弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件各参加申立を却下する。
       理   由
一 申立人らの参加の理由は、別紙記載のとおりである。論旨は、要するに、申立
人A、同Bの両名は本件緊急命令申立事件の被申立人吉野石膏株式会社により本件
救済命令の認定した不当な配転・解雇をうけた本人であり、申立人総評全国一般労
働組合東京地方本部中部地域支部吉野石膏分会は申立人A、同Bを含む被申立人会
社及び関連会社の従業員によつて構成される労働組合であり、申立人総評全国一般
労働組合東京地方本部は同分会の上部組織であつて、申立人四名は、いずれも中央
労働委員会の本件救済命令の名宛人であり、原審の緊急命令却下決定により権利を
害される第三者であるというのである。
二 ところで、行政事件訴訟法第二二条は抗告手続にも準用されると解するのが相
当であるが、本件抗告は中央労働委員会の緊急命令の申立を却下した原決定の取消
を求めるものであつて、本件抗告手続は申立人らと被申立人との間の権利義務に関
する紛争を解決する手続ではないから、申立人らは、同手続の結果により、権利を
害されることはないというべきである。したがつて、申立人らは同条にいう「権利
を害される第三者」に該当しないものといわざるをえない。
三 以上の次第で、本件各参加申立は不適法であつて許されないものであるから、
これを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 枡田文郎 山田忠治 佐藤栄一)
(別紙)
参加の理由
一 申立人らは原審の緊急命令却下決定により権利を害される第三者である。
(一) 申立人A、同Bの両名は、緊急命令申立事件の被申立人吉野石膏株式会社
(以下会社という)の社員であり、本件救済命令の認定した会社による不当な配
転・解雇をうけた本人である。
 申立人総評全国一般労働組合東京地方本部中部地域支部吉野石膏分会(以下分会
という)は、会社及び関連会社の従業員によつて構成される労働組合であり、右
A、Bは分会結成(昭和四八年六月)以来の分会員であり、中心的活動家であつ
た。
 申立人総評全国一般労働組合東京地方本部(以下東京地本という)は、分会の上
部組織である。以上、申立人四名は、いずれも本件中労委の救済命令の名宛人であ
り、本件緊急命令却下決定により権利を害された第三者である。
(二) 本件緊急命令の基礎となつた中労委の救済命令の対象は、昭和四九年三月
から四月にかけて会社が分会員にかけてきた大量の配置転換とA・Bに対する配転
拒否を理由とする不当解雇である。
 この不当な配転・解雇の攻撃は申立人らにそれぞれ極めて重大な不利益、権利侵
害をもたらした。A・B両名は、組合破壊を狙う会社の不当な配転に抗議し、分会
の組織と活動を維持するために分会の意思に従つて指名ストに入つた。しかし、会
社はこれを一顧だにせず両名を解雇してきた。以来約五年間、両名は賃金の支給も
断たれ、支援の仲間の友情と団結によつてその生活を支えられながら、会社の不当
性を明らかにし、分会の組織と団結を回復するために闘いつづけてきた。
 分会及び東京地本は、A、Bを支えつつ、会社の組織破壊攻撃から組織を守るた
めに、やはりこの五年間全力を挙げて闘つてきた。
(三) しかし、賃金を唯一の生活の資としているA、Bにとつてこれを断たれな
がら不当な解雇を争つて闘つてきた五年間の年月は、まことに表現し難い苦痛の連
続である。
(1) Aの場合、解雇される以前は何ひとつ病気をしたこともない健康体であつ
た。それが解雇による生活上の苦痛、まともに食べるものも食べられないほどの生
活苦に耐えながら、全国一般の分会の旗をまもつて不当解雇と闘い続けてきた。こ
の間の肉体的・精神的苦痛ははかり知れない。その結果、Aはついに身体中に支障
を来たしている。血圧の変化もひどく、しばしば立ちくらみも生じる。それでも定
収のない生活では満足な診療をうけることもできない。解雇を理由に会社はすでに
健康保険までも打ち切つているからである。
(2) Bの場合も、解雇後の生活上の苦痛はAと同様まことに甚大である。しか
もBの場合、郷里の栃木県に長期療養をつづける父親の面倒をみなければならない
立場にある。父親はBの解雇後間もなく胃潰瘍のため勤務をやめ自宅療養を続けて
いたが、Bの解雇後三年目の春に手術のため入院した。もしBが解雇されていなか
つたら、父親に対する療養費の援助も、Bの健康保険の利用も可能だつた。それが
解雇によつて一切できなくなつたのである。父親の期待を一身にになつて上京し就
職したBにとつて、その生活関係を無残に踏みにじられた心痛は人一倍重大であ
る。
(3) しかも、AとBの働いていた職場では、分会の中心メンバーが昭和四九年
七月から八月にかけてさらに四人も解雇された。合計六名の解雇者をかかえた分会
の維持運営は実際上これら解雇者と分会員をはじめとする仲間の献身的な活動によ
つて辛くも支えられてきた。この間の両名の生活上の苦労、精神的肉体的苦労は言
うまでもない。
 それでもこの苦痛に耐えぬいて今日までたたかつてきたのは、本件配転と解雇が
人間らしく生きることのできるように職場の生活と権利を守るため団結して立上つ
た全国一般の分会を一挙につぶそうと狙つたものであり、そのような組合活動に対
する報復・みせしめとして強行された明白な不当労働行為であること、このような
不当解雇は断じて許せないし、またかならずや正義の要求は実現する筈だと固く信
じていたからである。
(四) 申立人らは、本件配転が発令された直後の昭和四九年三月一六日に救済申
立を行つた。以来四年にわたつて、東京都労働委員会で一六回、中央労働委員会で
七回、合計二三回に及ぶ審理を尽した。その結果、都労委も、中労委も、本件配
転・解雇を労組法七条一号、三号に該当する不当労働行為と断じ、救済命令を発し
た。この二つの労働委員会の判断は申立人らにとつて一面当然のことであるととも
に他面、やはり正義と真実が明らかにされたことは申立人らを大きく勇気づけた。
会社の理不尽極まりのない組合破壊攻撃が、現行法の下で許されないことを二つの
労働委員会が明確に宣言したのであるから、日本国憲法の精神、そして民主主義国
家、法治国家としての日本は健在であることを知らされた。まさに正義は法の下で
守られたのである。
(五) 昭和五三年五月九日、中労委は緊急命令の申立を東京地裁に行つた。労働
委員会の救済命令の履行を過料の制裁の威嚇をもつて会社に強制するこの制度に対
する申立人らの期待は極めて大きかつた。四年余にわたる多大の苦痛と困難からや
つと解放される日が来る。
 A、Bの両名にとつて、裁判所が緊急命令を出す日が一日千秋の思いで待たれた
のである。
 一方、会社も緊急命令は当然出されると覚悟を決めていた。申立人らとの団体交
渉の席上でも、A、Bの両名の復職場所をどこにするかが話し合われた。会社は、
東京支店内に両名を勤務させる予定の場所も用意した。こうしたことから、A、B
両名にとつて職場に復帰し、再び同じ職場の仲間と仕事をする日はもう目前である
と感じられた。
(六) しかし、東京地裁民事一九部は緊急命令申立以来九ケ月も判断を留保し、
その上異例の申立却下の決定を行つた。しかもその内容は本案の証拠調べも全く行
われていない段階で、本件救済命令には「その維持可能性に疑義があり、緊急命令
を発することは相当でない」とするものであつた。二つの労働委員会が、合計四年
近い年月をかけて、計二三回におよぶ証人調べを経て行つた判断を、証拠調べも全
くしないで全く逆の結論を出したのである。
 訴訟手続の上からも全く不当極まりない判断であり、さらに、憲法に保障された
労働基本権及びその実現たる労働組合法七条の不当労働行為の判断に至つてはもは
や法の存在そのものを否定するという暴挙である。これほどはつきりと、労働者の
権利を否定し、憲法の労働基本権保障の存在を踏みにじることができるとは一体ど
こから生じてきたのか。
 民事一九部の不当な却下決定により申立人らの被つた打撃はあまりにも大きい。
不当な行為を続けている会社ですら緊急命令を予定して、その限りで従おうとした
労働委員会命令を裁判所が一挙に否定したのである。
 申立人らにとつて、この却下決定によつて侵害された精神的・経済的利益と労働
者としての権利は絶対に譲れないものである。
(七) 以上の次第であるので、申立人らは本件緊急命令却下決定に対する抗告手
続について是非とも参加しなければならないし、参加する利益を有するものであ
る。このような違法な却下決定を放置しておくことは絶対に許されない。貴裁判所
の公正・早急な決断を心から要請するものである。
以上

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