弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人瓜谷篤治の上告理由第一点について。
 論旨第一点の要旨は、「本件農地は、自創法五条五号により買収除外の指定をす
べき土地であり、かように除外指定をなすべき土地を、この指定をしないで買収す
ることは、買収処分の重大な違法事由を構成するものである。また、買収に当つて
目的地が右除外指定をなすべき土地であるということは関係行政庁に明白であつた
はずであるから、本件買収処分には明白な違法があるものと解すべきである。従つ
て、本件買収処分には重大・明白な違法があるものとして当然無効と解すべきであ
るのに、原判決が上告人の無効原因として主張した事実にっき何等審理することな
く本件買収処分を無効でないと判断したのは、法令の解釈を誤り、審理不尽の違法
に陥つたものである」というにある。
 しかし、自作農創設特別措置法五条五号により買収除外の指定をすべきものをこ
の指定をしないで買収することは違法であり、従つて取消事由とはなるが、それだ
けでは、当然に、重大・明白な瑕疵として無効原因となるわけではない。すなわち
無効原因となる重大・明白な違法とは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に
重大・明白な誤認があると認められる場合を指すものと解すべきである。たとえば、
農地でないものを農地として買収することは違法であり、取消事由となるが、それ
だけで、当然に、無効原因があるといい得るものではなく、無効原因があるという
ためには、農地と認定したことに重大・明白な誤認がある場合 (たとえば、すで
にその地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収し、
その誤認が何人の目にも明白であるというような場合)でなければならない。従つ
て、無効原因の主張としては、誤認が重大・明白であることを具体的事実(右の例
でいえば地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収
したということ)に基いて主張すべきであり、単に抽象的に処分に重大・明白な瑕
疵があると主張したり、若しくは、処分の取消原因が当然に無効原因を構成するも
のと主張することだけでは足りないと解すべきである。しかるに、原審における上
告人の主張は、五条五号により買収除外の指定をなすべき土地を右指定をしないで
買収したから本件買収処分は無効であるといらのであつて、右主張は、ひつきよう、
買収除外の指定をなすべきものをこれをしないで買収することが当然に無効原因と
なるとするものにほかならず、かような主張は、無効原因の主張としては、主張自
体理由がないものというべきである。(所論引用の判例は、買収除外の指定をなす
べきものをこれをしないで買収することは違法である旨を判示したものに過ぎず、
そのことが当然無効原因となる旨を判示したものではない。)右と同旨に出た原判
決は正当であり、所論は採用し得ない。同第二点について。所論の土地は、本件買
収計画樹立当時すでに特別都市計画事業西宮市戦災復興土地区劃整理施行地区内に
あり、現在、区劃整理の結果道路敷地となつているような土地であるから、これを
買収する処分は、重大・明白な違法があるものとして当然無効と解すべきである、
というにある。
 そこで考えてみるに、論旨は、(イ)区劃整理施行地区内の土地はすべて当然に
買収除外の指定をすべきものであるから、これをしないで買収処分を実施すること
は当然無効の原因を構成する、との趣旨であるか、(ロ)論旨指摘の土地は区劃整
理地区内で具体的に買収除外の指定をするのが相当と認められる土地であるのに、
右指定をしないで買収を実施したことが当然無効の原因を構成する、との趣旨であ
るか、以上いずれかの趣旨と解される。しかし、五条四号の法意は、土地区劃整理
区域内の農地で知事が買収除外を相当と認めて除外指定をした地区内の農地に限り
買収を許さないとする趣旨であつて、(イ)の趣旨でないことは文理上明らかであ
るから、論旨の趣旨を(イ)の趣旨に解する場合には、これを採用し得るものでな
いことはいうまでもない。論旨を(ロ)の趣旨に解しても、かような主張が、無効
原因の主張として、主張自体理由のないものであることは第一点の論旨に対して述
べたところと同様である。すなわち、買収処分が当然無効であることの主張として
は、単に、区劃整理区域内の農地で買収除外を相当とする土地であるにかかわらず
買収が実施されたものである旨を主張するだけでは足りず、右の誤認が重大・明白
な誤認であることを具体的事実に基いて主張すべきものであり、かような具体的事
実に基く無効原因の主張のないものは、主張自体理由がないものとして排斥さるべ
きものである。なお、論旨は、論旨指摘の土地が現在、区劃整理の結果道路敷地と
なつている旨を主張しているが、買収計画当時において、すでに、明確に道路敷地
として予定線内にはいつていたという場合は格別、単に買収処分が終つた後に、そ
の後の区劃整理事業の進転に伴い道路敷地となつたというだけでは、すでに効果を
完了した買収処分が遡つて違法・無効化することのあり得ないことは、いうまでも
ないところである。それ故所論は採用のかぎりでない。
 同第三点及び第四点について。
 上告人の原審における主張は、自作地の部分を小作地として買収したから、右部
分の買収は当然無効であるというのであるが、自作地を小作地と誤認して買収した
というだけでは、無効原因の主張としては足りないものであることは、第一、二点
の論旨に対して述べたところと同様である。所論は採用のかぎりでない。
 同第五点について。
 農地買収処分は、(1)市町村農地委員会による計画の樹立、(2)県農地委員
会の承認、(3)知事の買収令書交付の三段階により成立する処分であつて、買収
処分の重要・不可欠の構成要素と目すべきものは(1)(2)(3)に尽きる。も
つとも、自作農創設特別措置法八条は、県農地委員会が承認を下すについては、異
議の決定・訴願の裁決を待つてこれをなすべきものとしているが、それは、主とし
て、異議・訴願に対する判断の結果いかんによつては(計画が取り消された場合)、
爾後の手続を進行することが無益に帰する場合のあり得べきことを慮つて、異議・
訴願に対する判断の結果を見た上で爾後の手続を進行すべきものとする趣旨から出
たものに過ぎず、異議・訴願の手続において不服申立人に聴間の機会を保障し、こ
れらの手続における審理の結果を基礎として(2)(3)の手続を進行すべきもの
とする趣旨から出たものでないことは明らかである。従つて、異議の決定・訴願の
裁決がなされる前に爾後の手続が進められたという違法は、買収処分の重大な瑕疵
としてその無効原因を構成するものと解すべきではなく、後に異議却下・訴願棄却
の裁決があれば、これにより右瑕疵は、治癒されるものと解すべきである。それ故
所論は採用のかぎりでない。
 同第六点について。
 論旨は、ひつきょう、原判決が、本件買収処分に無効原因がなく、出訴期間の制
限に服すべきものと判断したことが失当である旨の第一点乃至第五点の主張を、憲
法違反の主張に言い替えたものに過ぎず、その理由のないことは前論旨に対して説
明したとおりである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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