弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人後藤英三上告趣意第一点について。
 原判決が証拠として採用したのは、所論のように第一審公判調書中の証人Bの供
述記載ではなくして、Bの居宅における第一審訊問調書中の同人の供述記載である
が、この訊問には被告人両名の弁護人高垣憲臣及び被告人Aの弁護人日比野幸一並
びに小沼秀之助が立会い(被告人は勾留中で立会つていないけれども)、所要の訊
問を裁判長に求めている。かようにこの証人の供述については、既にその作成の当
時弁護人の訊問する機会が与えられているのであるから、これに対しては刑訴応急
措置法一二条の適用はないものと解するのが相当である(昭和二四年(れ)第七号
同年六月一六日最高裁判所第一小法廷判決参照)。従つて原審において、右Bを証
人として申請したことに対し、これを却下しながら、その供述記載を証拠に採用し
たからとて所論のような違法はない(昭和二四年(れ)第七三一号同二五年三月一
五日最高裁判所大法廷判決参照)。論旨は理由がない。
 同上第二点について。
 原審において弁護士高垣憲臣が被告人C及びA両名の弁護人として選任せられた
ことも、原審公判調書に同弁護人が「被告人Cに対する弁護を辞任すると述べ退廷
した」旨が記載されていることも所論のとおりである。しかし両被告人の在廷する
公判廷から同弁護人が退廷したことから考えてみると、同弁護人はCの弁護のみな
らずAの弁護をも辞任したにも拘らず、公判調書には誤つてその記載を遺脱したも
のと認められる。それ故論旨はすべて理由がない。
 被告人Cの弁護人渡辺靖一上告趣意について。
 共同正犯が成立するために、所論のように二人以上の者の間に何日何時頃如何な
る方法に於て実行するか等、犯罪実行方法の具体的内容に入つた謀議あることを必
要とするのではなく、共同目的を実現するため共同犯行の認識あれば足りる。本件
の被告人両名は判示Bの家宅に押入つて金品を強奪することを共謀し、強盗の目的
を達したのであるから、原判決がこれを住居侵入及び強盗の共同正犯としたのは正
当である。所論のように被告人Cが暴行脅迫の実行をしなかつたからとて、強盗の
共同正犯たる罪責を免れるものでないことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)
第二八〇号同二三年七月二九日大法廷判決)に徴してみても明らかである。
 論旨は原判決が被告人Cに懲役三年の刑を科したことを以て、苛酷に過ぎ権衡を
失し憲法三六条に違反するものであると主張している。しかし事実審裁判官が普通
の刑を法律において許された範囲内で量定した場合において、それが被告人の側か
ら見て過重な刑であるとしても、これを以て直ちに憲法三六条にいわゆる「残虐な
刑罰」と呼ぶことのできないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第三二三
号同年六月二三日大法廷判決、集二巻七号七七七頁)の示すとおりである。それ故
論旨はいずれの点も採用することがでもない。
 以上の理由により旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官堀忠嗣関与
  昭和二五年一一月一五日
     最高裁判所大法廷
            裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判長裁判官田中耕太郎裁判官真野毅及び同穂積重遠は各出張につき署名押印す
ることはできない。
            裁判官    塚   崎   直   義

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