弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人株式会社A1の代理人三浦和博の上告理由第一について
 本件訴訟は、本件土地の根抵当権者である被上告人が民法三九五条に基づき上告
人らに対して本件土地の所有者である上告人A2と上告会社の間で本件土地につい
て締結された短期賃貸借の解除等を求めるものであるが、上告人らは、本件土地上
の新建物のために法定地上権が成立する場合であるから、右賃貸借が被上告人に損
害を及ぼすものではないと主張した。
 土地と地上建物を別個の不動産とし、かつ、原則として土地の所有者が自己のた
めに借地権を設定することを認めない我が国の法制上、同一所有者に属する土地又
は地上建物に設定された抵当権が実行されて土地と地上建物の所有者を異にするに
至った場合、建物所有者が当該土地の占有権原を有しないことになるとすれば、こ
れは、土地が競売によって売却されても、土地の買受人に対して土地の使用権を有
しているものとする建物の所有者や土地の使用権があるものとして建物について担
保価値を把握しているものとする抵当権者の合理的意思に反する結果となる。そこ
で、民法三八八条は、右合理的意思の推定に立って、このような場合には、抵当権
設定者は競売の場合につき地上権(以下「法定地上権」という。)を設定したもの
とみなしているのである。その結果、建物を保護するという公益的要請にも合致す
ることになる。それゆえ、土地及び地上建物の所有者が土地のみに抵当権を設定し
た場合、建物のために地上権を留保するのが抵当権設定当事者の意思であると推定
することができるから、建物が建て替えられたときにも、旧建物の範囲内で法定地
上権の成立が認められている(大審院昭和一〇年(オ)第三七三号同年八月一〇日
判決・民集一四巻一七号一五四九頁参照)。また、所有者が土地及び地上建物に共
同抵当権を設定した場合、抵当権者はこれにより土地及び建物全体の担保価値を把
握することになるが、右建物が存在する限りにおいては、右建物のために法定地上
権の成立を認めることは、抵当権設定当事者の意思に反するものではない(最高裁
昭和三五年(オ)第九四一号同三七年九月四日第三小法廷判決・民集一六巻九号一
八五四頁参照。なお、この判決は、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定
した場合、民法三八八条の適用があるとするが、これは、抵当権設定当時の建物が
存続している事案についてのものである。)。
 これに対し、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取
り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の
所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物
について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のな
い限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし、
土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の
担保価値を把握しているから、抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物
のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地
について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、
抵当権設定当事者の合理的意思であり、抵当権が設定されない新建物のために法定
地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握してい
たのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限
定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的
な意思に反するからである。なお、このように解すると、建物を保護するという公
益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当権設定当事者の合理的意思に
反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。大審院昭和一三年(
オ)第六二号同年五月二五日判決・民集一七巻一二号一一〇〇頁は、右と抵触する
限度で変更すべきものである。
 これを本件について見ると、原審が適法に確定したところによれば、上告人A2
は、被上告人に対し、上告人A2所有の本件土地及び地上の旧建物に共同根抵当権
を設定したところ、その後、旧建物は取り壊され、本件土地を賃借した上告会社が
本件土地上に新建物を建築したというのであるから、新建物のために法定地上権が
成立しないことは明らかである。のみならず、旧建物が取り壊された後、上告人A
2及び被上告人は、本件土地を更地として四度にわたって再評価をして被担保債権
の極度額を変更してきたから、新建物のために法定地上権の設定があったとする当
事者の意思を推定することができず、したがって、その後に上告会社が上告人A2
から本件土地を賃借して建築した本件建物のために法定地上権の成立を認めるべき
ものではない。したがって、本件建物に法定地上権の成立が認められないとした原
審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引
用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。
 同第二について
 記録によって認められる本件訴訟の経緯に照らすと、原審が所論の措置を採らな
かったことに違法はない。論旨は採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫

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