弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人関原勇の上告趣意第一点について。
 論旨は所論長野県条例が憲法二一条に違反するということを前提として本件警察
官の発した解散命令が公務でなかつたと主張する。しかしかかる主張は原審におい
て控訴趣意として主張されず、原審の判断を経ていないところであるから適法な上
告理由とならない(もつとも関原弁護人から原審に提出された答弁書には「凡そ公
安条令と称するもの違憲の条令」云々の語があるが、これは上記のような論旨を控
訴趣意として主張したものとは認められない)(なお本件の解散命令が警察署長の
措置によるものであることは第一審公判廷におけるA及びBの各証言によつて明ら
かである。)
 同第二点について。
 所論援用の判例は本件とは事実を異にする場合のものであつて本件に適切でない。
その余の論旨は事実誤認の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 同第三点について。
 論旨は単なる訴訟法違反または量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならな
い。(第一審判決は被告人C及び同Dに対し執行猶予の言渡をしたところ原審裁判
所はみずから事実の取調をすることなくしてこれを破棄し、右被告人両名に対して
実刑を科したこと所論のとおりである。しかし第二審がみずから事実の取調をしな
いで被告人にとつて第一審判決よりも不利益な判決をしても違法でないことは当裁
判所がしばしば判例として示したとおりである。例えば昭和二六年(あ)第一六八
八号同三〇年六月二二日大法廷判決、昭和二五年(あ)第二九八一号同二六年一月
一九日第二小法廷判決等参照)
 なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は、論旨第三点に関する裁判官小林俊三の少数意見を除く外、裁判官全
員一致の意見によるものである。
 裁判官小林俊三の少数意見は、次のとおりである。
 第二審で第一審判決の執行猶予を実刑とする場合には、事実の取調少くとも被告
人の意見弁解を聴くことを要し、単にいわゆる書面審理だけで破棄自判することは
許されないと解するを相当とする。その意見の詳細は、昭和二七年(あ)第五九七
号同二九年六月八日第三小法廷判決集八巻六号八二一頁、昭和二六年(あ)第一六
八八号同三〇年六月二二日大法廷判決集九巻八号一、一八九頁に述べたとおりであ
る。
  昭和三一年三月二七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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