言があり、右各号の規定自体その具体的適用において、公社による裁量判断や公
社の定める準則によつて補充されることを予定していることが認められる。
このため、右法規に則り、公社は規程を設けて標準距離あるいは標準取扱高等を定
め、さらに規程の運用に関し運用要領を定めている。しかし、右の規程、運用要領
の定めやその運用については、もとより法規の趣旨が包含する程度の妥当性を保持
することが要求されるのであり、これをもつて直ちに小売人指定処分の自由裁量性
を根拠づけることはできない(なお、後記認定の本件処分の理由づけとなつた規程
及び運用要領の該当条項は、いずれも法の予定する妥当性の範囲内にあるものと認
められる。)。
もつとも、前記のようなたばこ専売制度の目的及び小売人指定に関する法規の趣旨
から考えると、公社の行う小売人指定については、企業政策的または専門技術的見
地に基礎をおく裁量の余地が相当広く認められていると解すべきである。その意味
で、規程(五条二項、八条二項)及び運用要領(3・6)において、同一地域内の
一定期間内における複数の申請について、先願主義によらずにこれを競願として取
り扱い、その優劣を比較検討して条件のより優るものを小売人に指定することと
し、あるいは、一たん不指定となつた者についても、その後同一地域内の他の者が
一定期間内に申請したときは、これらの者を競願関係にある場合と同様に取り扱つ
て審査の対象とする参考競願の制度を設けていることも、許容されると解される。
三 進んで、本件処分の適否について判断する。
1 本件処分の理由中、まず、標準距離不足の点を検討する。
前記当事者間に争いのない事実によれば、本件処分の理由の一は法三一条一項三号
の「予定営業所の位置不適当」及び規程五条一項二号の「標準距離不足」である
が、被告の主張によると、前者の「予定営業所の位置不適当」がすなわち後者の
「標準距離不足」に相当し、両者は本件不指定事由として同一の事由を指称すると
解されるので、以後、右不指定事由を「標準距離不足」に統一して考察することと
する。
規程五条一項二号には、小売人の指定をしてはならない場合として「予定営業所と
小売人の営業所との距離が三条の標準に達しない場合」と定め、同三条で、小売人
の環境区分別に標準距離を定めている。右環境区分の認定標準については、運用要
領(2・1)において、繁華街、市街地、準市街地、住宅地(A)(主として住
宅、アパート等が多く、建物の占める割合が比較的高い地域。住宅団地及び新興住
宅街)、住宅地(B)・集団部落(住宅地域内に空地、田畑、庭等が広い面積を占
め、建物の占める割合が比較的低い地域。農林漁業者の家屋を主体として家屋が点
在ないし小規模の集団をなしている地域)に分類して定めており、これを規程三条
の標準距離にあてはめると、市制施行地の標準距離は繁華街が一〇〇メートル、市
街地が一五〇メートル、準市街地・住宅地(A)が二〇〇メートル、住宅地
(B)・集団部落が三〇〇メートルとなる。
成立に争いのない乙第四、第五号証の各一ないし三、第九号証の一、二、第一五号
証の一ないし六、証人Bの証言により真正に成立したものと認める乙第七号証、証
人C(第一回)、同Dの各証言によれば、原告の本件小売人指定申請に基づいて昭
和四九年四月一一日公社職員が実地調査をした当時、原告申請の予定営業所の所在
地(原告の肩書住居に同じ)は、鹿児島市郊外にあり、同市から指宿市に至る国鉄
指宿線坂之上駅の西方約八〇〇メートルのところをほぼ東西に走る錫山県道からさ
らに約九〇メートル南西方に入つた地点に位置し、原告が小売人となつた場合の供
給見込範囲内には約六五戸の人家が点在しており、建物の占める割合が比較的低か
つたこと、そこで、被告は右調査結果に基づき、原告の予定営業所につき前記環境
区分で住宅地(B)、従つて標準距離は三〇〇メートルと判定したこと、しかる
に、当時、前記錫山県道から原告の予定営業所方向に折れる三叉路の角地に店舗を
もつAが既に小売人に指定されており、右A方営業所と原告の予定営業所との距離
(両営業所のそれぞれの間口の各中間点間の距離を各営業所前の道路の流れに沿つ
て実測したもの)が約九〇メートルであつたので、被告は前記標準距離三〇〇メー
トルに不足すると認定したことが認められ、原告本人尋問の結果も右認定を覆すに
足りず、他にこれを左右すべき証拠はない。
しかして、前掲各証拠によると、被告がした前記環境区分及び標準距離等の決定の
経緯において手続上の瑕疵や判断の誤りがあつたことは認められず、これに前記認
定事実を総合して考えると、本件小売人指定の申請に対し、被告が「標準距離不
足」に該当すると判定したことは相当であつたと認められる。
2 請求原因2の(二)の(1)の事実は、原告の予定営業所とA方間の距離の点
を除き、当事者間に争いがない(前記のとおり、右両者間の距離は約九〇メートル
である。)。
原告は、本件小売人指定申請に先立つて原告が同様の申請をしたのに対し、被告は
昭和四八年一〇月五日「標準取扱高不足」のみを理由として不指定としていたの
に、その後、原告方近くに居住し指定の条件もほとんど変りのないA方から指定の
申請がなされるや、昭和四九年三月一六日同人を小売人に指定したため、原告方に
ついて「標準距離不足」が生じたもので、これを理由とする本件処分は指定権の濫
用であつて許されない旨主張する。
しかしながら、Aに対する小売人指定の事情は暫らくおくとして、一度小売人に指
定されたうえは、同人が権限ある機関による取消その他の理由によつて小売人とし
ての地位を喪失しない限り、同人が小売人として扱われるべきことは当然である。
それ故、被告が本件申請において、原告の予定営業所に関し既設小売人であるA方
との関係で標準距離不足であると認定したとしても、これをもつて指定権の濫用で
あるということはできない。
なお、規定五条二項、運用要領(3・6)には、前述のとおり参考競願の制度が設
けられている。
前記乙第七、第一五号証の一ないし六、成立に争いのない甲第五号証、同乙第一七
号証、証人Bの証言により真正に成立したものと認める乙第一〇、第一二号証、証
人C(第一、二回)、同Dの各証言によれば、Aの小売人指定申請による実地調査
は昭和四九年二月一二日に行われたが、右申請と原告の昭和四八年八月の申請(同
年一〇月五日不指定となつたもの)とが前記参考競願の関係に立つたので、被告は
運用要領に従つて両者の優劣の比較検討を行つたこと、その結果、予定営業所の位
置が、A方は前記錫山県道に面し、しかもこれから原告方方向に折れる三叉路の角
地にあるのに対し、原告方は右三叉路から約九〇メートル南西方に入り、さらに原
告方前の路面より約一・六メートル高く、約五メートル入り込んだところにあり、
右県道から原告方営業所の存在が確認できない状況にあつたため、被告はAの申請
が原告の申請よりも優位にあるものと認め、右の点をも考慮して他に欠格条件のな
かつたAを小売人に指定したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はな
い。
右認定事実によると、被告は、Aの申請を審査するに際し、これに先立つてなされ
た原告の申請をとり上げて両申請を具体的に比較対照し、その結果、より優位にあ
つたAを小売人に指定しているのである。してみると、その後原告のした本件申請
について、大迫店との関係で標準距離不足を生じ、これを理由に本件処分がなされ
たとしても、けだしやむをえないところであり、実質的にみても、被告に指定権の
濫用があつたということはできない。
3 原告は、被告による規程等の運用が恣意にわたり、これを逸脱してなされてい
る事例として、昭和三二年頃鹿児島市<地名略>付近で標準距離に著しく不足する
関係にある二か所の店舗が小売人に指定された旨主張する。
しかして、右二か所の店舗が原告主張の頃小売人に指定されたことは当事者間に争
いがないが、右指定のなされた地域は本件申請に係る地域と同一もしくはその付近
にあるわけではないうえ、十数年前の事案であつて、これをもつて本件処分の適否
の判断に影響を及ぼすような事情であるということはできないから、主張自体採用
するに由ないものである。
また、原告は、被告が規程等を逸脱して運用している同様の事例として、被告は昭
和四九年六月に大迫店から二四七メートルの距離にある坂元酒店を小売人に指定し
ているが、右距離は前記住宅地(B)の標準距離である三〇〇メートルに足りない
ものであり、仮に同地域について住宅地(B)から同(A)への環境区分の変更が
あつたとしても、右変更の要因を欠いていた旨主張する。
原告主張の頃坂元酒店に対し小売人指定がなされたことは当事者間に争いがないと
ころ、前記乙第七号証、証大Cの証言(第二回)によると、坂元酒店はA方の東方
約二七〇ないし二八〇メートルの錫山県道沿いにあり、同所付近は以前は環境区分
で住宅地(B)と認定されていたが、右指定当時、坂元酒店の後背地にマンシヨン
風の建物等が二五〇ないし二六〇棟ぐらい建築中で住宅が密集しつつあつたので、
住宅地(A)と認定が変更され、従つて、同地区の標準距離は二〇〇メートルとな
つたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実によると、坂元酒店とA方との距離が標準距離に達していたことが明ら
かであるから、被告による規程等の運用に逸脱があつたとすることはできない。
4 以上のとおりであるので、本件小売人指定の申請につき、被告が法三一条一項
三号の「予定営業所の位置不適当」及び規程五条一項二号の「標準距離不足」に該
当するとしたのは相当であり、この点において既に本件処分は理由があるといわな
ければならない。そうすると、その余の不指定理由について判断を加えるまでもな
く、本件処分は適法になされたものであつて、取り消すべきものとは認められな
い。
四 よつて、原告の本訴請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につ
き民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 大西浅雄 林 五平 森 重久)

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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