弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成11年(行ケ)第102号 審決取消請求事件
平成14年9月26日口頭弁論終結
判      決
原      告     マツダ株式会社
訴訟代理人弁護士    松 尾 和 子
同            吉 田 和 彦
訴訟代理人弁理士     大 塚 文 昭
同            竹 内 英 人
同            西 島 孝 喜
同            須 田 洋 之
被      告     トヨタ自動車株式会社
訴訟代理人弁理士     渡 辺 丈 夫
同            小 林 茂 雄
主      文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成10年審判第35035号事件について平成11年3月2日に
した審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「自動変速機の制御装置」とする特許第192840
0号(昭和61年6月10日特許出願(以下「本件出願」という。),平成7年5
月12日登録。以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件発明」とい
う。)の特許権者である。被告は,本件特許を無効とすることについて審判を請求
した。特許庁は,これを平成10年審判第35035号事件として審理し,その結
果,平成11年3月2日,「特許第1928400号発明の特許を無効とする。」
との審決をし,同月11日にその謄本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲
「車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と,該走行状態検出手段で検出
した車両の走行状態に応じて自動変速機の変速段を制御する制御手段とを備えると
ともに,車両の走行を誘導するための道路情報を予め記憶するナビゲーション装置
と,車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と,該現在位置検出手段の出力を
受け,車両の現在位置の周囲に関する上記ナビゲーション装置の道路情報に応じて
上記制御手段による自動変速機の制御パターンを変更する変更手段とを備えたこと
を特徴とする自動変速機の制御装置。」
3 審決の理由
別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに,本件発明は,その出願
前に頒布された刊行物である,特開昭60-146948号公報(甲第3号証。以
下「刊行物1」という。),特開昭53-137376号公報(甲第4号証。以下
「刊行物2」という。),特開昭60-169330号公報(甲第5号証。以下
「刊行物3」という。),特開昭61-99748号公報(甲第6号証。以下「刊
行物4」という。),特開昭53-35866号公報(甲第7号証。以下「刊行物
5」という。),特開昭58-89434号公報(甲第8号証。以下「刊行物6」
という。)に記載された各発明(以下「刊行物1発明」,「刊行物2発明」などと
いうことがある。)から容易に発明をすることができたものであるから,特許法2
9条2項に該当し,特許を受けることができない,としたものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中,「Ⅰ.手続の経緯」,「Ⅱ.請求人及び被請求人の主張」
(審決書2頁3行~9頁11行)は認める。
「Ⅲ.当審の判断」(審決書9頁12行~34頁末行)のうち,「1.本件
発明」(審決書9頁13行~14頁下から2行)は認める。「2.甲第1号証ない
し甲第8号証に記載された技術的事項及び発明」の「(1)甲第1号証ないし甲第5号
証に記載された技術的事項及び発明」(審決書15頁2行~18頁2行)のうち,
審決書15頁4行ないし17頁7行は認め,17頁8行ないし18頁2行は争う。
「(2)甲第6号証に記載された技術的事項及び発明」(審決書18頁3行~23頁下
から3行)のうち,18頁4行ないし21頁17行は認め,21頁18行ないし2
3頁18行は争う。「(3)甲第7号証に記載された技術的事項」及び「(4)甲第8号
証に記載された技術的事項」(審決書23頁下から2行~24頁8行)は認める。
「3.本件発明と公知発明A,甲第6号証発明との対比」,「4.公知発明Aへの
甲第6号証発明の適用について」及び「5.むすび」(審決書24頁9行~34頁
末行)は争う。
審決は,本件発明の進歩性の有無の判断に当たり,誤って,本件出願前に公
知のものとして存在していたとはとはいえない「公知発明A」を創作・認定し(取
消事由1),本件発明と公知発明Aとの相違点についての検討において,本件発明
の認定あるいは刊行物6発明の認定を誤ることにより相違点についての判断を誤っ
た(取消事由2)ものであり,これらの誤りが,それぞれ審決の結論に影響を及ぼ
すことは明らかであるから,違法なものとして,取り消されるべきである。
1 取消事由1(「公知発明A」の創作)
審決は,特開昭60-146948号公報(刊行物1,甲第3号証),特開
昭53-137376号公報(刊行物2,甲第4号証),特開昭60-16933
0号公報(刊行物3,甲第5号証),特開昭61-99748号公報(刊行物4,
甲第6号証),及び特開昭53-35866号公報(刊行物5,甲第7号証)の開
示内容に基づいて,「本件発明の出願前に次のような発明(以下,「公知発明A」
という。)が公知であると認めることができる。<公知発明A>車両の走行状態
を検出する走行状態検出手段と,該走行状態検出手段で検出した車両の走行状態に
応じて自動変速機の変速段を制御する制御手段とを備えるとともに,車両の現在位
置の道路状況を検出するセンサ又は他の目的のセンサ等と,該センサ又は他の目的
のセンサ等の出力を受け,車両の現在位置の道路状況に応じて上記制御手段による
自動変速機の制御パターンを変更する変更手段とを備えたことを特徴とする自動変
速機の制御装置。」(審決書17頁9行~18頁2行)と認定した。しかし,審決
のこの認定は誤りである。
刊行物1ないし5には,それぞれ「登坂路」(刊行物1),「坂路」(刊行
物2),「曲路」(刊行物3),「路面摩擦係数」(刊行物4)及び「エンジンブ
レーキを必要とする状態」(刊行物5)に関する開示はあっても,そこから,上位
概念である「道路状況」を引き出すことに関しては,何らの記載も示唆もない。上
記各刊行物に記載されている発明は,そこに記載されている「登坂路」等に関する
技術的課題を解決する手段であるにすぎず,そこには,その課題解決手段を他の種
類の技術的課題に適用しようとする思想はない。
審決は,現実には存在しない「公知発明A」を,刊行物1ないし5に記載さ
れた各発明の構成を任意に取捨選択して組み合わせることにより,本件発明に不当
に近づけて創作したものである。
2 取消事由2(本件発明の認定の誤りあるいは刊行物6発明の認定の誤り)
審決は,「公知発明Aと,・・・甲第6号証発明(判決注・刊行物6発明)
とを示す公知文献に接した当業者であれば,公知発明Aへ甲第6号証発明を適用す
ることは,通常着想することができるものと認められる。」(審決書31頁7行~
13行)と判断した。しかし,審決のこの判断は,刊行物6発明についての誤った
認定に基づくものであるから,誤りである。
(1) 刊行物6発明が本件発明の「車両の走行を誘導するための道路情報を予め
記憶するナビゲーション装置」を備えるとした認定の誤り
審決は,「甲第6号証(判決注・刊行物6,本訴甲第8号証)に記載
の・・・「車両の走行地域の地図等の表示情報を予め格納している外部メモリ」
は・・・本件発明の・・・「車両の走行を誘導するための道路情報を予め記憶する
ナビゲーション装置」に相当する。」(審決書21頁19行~22頁8行)と認定
した。しかし,審決のこの認定は,誤りである。
本件発明の構成要件である「車両の走行を誘導するための道路情報を予め
記憶するナビゲーション装置」にいう,「車両の走行の誘導」とは,使用者が目的
地を入力したとき,ナビゲーション装置がその目的地までの推奨できる経路を検索
し,その経路を表示画面の地図上に表示して運転者にその経路に沿った走行を促す
ことである。
このことは,本件明細書(甲第2号証参照)の「CPU51は,現在位置
認識装置65で検出した車両の現在位置と,操作スイッチ55で設定された目的地
とを含む道路情報をRAM52から読み出すと共に,車両の走行軌跡を演算記憶し
て,これらを上記表示制御回路67に出力して表示器66にこれら道路情報を表示
する機能を有している。」(甲第2号証3頁5欄39行~44行),「車両の目的
地を操作スイッチ55で設定した後は,この目的地への走行過程で,車両の現在位
置周りの地図や走行軌跡等がナビゲーション装置50の表示器66に表示されて,
目的地への車両走行が簡易に誘導される。」(甲第2号証4頁7欄36行~40
行)との記載から明らかである。
上記記載中の「車両の走行軌跡」とは,「現在位置」と「目的地」につい
ての情報から演算され,記憶されるものであるから,「現在位置」から「目的地」
までの経路,すなわち,車両がこれから走行すべき道筋以外のものではあり得な
い。ここにいう「走行軌跡」が,車両が現在までに通ってきた道筋を意味するもの
であるならば,その経路は「現在位置」と「出発地」から演算されていなければな
らないはずである。「車両の走行軌跡」を「現在位置」と「目的地」から演算しな
いのであれば,「目的地」を設定する意味は全くない。
これに対し,刊行物6発明の「車両の走行地域の地図等の表示情報を予め
格納している外部メモリ」は,単に現在地点の周りの地図を表示する機能を備える
のみのものであるから,本件発明のように,目的地の設定に伴い,当該目的地まで
の経路を検索し,決定した上で,走行の誘導を行う「走行誘導機能を備えたナビゲ
ーション装置」に相当するものではない。
(2) 刊行物6発明が「車両の現在位置の周囲に関する上記ナビゲーション装置
の道路情報に応じて車両の制御したい各部を予め決められた態様で制御することを
特徴」とするとした認定の誤り
審決は,刊行物6発明が「現在位置検出手段の出力を受け,車両の現在位
置の周囲に関する上記ナビゲーション装置の道路情報に応じて車両の制御したい各
部を予め決められた態様で制御する」(審決書23頁14行~18行)ものであ
る,と認定し,この認定を前提として「・・・車両の現在位置の周囲に関する上記
ナビゲーション装置の道路情報に応じて車両の制御したい特定の個所を予め決めら
れた態様で制御することを特徴とする車両用制御装置。」(審決書26頁12行~
15行)の点で本件発明と刊行物6発明とが一致すると認定した。しかし,審決の
この認定は誤りである。
刊行物6には,「外部メモリ10に格納されている地図等の表示データ及
び走行路の走行環境に応じた車両各部制御状態を指示するための制御モードデータ
をRAM20に転送し且つ表示部7に走行地域の地図を描出させる」(甲第8号証
2頁右上欄15行~19行),「車両の現在地に応じた各種の制御モードをRAM
20より読み出し,各コントローラ50-1,50-2,50-3に出力する。」
(同2頁左下欄1行~3行)と記載されている。これらの記載によれば,刊行物6
発明の「外部メモリ」に記憶されているのは,「地図等の表示情報」及び「走行環
境・・・に応じて車両各部を最適制御するための制御モード」であって,「車両の
現在位置の周囲に関する・・・道路情報」を記憶するものではないというべきであ
る。すなわち,刊行物6発明は,車両の現在の走行位置に対応する制御モードを外
部メモリから読み出し出力し,この現在の走行位置に対応する「制御モード」に基
づいて車両各部を制御するものである。
これに対し,本件発明は,車両の現在の走行位置に対応する制御モードを
記憶するものではない。本件発明においては,ナビゲーション装置による走行経路
に沿った誘導の結果として得られる,車両の前方の状態をも含む「車両の現在位置
の周囲に関する・・・道路情報」から,どのように自動変速段の制御パターンを変
更すべきか車両走行中に判断して,それに応じて,変更手段により自動変速段の制
御パターンを変更するものである。
したがって,例えば,ある道路の前方に直線道路と左にカーブする道路に
分かれる分岐点がある場合に,車両が,分岐点付近に達したとき,刊行物6発明に
おいては,車両がどちらに曲がるかについて車両自体は知るすべがないから,カー
ブを曲がることを予期して,変速を禁止することはできない。これに対し,本件発
明では,ナビゲーション装置が,車両を誘導しているため,車両がカーブ路を選択
することを,あらかじめ車両自体が認識しているから,分岐点の手前の段階で,変
速を禁止することができる。
審決は,刊行物6発明の認定を誤った結果,刊行物6発明と本件発明との
間に存するこのような決定的な相違点を看過している。このような相違点がある以
上,刊行物6発明と「公知発明A」とを組み合わせたからといって,本件発明に容
易に想到できるはずはないのである。
(3) 刊行物6発明における「コントローラ」が自動変速機の制御パターンを変
更する「変更手段」ではないことについて
審決は,「甲第6号証(判決注・本訴甲第8号証)には,・・・車速コン
トローラが自動変速機を含むと明確に記載されていないものの,これをもって甲第
6号証発明の「ナビゲーション装置」を公知発明Aに適用することを阻害する原因
があるとすることができない」(審決書31頁19行~32頁3行)と判断した。
しかし,審決のこの判断は誤りである。
刊行物6において,自動変速機の制御パターンを変更する「変更手段」が
開示されていると解される可能性がわずかながら存することを示すのは,甲第8号
証2頁左下欄9行の「車速コントローラ」という記載である。しかしながら,刊行
物6に開示されているのは,自己が走行している場所の「制限速度」という「走行
環境」が変わった場合に,「車速を制御する車速コントローラ」により,車両各部
の制御をするということだけである。そのためには,スロットルの開閉による車速
の加減速,又はブレーキによる減速が通常であり,補助的に変速機が使用されると
しても,自動変速機でもマニュアル変速機でもよいものである。したがって,この
車速コントローラが,自動変速機の制御パターンを変更する「変更手段」でないこ
とは明白である。
このように,刊行物6発明の「車速を制御する車速コントローラ」は,自
動変速機の制御パターンを変更する「変更手段」ではない。「公知発明A」と刊行
物6発明との間に,自動変速機ないしその制御パターンの変更という点において共
通点がない以上,両者を結びつけても,本件発明は得られず,また仮に得られると
仮定しても,当業者が両者を結びつける動機付けを得ることはできない。当業者
は,刊行物6発明を「公知発明A」に適用することを,着想することができないの
が通常である。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1(「公知発明A」の創作)について
原告は,審決は,現実には存在しない「公知発明A」を不当に創作したもの
であるから,この「公知発明A」と刊行物6発明との組合わせによって,本件発明
の進歩性を否定した審決は,取り消されるべきである,と主張する。
しかしながら,「公知発明A」が備えているとされる各手段に相当する機能
もしくは具体的な手段は,刊行物1ないし5に記載されているのであるから,審決
の認定した「公知発明A」は,本件発明の出願前に知られていたということができ
る。換言すれば,審決は,刊行物1ないし5のそれぞれに記載されている,本件出
願前に公知となっていた発明を総括的に「公知発明A」として表現したものであ
り,「公知発明A」は本件発明の出願前に一つの技術思想として存在していたとい
うべきである。
原告は,刊行物1ないし5に記載のある「登坂路」,「坂路」,「曲路」,
「路面摩擦係数」及び「エンジンブレーキを必要とする状態」からその上位概念の
「道路状況」を引き出すことに関して何の示唆もない,と主張する。しかし,「道
路状況」という文言あるいは概念が本件発明の出願前に存在していなかったわけで
はなく,また,原告自身,本件明細書(甲第2号証参照)において,「本件発明」
における「道路状況」として「曲路」や「路面摩擦係数」を挙げているのであるか
ら,刊行物1ないし5に記載されている道路の状態あるいは路面の状況を「道路状
況」と包括的に言い表すこと,あるいは包括的に把握することに何ら不自然な点は
ない。通常の知識をもってすれば,刊行物1ないし5に記載されている道路あるい
は路面の状態を「道路状況」と包括的に把握することに特別な契機を必要とすると
は,到底考えられない。
2 取消事由2(本件発明の認定の誤りあるいは刊行物6発明の認定の誤り)に
ついて
(1) 刊行物6発明が本件発明の「車両の走行を誘導するための道路情報を予め
記憶するナビゲーション装置」を備えるとした認定が誤りであるとの主張について
本件出願当時において,目的地までの推奨走行経路を検索する機能やその
推奨経路を表示する機能を備えていないナビゲーション装置は,「カーエレクトロ
ニクス 168頁」(乙第6号証),特開昭57-211510号公報(乙第7号
証),特開昭58-10780号公報(乙第8号証),及び実願昭57-9286
6号(実開昭58-195821号)のマイクロフィルム(乙第9号証)にみられ
るように多数存在する。さらに,原告の出願に係る特開昭60-221900号公
報(乙第11号証)には,「車両の走行誘導装置」が記載され,走行誘導の機能
は,地図上に車両の現在位置を表示することにより達成されるように記載されてい
る。原告の出願に係る特開昭60-224022号公報(乙第12号証)にも,同
様の記載がある。これらの公報等における「車両の走行誘導」の概念には,目的地
の入力およびその目的地までの推奨走行経路の検索ならびにその表示機能は含まれ
ていないのである。このように本件出願当時,ナビゲーション装置として,目的地
までの推奨走行経路を検索する機能やその推奨経路を表示する機能等を備えていな
いナビゲーション装置が多数存在しており,地図情報と現在位置とを表示するもの
であって,それ以上に推奨走行経路の検索などの機能がないとしても,車両の走行
誘導を行うナビゲーション装置である,ということができる状態にあった。
本件発明について,本件明細書中には,当該目的地までの経路を検索し,
決定した上で,走行の誘導を行う,という機能やそのための具体的な手段の記載は
存在しない。本件発明の「ナビゲーション装置」が,目的地までの推奨できる経路
を検索し,その経路を表示画面の地図上に表示するものである,との原告の主張
は,本件明細書の記載に基づかないものであって,失当である。
原告は,本件明細書に記載されている「走行軌跡」が,「現在位置」から
「目的地」までの経路であると主張する。しかし,前述のとおり,走行軌跡とは,
現在までに通ってきた経路であり,前方の走行路ではない。
刊行物6発明においては,表示部7に車両走行地域の地図が表示されると
ともに,出発地点を入力することによりその地図上に車両の現在位置が表示される
ので,その後どの道路を走行すればよいか判断できる。このように刊行物6発明も
車両の走行誘導を行うナビゲーション装置である,といい得る。前記のとおり,本
件発明が目的地までの推奨できる走行経路を検索,決定して表示することにより走
行の誘導を行う機能を有するものと認められない以上,「車両の走行誘導」の点に
おいて,本件発明と刊行物6とは異ならない。
(2) 刊行物6発明を「現在位置検出手段の出力を受け,車両の現在位置の周囲
に関する上記ナビゲーション装置の道路情報に応じて車両の制御したい各部を予め
決められた態様で制御する」ものであるとした認定は,誤りである,との主張につ
いて
ア 刊行物6発明が,「現在の走行位置に対応する制御モードを読み出す」
ように構成されているとしても,その制御モードを読み出す根拠となる走行環境
は,「各区間」ごとに読み出されるのであって,少なくともその「各区間」に入っ
た時点では,その「各区間」内での前方の走行環境に基づいた制御モードが設定さ
れる。刊行物6発明が,「現在」の位置に限定された制御を行っている,と断定す
ることはできない。
本件特許請求の範囲には,「車両の走行を誘導するための道路情報を予
め記憶するナビゲーション装置」と記載されているだけであり,制御モードの記憶
の形態やナビゲーション装置がコントローラを有していること,そのコントローラ
が制御パターンの変更を判断することなどは,本件発明の構成要件とはなっていな
い。
イ 原告は,本件発明によれば,ある道路の前方に直線道路とカーブの道路
とに分かれる分岐点付近に車が達した場合,分岐点の手前で,すでに変速を禁止す
ることができる,とも主張する。しかし,本件発明が,このような作用を奏するこ
とは,本件明細書に一切記載されていないばかりか,本件発明のナビゲーション装
置は,経路検索機能を備えるものではないことは前記のとおりであるから,このよ
うな変速禁止の作用は生じない。
(3) 刊行物6発明の「コントローラ」は,自動変速機の制御パターンを変更す
る「変更手段」ではない,との主張について
ア 審決は,刊行物6発明の「車速を制御する車速コントローラ」の制御対
象が自動変速機の制御パターンである,と認定しているのではなく,「甲第6号証
発明(判決注・刊行物6発明)は,自動変速機の制御パターンを変更することを含
むか否か不明である」とした上で,本件発明は「公知発明A」に刊行物6発明を適
用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである,と判断して
いるものである。
イ そもそも,本件発明の課題及びその解決手段は,「このように道路状況
に応じた変速制御を行う場合,車両の走行路面の状況を検出して変速制御を行う構
成を採用することが考えられるが,この考えでは,路面状況を検出する多くのセン
サを必要として,価格性の点で欠点が生じる。本発明は斯かる点に鑑みてなされた
ものであり,特に車両の走行を誘導するためのナビゲーション装置があることに着
目し,その目的は,上記ナビゲーション装置に予め記憶されている道路情報に基い
て,自動変速機の車両走行状態に応じた変速制御を補正することにより,多くのセ
ンサを要することなく,自動変速機の変速段を車両走行状態に路面状況との双方で
もって良好に変速制御することにある。」(甲第2号証2頁3欄7行~19行)と
されている。
刊行物6には,「従来のこの種の車両用制御装置にあつては現在の車両
の走行環境を各種センサの検出出力により判定し,この判定結果に基づいて車両各
部の制御を行つていた。しかしながらセンサ出力は一般に誤差が大きくセンサの検
知できない環境要因も多いため走行環境に応じた車両各部の最適制御は困難である
という欠点があつた。本発明の目的は現在の走行環境を検出することなく車両各部
を最適状態に制御することが可能な車両用制御装置を提供することにある。」(甲第
8号証1頁左下欄18行~右下欄9行)との記載により,本件発明と共通する技術的
課題及びその解決手段が示されており,公知発明Aにおける各種の走行環境の各種
センサに代えて,ナビゲーション装置の道路情報を用いることが示唆されているの
であるから,公知発明Aに刊行物6発明を適用して本件発明のようにすることは当
業者にとって容易に想到することができることであったのである。
審決の,「してみれば,自動的に自動変速機の制御パターンを変更する
に必要な道路情報を直接的又は間接的に検出又は知得する手段として「センサ」を
含めて多様なものがあることを示す公知発明Aと,車両の各部を最適に制御するた
めに「センサ」を用いることなく「ナビゲーション装置」を用いた甲第6号証発明
とを示す公知文献に接した当業者であれば,公知発明Aへ甲第6号証発明を適用す
ることは,通常着想することができるものと認められる。」(審決書31頁4行~
13行)との判断に誤りはない。
ウ 原告は,「車速コントローラ」が,自動変速機の制御パターンを変更す
る「変更手段」でないことは明白である,と主張する。
しかし,本件出願前においては,車速コントローラといえば,エンジン
コントロール(アクセル開度),自動変速機の変速,自動変速機の変速パターン変
更等を含む技術であると認識されていたのであり,刊行物6に接した当業者は,そ
こにいう車速コントロールという技術の内容は,エンジンコントロール(アクセル
開度)や,自動変速機の変速や,自動変速機の変速パターン変更等,あるいはそれ
らの組合せであるものと認識したのである。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(「公知発明A」の創作)について
(1) 審決は,「これら甲第1号証ないし甲第5号証(判決注・本訴甲第3ない
し甲第7号証。刊行物1ないし刊行物5。)に記載された発明からみて,本件発明
の出願前に次のような発明(以下,「公知発明A」という。)が公知であると認め
ることができる。」(審決書17頁8行~11行)とした。そこで「公知発明A」
とされているのは,「車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と,該走行状態
検出手段で検出した車両の走行状態に応じて自動変速機の変速段を制御する制御手
段とを備えるとともに,車両の現在位置の道路状況を検出するセンサ又は他の目的
のセンサ等と,該センサ又は他の目的のセンサ等の出力を受け,車両の現在位置の
道路状況に応じて上記制御手段による自動変速機の制御パターンを変更する変更手
段とを備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。」(審決書17頁13行~
18頁2行)である。そして,審決は,その後で,公知発明Aと呼んだ上記装置と
本件発明とを対比して両者の一致点と相違点とを認定した上,相違点について検討
し,この検討の結果に基づき,本件発明には進歩性を認めることができない,とし
た。
原告は,審決は,現実には存在しない「公知発明A」を,刊行物1ないし
5に記載された各発明の構成を任意に取捨選択して組み合わせることにより,不当
に創作したものであるから,上記認定は誤りである,と主張する。
(2) ある発明の進歩性が否定されるのは,その発明が特許法29条2項に該当
するときに限られる。同項に該当するためには,当該発明が「前項各号に掲げる発
明に基いて容易に発明することができた」ことが必要である。したがって,ある発
明の進歩性の検討に当たって,出発点になるべきものは,同条1項各号のいずれか
に該当する発明でなければならない。そこで,ある発明の進歩性を検討するに当た
っては,一般に,まず,1項各号のいずれかに該当する発明を認定し,これと問題
とされる発明とを対比して,両発明の一致点と相違点とを認定した上,前者を出発
点として,相違点を克服して後者(問題とされる発明)に至ることが当業者にとっ
て容易であったかどうかを検討する,という手法が,合理的なものとして認めら
れ,採用されてきている。容易であったかどうかについての上記検討においては,
上記出発点となった発明以外の発明であって1項各号のいずれかに該当する発明及
び当業者にとっての周知事項が判断資料として用いられる。「公知発明」という用
語は,一般に,進歩性の有無の判断のために行われる上記作業において用いられる
1項各号のいずれかに該当する一つ又は複数の発明を意味するものとして用いられ
ており(狭義では1号に該当する発明に用いられる。),これが1項各号のいずれ
かに該当する発明を基に,何らかの方法で行われる思考作業を通して認識される発
明を意味するものとして用いられることはない。
上述したところを前提にすると,(1)に述べた審決の検討方法には,二つの
意味で問題があることが明らかである。一つは,1項各号のいずれにも該当しない
ものを「公知発明」と呼んだことであり,他の一つは,1項各号のいずれにも該当
しないものを,格別の検討を加えることなく,進歩性の検討において一般に採用さ
れている手法における公知技術(これは1項各号のいずれかに該当する発明であ
る。)と同視して,これを本件発明と対比するという作業に進んだことである。審
決が本件発明の進歩性についての検討において採用した手法には,少なくとも,特
に,進歩性の検討において一般に採用されている手法との関係において,問題があ
る,という限度においては,原告の主張は正当である。
そこで,次に,上記二つの点につき,審決の行ったところを誤りというこ
とができるか否か,誤りということができるとして,それが進歩性判断の結論に影
響するか否か,につき検討する。
(3) 1項各号のいずれにも該当しないものを「公知発明」と呼ぶ用法は,「公
知」という用語に一般的に与えられている意味に照らしても,進歩性判断の作業に
おいて一般に採用されている用法に照らしても,少なくとも誤解を招きやすい不正
確な用法である。論理を正しく進めるため,言葉の用い方には極めて注意深くあら
なければならない審決としては,採用すべきものではなかった,というべきであ
る。しかしながら,審決が「公知発明A」としたものが,一般に「公知発明」とさ
れているもの,すなわち1項各号のいずれかに該当するものではないこと,換言す
れば,審決が「公知発明A」を1項各号のいずれかに該当するとしているわけでは
ないことは,審決の説示自体で明らかである。審決は,「公知発明A」を「甲第1
号証ないし甲第5号証(判決注・本訴甲第3ないし甲第7号証。刊行物1ないし刊
行物5。)に記載された発明」から認定されるものとし,また,本件発明の進歩性
についての認定判断のまとめとして,「本件発明は,甲第1号証ないし甲第5号証
(判決注・本訴甲第3ないし甲第7号証。刊行物1ないし刊行物5)に記載された
発明及び甲第6号証(判決注・本訴甲第8号証。刊行物6)に記載された発明に基
づいて当業者が容易に発明することができたものである」として,結局のところ,
本件発明の進歩性を否定する根拠とされるのは,刊行物1発明ないし刊行物6発明
(いずれも,1項3号に該当することが明らかである。)であることを明らかにし
ているからである(審決書17頁8行~11行,34頁12行~15行参照)。そ
うであるとすると,審決が「公知発明A」という用語を採用したこと自体は,好ま
しくないことであったとはいえても,これをもって,進歩性判断の結論に影響を及
ぼす誤りとすることができないことが,明らかである。
(4) 審決は,「公知発明A」を,1項各号のいずれかに該当する発明そのもの
であるとはしていないものの,そのような発明と同様に扱うことが許されるとの判
断をして,それを前提に論を進めている。このことは,審決が,前述のとおり,
「これら甲第1号証ないし甲第5号証(判決注・本訴甲第3ないし甲第7号証。刊
行物1ないし刊行物5)に記載された発明からみて,本件発明の出願前に次のよう
な発明(以下,「公知発明A」という。)が公知であると認めることができる。」
(審決書17頁8行~11行)とし,その上で,これを本件発明と対比する作業に
入っている(審決書24頁9行以下参照)ことから,明らかである。
「公知発明A」が1項各号のいずれにも該当しないものであることは,上
述のとおりであるから,1項各号のいずれにも該当しない発明である限り,これを
本件発明と対比して進歩性の有無を決めるという手法を採用することはおよそ許さ
れない,ということになれば,審決の採用した手法は,それ自体,誤りという以外
にない。しかしながら,特許法29条2項は,1項各号のいずれかに該当する発明
に基づいて容易に発明をすることができたことを進歩性を否定するための要件とし
て定めてはいるものの,同1項各号のいずれかに該当する発明に基づいて容易に発
明をすることができた,といい得るか否かを判断する手法については,何らの制限
も設けてはいない。そうである以上,ある発明の進歩性を否定する判断は,それ
が,1項各号のいずれかに該当する発明に基づくものであり,かつ,進歩性判断の
目的に照らして許容される範囲の合理性を有するものである限り,必ずしも,一般
に採用されている上記手法による必要はないものというべきである。ただ,上記一
般に採用されている手法は,永年の経験により,手法自体としては,少なくとも大
部分の場合に,合理性のあるものとして適用が可能である,といい得ることが検証
されているものであるのに対し,それ以外の手法については,そのようにいうこと
ができないから,これを採用するに当たっては,手法自体に合理性が認められる余
地があるか,あるとしてどのような条件の下においてか,が確かめられなければな
らないことになるのは,当然というべきである。審決が,一般に採用されている上
記手法とは異なる手法を採用しておきながら,採用した手法そのものの合理性につ
いて,少なくとも明示的には何らの説明も加えないで,論を進めていることについ
ては,その限りで論理の飛躍があるものというべきである。
上述の立場に立って,審決の採用した手法が進歩性判断の目的に照らして
許容される範囲の合理性を有するか否かを検討する。
審決の採用した手法においては,刊行物1ないし刊行物5に記載された発
明から「公知発明A」に至り,次に,「公知発明A」から本件発明に至る,という
ことの容易性が問われることになり,一般的に採用されている上記手法において公
知発明から問題とされる発明に至ることの容易性のみが問われる場合と比べると,
一般的に採用されている手法における出発点に相当するものに到達するまでに,同
手法にはない過程を経なければならないことになるから,「公知発明A」に相当す
る発明が通常の意味における公知発明として存在する場合に比べると,容易である
との判断は,それだけしにくくなるということになる。けれども,出発点とする発
明から問題となる発明に至ることが容易であるか否かは,結局のところ,至るまで
に経なければならない個々の過程を経ること自体の容易さ・困難さの度合い,経な
ければならない過程の総数,個々の過程同士の関係(論理的には多数の過程がある
ことになる場合であっても,現実に行われる人の思考・判断過程においては,同時
にあるいはほとんど同時に行われることも少なくない。)等を総合的に考慮して決
める以外にない事柄であり,結論に至るまでに経なければならない過程が増えると
いうことは,必ずしも全体として,容易であるという結論に至ることを不可能とす
るものではない。このことは,出発点となる発明と問題となる発明との相違点の数
が一つであっても容易でないとされることがあり,複数であっても容易であるとさ
れることがあることからも,明らかというべきである。
(5) 刊行物1ないし5に記載された発明から,「公知発明A」に至ることの容
易さ・困難さの度合いについてみる。
ア 刊行物1ないし5に,次の内容の発明についての記載があることは,当
事者間に争いがない。
① 刊行物1(甲第3号証)
「特殊なセンサ類も追加せずにECTマイクロコンピュータのプログ
ラム変更だけで登坂路を検出して,変速パターンを自動的に切換える自動変速制御
装置に関する発明」(審決書15頁4行~7行)
② 刊行物2(甲第4号証)
「水銀スイッチを坂路検出手段として,自動変速機の変速点を変更す
るようにしたした(判決注・「ようにした」の誤記と認める。)自動変速機用変速
制御装置に関する発明」(審決書15頁8行~11行)
③ 刊行物3(甲第5号証)
「角速度センサより曲路走行の有無を判定する検出手段の曲路検出信
号に応じて変速パターンを補正するようにした自動変速制御装置に関する発明」
(審決書15頁11行~14行)
④ 刊行物4(甲第6号証)
「ワイパースイッチや雨滴センサを路面摩擦係数の低下を知得する知
得手段として,自動変速機の変速点を低μ路パターンと高μ路パターンに変更させ
るようにした変速制御装置に関する発明」(審決書15頁15行~19行)
⑤ 刊行物5(甲第7号証)
「車両の傾斜度の検出を不要にし,運転者の操作態様によりエンジン
ブレーキを必要とする状態が検知されたとき自動変速機の減速比が大きくなるよう
に指令を発するようにした自動車の自動変速機用制御装置に関する発明」(審決書
15頁19行~16頁4行)
イ 刊行物1ないし5の上記各記載によれば,刊行物1発明ないし刊行物5
発明は,いずれも,自動車の「自動変速機」の制御装置に関する発明であることが
明らかであり,当然に,公知発明Aにいう,「車両の走行状態を検出する走行状態
検出手段と,該走行状態検出手段で検出した車両の走行状態に応じて自動変速機の
変速段を制御する制御手段とを備える」発明に該当する発明である,ということが
できる。
上記の刊行物1発明の「登坂路を検出」する手段,刊行物2発明の「坂
路検出手段」,刊行物3発明の「曲路走行の有無を判定する検出手段」,刊行物4
発明の「路面摩擦係数の低下を知得する知得手段」,及び刊行物5発明の「エンジ
ンブレーキを必要とする状態」を検知する手段は,いずれも,公知発明Aにおける
「車両の現在位置の道路状況を検出するセンサ又は他の目的のセンサ等」の一態様
である,ということができる。
刊行物1発明の「変速パターンを自動的に切換える」こと,刊行物2発
明の「自動変速機の変速点を変更する」こと,刊行物3発明の「変速パターンを補
正する」こと,刊行物4発明の「変速点を低μ路パターンと高μ路パターンに変更
させる」こと,及び刊行物5発明の「自動変速機の減速比が大きくなるように」す
ることは,いずれも,公知発明Aにおける「センサ又は他の目的のセンサ等の出力
を受け,車両の現在位置の道路状況に応じて上記制御手段により自動変速機の制御
パターンを変更する」ことの一態様である,ということができる。
以上に述べた状況の下では,公知発明Aの方からみれば,刊行物1発明
ないし刊行物5発明は,いずれも,公知発明Aをより具体化した発明,すなわち,
公知発明Aの下位概念に当たる発明に当たるということができ,逆に,これらの発
明の方からみれば,これらに接した当業者が,これらから,それらに共通する要
素,すなわち,道路状況を検出して,検出した道路状況に応じて自動変速機の制御
パターンを変更する手段を備えた装置という要素を抽出してそのようなものとして
把握し,公知発明Aのような形の認識に至ることは,事柄の性質上,極めて容易に
なし得たことというべきである。審決が,「これら甲第1号証ないし甲第5号証
(判決注・本訴甲第3ないし第7号証)に記載された発明からみて,本件発明の出
願前に次のような発明(以下,「公知発明A」という。)が公知であると認めるこ
とができる。」(審決書17頁8行~11行)としたのは,表現が適切でないもの
の,刊行物1発明ないし刊行物5発明に接した当業者が,それらから共通の要素を
抽出し抽象化して公知発明Aのように認識することは,極めて容易であるため,公
知発明Aをあたかも,通常の意味での公知発明であるかのように扱うことができ
る,との趣旨として理解することができ,そうだとすれば,あながちこれを誤りと
することもできないというべきである。
ウ原告は,刊行物1ないし刊行物5にそれぞれ挙げられた「登坂路」,
「坂路」,「曲路」,「路面摩擦係数」及び「エンジンブレーキを必要とする状
態」のそれぞれを,上位概念である「道路状況」としてとらえることはできない,
と主張する。
本件発明の進歩性についての判断において審決が採用した手法は,許さ
れないわけではないことは前述のとおりであるものの,採用するに当たっては,そ
の手法に内在する危険を認識し,その危険が現実化しないように細心の注意を払う
必要がある。そうでないと,問題となる発明はまだ存在するに至っていない時点に
立って,同発明が存在しないことを前提に行うべき,当業者の思考・判断について
の検討をするに当たり,無意識のうちにも,当該発明の方から従来技術をみて,同
発明の構成要素となっている抽象的概念の下位概念に該当するものを集めてきて,
本来,これらのものを一つの概念の下にまとめて考察すること自体の容易性・困難
性こそが問題とされるべきであるにもかかわらず,このことを忘れて,その判断を
経ないままに,これらの下位概念から上記抽象的概念に至ることは容易であるとす
る,というような誤りを犯すことになりかねないからである。
しかしながら,上述したところを前提にしても,本件においては,刊行
物1発明ないし刊行物5発明の各要素を下位概念としてそこから上位概念である公
知発明Aの各要素(その中に「道路状況」も含まれる。)に至ることを,上記危険
の現実化したものということは,できないというべきである。
原告の主張は,一方で,自動車の自動変速という事柄の性質を忘れ,他
方で,当業者が有するものとして想定すべき,物事を必要に応じて抽象化して把握
し認識する能力を余りに低く設定するものというべきであり,採用することができ
ない。
2 取消事由2(本件発明の認定の誤りあるいは刊行物6発明の認定の誤り)に
ついて
(1) 刊行物6発明が本件発明のナビゲーション装置を備えるとした認定の誤
り,の主張について
ア 原告は,本件発明の「ナビゲーション装置」は,目的地までの推奨でき
る経路を検索し,その経路を表示画面の地図上に表示して運転者にその経路に沿っ
た走行を促すものである,と主張する。
しかしながら,本件発明の特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりで
あり,そこには,「ナビゲーション装置」が何をするものであるかについては,
「車両の走行を誘導するための道路情報を予め記憶するナビゲーション装置」,
「現在位置検出手段の出力を受け,車両の現在位置の周囲に関する上記ナビゲーシ
ョン装置の道路情報に応じて上記制御手段による自動変速機の制御パターンを変更
する」との記載があるのみであり,原告の主張するような,経路検索機能を有する
との記載はない。
原告は,ここにいう「車両の走行を誘導」とは,使用者が目的地を入力
したとき,ナビゲーション装置がその目的地までの推奨できる経路を検索し,その
経路を表示画面の地図上に表示して運転者にその経路に沿った走行を促すことであ
る,と主張する。
しかしながら,乙第11号証によれば,特開昭60-221900号公
報(昭和59年出願)には,「車両の走行誘導装置」という名称の発明について,
「車両現在位置演算部3によって車両の現在位置P0が演算され,該車両の現在位置
P0に対応する地図Mが,記憶部7の地図記憶装置8から読み出されて表示装置1の
表示画面1aに表示されるとともに,該表示画面1aに表示された地図M上に上記
車両の現在位置P0が表示され,該地図Mと車両現在位置P0との照合により車両の
走行誘導が行われる。」(3頁左上欄15行~右上欄2行)との記載があること,
同公報中には,推奨走行経路の検索やその表示の機能を有する旨の記載はないこ
と,が認められる。上記公報の上記記載状況によれば,同公報記載の「車両の走行
誘導装置」という名称の発明は,推奨走行経路の検索やその表示をすることなく,
車両の現在位置に対応する地図を車両の現在位置とともに表示することによって,
車両の走行誘導を行うものであるということができる。
乙第7,8号証によれば,特開昭57-211510号公報(昭和56
年出願)には,「車載用ナビゲータ」という名称の発明について,「車両の走行距
離を検出する距離検出手段と,車両の進行方向を検出する方向検出手段と,前記距
離検出手段と方向検出手段からの信号に基づいて車両の走行に対する現在位置を演
算する演算手段と,この演算手段からの信号に基づいて現在位置を道路地図の表示
面上に表示する表示手段とを備えた車載用ナビゲータ」(乙第7号証特許請求の範
囲),「本発明は車両の現在位置を道路地図の表示面上に表示する車載用ナビゲー
タに関するものである。」(同号証1頁左下欄18行~19行)との記載があるこ
と,特開昭58-10780号公報(昭和56年出願)には「車載用ナビゲータ」
という名称の発明について「車両の走行地区の道路地図を表示させるための地図デ
ータを記憶している記憶手段と,複数の画素にて構成される表示面を有する表示手
段と,前記記憶手段から地図データを読出し前記表示手段に表示面上の画素を用い
て道路地図を表示させ,車両の走行に対する現在位置情報を得るとともにこの情報
による現在位置を前記表示面上の道路地図表示に複数画素を用いた所定周期の点滅
にて付加表示させる制御手段とを備える車載用ナビゲータ。」(乙第8号証特許請
求の範囲)との記載があること,これらの各公報中には,推奨走行経路の検索やそ
の表示の機能を有する旨の記載はないこと,が認められる。上記各公報中の「車載
用ナビゲータ」は,「車両の現在位置を道路地図の表示面上に表示する」ものであ
るから,上記特開昭60-221900号公報(乙第11号証)について認定した
ところによれば,車両の走行を誘導するものであるということができる。「ナビゲ
ータ」の語は,「ナビゲーション装置」の語と同義であることは,当裁判所に顕著
である。そうすると,これらの公報に記載された発明も,推奨走行経路の検索やそ
の表示をすることなく,車両の現在位置に対応する地図を車両の現在位置とともに
表示することによって,車両の走行誘導を行うものであるということができる。
このように,本件出願当時(昭和61年),推奨走行経路の検索やその
表示をすることなく,車両の現在位置に対応する地図を車両の現在位置とともに表
示することによって,車両の走行を誘導するナビゲーション装置が,比較的近い時
期に出願され公開された公知例として複数存在していたのであるから,本件発明の
特許請求の範囲の「車両の走行を誘導する」との記載自体から,使用者が目的地を
入力したとき,ナビゲーション装置がその目的地までの推奨できる経路を検索し,
その経路を表示画面の地図上に表示して運転者にその経路に沿った走行を促すこと
を意味する,と解することができないことは明らかである。
原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであるとい
うほかない。
原告は,本件明細書の発明の詳細な説明中に,目的地への経路を検索す
る機能を有するナビゲーション装置についての記載がある,と主張する。
本件明細書中には,「CPU51は,現在位置認識装置65で検出した
車両の現在位置と,操作スイッチ55で設定された目的地とを含む道路情報をRA
M52から読出すと共に,車両の走行軌跡を演算記憶して,これらを上記表示制御
回路67に出力して表示器66にこれら道路情報を表示する機能を有している。」
(甲第2号証3頁5欄39行ないし44行),「車両の目的地を操作スイッチ55
で設定した後は,この目的地への走行過程で,車両の現在位置周りの地図や走行軌
跡等がナビゲーション装置50の表示器66に表示されて,目的地への車両走行が
簡易に誘導される。」(甲第2号証4頁7欄36行ないし40行)との記載があ
る。しかしながら,ここには,車両の現在位置を検出すること,目的地を設定する
こと,車両の走行軌跡を演算記憶すること,車両の現在位置周りの地図や走行軌跡
等を表示することが個別に記載されているだけであって,経路検索を行うことも,
その結果推奨されるこれからの経路を表示することも記載されていない。
この点につき,原告は,「車両の走行軌跡」は,「現在位置」と「目的
地」についての情報から演算されるとされている以上,「現在位置」から「目的
地」までの経路,すなわち,車両がこれから走行すべき道すじを意味するものであ
り,それ以外のものではあり得ない,と主張する。しかし,乙第6号証によれば,
「電子化ブックス カーエレクトロニクス」(昭和59年7月20日発行)には
「4 ナビゲーションシステム・・・目的地・・・を入力すると,走行中,・・・
ディスプレイ上に目的地までの残距離と方向が継続的に表示される。」(168頁
左欄上部,右欄8行~11行)との記載があることが認められ,この記載によれ
ば,目的地の設定はナビゲーション装置において,経路検索とは無関係に有効な手
段と認識されていたということができるから,目的地を設定することが,直ちに経
路検索を行うこと,及びこれから走行すべき道すじを表示すること意味するもので
ないことは明らかである。また,乙第10号証によれば,特開昭60-13581
7号公報には,「自動車の走行案内装置」という名称の発明につき,「軌跡演算手
段の出力により地図と走行軌跡とを表示する表示手段」(1頁右下欄3~5行),
「軌跡演算手段12においては前回の受信位置から今回の受信位置までの軌跡デー
タが演算され」(3頁左下欄末行~右下欄2行)との記載があることが認められ,
同記載によれば,同公報において「走行軌跡」の語は,「現在までに通ってきた経
路」を意味する語として用いられているということができる。「軌跡」とは,「①
車輪のとおったあと。わだち。②先人の言動のあと。また,その人やある物事のた
どってきたあと。」(大辞林参照)を意味する語であり,上記公報の「走行軌跡」
の用法は,通常の日本語の用法とも一致するものである。本件発明において,「走
行軌跡」をこれと異なる意味に解さねばならない事情は見当たらない。
以上のとおり,本件明細書中の発明に詳細な説明中にも,経路検索機能
を有するナビゲーション装置についての記載があると認めることはできない。
原告の主張は採用することができない。
イ 甲第8号証によれば,刊行物6には,「加算器8は・・・車両の現在位
置を示す現在位置信号100を出力する。また10は車両の走行地域の地図等の表
示情報・・・が走行路の各位置に対応して記憶されている外部メモリであ
り,・・・表示部7に走行地域の地図を描出させる」(2頁左上欄14行~右上欄
19行),「車両の現在位置P1,P2……を示す現在位置信号を・・・表示部7
に出力する。」(3頁左上欄2行~4行)との各記載があることが認められる。上
記認定の刊行物6の記載によれば,刊行物6発明は,車両の現在位置に対応する地
図を車両の現在位置とともに表示するものであり,地図と現在位置を表示すること
のみによっても車両の誘導が行われることは前記のとおりであるから,刊行物6発
明における外部メモリに記憶された地図は,「車両の走行を誘導するための道路情
報」にほかならず,刊行物6発明の外部メモリは本件発明の「車両の走行を誘導す
るための道路情報を予め記憶するナビゲーション装置」に相当するということがで
きる。
ウ 以上のとおりであるから,「甲第6号証(判決注・本訴甲第8号証)に
記載の・・・「車両の走行地域の地図等の表示情報を予め格納している外部メモ
リ」は,・・・本件発明の・・・「車両の走行を誘導するための道路情報を予め記
憶するナビゲーション装置」に相当する。」(審決書21頁19行~22頁8行)
とした審決の認定には,誤りはないということができる。
(2) 刊行物6発明が「現在位置検出手段の出力を受け,車両の現在位置の周囲
に関する上記ナビゲーション装置の道路情報に応じて車両の制御したい各部を予め
決められた態様で制御する」とした認定の誤り,の主張について
ア 原告は,刊行物6発明の外部メモリに記憶されるのは,車両の現在の走
行位置に対応する「制御モード」であって,本件発明における車両の現在位置の周
囲に関する「道路情報」ではない,と主張する。
甲第8号証によれば,刊行物6には,「また10は車両の走行地域の地
図等の表示情報及び走行環境,即ち走行路の各区間における制限速度,道路状態
(舗装状態),あるいは工場地帯,見通しが悪い山岳部等の外部環境に応じて車両
各部を最適制御するための制御モードが走行路の各位置に対応して記憶されている
外部メモリであり」(2頁左上欄18行~右上欄3行)との記載があることが認め
られる。この記載によれば,刊行物6発明の「外部メモリ10」は,車両の走行地
域の走行環境に応じて車両各部を最適制御するための制御モードを記憶するもので
あり,「制御モード」は走行環境に応じて定まるものであるから,制御モードを記
憶することと走行環境を記憶することとの間に違いはない。刊行物6中に「外部メ
モリは・・・予め走行環境,制御モード等を記録した形式で提供するようにしても
よい」(甲第8号証2頁右上欄5行~8行)との記載があることからも,刊行物6
発明は,外部メモリ10の記憶対象として,走行環境とそれに応じて定まる制御モ
ードとを同列に扱っているということができる。したがって,刊行物6発明の外部
メモリ10は,「走行環境」を記憶するものということができる。上記認定によれ
ば,刊行物6発明における「走行環境」とは「走行路の各区間における制限速度,
道路状態(舗装状態),あるいは工場地帯,見通しが悪い山岳部等の外部環境」の
ことであるから,本件発明にいう「道路情報」と同じである。そして,刊行物6発
明は,走行環境を「走行路の各区間」において記憶しており,車両の現在位置はそ
の「各区間」のうちの一点にすぎない。
そうすると,「走行路の各区間」において「走行環境」を記憶すること
は,「車両の現在位置の周囲に関する道路情報」を記憶することにほかならない,
というべきである。刊行物6記載の「車両各部を最適制御する」ことは,「車両の
制御したい各部を予め決められた態様で制御する」ことと同じである。
以上のとおりであるから,刊行物6発明は,「現在位置検出手段の出力
を受け,車両の現在位置の周囲に関する上記ナビゲーション装置の道路情報に応じ
て車両の制御したい各部を予め決められた態様で制御する」(審決書23頁14行
~18行)ものであるとした審決の認定に誤りはない,ということができる。
イ 原告は,ある道路の前方に直線道路と左にカーブする道路に分かれる分
岐点がある場合を想定し,本件発明によれば,車両がカーブ路を選択することを,
あらかじめ車両自体が認識しているため,分岐点の手前で,すでに変速を禁止する
ことができる,と主張する。しかし,本件発明が経路検索を行うものであるとは認
められないことは,前記(1)で説示したとおりである。経路検索を行わない以上,本
件発明において,車両の変速制御の基となる「車両の現在位置の周囲に関する上記
ナビゲーション装置の道路情報」とは,現在位置の周囲(車両の変速制御を行うの
に,現在位置より後方の情報は不要であるから,「周囲」とは,「現在位置の前
方」の意味である。)の道路情報をいい,分岐点がある場合に,運転者がこれから
走行をすること予定している道路の道路情報に限定されない,と解するのが相当で
ある。
原告の主張は,本件発明が経路検索・経路誘導を行うものであることを
前提とした主張であり,この前提が誤りであることは,前に述べたとおりである。
原告の主張は採用することができない。
(3) 刊行物6発明の「コントローラ」が自動変速機の制御パターンを変更する
「変更手段」ではない,との主張について
ア 原告は,刊行物6には,車両の現在位置の道路状況に応じて制御手段に
よる自動変速機の制御パターンを変更する「変更手段」は,まったく開示されてい
ない,として,公知発明Aに刊行物6発明を適用することは容易でない,と主張す
る。
甲第8号証によれば,刊行物6には,「従来この種の車両用制御装置に
あつては現在の車両の走行環境を各種センサの検出出力により判定し,この判定結
果に基づいて車両各部の制御を行つていた。しかしながらセンサ出力は一般に誤差
が大きくセンサの検知できない環境要因も多いため走行環境に応じた車両各部の最
適制御は困難であるという欠点があつた。本発明の目的は現在の走行環境を検出す
ることなく車両各部を最適状態に制御することが可能な車両用制御装置を提供する
ことにある。」(1頁左下欄19行~右下欄9行),「10は車両の走行地域の地
図等の表示情報及び走行環境,即ち走行路の各区間における制限速度,道路状態
(舗装状態),あるいは工場地帯,見通しが悪い山岳部等の外部環境に応じて車両
各部を最適制御するための制御モードが走行路の各位置に対応して記憶されている
外部メモリであり」(2頁左上欄18行~右上欄3行)との記載があることが認め
られる。刊行物6のこれらの記載によれば,刊行物6発明は,車両各部の制御を行
うに当たり,それに必要な情報を各種センサの検出出力により得ることの欠点を認
識した上,それに代わるものとして,「ナビゲーション装置」(外部メモリ)に走
行路の各区間における道路情報を記憶しておき(刊行物6発明が道路情報を記憶す
るものであることは(1)で述べたとおりである。),車両の現在の走行位置に対応す
る道路情報を得るものであるということができる。
公知発明Aにおける「車両の現在位置の道路状況」,例えば,刊行物1
発明における,「道路情報」とは現在走行中の道路が登坂路であるかどうか,とい
うような種類のことをセンサにより検出する場合には,刊行物1に「所定のスロッ
トル開度以上で走行中に一定の減速率を越える車速低下が検出されたときは」(甲
第3号証の特許請求の範囲)とあることからも分かるように,走行実績に基づいて
登坂路であるかどうかを判定するのであるから,現在走行中の道路であっても,現
在位置よりも先の道路についての情報を得ることは困難である。現在位置までは平
坦であった道路が,現在位置から先では登坂路となっていたり,その逆であったり
することはよくあることであるから,このような場合に,現在位置から先の道路情
報を得ることができれば有用であることは自明のことである。
このような,現在位置から先の道路情報が刊行物6に記載された「セン
サの検知できない環境要因」に相当することは疑い得ないことであり,そのような
情報を「ナビゲーション装置」に記憶させ,そこから得ることを開示する刊行物6
発明を公知発明Aに適用することは,極めて自然なことである。例えば,登坂路で
あるかどうかといったような種類の情報は,道路により定まる固定的な情報であ
り,あらかじめ記憶しておくことが可能な情報であるから,上記の適用は容易であ
るというべきである。
イ 原告は,公知発明Aに刊行物6発明を適用することを困難とする事情と
して,刊行物6に,自動変速機の制御パターンを変更する「変更手段」が開示され
ていないことを挙げる。
しかしながら,公知発明Aに刊行物6発明を適用することが容易である
とされるのは,刊行物6発明が「ナビゲーション装置」を備え,その「ナビゲーシ
ョン装置」により,現在位置を含む区間の道路情報を得るという技術思想に基づく
発明であること,公知発明Aにおける車両の現在位置の道路状況」(例えば,刊行
物1発明でいえば,登坂路であるかどうか)の中には,あらかじめ記憶しておくこ
とのできない情報もあるものの,あらかじめ記憶おくことのできる情報もあること
によるものであって,問題とされる個々の制御対象や制御内容が何であるかは,一
切関係がないことというべきである。
第6 結論
以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由は,いずれも理由がな
く,その他にも,審決の認定判断に,その結論に影響を及ぼす瑕疵は見当たらな
い。そこで,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴
訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
      裁判長裁判官  山  下  和  明
        
          裁判官   阿  部  正  幸
 
裁判官    高  瀬  順  久
                                     
                                     
  

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛