弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中参拾日を本刑(但し原判示第二の罪につい
ての懲役刑)に算入する。 ○理由
     弁護人安田幸太郎及び被告人の各控訴趣意は夫々別紙記載の通りであ
る。
     弁護人の控訴趣意第一点について。
     論旨は原判示第二の事実につき原判決は事実の誤認があると謂うのであ
る。仍て原判示第二の事実を検討するに、原判決が証拠として掲げるAの司法警察
員に対する供述調書抄本及び被告人の司法警察員に対する昭和二十九年一月二十九
日付供述調書に徴すれば、被告人はAより本件原動機付自転車一台の売却方を依頼
せられるやそれが賍品であることの情を知りながら右Aを伴つて丸亀市a町B方に
Cを訪ね同人に対し右自転車の売却斡旋方を依頼し右Cが更に右自転車を同町のD
方へ持参し売買の交渉(売買が成立しない中にAが検挙された)をした事実を認め
ることができ、原判決が「被告人は(中略)これを同市a町のCに対し売却する周
旋をして云々」と判示したのは幾分正確を欠いていると謂はなけれ<要旨>ばならな
い。しかし賍物の売却方の依頼を受けた甲が賍物たるの情を知りながら乙に対しそ
の売却斡旋方を依頼し乙が更に丙に対し売買の交渉をした場合においても、
甲は賍物売却の斡旋行為をしたものとして賍物牙保罪の責を免れ得ないものと解す
べきであるから、前記認定の如き被告人の行為は賍物牙保罪を構成するものであ
り、原判決が本件行為を賍物牙保罪に問擬したのは結局正当であつて、原判決に判
決に影響を及ぼす事実の誤認があるとはいえない。原審が取調べた各証拠を検討し
ても所論の如く賍物牙保の幇助に過ぎないものとは見られず、論旨は理由がない。
     同第二点及び被告人の控訴趣意について。
     各論旨は原判決の量刑は重きに失すると謂うのである。仍て本件記録を
精査して考察するに原判示第一の自転車窃盗(原判決に自動車とあるは誤記と認め
る)は昭和二十五年中の犯行であり、原判示第二の賍物牙保罪も犯情比較的軽微で
あるけれども、被告人は是迄窃盗罪等により前科(罰金三回、懲役五回)を重ねて
いることその他諸般の情状を考量すれば原判決の各科刑が必ずしも酷に失するとは
いえず、各論旨の主張するところを十分斟酌しても原審の量刑は相当であつて、論
旨は採用できない。
     尚原審判決書は第一枚目と第二枚目との間に契印を欠いているけれど
も、判決破棄の事由となし難い。
     仍て本件控訴は理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条刑法第二十一
条刑事訴訟法第百八十一条第一項但書により主文の通り判決する。
     (裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)

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