弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四五年一一月三〇
日付でなした控訴人の農林漁業団体職員共済組合法に基づく組合員Aにかかる遺族
給付請求を却下する決定を取り消す。被控訴人は控訴人に対し組合員Aにかかる農
林漁業団体職員共済組合法に基づく遺族給付を全額支給せよ。訴訟費用は第一、二
審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決
を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加する外は、原判決事実摘示と同
一であるからこれを引用する(但し、原判決四枚目裏二行目の「反論理的」とある
のを「反倫理的」と、同一〇枚目表八行目、一四枚目裏九行目、二二枚目表七行目
及び同九行目に「全て」とあるのを「すべて」と各訂正する)。
(控訴人の主張)
仮にBに遺族給付受給資格があるとしても、控訴人とAとの婚姻関係はその実体が
失われて形骸化し、その状態が固定化しているとは明確に言いがたいから、右は農
林漁業団体職員共済組合法第二七条にいう給付を受けるべき同順位の遺族が二人い
る場合に該当するものとして、同規定を適用し、遺族給付を控訴人とBに等分し、
その半額を控訴人に給付すべきである。
(証拠関係)(省略)
○ 理由
一 当裁判所は、控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断するものであり、その
理由は次のとおり訂正・付加する外は、原判決の理由と同一であるから、その説示
を引用する。
(一) 原判決三〇枚目表一行目の「原告」から同二行目の「除く。)」までを
「原審(第一ないし第三回)及び当審における控訴人本人尋問の結果(但し、後記
措信しない部分を除く。)」と、同三二枚目裏二行目に「原告」とあるのを「A」
と各訂正する。
(二) 原判決三五枚目表四行目の「原告」の前に「控訴人は昭和一五年Aから性
病を感染されてから再三発病していたところ、昭和二六年頃再発した際、医師から
今後発病したらもはや治療の方法がないと言われ、Aとの別居をすすめられて以
来、Aの申出を拒否し、」を加える。
(三) 原判決三五枚目表六行目の「C」の次に「、当審証人D」を加え、同行目
の「原告本人尋問の結果は措信しがたく」とあるのを「原審及び当審における控訴
人本人尋問の結果は措信しがたく、また甲第八号証の末尾の加入部分は、当審にお
ける控訴人本人尋問の結果によると控訴人が記載したことが認められるところ、右
本人尋問の結果だけではAが右記載を了承したかどうか明らかでないから、甲第八
号証に右記載があるからといつて、右認定を左右できず、」と訂正する。
(四) 原判決三八枚目表六行目の「ばかりか、」の次に「昭和二六年頃発病の
際、医師から今後発病したら治療の方法がないと言われ、Aとの別居をすすめられ
たことからすると、控訴人はAとの同居を望まず、従つて」を、同末行の「原告本
人は」の次に「原審及び当審において」を各加える。
(五) 原判決三八枚目裏四行目の「いうべきである。」の次に「もつとも前記の
とおり、Aは昭和三一年一一月二八日『離婚に関する調停の御願い』と題する書面
を作成して控訴人との離婚の調停を申立てることを考え、また同四〇年七月五日に
至つては離婚届を偽造提出し、一方原審証人Eの証言及び原審における控訴人本人
尋問の結果(第一回)によると、控訴人は昭和四一年七月離婚届が提出されている
ことを知つて、直ちにAに抗議すると同時に、東京地方裁判所八王子支部に離婚無
効調停の申立をしたことが認められるが、しかしこれは昭和二八年七月一三日の協
定において、戸籍上の地位はそのままにしておくことが約されていたため、Aとし
ては控訴人との間に事実上の離婚の合意が成立しているとして、控訴人に離婚届の
提出を求めたとしても、控訴人は右協定のあることを理由にその要求を拒否するで
あろうことを考え、右の行為に及んだものであり、他方控訴人としては、右協定が
あるにかかわらず正式に離婚したとなると、それまで警視庁から支給されていた恩
給の支給に支障を来たしたり、子女の結婚等に悪影響を及ぼしかねないことをおそ
れ、それを防止する目的で右の措置をとつたものと考えられるので、A及び控訴人
に右のような各行為があつたからといつて、このことから直ちに第二回目の別居の
際には、Aと控訴人間に事実上の離婚の合意がなかつたものとすることはできな
い。さらに前記本人尋問の結果によれば、Aは昭和三九年四月以降も年二回のボー
ナス時にはボーナスの一部を控訴人に渡しているが、それは第二回目の別居の際に
約束された事実上の離婚給付の性格を有していたものとみられるところの警視庁か
ら支給される恩給が少額であつたため、これを補う趣旨であつたことが認められる
ので、右事実も右別居の際に事実上の離婚の合意がなかつたことの証左となるもの
ではない。」を加える。
(六) 原判決三九枚目表四行目と五行目の間「控訴人は仮にBに遺族給付受給資
格があるとしても、控訴人とAとの婚姻関係はその実体が失われて形骸化し、その
状態が固定化しているとは明確に言いがたいから、右は農林漁業団体職員共済組合
法第二七条にいう給付を受けるべき同順位の遺族が二人いる場合に該当するものと
して右規定を適用し、控訴人に遺族給付の半額を支給すべきであると主張する。し
かしながら控訴人とAの婚姻関係は昭和三一年一二月以降事実上離婚状態にあつ
て、Aが死亡した頃にはその婚姻関係は実体が失われて形骸化し、その状態が固定
化していたことは、前記のとおりであるから、右と異なる事実を前提とする控訴人
の右主張はその前提において既に失当であつて、その余の点につき判断するまでも
なく理由がない。」を加える。
二 よつて控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がな
いのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八
九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 園田 治 田畑常彦 丹野益男)

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