弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文同旨
第2事案の概要
1(1)被控訴人は,平成21年4月8日,農地である原判決別紙物件目録記載の
土地(本件土地)の所有権を取得することについて,東京都α町農業委員会(処分
行政庁)に対し,農地法(平成21年法律第57号による改正前。以下,特に断る
場合を除いて同じ。)3条による許可申請(本件申請)をしたが,処分行政庁は,
同年5月25日付けで,被控訴人に対し,①被控訴人が取得後農地の全てについて
耕作の事業を行うとは認められず(同条2項2号),②被控訴人は主たる事業が農
業ではないから農業生産法人以外の法人がこれを取得する場合であること(同号の
2)を不許可事由として,不許可処分(平成21年法律第57号附則2条1項によ
り,同法による改正後の農地法3条1項の規定によってしたものとみなされる。本
件不許可処分)をした。本件は,被控訴人が,本件不許可処分は違法であると主張
して,その取消しを求めた事案である。
(2)本件不許可処分に関係する農地法の規定は次のとおりである。
3条1項農地又は採草放牧地について所有権を移転し,又は地上権,永小作権,
質権,使用貸借による権利,賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権
利を設定し,若しくは移転する場合には,政令で定めるところにより,当事者が農
業委員会の許可(括弧内省略)を受けなければならない。ただし,次の各号のいず
れかに該当する場合及び第5条第1項本文に規定する場合は,この限りでない。
2項前項の許可は,次の各号のいずれかに該当する場合には,することができ
ない。(ただし書省略)
二号所有権,地上権,永小作権,質権,使用貸借による権利,賃借権若しく
はその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世
帯員がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧
地のすべてについて耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合
二号の二農業生産法人及び農業経営基盤強化促進法第4条第4項に規定する
特定法人(以下「特定法人」という。)以外の法人が前号に掲げる権利を取
得しようとする場合
2条1項この法律で「農地」とは,耕作の目的に供される土地をいい,「採草
放牧地」とは,農地以外の土地で,主として耕作又は養畜の事業のための採草又は
家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
2項この法律で「自作地」とは,耕作の事業を行う者が所有権に基いてその事
業に供している農地をいい,「小作地」とは,耕作の事業を行う者が所有権以外の
権原に基いてその事業に供している農地をいう。
7項この法律で「農業生産法人」とは,農事組合法人,株式会社(公開会社
(会社法(平成17年法律第86号)第2条第5号に規定する公開会社をいう。)
でないものに限る。以下同じ。)又は持分会社(同法第575条第1項に規定する
持分会社をいう。以下同じ。)で,次に掲げる要件のすべてを満たしているものを
いう。
一号その法人の主たる事業が農業(その行う農業に関連する事業であつて農
畜産物を原料又は材料として使用する製造又は加工その他農林水産省令で定
めるもの,農業と併せ行う林業及び農事組合法人にあつては農業と併せ行う
農業協同組合法(昭和22年法律第132号)第72条の8第1項第1号の
事業を含む。以下この項において同じ。)であること。
2原審は,本件不許可処分は違法であると判断し,被控訴人の請求を認容した。
当裁判所は,本件不許可処分は適法であるから,被控訴人の請求は棄却すべきも
のと判断した。
3前提事実(当事者間に争いのない事実,顕著な事実並びに原判決掲記の証拠
及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),争点,当事者の主張は,原判決
2頁22行目の「a」の次に「(a)」を,23行目の「b」の次に「(b)」を,
3頁初行の「c」の次に「(c)」を,それぞれ加えるほかは,原判決の「事実及
び理由」の「第2事案の概要」1~3(原判決2頁13行目~10頁21行目。
別紙を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。
4当審における当事者の補足的主張は次のとおりである。
〔控訴人〕
(1)農地法にいう「耕作」とは,肥培管理を行って作物を栽培することを意味す
るが,「作物」とは,生育後の収穫を目的として栽培される農作物をいうのであっ
て「植物」とは同義ではない。「作物」が収穫を目的とすることは,統計法(平成
19年法律第53号)に基づく「日本産業分類」(乙6)において,耕種農業に属
する産業分類がいずれも「栽培し,出荷する」ことを要件としていることや,過去
の裁判例(津地裁昭和31年8月13日判決),農地に係る相続税納税猶予制度の
取扱い(乙7~9)からも明らかである。そして,別紙図面1に「A」及び「B」
と記載された区画(以下,同図面記載の「A」~「E」の区画をそれぞれ「区画
A」のようにいう。)に植栽される樹木の役割は,切り花を収穫するためではない
から,「作物」には当たらない。
(2)次のア~ウの事情からすると,区画A及びBの利用目的は散骨用地であり,
植栽される樹木の役割は散骨用地の装飾にある。dは農地ではなく墓地であって,
被控訴人の事業は,散骨用土地施設の賃貸・管理事業であり,耕作の事業ないし農
業ではない。
ア被控訴人は,「d」のウェブサイト(乙1,14。本件ウェブサイト)にお
いて,本件土地での「散骨」を広告宣伝しているところ,地面に穴を掘り,焼骨を
撒いた上で樹木の苗木を植える方法等は,一般論として,墓地,埋葬等に関する法
律(墓埋法)4条所定の「焼骨の埋蔵」に該当する(乙4)。被控訴人は,「人の
焼骨」を混合した「肥培剤」を肥料として散布するから,「散骨」ではないと主張
するが,散布の対象が「人の焼骨」である以上,それを散布する行為は「散骨」で
ある。また,被控訴人は,厚生労働省健康局生活衛生課に相談し,本件事業が墓埋
法に抵触しないとの回答を得たと主張するが,同課には,平成19年2月7日の被
控訴人からの相談に対し「計画されている事業は,墓地でなければ困難と伝えた」
(乙17)との記録が残されており,上記主張は虚偽である。
イ本件ウェブサイトには,αの土地代が安く,高額の墓石がないことから「お
値段はエコノミー」(2頁)と記載され,「散骨価格,サービス内容」に記載され
た価格は,散骨される土地の区画の面積に応じたものとなっている。また,その価
格は,一般的な樹木の販売価格(カンツバキで950円~3000円〔乙5〕)や
本件ウェブサイトに記載された花枠を含めた樹木の代金(1万円相当〔乙1・4
頁〕)に比して,樹木の賃貸料としては極めて高額となっている。
ウ区画Aは,別紙図面3のとおり利用される予定であり,これによれば,植栽
部分(同図面の1~26の各区画)の面積は,区画全体の4分の1にも満たず,各
区画に1本の樹木が植栽されるにすぎない。この植栽の配置は,植物の植栽の合理
性の視点から決定されたものではなく,散骨を行う者の通行の便宜と散骨用地間の
密度が高くならないことに配慮したものである。
(3)原判決は,本件土地に肥培管理が行われることのみをもって,被控訴人が,
本件土地において耕作の事業を行うと認めたが,肥培管理は,ある土地が農地であ
ることや,事業が農業であることの必要条件であって,十分条件ではない。このこ
とは,過去の裁判例からも明らかである。そして,被控訴人が本件土地において行
うと主張する肥培管理を含む農作業の内容は,次のとおり,農業的土地利用の主張
を正当化するにはあまりに異様な土地の利用方法であって,散骨用地であることを
覆すだけの農業的土地利用の実質を有するものと認めることはできない。
ア被控訴人が主張する作業内容のうち,成木に関わるものは,剪定のみである
ところ,そもそも剪定は,土地に労資を加える作業ではないから,肥培管理には当
たらない。被控訴人の作業内容は,作物の生育の全課程にわたって肥培管理を行う
ものではなく,林業的管理にとどまるものである。
イ被控訴人は,「人の焼骨」を混合した「肥培剤」を肥料に用いると主張する
が,「人の焼骨」を肥料にするという発想は,それ自体,人倫上,極めて異様なこ
とであり,「人の焼骨」は,肥料取締法(昭和25年法律第127号)に基づく農
林水産大臣告示所定の肥料の成分に含まれない。被控訴人は,「肥培剤」は自己使
用用であるから,同法の適用がないと主張するが,その主張は誤りであり,「人の
焼骨」を肥料として用いる場合,同法の適用上は,火葬場が肥料の生産者となるの
であって,被控訴人が生成者となるものでもない。
ウαでは,椿の植栽が広範に行われているが,その態様としては,①防風林と
しての植栽,②実を収穫するための植栽,③切り枝,切り花を収穫するための植栽,
④苗木の収穫のための植栽,⑤盆栽としての植栽の5つがあるところ,農業の範ち
ゅうに属するものは②~④のものである。被控訴人が区画A及びBにおいて行うと
主張する椿の植栽に係る「農作業」は,上記⑤に相当するものであり,農業とはい
えない。
〔被控訴人〕
(1)「耕作」の対象となる「作物」につき,最高裁昭和38年(オ)第1065
号同40年8月2日第二小法廷判決・民集19巻6号1337頁(昭和40年判
決)及び同昭和55年(オ)第1069号同56年9月18日第二小法廷判決・裁
判集民事133号463頁(昭和56年判決)は収穫を要件としていない。また,
統計法に基づく「日本産業分類」は,農地法とは趣旨目的を異にするし,同分類に
おける「耕種農業」にいう「栽培」とは「植物を植えて育てること」を意味するか
ら「作物」につき収穫を要件とする根拠にはならない。控訴人が引用する津地裁昭
和31年8月13日判決は,竹林に関するものであるから,本件に引用するのは妥
当でなく,農地に係る相続税納税猶予制度の取扱いについては,本件土地は,むし
ろ乙7号証において農地に当たる例とされる土地である。
(2)区画A及びBの利用目的が散骨用地であり,dは墓地であるとの控訴人の主
張は,次のとおり根拠がない。
ア被控訴人は,後記(3)ア(ウ)のとおり,本件土地に「人の焼骨」を混合した
「肥培剤」を肥料として散布するのであり,本件土地に「散骨」が行われることは
ない。パンフレット(甲5。本件パンフレット)や本件ウェブサイトにおける「散
骨」の記載は,顧客への分かりやすさのためのものであり,本件パンフレットには
「通常散骨はお断りいたします。」,「『d』は記念植樹園です。あなたの分身の
花の木を育て,花を咲かせ,育樹をすることが本来の目的です。」(甲5・6頁
目)と記載している。墓埋法4条との関係でも,被控訴人は,厚生労働省健康局生
活衛生課の担当者に本件事業の内容を説明し,同法に抵触しない旨の回答を得てい
る。
イ控訴人は,賃料と樹木の価格について主張するが,被控訴人が考案した「記
念植樹園」は,新しいビジネスモデルであるから,その事業の付加価値を勘案して
賃料を設定することは,何ら不合理なことではない。
ウ控訴人が主張する区画の配置については,不特定多数の者が来園することを
前提とする一般的な植樹園などの構造や配置と同様である。また,本件パンフレッ
ト4頁目には「1.8メートルの四角い焼き丸太のスクエアに12本の侘助などの
園芸種の椿が植樹されます」と記載され,上記スクエアは別紙図面3の1~26の
各区画であるから,同図面の1~26の各区画に各1本の樹木が植栽されるとの主
張は的はずれである。
(3)原判決は,本件土地のうち肥培管理を施すものに該当する部分と,その他の
部分が一体として土地利用されているか否かを,農地法の規制の趣旨に反した土地
利用形態に当たるか否かの観点から具体的事実に即して判断したものであって,相
当である。控訴人が引用する過去の裁判例は「宅地」や「工場敷地」「運動場」
「公園」の一部に関するものであり,いずれも「通常であれば耕作されないと認め
られる土地」に関するものにすぎない。これに対して,被控訴人は,本件土地にお
いて,次のとおり肥培管理を行うものである。
ア本件土地で行う農作業の内容は次のとおりである。
(ア)水やり
毎日の水やりは必須であり,夏場は1日2回水やりを行う。各区画には水道口が
設置してあるほか,北側農機具置き場兼画廊横に貯水タンクを備えており,1日5
時間程度を要する。
(イ)除草
区画Cのプランター内の鉢植えに生える雑草については,指で一つ一つむしり取
り,その他の区画に生えた雑草は,専門の土木造園業者に委託して,エンジン付き
の草刈機により除去する。また,場所によっては除草剤の散布を定期的に行い,夏
場は,雑草の生長が早いため,3~4回除草作業を行う。
(ウ)施肥
夏物(夏場に花を咲かせる品種)の椿については春に,冬物(冬場に花を咲かせ
る品種)の椿については夏に,それぞれ施肥を行う。事業開始後は,遺骨の骨粉を
混合加工した「肥培剤」を顧客の椿や桜の記念樹が植栽された土壌に散布し,樹木
を成育させることになる。この「肥培剤」とは,肥料取締法3条所定の公定規格に
適合した市販の椿の肥培育成用の化学肥料(有機肥料)に,顧客から提供される
「人の焼骨」を電動粉砕混合機で2ミリ以下の粉末状の「灰粉」としたものを,完
全に混合することにより生成加工するものであり,その生成を行うのは,被控訴人
である。なお,この「肥培剤」は被控訴人が全量を消費するものであるから,肥料
取締法の規制の対象とはならないし,仮に規制を受けるとしても,牛や豚などの動
物の骨粉には,肥料に適するリン酸等の成分が含まれており,脊椎動物(取り分け
人)の骨にはリンが豊富に蓄積されているから,人骨を粉砕加工して一般の有機肥
料に混合する上記「肥培剤」は,植物の肥培育成に対する効果・効能の点において
も,普通肥料としての公定規格に適合するものである。
(エ)害虫・害鳥・強風対策
春に毛虫駆除を行うほか,赤い花や実を狙って飛来してくるカラス等による鳥害
対策を講じている。また,α特有の強風対策として,風よけの柱止めや防風林の維
持管理を行う。
(オ)剪定
夏物は晩秋,冬物は晩春の時期に,樹高2m,横幅1m以内程度のサイズで剪定
を行う。剪定作業は,原則として被控訴人が行うが,樹高が高くなれば,土木造園
業者に委託して行うことになる。
(カ)その他
被控訴人は,本件土地に植栽された椿の花について,開花日,樹木の場所,花の
色と種類,雄しべ・雌しべの別と色・サイズを,収穫記録原本にそれぞれ記録して
いる。特に見栄えの良い花については,aがデッサンし,北側農機具置き場兼画廊
に額縁に容れて展示し,顧客に特典として領布するほか,椿の生育記録及び本件事
業の広報手段として利用することが予定されている。
イ上記ア記載の農作業には,常時,aとbの2名が,夏場は1日平均10時間
程度,冬場は1日平均5時間程度従事するほか,草刈り,剪定等の必要に応じて更
に1~2名の作業員を雇っており,被控訴人は,一連の農作業に必要な別紙「d農
機具リスト」記載の農機具を保有している。被控訴人には,適切な肥培管理確保の
ためのマニュアル等は現在ないが,aらは,本件土地の現所有者であるc及びα町
内で園芸資材店を営むeから,椿の肥培管理の指導を受けており,上記ア記載
の農作業は,α町に存在する他の椿農家の肥培管理の内容と同一である。
第3当裁判所の判断
1農地法3条2項2号の不許可事由について
(1)農地法2条1項,3条2項2号にいう「耕作」とは,土地に労資を加え,肥
培管理を行って,作物を栽培することをいい,その作物は,穀類蓅菜類にとどまら
ず,花卉,桑,茶,たばこ,梨,桃,りんご等の植物を広く含み,それが林業の対
象となるようなものでない限り,永年生の植物でも妨げない(昭和40年判決)。
肥培管理とは,作物の生育を助けるため,その土地に施される耕うん,整地,播種,
灌がい,排水,施肥,農薬散布,除草等の一連の人為的作業であり,ある土地が農
地であるかどうかは,その土地に作物の栽培のための肥培管理が施されているかど
うかによって決定される(昭和56年判決)。
(2)以上に対し,控訴人は,農地法の目的に照らせば「耕作」に該当するために
は,育成後の作物の収穫を目的とすることが必要であり,成育した樹木の賃貸を目
的とする場合には,これに該当しない旨主張する。
しかし,農地法には,「耕作」に作物の収穫を要求する規定や,農地で栽培すべ
き作物やその処分の方法等を一定のものに制限する規定はない。また,農地法3条
は,同法の目的(1条)からみて望ましくない不耕作目的の農地の取得等の権利の
移転又は設定を規制し,耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ろうとする趣
旨に基づく規定であるところ(最高裁平成14年(受)第1459号同16年7月
13日第三小法廷判決・裁判集民事214号953頁),農業生産力の増進は,作
物の収穫ばかりでなく,作物を利用して金銭的収入を上げることなどによっても図
ることが可能であり,農地法が作物の収穫以外の方法による農業生産力の増進を排
除する趣旨であるとは解されない。
したがって,上記控訴人の主張は採用できず,生育した樹木の賃貸借が「収穫」
を目的としないことを理由として一律に「耕作」に当たらないとはいえない。
(3)もっとも,収穫目的での植物の栽培は,社会通念上,当該植物を作物として
栽培することを目的としていると認められるのが通常であるのに対し,永年生の植
物の栽培は,一般に,林業としても行われるほか,公園,庭園,花壇,生け垣,街
路樹,防風・防砂林,植物園,霊園,ゴルフ場などにおいても行われ,その栽培に
は,植物を作物として栽培すること以外の多様な目的があり得ると考えられる。ど
のような目的であれ,目的を持って植物を栽培する以上は,整地,施肥,除草など,
土地に労資を加え,植物の生育を助けるための一定の人為的作業が施されることが
予想されるが,その施される人為的作業は,通常,その栽培の目的に応じて必要な
内容・程度において行われることが通常であろうから,それが常に,植物を作物と
して栽培する目的で行われる場合と同様に農業生産力の増進に寄与するとは限らな
い。例えば,林業においても,林木の生育を助けるために,整地,植林,施肥,下
刈りなど土地に労資を加える一連の人為的作業は行われると認められるが(乙11
別紙2,乙12),それが「耕作」に当たらないこと(昭和40年判決)は,前記
説示のとおりである。これは,通常の林業において林木の生育を助けるために土地
に施される人為的作業が,その実態において,通常の農業において作物の生育を助
けるために土地に施される人為的作業とは異なっており,前者が,植物を作物とし
て栽培する目的と同様に農業生産力の増進に寄与するようなものではなく,作物の
栽培を目的とするとは認められないことによると解される。そのような例は,林業
ばかりでなく,公園,庭園など社会において行われている他の植物の栽培の例にお
いても見られるものと解される。
したがって,土地において,収穫を目的とせずに植物が栽培され,植物の生育を
助けるための人為的作業が施されている全ての場合が農地法上の「耕作」に当たる
ものでもない。そして,土地の利用が多様化している今日では,収穫を目的としな
い植物の栽培にも多様なものがあり得,それがどのようなものであれば作物の栽培
を目的とすると認められるのかを一般的・抽象的に定義することは困難であるから,
植物の栽培が,当該植物を作物として栽培することを目的とするものかどうかは,
最終的には,その栽培のために土地に加えられている人為的作業の実態を,農地法
が企図する農業生産力の増進という観点から,社会通念に照らして判断するよりほ
かはない。
(4)そこで,以下,被控訴人が本件土地において行う樹木の栽培のための人為
的作業の実態について検討する。
以下に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア本件事業の概要
本件事業計画によれば,本件事業は,本件土地を「d」と称し,顧客の分身とし
て,顧客に賃貸した花の木を植樹して育て,花を咲かせることを目的とした記念植
樹園とする事業であり,その農畜産物を椿苗木,あじさい,桜とし,土地の利用計
画の用途を椿,桜,あじさい,香花等の肥培植栽を基本にした農業事業とするもの
とされている(甲1,5,6)。そして,被控訴人は,顧客の記念植樹の目的とし
ては,「お誕生記念」,「α来島記念」,「結婚記念」,「金銀婚式記念」,「葬
送の標樹」などを挙げている(甲13)。
しかし,本件ウェブサイト(乙1,14)では,本件事業は,被控訴人が営む海
上散骨事業と共に紹介されており,「散骨・樹木葬・自然葬ならdへ」,「散骨や
樹木葬・自然葬を東京近郊でお探しなら無宗教の『d』へお気軽にお問い合わせく
ださい」などの広告文言が用いられ,専ら散骨の事業としての広告宣伝がされてい
る。また,本件ウェブサイトでは,植栽される樹木について,「墓石の代わりに,
美しい花が咲く椿か桜が植樹され,その樹の根の下に散粉します」,「美しき花木
の墓標」,「石墓に代わる『f』樹木」,「高い墓石の代わりに,美しい花を咲か
す,椿や桜の花の木」,「dでは,墓石の代わりに東洋の花,日本の花,椿・桜の
樹が植えられる。季節には美しい花が咲きます」などの広告文言が用いられ,樹木
を「墓標」ないし「墓石の代わり」と位置付けて,広告宣伝が行われている。
この位置付けは,被控訴人が想定する前記記念植樹の目的のうち,「葬送の標
樹」に該当し,被控訴人が甲13号証で挙げている他の記念植樹の目的については,
広告宣伝が行われていることをうかがわせる証拠はない。また,被控訴人の主張に
よれば,上記広告宣伝における「散骨」という表現は,顧客への分かりやすさとい
う観点から用いられているというのであり,この主張は,顧客が上記広告宣伝を,
社会において通常「散骨」と呼称される行為として理解することが予定されている
ことを自認するものというべきである。このような広告宣伝の下で「d」の顧客と
なって記念植樹をする者は,その多くが「葬送の標樹」として記念植樹した樹木を
墓石の代わりにして散骨をすることを希望する者となると推認される。
イ記念植樹の手順
本件ウェブサイト(乙14)によれば,「葬送の標樹」としての記念植樹の手順
は,次の手順で行われることとされている(本件手順)。
①火葬場でご焼骨
②49日の法要
③骨粉ご用意
④骨粉加工
⑤肥培品加工
⑥植樹
⑦僧侶,牧師等を希望
⑧お手許供養
⑨散骨証明
本件手順において,記念植樹は,一般の人の葬送の場合における納骨に相当する
時期に行われる。そして,本件ウェブサイトには,上記⑤肥培品加工及び⑥植樹に
ついて,「大切な人の骨粉を花の木に肥培するのですから,花木に役立つ要素,チ
ッソ・リン酸・カリの三大栄養素を加え攪拌いたします。これを,花木を植樹する
根元の下に奉納いたします。そして貴方がお選びになった『樹』をそこに植樹をし
て,『還土の詩』を『d』園主がお読みいたします」との説明がされている。
上記「肥培品」に用いられる「人の焼骨」は,その埋葬を墓地以外の区域に行う
ことが禁止されているものである(墓埋法4条1項)。同法において「墓地」とは,
墳墓を設けるために都道府県知事の許可を受けた区域(同法2条5項)を,「墳
墓」とは「死体を埋葬し,又は焼骨を埋蔵する施設」(同条4項)を,それぞれい
うと規定されており,同法を所管する厚生労働省は,平成16年10月22日健衡
発第1022003号同省健康局生活衛生課長「樹木葬森林公園に対する墓地,埋
葬等に関する法律の適用において」において,地面に穴を掘り,その穴の中に焼骨
をまいた上で,その上に樹木の苗木を植える方法により焼骨を埋めることが,一般
的に言えば,同法所定の焼骨の埋蔵に該当する旨の解釈を明らかにしている(乙
4)。したがって,一般には「葬送の標樹」を設けて「人の焼骨」を地面に撒くこ
とは墓埋法に抵触するというのが行政上の取扱いであると認められる。そして,証
拠(乙17)及び弁論の全趣旨によれば,実際にも,被控訴人は,本件申請に先立
つ平成19年2月7日,同課に対し,「スプーン1杯程度の焼骨を『d』に土に混
ぜて撒き,残りの焼骨は墓地に合葬する」という事業(当初計画事業)が同法に抵
触しないかを相談し,いわゆる散骨は墓地以外でも可能だが,人の焼骨を土に撒い
た上に植樹をすることは同法所定の「埋蔵」に当たり,当初計画事業は墓地でなけ
れば困難との回答を受けたことが認められる。
もっとも,本件ウェブサイトに紹介された本件手順は,当初計画事業のように人
の焼骨を直接本件土地に撒くのではなく,人の焼骨にチッソ・リン酸・カリを加え
て加工した「肥培品」を土中に埋めるというものであり,この「肥培品」は,成分
等からみて,本件パンフレット(甲5)に記載された「遺灰にチッソ・リン酸・カ
リを配合した『育樹剤』」と同じものと認められる。また,本件訴訟において,被
控訴人は,市販の肥料に顧客から預託を受けた人の焼骨を電動粉砕混合器で2ミリ
以下の粉末状にした「灰粉」を混合加工した「肥培剤」を,本件土地に肥料として
撒布すると主張するところ,この「肥培剤」も,成分等からみて,本件ウェブサイ
トにおいて「肥培品」とされ,本件パンフレットにおいて「育樹剤」とされている
ものと同じものと認められる(以下,これを「本件肥培剤」という。)。そして,
本件パンフレットには,「『通常散骨』はお断りいたします」と明記された上,
「d」では,本件肥培剤を記念樹に「特別に散骨」することができ,その散骨は墓
埋法に抵触しないことが記載され(甲5・6枚目),本件ウェブサイトには,
「d」における散骨の特徴として,「散骨をして,そこに好きな椿の花木,桜の樹
を植えられる,美しいガーデンです。専用の美しい石枠に守られています。裏山の
樹や,雑木林の樹の根元に散骨する,一般の散骨樹木葬と違います。お墓も現代感
覚に明るくお洒落になってきました」(乙1)と記載され,自然の雑木に散骨をす
るのではなく,散骨をして樹木を植栽できるという点が挙げられており,これが
「葬送の標樹」としての記念植樹であると認められる。
これらのことを総合すると,「人の焼骨」を混合加工した本件肥培剤を本件土地
に撒布して樹木を植栽するという本件手順は,「葬送の標樹」を設けて「人の焼
骨」を地面に撒くことが,一般には墓埋法に抵触すると行政上取り扱われることか
ら,その抵触を回避して,これを行うことを可能とするために考案されたものと推
認するのが相当である。
ウ本件土地の利用方法
本件土地は,南側を東西に走る一般道路に通じる通路部分と,これに旗状に接す
る長方形の部分から成る。本件事業計画では,このうち長方形の部分の土地を,別
紙図面1記載の区画A~Eに分けて利用することとされており,その具体的な利用
計画を図示したものが別紙図面2(甲16の1)である。別紙図面1及び2記載の
とおり,上記長方形の部分の土地には,幅員3~14mの農園内道路が巡らされ,
垣根樹によってA~Eの区画が設けられ,区画A及びBを「椿肥培育樹リース園」,
区画C~Eを「苗園」とした上,椿は,「苗園」でプランターに苗木を肥培植栽し,
植え替えに適してきたら「椿肥培育樹リース園」に植え替えて顧客に賃貸し,桜は,
苗木から肥培植栽し,植え替えに適してきたら,道沿いに6mおきに街路樹として
植え替えて,顧客に賃貸することが予定されている。椿肥培育樹リース園に充てら
れる区画Aについては,更に,別紙図面3(甲11)のとおり,区画の外縁の内側
になつめ椰子の植栽を並べて配置し,入口部分に木樹階段を設け,中央に四角形,
四隅に直角二等辺三角形の「季節の草花花壇」をそれぞれ設け,その余の部分に,
焼き丸太で囲まれた正方形の区画(スクエア)を26個設置し,このスクエアの中
に石枠を設置して記念樹を植栽することとされている。なお,あじさいについては
苗園で,香花については苗園横で肥育するとされているが,これらが顧客に賃貸さ
れることが予定されているとは認められない。また,北側,西側及び南側の農園内
通路内に各1か所の既存の「農機具置き場」が設置されている(以上につき,甲1,
3,5,10,11,13,15,16の1,2,乙1,14,弁論の全趣旨)。
上記利用計画によれば,本件土地には,苗木や記念樹の植栽に先立って,農園内
道路の整備,垣根樹の設置による区画A~Eの設置,区画Aの区画の外縁の内側へ
のなつめ椰子の植栽,木樹階段の設置,5か所の季節の草花花壇の設置,焼き丸太
の埋設によるスクエアの設置,石枠の設置など多くの人為的作業が加えられること
になるところ,これらは社会通念上,造園作業と呼ばれる作業と認められ,それが
苗木や記念樹の生育そのものに必要な作業であるとは認められない。
また,本件土地の合計面積は4652㎡であるところ,区画A~E及び各農機具
置き場の面積は,それぞれ次のとおりである(1坪3.3㎡での換算)。
①区画A157坪(518.1㎡)
②区画B250坪(825.0㎡)
③区画C108坪(356.4㎡)
④区画D109坪(359.7㎡)
⑤区画E105坪(346.5㎡)
⑥北側農機具置き場15坪(49.5㎡)
⑦西側農機具置き場35坪(115.5㎡)
⑧南側農機具置き場35坪(115.5㎡)
上記①~⑧の合計面積は2686.2㎡で本件土地全体の57.74%に相当す
る。残余の部分は1965.8㎡で本件土地全体の42.25%となり,これは主
として農園内道路に充てられることになるところ,このように広い農園内道路は,
樹木の栽培に必要であるとは認められない。一方,樹木の植栽に充てられる部分は,
苗園及び椿肥培育樹リース園とされる区画A~Eであるから,その面積は,上記①
~⑤を合計した2405.7㎡となるが,これは本件土地全体の51.7%と約半
分であり,このうち椿肥培育樹リース園に充てられる区画A及びBは合計1343.
1㎡で28.87%,苗園に充てられる区画C~Eは合計1062.6㎡で22.
84%となる。
さらに,区画Aでは,前記認定のとおり,椿の記念樹は,その内部に設けられる
26個のスクエアの中に植栽されることとされるところ,このスクエアは1.8m
四方(外寸は2m四方)であるから1個の面積は3.24㎡であり,26個の合計
面積は84.24㎡であって,区画Aの面積518.1㎡の16.25%を占める
にすぎない。また,このスクエアの合計面積に季節の草花花壇の合計面積38㎡
(30+(2×2×1/2)×4)を加えた面積は122.24㎡となるから,区
画Aの面積からこれを控除した395.86㎡は,区画Aの内部の通路に用いられ
ることになり,その割合は76.4%となるが,このように広い通路が樹木の栽培
に必要であるとは認められない。
なお,区画Bの内部については,具体的な利用計画が定かでないが,区画Aと同
様に,その16.25%に相当する面積に同様のスクエアが設けられるものとする
と,そのスクエアは41個となり(825㎡×0.1625÷3.24=41.3
7),その面積は132.84㎡となる(41×3.24=132.84)。そし
て,区画A及びBに設けられるスクエアの合計面積は217.08㎡となるところ,
この面積は,本件土地全体のわずか4.6%にすぎない。また,本件パンフレット
(甲5)では,1.8m四方の各スクエアには12本の椿が植栽されることとされ
ている。
ところで,控訴人が行ったαにおける椿の栽培状況の調査(乙13〔枝番を含
む。〕,20。本件調査)によれば,椿の実の収穫や切り花・切り枝の収穫のため
に椿を栽培している事業の場合は,土地の全域に,間隔(実の収穫の場合は3mの
間隔)を開けて均等に,5m程度の樹高で椿が植栽されていたのに対し,園芸用
(鑑賞用)の栽培においては,より密集した植栽がされ,高さ2m,横幅1m程度
で椿が植栽されていたと認められる。これに対し,上記認定に係る本件土地内部の
利用計画は,植物の栽培に必要でない通路に充てられる部分の割合が大きい上に,
造園作業により植物の栽培に必要でない種々の設備が設けられることは前記認定の
とおりであって,スクエア内の椿の植栽密度及び栽培される椿の樹高(弁論の全趣
旨により樹高2m,横幅1m)などを考慮すると,「d」に設けられる営造物は,
社会通念上,公園や庭園に類似するものと認められ,スクエア内の椿の植栽は,花
壇等に行われる植栽に類似すると認められる。なお,桜についても,街路樹として
植栽されるのであるから,公園や庭園,道における桜の植栽(いわゆる桜並木)に
類似するものと認められる。
以上のとおり,本件事業においては,苗木や記念樹の植栽に先立って,本件土地
に,植物の生育に必要でない一連の造園作業と呼ぶべき作業を加え,これを公園や
庭園に類した営造物とするものである。本件土地は「d」と称されるものであり,
「ガーデン」というのは一般に「庭」を意味する用語である。また,本件ウェブサ
イトによれば,dへの散骨は「美しいガーデンへの散骨」であること(乙1)や
「椿と桜や季節の花が咲く明るい花壇」であること(乙14)が強調されて広告宣
伝がされている。これらのことからすると,上記のような造園作業による公園・庭
園に類した営造物の設置は,「d」における被控訴人の事業の本質的部分を成すと
認められる。
エ記念樹の賃貸借の内容
本件事業計画によれば,顧客に対する椿の賃貸借は,1年単位で最長25年,1
本当たり25年分の賃料30万円,年間管理費5000円とされ,桜の賃貸借につ
いては,1本当たり25年の賃料100万円,大島桜については12人で1本とし,
一人当たり25年分の賃料30万円,いずれの場合も年間管理費5000円とされ
ている(甲5,6,13)。
もっとも,本件パンフレット(甲5)によれば,樹木はオーナーシステムとされ,
本件ウェブサイトによれば,顧客が支払う対価は,次の5つの要素から成るものと
されている(乙1,14)。
①骨粉加工と肥培加工代金(1万円相当。花枠に含む)
②散骨代金(1万円相当。花枠に含む)
③樹木代金(1万円相当。花枠に含む)
④土地スペースサイズと枠材代金
⑤25年間の育樹管理費年間5000円×25年=12万5000円
そして,本件ウェブサイトでは,上記④について,次のとおり,枠材と石枠のサ
イズに応じた価格が設定されている(乙1。ただし,現在の本件ウェブサイト(乙
14)では,椿の土地スペースサイズと枠材代金は全て20万円とされている。)。
商品名石枠サイズ価格
〔椿を植樹する場合〕ウィンドウ・ストーン40cm×40cm25万円
ケーキ・ストーン70cm×70cm35万円
クッキー・ストーン70cm×70cm35万円
プランターストーン60cm×60cm50万円
ケーキ・ストーンに赤溶岩流囲み90cm×90cm85万円
ケーキ・ストーンにコーガ石囲み90cm×90cm85万円
〔桜を植樹する場合〕ケーキ・ストーン65cm×65cm45万円
ケーキ・ストーンに赤溶岩流囲み75cm×75cm70万円
ウッドカット90cm×90cm100万円
本件事業計画において,被控訴人が,樹木の賃料とするものは,その金額からみ
て,本件ウェブサイトにおいて「土地スペースサイズと枠材代金」と説明されてい
るものに相当すると認められる。そして,この名称に加え,本件ウェブサイトにお
いてこれに③の樹木の「代金」が含まれると明記され,使用する土地の面積に応じ
た価格設定がされていることからすれば,被控訴人が樹木の賃料と主張する「土地
スペースサイズと枠材代金」は,本件土地に石枠を設置して椿又は桜を記念植樹し,
当該樹木を「葬送の標樹」として使用し又は所有して,当該土地部分を占有するこ
とに対する対価と認めるのが相当である。一方,被控訴人の主張によっても,本件
パンフレット及び本件ウェブサイトの記載によっても,顧客に賃貸した後の樹木の
管理料は年間5000円とされており,被控訴人は,その25年分に相当する12
万5000円を前受金として受領し,爾後25年間にわたって処理するものとされ
ている(甲6)。したがって,この管理料が,賃貸後の栽培のための作業に対する
対価に当たると認めるのが相当である。
そうすると,顧客が支払う対価は,賃貸後の栽培のための作業に対する対価より
も,樹木を「葬送の標樹」として使用し又は所有して,当該土地部分を占有するこ
とに対する対価の方が常に高額となっている。また,賃貸後の栽培に対する対価と
認められる管理料は,上記認定のとおり,年間5000円の定額であり,それが樹
木の種類や栽培の巧拙,開花の善し悪し等により左右されるものとはされていない。
加えて,契約時の一括払とされており(甲6,乙1,14),契約期間中に枯れた
り,自然現象で破損したりした場合には,被控訴人が無償で新木に交換することと
され(甲5),受領済みの対価を返還することとはされていない。このような対価
は,樹木の生育状況に着目したものではなく,それが「葬送の標樹」として維持さ
れていることに着目したものと解することが自然である。
オ樹木の栽培そのもののための人為的作業
被控訴人は,別紙「d農機具リスト」記載の機械機具を所有し,c及びeの指導
の下,a及びbにおいて,本件土地において,樹木の栽培のための人為的作業を行
っていると認められる(甲1,17,22,弁論の全趣旨)。また,本件ウェブサ
イトによれば,記念樹は,花の色や柄,咲く季節から顧客が自由に選ぶ仕組みとな
っており,本件パンフレットにおいては,「記念樹をお預かりする25年という,
長い期間の花木の管理は,専門担当員が十分愛情をもってケアをする」こと,花の
シーズンには事前に連絡をすることがうたわれている(甲5)。
しかし,被控訴人の主張によれば,被控訴人が記念樹の栽培そのもののために行
うという作業は,具体的には,①水やり,②除草,③施肥,④害虫・害鳥・強風対
策,⑤剪定である。このうち,②の除草と③の施肥を除く作業は,それ自体が土地
に加えられ,土地の農業生産力を高める作業であるとは認められず,③の施肥を除
く作業は,社会通念上,林業や公園,庭園,花壇等においても行われていると推認
される。なお,上記⑤の剪定は,椿の場合,樹高2m,横幅1m以内程度のサイズ
で行われると認められるところ(弁論の全趣旨),本件調査によれば,αにおいて,
椿は,実の収穫,切り花・切り枝の収穫のためには5m程度の樹高で栽培されてお
り,園芸用(観賞用)のためには被控訴人の主張と同様の樹高・幅で栽培されてお
り(乙13〔枝番を含む〕,20),被控訴人が行う剪定は観賞用のものと同様の
ものであることは,前記認定のとおりである。
上記③の施肥は,記念植樹までは,市販の肥料が用いられるが,記念植樹後は,
前記イで認定した本件手順の下で,本件肥培材が用いられることになる(甲18,
22,弁論の全趣旨)。市販の肥料というのは,農業生産力の維持増進に寄与する
ために,肥料取締法(乙15)による規制が行われ(同法1条),その含有すべき主
成分の最小量又は最大量,含有を許される植物にとっての有害成分の最大量等に関
する公定規格が設けられ(同法3条),植物の成育に適切な配合が確保されている
ものであるが,本件肥培剤は,この適切な配合が確保された肥料に,あえて「人の
焼骨」を混合加工するものである。その目的が,墓埋法への抵触を回避して「葬送
の標樹」を設けて散骨を行うことにあることは前記イで認定したとおりであって,
その混合加工が,樹木の生育を助ける目的で行われているとは認められない。そし
て,dに記念植樹を行う者の多くが「葬送の標樹」を設けて散骨を行うことを希望
する者であることは,前記アで認定したとおりであるから,この樹木の生育のため
ではない混合加工を施した本件肥培剤の撒布も「d」における被控訴人の事業の本
質的部分を成していると認められる。なお,被控訴人が所有する別紙「d農機具リ
スト」記載の機械機具のうち20記載の「肥培剤用電動粉砕混合機」は,被控訴人
が本件肥培剤の生成に用いる機械であると推認されるが,このような機械は,通常
の農家が保有するものとは認められず,被控訴人は,海上散骨事業を営んでいるた
めに(乙1,14),これを保有していると推認され,本件肥培剤は,通常の農業
用に使用されるものとは認められない。
(5)上記(4)で認定した事実によれば,被控訴人が苗園において行う人為的作業
は,顧客に賃貸(又は売却)する樹木を作物として,これを栽培するために行われ
ていると認められ,「耕作」に当たると認められる。しかし,これまでに認定・説
示してきたところによれば,その栽培は,顧客に提供する記念樹を準備するために,
本件土地の約22.84%に相当する面積を使って行われるものにすぎない。そし
て,その余の部分で樹木の植栽に用いられる部分は,椿のためには本件土地全体の
5%程度であり(前記(4)ウ),桜の街路樹のための土地を考慮しても,苗園と併
せて全体の面積の30%を大きく上回るものではないと認めるのが相当であり,そ
の余の部分は,社会通念上,公園や庭園に類似するものと認められるのであるから
(前記(4)ウ),被控訴人が本件土地全体を耕作の事業に供すると認めることはで
きない。
(6)被控訴人は,本件土地において,肥培管理を行うものであり,本件土地は,
肥培管理を施すものに該当する部分とその他の部分が一体として土地利用されてい
るなどと主張して,本件土地の全体を耕作の事業に供すると主張する。
しかし,前記(4)で認定した事実によれば,本件事業は,「葬送の標樹」として
記念植樹した樹木を墓石の代わりにして散骨をすることを希望する者を顧客とし
(同ア),その散骨を墓埋法への抵触を回避して可能とするために,本件肥培剤を
用い(同イ),本件土地に,植物の成育に必要でない一連の造園作業と呼ぶべき作
業を加え,これを公園や庭園に類した営造物とした上で,全体の5%程度の土地に
椿を,街路樹として桜を,それぞれ記念植樹し(同ウ),契約当初に一括払で対価
を得る事業である。また,その対価は,賃貸後の栽培のための作業に対する対価よ
りも,樹木を「葬送の標樹」として使用し又は所有して,当該土地部分を占有する
ことに対する対価の方が常に高額であり,賃貸後の栽培のための作業に対する対価
は,樹木の生育に着目したというより,樹木が「葬送の標樹」として維持されてい
ることに着目したものと解する方が自然なものである(同エ)。被控訴人は,契約
後も記念樹の栽培のための作業を行うが,そのうち,施肥は,市販の肥料に代えて
通常の農業用でない本件肥培剤を用いて行われ,施肥以外の作業は,林業や公園,
庭園,花壇等においても行われる程度のものであって,特別,土地の農業生産力を
増進させるようなものではない(同オ)。そして,本件事業は,上記のうち,本件
土地に造園作業と呼ぶべき作業を加えてこれを公園ないし庭園に類した営造物とし,
記念樹に市販の肥料に代えて農業用として通常用いられない本件肥培剤を撒布する
ことが,事業の本質的内容となっている(同ウ及びオ)。
上記認定のような実態に照らすと,本件土地に施される一体としての人為的作業
ないし一体としての土地利用は,一般に社会において作物を栽培する目的で行われ
ているものとは相当異なる内容・程度のものといわざるを得ず,公園,庭園,花壇
等の管理に類するものであって,作物を栽培する場合と同様の農業生産力の増進に
寄与するとは認め難いものというべきである。したがって,一体としての土地利用
に着目して,これが作物を栽培する目的のものであると認めることはできない。
したがって,本件申請は,農地法3条2項2号所定の不許可事由に該当する。
2農地法3条2項2号の2の不許可事由について
農地法2条7項1号によれば,農業生産法人であるためには,その法人の主たる
事業が農業であることが必要であり,この要件を欠く法人は,同法3条2項2号の
2の不許可事由に該当することになる。農地法には「農業」に関する定義規定はな
いが,農地法は,農地を「耕作の目的に供される土地」(同法2条1項)と定義し
た上,これを「『耕作の事業』を行う者が所有権に基いてその事業に供している」
自作地と,「『耕作の事業』を行う者が所有権以外の権原に基づいてその事業に供
している」小作地とに分け(同条2項),農業生産法人について,主たる事業を農
業とすることを要件とし,同法3条2項2号の2において,この要件を欠く法人が,
農業生産法人として農地の所有権等の移転を受けることを不許可事由としているの
であるから,農地法における「農業」とは「耕作の事業」を不可欠の内容とするも
のと解される。
被控訴人は,本件事業に基づく記念樹収入が事業全体の売上高の80%を超える
ことを理由として,被控訴人の主たる事業が農業であると主張する。しかし,本件
事業において被控訴人が本件土地に加える一連の人為的作業のうち,苗園で行うも
のは耕作に当たるが,その余は耕作に該当しないこと,苗園で行うものは,顧客に
提供する記念樹の準備作業にすぎないことは,いずれも前記1で認定・説示したと
おりである。そして,前記のとおり,顧客が支払う対価は,賃貸後の栽培のための
作業に対する対価よりも,樹木を「葬送の標樹」として使用し又は所有して,当該
土地部分を占有することに対する対価の方が常に高額となっている。そうすると,
本件事業に基づく主たる収入は,「耕作の事業」によって得られるものとはいえず,
他に,被控訴人が「耕作の事業」を主たる事業として営んでいると認めるに足りる
証拠はない。
したがって,被控訴人が農地法所定の農業生産法人に当たるとはいえず,本件申
請は,同法3条2項2号の2の不許可事由にも該当する。
3まとめ
以上によれば,本件申請が,農地法3条2項2号及び同号の2の各不許可事由に
当たるとして行われた本件不許可処分は適法であり,被控訴人の請求には理由がな
い。
第4結論
よって,原判決は相当でないから,これを取り消し,被控訴人の請求を棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官福田剛久
裁判官田川直之
裁判官東亜由美

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