弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

20む208
20.3.28広島地裁一部開示命令方法の指定あり
主文
検察官に対し,別紙1及び別紙2に掲げる各証拠を開示することを命じる。ただし,別紙1の各証拠の開示は閲覧による方法に限る。
理由
1申立ての趣旨及び理由の概要
本件申立ての趣旨及び理由は,要するに,弁護人らは,被告人が本件の犯人ではなく,被害者を殺害するような動機を持ち得る者は他に
存在することを主張することを予定しており,この主張に関連して,被害者の交際・交友関係について作成された証拠や,被告人及び弁護
人が上記動機を持ち得ると主張する者4名の本件犯行日等に近接する時期の所在,行動,アリバイ等を調査した証拠の開示を受けることが被
告人の防御の準備のために重要であることから,これらの証拠の開示を請求したが,検察官は開示に応じないので,下記(1)・(2)に掲げる
証拠の開示命令を求めるというものである。
(1)被害者の交際・交友関係についての供述録取書,捜査報告書,携帯電話の解析や通話履歴・メール送受信履歴の解析やその調査結
果について作成された書面
(2)被告人,A,B,C及びDについて,平成19年4月29日,同年5月4日及びそれらに近接する前後の時期の所在,行動,アリバイ等
を調査した第三者の供述録取書,捜査関係事項照会・回答書,捜査報告書,携帯電話等の通信履歴を解析しその結果を記載した書面
2本件に関する弁護人の予定主張
(1)本件に関する弁護人の予定主張は次のとおりである。
ア弁護人は,平成19年10月31日付け予定主張記載書面で,被告人と犯人の同一性を争うことを明らかにし,被告人は,被害者から,「今
交際している人は,Bの他に3人居る」と聞いていたことを主張している(以下「主張ア」)。
イ弁護人は,平成20年1月21日付け予定主張記載書面(2)で,被告人は被害者とは不倫関係のトラブルに関し短期間相談を受けていただ
けの関係であり,被害者を殺害するような動機を持ち得るような関係にはなかったこと,特定の5名を挙げ,具体的事情を指摘して被害者を
殺害するような動機を持ち得るほどに被害者との関係を有していた人物がいることを主張した(以下「主張イ」)。
(2)検察官は,弁護人の犯人性に関する主張は,特定の第三者が犯人であると主張するものではなく,単に被害者の交際相手あるいは
具体的に名を挙げた者に対する一般的・抽象的な疑いの存在を指摘するにとどまるものであり,このような事実が立証できたとしても,被
告人の犯人性に関する防御としては意味がないから,主張として十分ではないと主張している。
しかし,弁護人は,主張ア及び主張イで,被害者がBのほかにも3名と交際していることや,特定の者が動機を持ち得ることをそれぞれの
事情を指摘して主張しており,その主張は証拠開示の対象となるものとの関連性を判断するのに足りる程度に明らかにされている。
3弁護人主張の関連性と開示の必要性
(1)本件の争点のひとつは,被告人と犯人の同一性である。検察官は,被告人が犯人であることを推認させる間接事実のひとつとして,
被告人が犯行前から被害者と接点を有しており,被害者を殺害する動機を形成する関係が生じ得たことをあげている。
被害者に複数の交際相手がいたことや,被告人の他に被害者を殺害する動機を持ち得る者が存在することを主張・立証することは,検察
官があげる上記の間接事実の推認力を揺るがす可能性があるものであるから,被告人の防御にとって重要であると認められる。
(2)そして,前記1(1)の証拠は,被害者の交際範囲とその関係の深さを示す証拠であって,主張アに関連する程度は高く,開示の必要
性もある。
(3)また,前記1(2)の証拠(ただし,「平成19年4月29日,同年5月4日及びそれらに近接する前後の時期」とある部分は,平成19年4月
28∼30日,同年5月3∼5日分に限る)は,本件犯行日及び何者かが犯行現場に侵入したとされる日及びこれらに前後する日の所在,行動,ア
リバイ等を調査したものであって,殺害の動機を持ち得る上記5名について犯行の機会があったことを疑わせる可能性のあるものであり,主
張イに関連する程度は高く,開示の必要性も高い。
4開示の相当性
(1)検察官は,前記1(1)・(2)の証拠を開示することにより,被害者及びAらのみならず,その者らと接触を持った第三者の名誉・プ
ライバシーが侵害されるおそれが大であり,開示による弊害が重大であると主張する。
(2)主張イに関して,検察官が,被害者殺害の動機について明確に主張していないこと,公判前整理手続期日で,弁護人が特定人を犯
人であると主張するならその者についてアリバイがあるという主張・立証をすると述べていることを考慮すると,前記3(3)の証拠の開示を
受け,被告人以外の犯行動機を持ち得る者についてのアリバイを検討することは,被告人の防御にとって重要であり,これらの証拠が当該
人物らのプライバシーに関わるものであることを考慮しても,開示を認めることが相当である。
(3)一方,主張アに関しては,主張された事実自体は,一般的・抽象的にこれらの交際相手による犯行の可能性があるというにとどま
るので,前記3(2)のとおり開示の必要性は認められるものの,開示されることによって被害者やその交友があった者らのプライバシーが侵
害されるおそれがあることを考慮すると,これらについては,閲覧の方法による開示だけを認めるのが相当である。
5当裁判所が,前記1(1)及び3(3)に該当する証拠の標目を記載した一覧表の提示を検察官から受けたところ,具体的には,別紙1の各証
拠が1(1)に該当し,別紙2の各証拠が3(3)に該当する。
6よって,本件申立てはその一部について理由があるから,刑事訴訟法316条の26第1項により,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・細田啓介,裁判官・嘉屋園江,裁判官・工藤美香)
別紙1
証拠の種類作成年月日作成者氏名供述者
氏名
備考
司法警察員に対する供述調書平成19年5月4日EP
司法警察員に対する供述調書平成19年5月5日FQ
司法警察員に対する供述調書平成19年6月5日FQ
司法巡査に対する供述調書平成19年5月14日GR
司法警察員に対する供述調書平成19年5月15日HS
司法警察員に対する供述調書平成19年5月15日HS
司法警察員に対する供述調書平成19年5月27日ID
司法警察員に対する供述調書平成19年7月16日JT
捜査状況報告書平成19年5月4日I
被害者の両親から
の聴取事項を報告
したもの
捜査状況報告書平成19年5月4日I
被害者のスケジュ
ール帳の写しを作
成添付したもの
捜査状況報告書平成19年5月4日K
捜査状況報告書平成19年5月5日F
捜査状況報告書平成19年5月5日L
捜査状況報告書平成19年5月5日M
捜査状況報告書平成19年5月5日I
捜査状況報告書平成19年5月15日K
写真撮影報告書平成20年2月5日N
捜査状況報告書平成19年6月3日O
別紙2
証拠の種類作成年月日作成者氏名
供述者
氏名
司法警察員に対する供述調書平成19年5月15日UZ
司法警察員に対する供述調書平成19年5月22日Ha
検察官に対する供述調書平成19年5月30日Va
司法警察員に対する供述調書平成19年6月4日Ha
司法警察員に対する供述調書平成19年5月24日Wb
捜査状況報告書平成19年5月15日X
捜査状況報告書平成19年5月16日H
捜査状況報告書平成19年6月6日H
捜査状況報告書平成19年6月6日Y

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛