弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人高梨光上告趣意第一点について。
 しかし
 (一) 原判決は判示のごときメタノール含有のアルコールを「飲用に供する目
的を以て譲渡」した犯罪事実を認定したものである。所論有毒飲食物等取締令第一
条第一項の「飲食物」は、所論のごとく「販売の用に供する飲食物」に限定すべき
理由なきのみならず、原判決は同条第二項を適用したものに過ぎないから、第一項
の字句の意義如何は全然本件には直接の関係がない。
 (二) 原判決の認定した飲用に供する目的をもつて譲渡したとの事実はその挙
示の証拠によりこれを肯認し得る。譲渡が有償であるか無償であるかは本件犯罪の
成否に関係がないから、その何れに属するかを判示しなくとも所論のごとく審理不
尽ということはできぬ、所論証人Aの供述は原審の証拠として採つていないもので
ある。かかる証拠の取捨を非難するは上告適法の理由とならない。
 (三)(四) 製造元も明らかでなく、又その性質も判らない殊に本件のごとく
工業用としての品質不良のアルコールを他に飲用として譲渡するには確実な方法に
よつてその成分を検査し飲用して差支えないものであることを確かめる義務のある
ことは言うまでもないところである(昭和二三年(れ)第五六六号同年八月一一日
第一小法廷判決)。従つて原判決が所論の注意義務ありと判示したのは正当である。
被告人が所論のごとく本件アルコールを水で三倍に薄めたというだけではこの注意
義務を果したものとはいえない。
 (五) 原判決挙示の証拠である鑑定人B作成の鑑定書に依れば判示アルコール
が判示のごときメタノールを含有する事実を認めうるから原判決にはこの点につい
て何等審理の不尽がない。論旨は理由がない。
 (六) 原判決は死因が判示のごときものであることを認定判示したもので原判
決挙示の証拠就中鑑定人B同C作成の鑑定書並びに監察医D作成の検案書の各記載
を綜合すればかかる死因であることを肯認し得るから、原判決は何等所論のような
違法のかどはない。そして憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とい
うのは構成其の他において偏頗の倶なき裁判所の裁判の意味であることは当裁判所
の判例(昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日大法廷判決)の示すとおり
である。だから事実審たる原裁判所の裁量権に属する証拠の取捨が被告人の側から
観て公平でないからといつて原判決が憲法第三七条第一項に違背するものだとはい
えない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 第一点所論がいづれもその理由のないものであることは既に説明したとおりであ
るから、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。
 弁護人安達元吉上告趣意第一点について。
 しかし、被害者にも過失がないといえないことは所論のとおりであるが、されば
といつて、弁護人高梨光上告趣意第一点の三、四について説明したような本件アル
コールを被害者に譲渡する場合の被告人の注意義務乃至この義務違反の責任が当然
に消滅するものでないことは多言を要しない。だから原判決が被告人に過失致死の
罪責ありとしたからといつて所論のように罪とならない行為を罰したという違法は
ない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし譲渡の数量並びに譲受人の人数の如何は譲渡行為の犯罪構成要件に属しな
いから本件譲渡の数量が判示のごとく二升ではなく所論のごとく一升又は一升一合
であり、また譲受人の人数が判示のごとく五名ではなく所論のごとく三名であつた
としても本件における譲渡なる犯罪行為の成立を妨ぐるものではない。それ故所論
は原判決を破毀するに足る事由とはならない。論旨は採るを得ない。
 同第三点について。
 論旨は、原判決において没収した押収品中昭和二二年押第四一二号中の一、二の
物件の所有権は、譲渡人である被告人から譲受人に移転したものであつて、従つて
犯人以外の者の所有に属するから没収することはできぬと主張する。しかし、これ
らの物件は本件犯罪行為の組成物であつて何人の所有をも許さざる法禁物であるか
ら刑法第一九条第一項第一号及び第二項によつて犯人以外の者に属しないものとし
て没収するを相当とする。
 同第四点について。
 しかし、所論の証人Eの供述は原判決において証拠として引用されてはいない。
そして所論のような趣旨の証拠調の申請をいれて証拠調をするかどうかは事実審た
る原裁判所の自由裁量に属するところであるから、右申請を採用して証拠調をしな
かつたからといつて、原判決には審理不尽の違法ありとはいえない。論旨は理由が
ない。
 同第五点について。
 所論は結局事実審たる原裁判所の裁量に属する刑の量定を非難するにすぎないか
ら、上告適法の理由とはならない。
 よつて刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 下秀雄関与
  昭和二三年一一月二五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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