弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Dの弁護人松下明夫,被告人Eの弁護人小川原優之,被告人Fの弁護人安
田好弘,同村松敦子の各上告趣意のうち,憲法違反をいう点は,死刑制度が憲法1
3条,31条,36条に違反するものでないことは当裁判所の判例(最高裁昭和2
2年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最
高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7
号1106頁)とするところであるから,いずれも理由がない。
 その余の被告人Dの弁護人松下明夫,被告人Fの弁護人安田好弘,同村松敦子の
各上告趣意は,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人Eの弁護人小川原優之の
上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも適法
な上告理由に当たらない。
 所論(弁護人らの弁論を含む。)にかんがみ記録を調査しても,原判決に刑訴法
405条の事由はなく,同法411条を適用すべきものとも認められない。なお,
付言すると,本件は,被告人らによる次の三つの犯行である。(1) 被告人3名が
,昭和61年7月,金融業を営むAを誘拐して金品を強取し,犯行の発覚を防ぐた
め殺害しようと企て,外2名と共に,言葉巧みに空き家に連れ込むなどしてAを誘
拐し,その頸部に短刀を突き付け,椅子に座らせた同人の両手足を紐で椅子にくく
りつけ,目隠しをするなどして反抗を抑圧した上,その自宅を家捜しするなどして
土地登記済権利証や外国製自動車を強奪するとともに,山林内に穴を掘って同人を
土中に生き埋めにして殺害した(営利誘拐,強盗殺人)。(2) 被告人3名が,平
成元年7月,塗装会社を経営するBを誘拐,監禁して金員を強取し,犯行の発覚を
防ぐため殺害してその死体を土中に埋めようと企て,外4名と共に,言葉巧みに貸
別荘に連れ込むなどしてBを誘拐し,その両手に手錠をかけ,目隠しをするなどし
て貸別荘内に監禁した上,居合刀をその頸部に押し付けるなどして反抗を抑圧し,
同人に取引銀行に電話をかけさせて1700万円を用意させ,これを上記会社の従
業員に運ばせて強奪した後,すぐBを山林内に連行してひもで絞殺し,その死体を
土中に埋めた(営利誘拐,監禁,強盗殺人,死体遺棄)。(3) 被告人Dが,平成
3年5月,外2名と共に,塗装業を営むCを略取して監禁し,その妻に身の代金2
000万円を交付させた(みのしろ金目的拐取,拐取者みのしろ金取得,監禁)。
以上の各犯行は,いずれも罪質が極めて悪質であり,とりわけ各強盗殺人は,動機
に酌量の余地がなく,犯行態様が冷酷,非情,残虐であって,結果も重大である。
そして,被告人3名は,いずれも,各強盗殺人の犯行に積極的に関与して重要な役
割を果たしたものである。これらの事情に加え,各遺族の被害感情,社会に与えた
影響等に照らすと,被告人3名が被害者らの冥福を祈っていること,被告人Dの親
族らが,(1),(2)事件の遺族にある程度の慰謝の措置を講じていること,被告人E
には罰金前科しかないこと,被告人Fには前科がないことなど,被告人3名のため
に酌むべき事情を十分考慮しても,被告人3名の罪責はいずれも誠に重大である。
したがって,被告人3名を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,当裁判所
もこれを是認せざるを得ない。
 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のと
おり判決する。
 検察官福嶋成二 公判出席 
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野
 修)

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