弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人高野弦雄、同中井宗夫の上告趣意は、末尾添付の上告趣意書及び上告事件
受理申立書と題する書面記載のとおりである。
 同上告趣意第一点について
 論旨は、第一審判決判示第三(二)記載の東京地方検察庁名義の呼出状及び料金
別納郵便と表示した大阪中央郵便局名義文書の偽造行使の事実の内、後者の公文書
偽造行使の点については起訴の範囲内に属しないと主張する。しかし起訴状に徴す
れば、右郵便局名義文書の偽造行使の事実についても具体的に記載されているのみ
ならず、これに照応する公文書偽造行使の罪名罰条の表示にも欠けるところはない
ことが明らかである(起訴状に「公文書一通」の偽造行使とあるのは、右二つの偽
造が一通の葉書のうえになされ、従つてこれが行使も右一通の葉書によつてなされ
たという趣旨であつて、起訴事実としては、以上二個の各偽造と各行使を含めたも
のと解するを至当とする)。されば右郵便局名義文書の偽造行使の点も起訴の範囲
内に属するものであつて、第一審判決には所論のごとく審判の請求を受けない事件
につき判決した違法は存せず、これを肯認した原判決もまた正当である。従つて所
論の憲法三一条違反の主張は前提を欠くものであり、所論引用の判例は起訴状に犯
罪事実の記載あるも罰条または罪名の表示を欠く場合に関するものであつて、本件
に適切でない、論旨はいずれの点においても採用するに足りない。
 同第二点について
 原判決を精査しても、所論のごとく被告人と第一審相被告人Aとの間に犯情の軽
重がないと認定した趣旨は少しも見受けられない。従つて右のごとき認定があるこ
とを前提とする違憲の主張は採用することができない。なお仮に被告人と相被告人
との間に犯情の類似した面があつても、両者の間に処罰の軽重を来たすことが憲法
一四条に違反するものでないことは当裁判所判例の既に示すところである。(昭和
二三年(れ)四三五号、同年一〇月六日大法廷判決、判例集二巻一一号一二七五頁)
また量刑不当の主張は刑訴四〇五条の上告理由とならない。
 同上告事件受理申立理由第一点について所論被告人の司法警察員に対する供述調
書のごときは、その記載内容が証拠となる場合は刑訴三〇五条にいわゆる証拠書類
であつて、所論のごとく刑訴三〇六条三〇七条にいわゆる証拠物に当らないことは、
既に当裁判所判例の明らかに示したところであつて、(昭和二五年(あ)二九六二
号、同二七年五月六日第三小法廷判決、判例集六巻五号七三六頁以下、昭和二六年
(あ)一七七七号、同二七年六月二六日第一小法廷決定、判例集六巻六号八六〇頁
以下)右と結論を同じくする原判決の見解は結局正当というベきである。論旨は採
用することができない。
 同第二点について
 原判決の所論供述調書が証拠書類に当るとする見解の正当なること前述のごとく
なる以上、原判決が予備的に該調書が証拠物に当ると仮定して説示した部分は無用
の論議に帰するものというべきであるから、この点に対する論旨については判断を
示すの要を認めない。
 記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二七年一二月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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