弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成10年(行ケ)第133号 審決取消請求事件
判    決
原      告株式会社松岡刃物
代表者代表取締役【A】
訴訟代理人弁護士野  方  重  人
 被      告  兼房株式会社
代表者代表取締役【B】
訴訟代理人弁護士鮎澤多俊
同小  池     徹
同弁理士【C】
主    文
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
事    実
第1請求
特許庁が平成6年審判第21796号事件について平成10年4月6日にした審
決を取り消す。
第2前提となる事実(当事者間に争いのない事実)
1特許庁における手続の経緯
原告は、考案の名称を「面ホゾカッター」とする登録第1972446号実用新
案(昭和56年6月26日出願(昭和56年実用新案登録願第95659号)、平
成5年6月25日設定登録。以下「本件考案」という。)の実用新案登録権者であ
る。
被告は、平成6年12月26日本件考案の登録を無効とすることについて審判を
請求した。
特許庁は、この請求を平成6年審判第21796号事件として審理した結果、平
成10年4月6日、本件考案の登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は、同月
15日原告に送達された。
 2 本件考案の要旨
 中心に軸の取付孔を設けた主体の外周に間隔的に刃体を突設し、該刃体の先端内
側縁に側面平刃を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸
条に合致する形状の二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用の凹凸面との成形が出来る波
形状の抱き縁成形刃を設け、且つこの抱き縁成形刃には側面平刃に対して平行する
部分がなく、両刃の刃幅を先端から中心に及ぶに従って幅広く成形してなる面ホゾ
カッター。
(「ホゾ」の文字については、正しくは、「木」に旁(つくり)を「内」とした文
字が使用されているが、本判決では「ホゾ」で代用することとする。以下、同
じ。)
 3 審決の理由
審決の理由は、別紙2審決書の理由写し(以下「審決書」という。)に記載のと
おりであり、審決は、請求人(被告)が審判検甲第1号証(本訴検乙第1号証)と
して提出した【D】が使用していた面ホゾカッター(以下「【D】カッター」とい
う。)は、本件考案の出願の日(昭和56年6月26日)の前に日本国内において
公然知られ又は公然と実施されたものであるところ、本件考案に係る面ホゾカッタ
ーと【D】カッターとは同一であるから、本件考案は、その出願前に日本国内にお
いて公然知られ及び公然と実施された考案であり、実用新案法3条1項1号及び2
号の考案に該当し、同法37条1項1号により本件考案の登録を無効とすべきであ
ると判断した。
なお、審決書中の「面・カッター」、「一枚・」、「二枚・」又は「・の抱き
縁」の「・」は「木」に旁(つくり)を「内」とした文字(ただし、本判決では、
前記のとおり「ホゾ」と表記する。)の誤記であり、15頁17行、18行の「第
3条第1項及び第2項」は「第3条第1項第1号及び第2号」の誤記である。
第3 審決の取消事由
1審決の認否
  (1)審決の理由1(手続の経緯)、2(本件考案の要旨認定)及び3(当事者
の主張)は認める。
  (2)審決の理由4(当審の判断)(1)(証人【D】が使用したカッターの構成)
のうち、【D】カッターを資料1の図面に付された記号を用いて文言として表現す
ると、【D】カッターは、「中心に軸の取付孔(a)を設けた主体(b)の外周に
間隔的に刃体(c)を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃(d)を、外側縁に
予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の波形状の
抱き縁成形刃(e)を設け、」たものであることは認め、その余は争う。
  (3)審決の理由4(当審の判断)(2)(【D】カッターの構成に対する被請求
人の主張及びそれに対する検討)のうち、審決書6頁6行ないし7頁17行「主張
している。」まで及び9頁8行ないし17行は認め、その余は争う。
  (4)審決の理由4(当審の判断)(3)(本件考案と【D】カッターとの比較)
は争う。
  (5)審決の理由4(当審の判断)(4)(【D】カッターの公知性について)の
うち、審決書13頁14行ないし14頁6行及び15頁3行ないし16頁1行は争
い、その余は認める。
  (6)むすび(審決書16頁3行ないし7行)は争う。
 2取消事由
審決は、【D】カッターの平行部分の有無についての認定を誤り(取消事由
1)、本件考案におけるきちょうの要否についての判断を誤り(取消事由2)、本
件考案における兼用の方式についての判断を誤り(取消事由3)、【D】カッター
が公知公用となった時期についての認定を誤り(取消事由4)、審判手続上の違法
を有するものであるから(取消事由5)、違法なものとして取り消されるべきであ
る。
(1)取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)
 ア審決は、審判段階における証人【D】の証言等を根拠として、資料2
(本訴甲第57号証)を【D】カッター(検乙第1号証)の製作図面であると認定
しているが(審決書5頁6行ないし11行)、誤りである。
 証人【D】の証言には、各所に曖昧かついい加減な点、前後矛盾する点、重要な
個所における証言の訂正等が存在し、記憶の正確性に疑問があるばかりでなく、被
告の利益に資するための一方的な証言であり、到底信用することができないという
べきである。
 イ また、上記製作図面(甲第57号証)は、書き換えたり修正を施したりす
ることの容易な書面であり、かような信用性に乏しい証拠に基づいて【D】カッタ
ー(検乙第1号証)の形状を認定することはできないものというべきである。
 ウ さらに、【D】カッター(検乙第1号証、甲第23号証)には、明瞭に
修理した痕跡がみられ、刃先形状の変更の可能性を否定することができない。
   エ 仮に上記製作図面(甲第57号証)が【D】カッターを表しており、
【D】カッター(検乙第1号証)につき刃先形状の変更等がなかったとしても、
【D】カッターには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がない旨の審決
の認定は(審決書9頁3行ないし5行)、誤りである。
上記両証拠に表れている抱き縁成形刃はそれぞれ小さく、明瞭性を欠き、平行部
分の存否は判然としない。したがって、これら両証拠だけに基づいて平行部分の不
存在を認定することには無理がある。
 オなお、審決は、【D】カッターによって製作された桟材(検乙第2号証、
甲第29号証)の外面の曲面(ひょうたん面)と交差する部分のうち、抱き縁の先
端部とその根元部(柄に近い部分)に側面平刃と平行する切削刃部で切削されたと
認められる段部が存在することを認めながら、「カッターの側面平刃に対して平行
する部分で切削されたため形成されたと認められる実質的な折れ線状段部が形成さ
れているとは言えない。」(審決書8頁末行ないし9頁2行)とし、上記甲第29
号証等を排斥している。
 その根拠は、被告が審判部からの釈明に応じて行った「桟材の一部が切削時に該
刃部に押されて外側に逃げるため、その部分に削り残しとして形成された」か又は
「木工機械の調整不良により切削位置が僅かにずれ、一部が削り残しとして形成さ
れた」かいずれかに起因するとの回答(甲第20号証4頁)にあると思われるが、
このような被告の主張を裏付ける証拠は明らかにされておらず、審決は上記認定を
証拠に基づかずに行ったといわざるを得ない。むしろ原告が指摘したようにカッタ
ーの刃に平行部分が存在し、そのために桟材の接合線が折れ線状になると解するこ
とが合理的な推認というべきである。
(2)取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)
 審決は、「本件考案は、きちょう成形部を設けることを構成要件としていないか
ら、本件考案はきちょう成形部を有するとはいえない。」(審決書10頁4行ない
し6行)と判断するが、誤りである。
  ア 考案の要旨の解釈は、出願当時の技術常識を前提にして行うべきとこ
ろ、本件考案の出願当時以後の被告の作成頒布にかかる面ホゾカッターのカタログ
には、すべてきちょう成形段部を含む成形面を有する面ホゾカッターのみが掲載さ
れており、きちょう成形段部のない面ホゾカッターは一切掲載されていないこと、
被告自身、昭和52年10月に作成したカッターカタログ(甲第67号証)及び昭
和54年7月に作成したカッターカタログ(甲第31号証)のそれぞれ表紙の裏の
部分に、「キチョウを作ることが絶体条件です。」と記載してきちょうを設けるこ
との重要性、必須性を強調し啓蒙していたこと、しかも一枚ホゾ、二枚ホゾ兼用刃
の場合にはきちょう成形段部は常に2箇所に存在していること(甲第40号証の
2、甲第65号証、甲第66号証)によると、面ホゾカッターの抱き縁成形刃には
一枚ホゾ用でも、二枚ホゾ用でも常にきちょう成形段部が存在しなければならない
ことが本件考案の出願当時の技術常識になっていたものである。
 また、考案の要旨の解釈は、考案の詳細な説明及び図面を参酌して行うべきとこ
ろ、本件考案の図面(甲第2号証)記載の実施例には、すべてきちょう成形段部を
有している。
 これらによれば、本件考案は、きちょう成形段部を設けることを構成要件として
いるものと認めるべきである。
  イ さらに、以上の解釈が認められないとしても、本件については公知技術除
外説が適用されるべきである。すなわち、一般に「出願者は、その登録請求範囲の
項中往々考案の要旨ではなく、単にこれと関連するに過ぎないような事項を記載す
ることがあり、また逆に考案の要旨と目すべき事項の記載を遺脱することもあるの
は経験則の教えるところであるから、実用新案の権利範囲を確定するにあたって
は、「登録請求ノ範囲」の記載の文字のみに拘泥することなく、すべからく、考案
の性質、目的または説明書および添付図面全般の記載をも勘案して、実質的に考案
の要旨を認定すべきである。また、出願当時すでに公知、公用にかかる考案を含む
実用新案について、その権利範囲を確定するにあたっては、右公知、公用の部分を
除外して新規な考案の趣意を明らかにすべきである」(最高裁三小判決昭和39年
8月4日民集18巻7号1319頁)と解されている。
 本件においては、審決は、きちょう成形段部の存在しない【D】カッターは本件
考案の出願当時既に公知のものであり公然と実施されていたと認定しており、した
がって【D】カッターに認められるきちょう成形段部の存在しない形状を持たせた
技術は公知、公用の技術であると認定したものであるから、本件考案の構成要件の
中からきちょう成形段部の存在しない形状を持たせた技術の部分を除外して、きち
ょう成形段部の存在する形状を持たせた技術を新規な考案の趣旨と認めるべきであ
る。
  (3)取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)
 審決は、「【D】カッターの抱き縁成形刃も、二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホゾ用
の凹凸面との成形ができる波形状の抱き縁成形刃と認められる。」(審決書10頁
末行ないし11頁2行)と認定し、「本件考案に係るカッターと【D】カッターと
を比較すると両者は同一であると認める。」(審決書11頁14行、15行)と認
定するが、誤りである。
 【D】カッターの使用方法は、一枚ホゾ用として使用する場合にも二枚ホゾ用と
して使用する場合にも抱き縁成形刃の全体を使用する方法である(ただし、きちょ
う部分の厚みが異なる。)。
 これに対し、本件考案に係るカッターは、考案の詳細な説明の項に「本考案に係
る面ホゾカッターの刃体の先端外側縁に設けた抱き縁成形刃は予め桟材の表面に形
成せんとする二枚ホゾ用の凹凸条を含んだ一枚ホゾ用の凹凸条に合致する波形状に
形成したものであるからカッターの使い分け、即ち桟材の木口の切削位置を変える
ことにより抱き縁の内壁面に第5図(別紙1第5図参照)に示す様な一枚ホゾ用の
深い波形状の凹凸面を形成することも又第9図(別紙1第9図参照)に示す様な二
枚ホゾ用の浅い波形状の凹凸面を形成することも出来るので、…一枚のカッターで
兼用出来る特徴を有するものである。」(甲第2号証4欄16行ないし27行)と
記載されていることから明らかなように、カッターの刃の全体を使用して(深く使
用して)一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二枚ホゾ用
の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としているものであり、
【D】カッターとはその構成を異にするものである。
  (4)取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤
り)
 審決は、「(【D】)証人が【D】カッターを昭和55年12月に購入したとの
証言は信用できる。してみれば、【D】カッターは、本件考案の出願の日(昭和5
6年6月26日)前に公然と知られまたは実施されたものである。」(審決書15
頁9行ないし14行)と認定するが、誤りである。
 証人【D】の上記証言は、そもそも【D】カッターの購入の時期、過程について
訂正を繰り返したり、同証人がこれを見て購入をしたとされる古林木工所の【E】
カッターを表すとされる検査票(甲第51号証の9の写真の右から2番目のもの)
記載の平ホゾカッターの厚みは5.7ミリであるのに、同じく【E】カッターを表
すとしている納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)記載の平ホゾカ
ッターの厚みは5.5ミリとなっており、明らかに異なるカッターと考えられるも
のを同一のカッターであるかのごとく証言をしたり、その他各所にその信憑性を疑
うべき証言がなされており、【D】のかような証言を根拠とした審決の事実認定は
不当かつ違法な認定というべきである。
  (5)取消事由5(審判手続の違法性)
   ア 被告は、本件無効審判請求事件を担当した特許庁審判部からの公式の質
問に対し、平成10年2月3日特許庁審判長あてに回答書(甲第20号証)を提出
し、さらに、同日付けの弁駁書(甲第21号証)を提出した。
   イ 上記両書面には、後記ウのとおり、本件無効審判請求事件の帰趨を決す
るような重要な争点につき新たな主張がなされており、審判部は、原告に対し、こ
れらに対する防御の機会を与えるべきであった。
 しかるに、審判部は、これらの副本を原告に交付しなかった。しかも、審判部
は、原告代理人からの副本交付送達の強い要求に対しても、「副本を送付するつも
りはない。不服があれば東京高等裁判所に対して手続を行え。」と拒絶し、結局そ
のまま審決を下したものである。
 かような審決は、原告の権利である防御の機会を奪う極めて公平を失する審理手
続に基づくものであり、法の要求する適正手続に違反する違法な審決であって、違
法なものとして取り消されるべきである。
   ウ 被告の提出した回答書(甲第20号証)及び弁駁書(甲第21号証)に
は、本件無効審判請求事件の帰趨を決するような重要な争点につき新たな主張がな
されていた。すなわち、
   (ア) 被告は、回答書(甲第20号証)において、「甲第13号証(本訴甲
第34号証)及び資料3(本訴甲第58号証)は、何れも【F】カッターに対する
理解を便ならしめるために請求人が作成した図面に過ぎず、・・・理解に資するた
め提出した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く
意味のないことである。」(2頁9行ないし18行)と主張した。
 しかし、被告は、「今回新たに提出する資料3に係る図面は、【F】刃物を極力
正確な形で示したものである」(平成9年6月9日付け口頭審理陳述要領書(甲第
18号証9頁13行、14行))と主張しており、上記主張は従来の主張を明確に
変更したものである。
   (イ) 被告は、回答書(甲第20号証)において、【F】カッター及び
【D】カッターによって製作された切削見本には、側面平刃と平行する切削刃部に
より形成されたとの疑問のある段部が存在するが、それは側面平刃と平行する切削
刃部により形成されたものではなく、桟材の一部が切削時に該刃部に押されて外側
に逃げるため、その刃部に削り残しとして形成されたか、または木工機械の調整不
良により切削位置が僅かにずれ、一部が削り残しとして形成された旨(3頁下から
5行ないし4頁下から4行)主張した。
 しかし、かような主張もここで初めて主張されたものである。
   (ウ) さらに、被告は、弁駁書(甲第21号証)において、製品カタログ
(甲第31号証。審決時甲第10号証)が遅くとも昭和52年頃には発行されてい
たという事実を根拠づけるために、その表紙に掲載されたカッターの「5C」は1
975年3月に製造されていることを表している旨(5頁17行ないし下から5
行)主張した。
 かような主張は、初めての主張である。
   (エ)被告は、弁駁書(甲第21号証)において、有限会社丸一商会作成にか
かる古林木工所あての請求書(甲第48号証(審判甲第27号証))に記載されて
いる平ホゾカッターの厚みの数字5.5は同商会の記載ミスである旨(6頁9行な
いし下から8行)主張した。
 かような主張も、初めての主張である。
第4 審決の取消事由に対する認否及び反論
1認否
   審決の取消事由(5)アの事実は認め、その余は争う。
 2反論
(1)取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)に
ついて
   ア 審判段階における証人【D】の証言は信用することができるものであ.
り、これに反する被告の主張は理由がない。
   イ 原告は【D】カッターの製作図面(甲第57号証)が書き換えたり、修
正を施したりすることの容易な書面である旨主張するが、かようなことが容易であ
るはずがない。
 そもそも当該図面には、これに対応する【D】カッターの現物が存在する。しか
も【D】カッターそのものの製造・販売の時期については、【D】証人自身の証言
が存在する。かかる背景のもとで、被告が上記製作図面を書き換えたり、修正を施
したりする必要は全くない。
   ウ 【D】カッターには一箇所修理した痕跡がみられるが(甲第23号証参
照)、このことを根拠に刃先形状が変更されたとすることはできない。
 仮に刃先形状の変更がされたのであれば、カッターの1箇所の刃先のみならず、
他の刃先すべてを変更し、かつ、このカッターと対をなす面ホゾカッター及びこれ
らと雄雌の関係になる框(かまち)カッターの刃先形状もすべて変更されていなけ
ればならないが、【D】カッターにはこのような形状変更の痕跡は全く見られな
い。
   エ 甲第23号証の各写真、殊に9、10及び甲第59号証の製作図面を、
【D】カッター(検乙第1号証)の現物とともに比較対照すれば、【D】カッター
には抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がないことは明らかに看取する
ことができる。
   オ 被告が審判部に対してした削り残しや木工機械の調整不良についての釈
明は、木工機械による加工の場合において現にしばしば生ずる現象の説明をしたも
のであり、これを審判官が合理的な説明として受け入れたのは当然のことである。
(2)取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)に
ついて
 本件考案の実用新案登録請求の範囲には、きちょうの点が規定されていないか
ら、本件考案は、きちょうをその構成要件とするものではない。
 【D】カッターによる切削加工例(甲第29号証)にきちょうが存在するからと
いって、これによりきちょうの存在が必須であるとなるものでないことは、理の当
然である。
(3)取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)につい

 原告は、本件考案はカッターの刃の全体を使用して一枚ホゾ用の成形面を、刃の
一部を使用して二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件
としている旨主張するが、本件考案の実用新案登録請求の範囲にはこのような構成
要件は全く記載されていない。
 なお、【D】カッターの使用においても、甲第39号証左下の木型を作成する場
合においては抱き縁成形刃の一部しか使用しないものである。
(4)取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤
り)について
 【D】証人は、昭和50年代に自らがした【D】カッターの購入につき、その可
能な限り正確な購入日時を特定すべく、わざわざ第1回証言(甲第68号証)の
後、同業者の古林木工所に確かめた(甲第69号証4項)。その結果、昭和52、
3年頃本件カッターを購入したというのは間違いで、昭和55年に購入したのが正
しいことが確認できたものである(甲第69号証4項)。
 【D】証人が本件カッターを購入するに至ったきっかけは、昭和53年の東京で
の建具展示会と住まいの表情展にて【D】カッターと同じものを見たことからであ
るというのは、極く自然なことである。
 しかも、古林木工所が【D】カッターと同様の【E】カッター(甲第51号証)
を被告から購入したのが昭和55年7月5日であることは、甲第44号証(【E】
に対するご質問書)によってのみならず、甲第47号証(納品書)及び甲第48号
証(請求書)の各日付によって明確に裏付けられるのである。
 原告は、【E】カッターにつき、検査票(甲第51号証9の写真)と納品書(甲
第47号証)及び請求書(甲第48号証)におけるカッターの厚さの違いを指摘す
る。この点については被告の側においても不明であるが、甲第51号証写真中に
は、古林木工所使用のカッター(検乙第7号証)を納める箱に同梱されていた検査
証が4枚写っており、製造番号OG02132に係る検査証には、「サイズ」の項
目中に「T5.7」の表示がなされているので、検乙第7号証として提出した古林
木工所使用のカッターは、その厚みが5.7mmのものであったことに間違いないと考
えられる。したがって、納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)にそ
れぞれ「5.5」と記載されているのは、請求書を発行した有限会社丸一商会の記
載ミスとしか考えられない。
(5)取消事由5(審判手続の違法性)について
   ア 回答書や弁駁書の副本を原告に送付するか否かは審判長の判断に委ねら
れるものであり、これをもって攻撃、防御の機会を不当に奪ったということにはな
らない。
  イ(ア) 「甲第13号証及び資料3は、何れも【F】カッターに対する理解を
便ならしめるために請求人が作成した図面に過ぎず、・・・理解に資するため提出
した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く意味の
ないことである。」との被告の主張は、本件無効審判請求事件は、本件考案の出願
前より【D】カッターや【F】カッターが公然実施されていたことを無効理由とし
て提起されているものであるから、これら【D】カッターや【F】カッターそのも
のがいかなる構造になっているのかが問題とされるべきであって、理解に資するた
め提出した図面において「側面平刃に対し平行する部分」の有無を云々しても全く
意味のないことであると主張しているにすぎず、この論述が従来の主張を変更した
ものに当たるものではない。
   (イ) さらに、被告において切削見本の木工機械による加工時のずれとか削
り残しという加工上生ずる現象の解説が「新たな主張だ」などということは、牽強
付会の議論にすぎない。
   (ウ) 【F】証人は、昭和52年10月に甲第10号証と同様の内容のカタ
ログを見て【F】カッターを購入したと述べている(甲第70号証)。しかも当該
【F】カッターに関する書証(甲第30ないし第35号証)の提出時期は、平成8
年9月18日付け物件提出書により明白である。
   (エ) さらに、古林木工所あての納品書(甲第47号証)、請求書(甲第4
8号証)についての被告の主張も、証拠の説明にすぎず、これをもって原告の防御
の機会が奪われたなどということはありえない。
理    由
1取消事由4(【D】カッターが公知公用となった時期についての認定の誤り)に
ついて
 (1)弁論の全趣旨及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第24号
証、第44号証、第48号証、成立に争いのない甲第47号証及び第68、第69
号証(審判における証人【D】の調書)によれば、検乙第1号証及び甲第23号証
のカッター(【D】カッター)は、被告の製造に係るものであるが、福島県伊達郡
<以下略>で建具店(有限会社東城木工所)を営む【D】が昭和55年12月に福
島市の有限会社丸一商会からこれを買い入れ、以後、建具加工に使用していたこと
が認められる。
 (2)原告は、証人【D】の証言は、そもそも【D】カッターの購入の時期、過程
について訂正を繰り返したり、これを見て購入をしたとされる【E】カッター中の
平ホゾカッターの厚みは5.7ミリであるのに、これに対応するとして提出された
納品書(甲第47号証)等における厚みは5.5ミリとなっており、明らかに異な
るカッターと考えられるものを同一のカッターであるかのごとく証言をしたりする
などその信用性を疑うべきである旨主張する。
 しかしながら、前掲の各証拠によれば、平成6年8月当時、【D】は、被告から
の質問書に対し、被告製品である【D】カッターを昭和55年12月に福島市の有
限会社丸一商会から購入した旨書面により回答していたものであり(甲第24号
証)、原告が指摘する審判(平成8年9月及び同年11月)における【D】証人の
購入時期に関する証言の訂正も、同証人が昭和53年の東京における全国建具展示
会と住まいの表情展で実演を見た後にすぐ購入したか(東京における展示会の時期
については、甲第36号証30頁参照)、近隣の同業者である古林木工所が購入し
たものを見た後か記憶がはっきりしなかったため、古林木工所に確認の上、「昭和
53年ころ」から「昭和55年12月」と証言を訂正したというものであり、他の
関係証拠と対比してみても、証言内容に格別の作為ないし虚偽があることを疑わし
める事情は存在せず、訂正があったことをもって、【D】証人の証言を信用できな
いものとすることはできない。
 カッターの厚さのちがいの点については、確かに、甲第51号証(9の写真の右
から2番目のもの)によれば、【E】カッター中の平ホゾカッターの厚みは5.7
ミリであるのに対し、納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)には厚
さ5.5ミリと記載されていることが認められ、一致していないことが認められ
る。しかしながら、弁論の全趣旨により【E】カッターであると認められる検乙第
7号証及び弁論の全趣旨により【E】カッターを撮影した写真であると認められる
甲第51号証によれば、【E】カッターには「0G02130」、「0G0213
1」との刻印が付されていることが認められるが、弁論の全趣旨により真正に成立
したものと認められる甲第25号証及び弁論の全趣旨によれば、先頭の「0」は西
暦で表し、2番目のアルファベット文字は製造月を表し、3番目及び4番目の数字
は製造日を表していることが認められ、そうすると、【E】カッターは刻印の点か
ら昭和55年(1980年)7月2日に製造されたものと認められるから、同時期
に作成された納品書(甲第47号証)及び請求書(甲第48号証)は、平ホゾカッ
ターを含む【E】カッターの納品書等であり、ただ、平ホゾカッターの厚さについ
ての記載に誤りがあるものと認めるべきである。
 したがって、【D】証言の信用性を問題とする原告の上記主張は理由がない。
 (3) よって、「(【D】)証人が【D】カッターを昭和55年12月に購入し
たとの証言は信用できる。してみれば、【D】カッターは、本件考案の出願の日
(昭和56年6月26日)前に公然と知られまたは実施されたものである。」との
審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由4は理由がない。
2 取消事由1(【D】カッターの平行部分の有無についての認定の誤り)につい

 (1)検乙第1号証によれば、【D】カッターの抱き縁成形刃には側面平刃に対し
平行する部分がないことが認められる。
 さらに、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第57号証によれ
ば、【D】カッターの設計図面である甲第57号証においても、刃の厚みが6.3
mm、刃先の半径方向の長さが12mm、刃先先端部及び刃先基部が側面平刃と平行を
なしつつ、その間において刃先の断面形状がなめらかな波形状となるように半径6
mmと半径8mmの円弧を当接させた曲面を形成すべきことが示されていることが認め
られ、【D】カッターの抱き縁成形刃に側面平刃に対し平行する部分がないこと
は、その設計図面である甲第57号証からも裏づけられる。
 これに反する原告の主張は採用することができない。
 (2)原告は、【D】カッター(検乙第1号証、甲第23号証)には明瞭に修理し
た痕跡がみられ、刃先形状の変更の可能性を否定することができない旨主張する。
しかしながら、刃先形状を変更するためには6つある刃のすべてにつき刃先形状を
変更する必要があるところ、原告の指摘する修理の痕跡は6つある刃のうち1つにの
み認められるものであり、他の5つの刃には何ら修理の痕跡は認められないもので
あるから、刃先形状が変更された可能性をいう原告の上記主張は到底採用すること
ができない。
 さらに、上記製作図面(甲第57号証)は書き換えたり修正を施したりすること
の容易な書面であり、信用性に欠ける旨主張するが、上記製作図面(甲第57号
証)に書き換え等があったことを疑わせるような形跡はなく、これを認めるに足り
る証拠もないから、原告の上記主張は採用することができない。
(3)よって、【D】カッターには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分
がない旨の審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない。
 
3 取消事由2(本件考案におけるきちょうの要否についての判断の誤り)につい

 (1)原告は、本件考案はきちょう成形段部を設けることを構成要件としているか
ら、きちょう成形段部を設けていない【D】カッターと同一ではない旨主張する
(甲第5号証の1及び弁論の全趣旨によれば、「きちょう」とは、面ホゾカッター
により切削された木口の縦桟と横桟の接合部分(嵌合部分)に強度を高めるために
ある程度の厚みを持たせた形状にすることがあり、このような桟材の抱き縁の先端
部に所要の厚みが残るように切削加工して嵌合を強固にする木組みをいうものと解
される。)。
 しかしながら、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「予め組立てんとする
桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホ
ゾ用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃」と規定されているのみであ
り、波形状の抱き縁成形刃にきちょう成形段部を設けることは何ら規定されていな
いから、本件考案はきちょう成形段部を設けることを必須の構成要件としていると
解することはできない。
 (2)原告は、面ホゾカッターの抱き縁成形刃には一枚ホゾ用でも、二枚ホゾ用で
も常にきちょう成形段部が存在しなければならないことが本件考案の出願当時の技
術常識になっていた旨主張する。しかし、甲第69号証及び第70号証(審判にお
ける証人【D】及び証人【F】の各証人調書)によれば、面ホゾ加工の技術におい
て、きちょうを作ることが常に必要であるとはされていないことが認められ、原告
が指摘する被告のカタログ(甲第31号証、第67号証)にはきちょう成形段部を
含む成形面を有する面ホゾカッターのみが掲載されており、被告自身そのカタログ
において、「キチョウを作ることが絶体条件です、」と記載してきちょうを設ける
ことの重要性を啓蒙していたこと等のみでは、面ホゾカッターの抱き縁成形刃にき
ちょう成形段部が必ず存在しなければならないことが本件考案の出願当時の技術常
識になっていたものと認めることはできず、他に原告主張の技術常識を認めるに足
りる証拠はないから、原告の上記主張は理由がない。
 また、原告の考案の詳細な説明及び図面を参酌しての解釈及び公知技術除外論に
基づく主張も理由がない。
 (3) よって、「本件考案は、きちょう成形部を設けることを構成要件としてい
ないから、本件考案はきちょう成形部を有するとはいえない。」との審決の判断に
誤りはなく、原告主張の取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(本件考案における兼用の方式についての判断の誤り)について
 (1)原告は、【D】カッターは、二枚ホゾ用として使用する場合にも抱き縁成形
刃の全体を使用する方法であるが、本件考案は、カッターの刃の全体を使用して
(深く使用して)一枚ホゾ用の成形面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二
枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成するという使用方法を構成要件としているもので
あり、【D】カッターとはその構成を異にする旨主張する。
 しかしながら、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「二枚ホゾ用の凹凸面
と一枚ホゾ用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃を設け」と規定され
ているのみであり、本件明細書の考案の詳細な説明における「本考案に係る面ホゾ
カッターの刃体の先端外側縁に設けた抱き縁成形刃は予め桟材の表面に形成せんと
する二枚ホゾ用の凹凸条を含んだ一枚ホゾ用の凹凸条に合致する波形状に形成した
ものであるからカッターの使い分け、即ち桟材の木口の切削位置を変えることによ
り抱き縁の内壁面に第5図に示す様な一枚ホゾ用の深い波形状の凹凸面を形成する
ことも又第9図に示す様な二枚ホゾ用の浅い波形状の凹凸面を形成することも出来
るので、従来一枚ホゾ用と二枚ホゾ用の二枚のカッターを必要としたところを一枚
のカッターで兼用出来る特徴を有するものである。」(甲第2号証4欄16行ない
し27行)との記載も、実施態様についての記載と認めるべきものであるから、本
件考案においてカッターの刃の全体を使用して(深く使用して)一枚ホゾ用の成形
面を、刃の一部を使用して(浅く使用して)二枚ホゾ用の成形面をそれぞれ形成す
るという使用方法を構成要件としていると解することはできない。そうすると、こ
れを前提とする原告の上記主張は理由がない。
 (2)また、甲第68、第69号証(証人【D】の証人調書)によれば、【D】カ
ッターにおいても、桟材の厚さとホゾの厚さの関係に応じて刃の一部を使用したり
(浅く使用したり)、全部を使用したり(深く使用したり)していることが認めら
れ(甲第39号証参照)、常に抱き縁成形刃の全体を使用しているものではないこ
とが認められるから、原告の上記主張は、この点からも理由がない。
 (3)よって、「【D】カッターの抱き縁成形刃も、二枚ホゾ用の凹凸面と一枚ホ
ゾ用の凹凸面との成形ができる波形状の抱き縁成形刃と認められる。」、「本件考
案に係るカッターと【D】カッターとを比較すると両者は同一であると認める。」
との審決の認定に誤りがなく、原告主張の取消事由3は理由がない。
5 取消事由5(審判手続の違法性)について
 (1)被告が本件無効審判請求事件を担当した特許庁審判部からの公式の質問に対
し、平成10年2月3日特許庁審判長あてに回答書(甲第20号証)を提出し、さ
らに、同日付けの弁駁書(甲第21号証)を提出したことは、当事者間に争いがな
い。
 (2)特許権等を失うかもしれない立場に立つ特許等無効審判の被請求人として
は、特許等の無効事由を知らされ、それに対して自己の言い分を主張する機会が与
えられなければならないところ、無効審判請求人の主張は当初から審判請求書にす
べて記載されているとは限らず、後に提出された弁駁書や審判長からの審尋書で重
要な間接事実等が主張されることがあるものであるから、そのような重要な間接事
実等が記載された書面は原則として無効審判の被請求人に送達され、それに対する
反論の機会が与えられなければならない。特許法134条1項も、形式的に審判請
求書と題された書類のみを送達すれば足りると規定しているものではなく、上記の
ように無効審判の被請求人の反論をさせる必要がある事項の送達を規定しているも
のと解すべきである。そして、重要な間接事実等が記載された回答書や弁駁書が無
効審判手続の終了前に送達されなかったことは、それが審決の結論に影響する限
り、審決の取消事由になると解すべきである。
 (3)以上の観点から本件について検討する。
  ア 原告は、回答書(甲第20号証)における資料3(本訴甲第58号証)
は、【F】カッターに対する理解を便ならしめるために被告が作成した図面である
との説明が、「今回新たに提出する資料3に係る図面は、【F】刃物を極力正確な
形で示したものである」(平成9年6月9日付け口頭弁論陳述要領書(甲第18号
証9頁13行、14行))との従来の主張を明確に変更したものである旨主張す
る。
 しかしながら、原告が指摘する上記「今回新たに提出する資料3に係る図面は、
【F】刃物を極力正確な形で示したものである」との上記口頭弁論陳述要領書の記
載は、資料3が【F】カッターに対する理解の便宜のために被告が作成した図面で
あることを意味していることは明らかであり、回答書における上記主張が従来の主
張の変更に当たるものではない。
イ 原告は、回答書(甲第20号証)における、【F】カッター及び【D】カ
ッターによって製作された切削見本にある側面平刃と平行する切削刃部により形成
されたとの疑問のある段部は桟材の一部が切削時に該刃部に押されて外側に逃げる
ためその刃部に削り残しとして形成されたか、木工機械の調整不良により切削位置
がわずかにずれ一部が削り残しとして形成された旨(3頁目の下から5行ないし4
頁目の下から4行)の被告の主張は、初めてされたものである旨主張する。確か
に、甲第75号証によれば、本件を担当した審判部から被告に対し発出された審尋
書には、【D】カッターにより製作された検甲2の1、検甲2の2号証にも同様な
段部が存在する旨指摘されていたことが認められるが、上記の回答書における被告
の主張は、その内容をみると、新たな事実主張というより、疑問のある段部が形成
された原因について、加工上生じ得る一般的な事柄から推測を述べたものにすぎ
ず、現に、審決においては、上記審尋書とは異なり、検甲第2号証の1及び同2
(本訴検乙第2号証の1、2)につき段部に起因する接合線の折り線の存在を認め
ていないものである(審決書8頁14行ないし9頁2行)。したがって、上記被告
の主張に対し反論の機会を与えなかったことに手続上の違法を生じ得る可能性があ
るとしても、この点は審決の結論に影響しないことが明らかであって、違法とすべ
きものとはいえない。
ウ 原告は、弁駁書(甲第21号証)において、製品カタログ(甲第31号
証。審判甲第10号証)が遅くとも昭和52年頃には発行されていたという事実を
根拠づけるために、その表紙に掲載されたカッターの「5C」は1975年3月に
製造されていることを表している旨(5頁9行ないし下から5行)の主張は、新た
な主張である旨主張する。しかしながら、被告の製造するカッターに付された製造
番号の意味については既に主張されていたところであり(甲第3号証7頁8行ない
し19行)、これをもって新たな主張と認めることはできない。
エ 原告は、弁駁書(甲第21号証)において、有限会社丸一商会作成に係る
古林木工所あての納品書(甲第47号証)、請求書(甲第48号証)に記載されて
いる平ホゾカッターの厚みの数字5.5は同商会の記載ミスである旨(6頁9行な
いし下から8行)の主張は新たな主張である旨主張する。しかしながら、被告の上
記主張については、【E】カッターは昭和55年7月に納入され、その裏付けが納
品書(甲第47号証)、請求書(甲第48号証)であるとの既にされていた被告の
主張(甲第18号証6頁8行ないし24行)から当然予想される範囲のものにすぎ
ず、この点につき原告に反論の機会を与えなかったことをもって、審決の結論に影
響すると認めることはできない。
  オ 以上のとおり、原告が反論の機会を与えるべきであると主張する事項は、
新たな主張とはいえないものか、仮に新たな主張であるとしても、結論に影響しな
い事項であるから、審判手続の違法性をいう原告主張の取消事由5も理由がない。
6結論
よって、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成11年10月12日)
東京高等裁判所第18民事部
    裁判長裁判官 永  井  紀  昭
    裁判官 塩  月  秀  平
    裁判官 市  川  正  巳

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛