弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中主文第三項に対する本件上告を棄却する。
     原判決中主文第四項ないし第一〇項を破棄し、同抹消登記手続を求める
部分を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人弁護士綱沢利平の上告理由第一点について。
 しかし、控訴人(被上告人、原告)B1が判示遺産分割の協議に自ら賛成の意思
表示をしたことも、控訴人(前回)B2を介して同意を与えたこともない旨の原判
決の事実認定は、挙示の証拠関係に照し、これを肯認できないことはなく、その間
所論の違法を認めることはできない。従つて、原判決が右事実認定の下に、本件遺
産分割は、爾余の判断をするまでもなく、当然無効と解すべきである旨の原判決の
判断も正当である。所論は、結局原審の裁量に属する証拠の取捨、判断並びにこれ
に基づき適法になされた事実認定を非難するに帰し、採ることができない。
 同第二点、第三点について。
 しかし、土屋弁護士が相続抛棄申述に関する控訴人らの委任状の送付を求めたと
ころ、控訴人B2は、相続抛棄の申述というものの意味を解しないまま同弁護士の
指示のとおり乙第一号証の委任状を控訴人B1に無断で作成送付したので、同弁護
士においてこれに基づき控訴人らの判示相続抛棄申述受理の手続をとつたことが認
められる旨の原判決の事実認定は、挙示の証拠関係に照し肯認できないことはなく、
その間所論の経験則違反その他の違法を認めることはできない。従つて、右の認定
した事実関係の下に原判決が、控訴人B1は勿論のこと、同B2も真実本件遺産に
つき相続抛棄をする意思がなかつたのに、その申述受理の手続がとられたことを窺
うに十分であるから、本件相続抛棄は控訴人らの真意に基かないものとして無効で
あるといわなければならない旨の原判決の判断は正当であつて、その上更に所論第
三点の点まで審判しなくとも違法であるということはできない。
 従つて、控訴人らが本件各不動産につき各三分の一の共有持分を有することを確
認した原判決に対する本件上告は採ることができない。
 同第四点について。
 原判決は、本件遺産分割により被控訴人A1が本件遺産の全部を取得したことに
基づいて本件第一目録の一ないし三表示の各不動産につき被控訴人A1名義でなさ
れた各所有権移転登記は、これに符合する実体関係を欠くものとして無効のもので
あるとして、主文第四項において相続による所有権移転登記の抹消登記手続を求め
る控訴人らの請求全部を認容したことは、所論のとおりである。しかし、遺産分割
が無効であるとしても、被上告人らのほか上告人A1も被相続人Dの妻たる地位に
基づき法定の相続分による三分の一の共有持分を有することが明らかであるから、A
1のなした相続登記は、少くともその共有持分三分の一に関しては、実体関係と符
合し決して無効であるということはできない。されば、被上告人らの請求があくま
でも相続登記全部の抹消を求める趣旨であるならば、主張自体理由ないことに帰し
請求棄却を免れないし、また、実体関係と符合せしめる登記関係を請求する趣旨な
らば、共有名義に変更を求める登記更正手続を求めるよう釈明訂正させる措置に出
るべきであること所論のとおりである。然るにその措置をとることなく登記の全部
抹消を命じたのは失当であつて、原判決の主文第四項は、破棄を免れない。
 同第五点について。
 原判決が、被控訴人A1が本件各不動産につきその余の被控訴人らとした売買又
は売買予約は、他の共有者である控訴人らの同意なしになされたものであり無効と
いうべきであるから、右各売買又は売買予約に基いて各不動産につきそれぞれ被控
訴人A2、A3、A4、A5、A6各名義でなされた所有権移転の各登記又は請求
権保全の各仮登記も特別の事情の認められない限り全体としてこれに符合する実体
関係を欠くものとしていずれも無効であるとして、各登記名義人である右被控訴人
らに対して前示共有権に基づいてそれぞれ関係登記全部の抹消を求める控訴人の請
求を正当として認容したことは、所論のとおりである。しかし、売買契約において
は、売主が目的物件の所有権を有することが成立要件ではないから、被控訴人A1
が目的物件の三分の一の持分権を有するに過ぎず、その余の部分の共有者の同意が
なかつたとしても、そのことだけで売買又は売買予約が当然無効となるべきものと
解することができず、錯誤その他売買契約を構成する意思表示の無効原因に関する
判示を必要とするものといわなければならない。されば、原判決の右の判示部分は、
理由不備の失当があつて破棄を免れない。従つて、所論は、その理由があつて、原
判決の主文第五項ないし第九項、従つて、第一〇項は破棄を免れない。
 よつて、本件上告中原判決が主文第三項において、控訴人らが本件不動産につき
各三分の一の共有持分を有することを確認した部分に対する上告は、民訴三九六条、
三八四条により棄却し、爾余の各被控訴人の抹消登記手続を認容した点については
民訴四〇七条により原裁判所に差し戻すべきものとし、裁判官全員の一致で、主文
のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛