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平成17年(行ケ)第10253号審決取消請求事件
平成17年4月11日口頭弁論終結
    判決
 原      告株式会社ブリヂストン
訴訟代理人弁理士   水野尚
同      永芳太郎
  被      告  特許庁長官 小川洋
指定代理人      樋田敏惠
 同 藤木和雄
同藤正明
同宮下正之
     主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
    事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 原告
(1) 特許庁が不服2003-18367号事件について平成16年12月24
日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は,平成14年7月26日,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」と
し,別紙審決書写し添付の別紙第1の意匠(部分意匠。以下「本願意匠」とい
う。)の意匠登録出願(意願2002-20126号,以下「本件出願」とい
う。)をしたところ,平成15年8月22日,拒絶査定を受けたので,同年9月1
9日,これに対する不服の審判を請求した。特許庁は,これを不服2003-18
367号事件として審理した結果,平成16年12月24日,「本件審判の請求
は,成り立たない。」との審決をし,平成17年1月7日,その謄本を原告に送達
した。
2 審決の理由
 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願意匠は,別紙審決書写し添
付の別紙第2の意匠登録第906671号意匠(平成6年9月9日発行の意匠公
報)のうち本願意匠に相当する部分(以下「引用意匠」という。)と類似し,意匠
法3条1項3号に該当するので,意匠登録を受けることができない,とするもので
ある。
 審決がその判断の前提として認定した本願意匠と引用意匠との共通点及び差
異点は,次のとおりである。
(共通点)
(1) トレッド全体に大型のブロックを形成したランド比の高い自動車用タイヤ
において,左右のトレッドエッジ部をやや角張らせ,トレッド中央に右下に傾斜し
た同形の中央ブロックを一列状に形成し,その両側に,前記中央ブロックの両側に
突出する角部間に嵌合するように略多角形状のショルダブロックをそれぞれ1列形
成した,全体の基本的な構成。
(2) 中央ブロック列の態様について,略40度程度傾斜させた横長のブロック
であって,上下の間隔を詰めて配列している点。
(3) ショルダブロック列の態様について,中央ブロックに隣接する側を三角形
状とし,ショルダ部からサイド部に掛けて帯状に形成し,相対する左右のショルダ
ブロックをブロック半分程度上下にずらせて配列し,隣接する上下のショルダブロ
ック間に太幅の横溝を形成した点。
(以下,順に「共通点(1)」などという。)
(差異点)
(1) 中央ブロック列の態様について,本願意匠においては,中央部がわずかに
膨出した略俵形状のブロックで,隣接する上下のブロック間にごく細幅の溝が形成
されているのに対し,引用意匠においては,扁平6角形状のブロックで,上下のブ
ロック間にやや幅広の溝が形成されている点。
(2) ショルダブロック列の態様について,本願意匠においては,隣接する中央
ブロックとの間にごく細幅の溝が形成されているのに対し,引用意匠においては,
太幅の溝が形成されている点。
(以下,順に「差異点(1)」などという。)
第3 原告主張の取消事由の要点
 審決は,本願意匠と引用意匠との共通点の評価を誤るとともに,構成態様の
主要な点を看過し,その結果,本願意匠と引用意匠とが類似するとの誤った結論に
至ったものであるから,取り消されるべきである。
1 共通点の評価について
 審決が認定した,全体の基本的な構成についての共通点(1),中央ブロック列
の態様についての共通点(2),ショルダブロック列の態様についての共通点(3)は,
いずれも甲3ないし7号証(そのうち甲3ないし6号証は引用意匠の出願前に意匠
登録されている。)などの公知意匠において明らかなように,普通に見受けられる
ものであって,何らの特徴のないものである。
 したがって,審決が強い類似感をもたらしているとした共通点(1)ないし(3)
は,いずれも普遍化している構成態様であって,看者の注意をさほど惹かないもの
であるから,類否判断の要素として評価すべきではないものである。
2 主要な構成態様について
(1) 本願意匠と引用意匠には,ブロック状に現れる凸出部(以下「凸出部」と
いう。)と溝からなる凹陥部(以下「凹陥部」という。)とがあり,凸出部と凹陥
部との間には,認知の場における図と地の関係があり,心の構え方によって,凸出
部が主体となったり,凹陥部が主体となったりするものである。そして,凹陥部の
態様を観察すれば,両意匠では太幅の溝が表出する一つのまとまった凹陥図柄とし
て現れ,この凹陥図柄は視覚的に強く印象付けられ,それによって凸出部の態様も
顕在化するものであるから,両意匠の凹陥部は,その類否を左右する主要素をなす
ものである。しかるに,審決は,凸出部の態様の一面のみを認定判断し,凹陥部に
ついて明確な認定判断をしていない。
(2) すなわち,本願意匠の中央ブロック列の周縁には,ごく細幅で条線状の溝
が形成され,ショルダブロックの間には,中央ブロックの両側角部に接する部位を
先細とした太幅の溝が形成されているものであって,全体として,溝によって形成
された凹陥部は,中央ブロック列周縁が条線状の溝であるため,さほど目立たない
ことから,トレッドの両側端寄り部の各ショルダブロック間のみに,内側に向かっ
て先端部を先細とした直線状で太幅の溝が等間隔で上下に並列した凹陥図柄として
現れているものである。また,その凹陥図柄によって,凸出部である中央ブロック
とショルダブロックによって形成される凸出図柄は,斜状の略俵形区画が上下に略
密着して連続する中央ブロック列の左右に,ショルダブロックの万年筆のペン先様
をなす内方先端部が略密着して,あたかもきつく編み込んだ網代編状を呈するもの
である。
 一方,引用意匠においては,全体として,溝によって形成された凹陥部
は,中央ブロック列の両側端から外側に向け内側頂部(中央ブロックに接する部
位)を三角状とする,変形倒「コ」字状繋ぎ様の同一太さで極めて広幅な溝が縦に
連続し,左右の該縦溝に,中央ブロック列間に斜平行して設けられた細溝が連通し
た網状を呈する凹陥図柄として現れているものである。また,その凹陥図柄によっ
て,凸出部である中央ブロックとショルダブロックによって形成される凸出図柄
は,変形六角形区画が,上下に細幅の間隔を空けて連接する中央ブロックの左右
に,変形扇面形様のブロック単体を,上下に広幅な間隔を空けて縦帯状に並設させ
たショルダブロックが,広幅の九十九折り状溝部を介して現されて,あたかも縄目
状に認識される中央ブロックの縦帯と,左右のショルダブロックによる扇面繋ぎ様
縦帯とが,完全に分離並列した態様を呈するものである。
 このように,両意匠における凹陥図柄及び凸出図柄は,ともに形態認識の
主体をなすもので,その相違は極めて顕著であって,全体に与える影響は大きく,
両意匠の構成態様を支配して全体の印象を異にさせるものであるから,類否判断を
左右する主要素をなすものであるところ,審決は,類否の判断において,この主要
な構成態様における顕著な相違を看過しているものである。
3 類否判断について
 前記のとおり,審決が共通点としている点は,類否判断の要素として高く評
価することはできないものであるのに対し,本願意匠と引用意匠の具体的な構成態
様には,凹陥部及び凸出部の態様,すなわち,凹陥部による凹陥図柄とそれによっ
て顕在化する凸出図柄に顕著な相違があることのほか,審決認定の差異点(1)及
び(2)がある上,ショルダブロックについて,本願意匠は,中央ブロックに接する先
端部を先太とした万年筆のペン先様として,該ブロックの残余部を水平状に形成し
ているのに対し,引用意匠は,変形扇面形様でそれぞれのブロックは右上に傾斜し
た斜状に形成されている点においても顕著な相違が見られるものであり,これらの
顕著な相違が相まった相違感は,審決が認定した共通点を凌駕するに充分なもので
ある。したがって,両意匠を全体として観察すると,明らかに類似しないものであ
り,これを類似するとした審決の判断は誤りである。
第4 被告の反論の要点
1 共通点の評価について
 審決が認定した共通点が仮に周知の形態であったとしても,それが両意匠の
支配的部分を占め,意匠的まとまりを形成し,看者の注意を惹くときは,なお要部
たり得ることは,過去の判例の示すところである。本件においても,共通点は,タ
イヤの支配的部分を占めるトレッドの全域に及ぶ基本的な構成であり,人目を惹き
やすい中央部のブロック列や,該ブロックに噛み合うように形成された左右のショ
ルダブロック列によって,意匠的まとまりを形成している部分であるから,看者の
注意を惹き,要部となり得ているものであって,類否判断の要素として評価すべき
でないとする原告の主張は,失当である。
 また,本願意匠と引用意匠の中央ブロックの外形状が,鞍部のない,俵ある
いはビヤ樽状の膨出した形であり,その中央ブロックを,上下の間隔を詰め,中央
列の上下連続性を強めて配列しているという点は,原告が指摘する甲3ないし7号
証には見受けられないものであって,両意匠に特徴的な共通点であり,このことに
よって,目に付きやすい中央ブロック列の連続性を強く印象づけ,両意匠の共通性
に大きく貢献しているものであるから,この点においても,原告の主張は失当であ
る。
2 主要な構成態様について
(1) トレッドパターンにおける溝とブロックの関係は,原告主張のとおり,い
わば図と地の関係に相当するのであり,それは表裏一体のものであるから,凸出部
側に焦点を当てて形状をとらえたとしても,凹陥部についても,当然認定している
ことになる。現に,審決は,両意匠を「トレッド全体に大型のブロックを形成した
ランド比の高い自動車用タイヤ」として,凸出部の割合が高いことを認定した上
で,ブロック形状の認定をし,その配列状態やブロック相互の間隔の認定を行って
いる。
(2) 原告は,本願意匠と引用意匠とでは,その凹陥図柄も凸出図柄も著しく相
違していると主張する。
 しかし,凹陥図柄については,本願意匠の溝も,途切れなく連続している
点で引用意匠との間に本質的な差はなく,ただ溝の太さにおける程度の差があるに
過ぎないものである。また,仮に,本願意匠の溝の特徴が,原告主張のように太幅
の溝が並列した点にあるとすれば,そのような溝の図柄は,本件の物品分野にあっ
ては古くから見られるものであって,特徴となるものではない(乙4号証2図,3
図,5号証1図)。そして,凸出図柄については,最も目に付く中央部のブロック
列は,本願意匠も引用意匠も,俵あるいはビヤ樽形状を斜めに連続させたことによ
る縄目状を呈するものであるから,共通しており,また,それに石垣状に嵌合する
ようにショルダブロックを配列した全体の視覚的印象においても,両者は共通して
いる。
 したがって,本願意匠と引用意匠の凹陥図柄及び凸出図柄に本質的な差異
はなく,原告の主張は失当である。
3 類否判断について
(1) 本願意匠と引用意匠の中央ブロックの形状は,俵あるいはビヤ樽状の膨出
した同種の形状といえるものであり,共に点対称性をなす形状であることにおいて
も共通している。そして,上下の隣接するブロック本体の接触部分は,本願意匠も
引用意匠も,共に30~40度程度傾斜し,ショルダブロックと噛み合うその両側
部分は,三角状に角張ってジグザグ状を呈しているので,全体として,撚った麻縄
状の連続状態が強く印象付けられている点で共通している。また,上下のブロック
間の溝幅の差異はごく僅かであり,溝幅の大小という程度の差にとどまるものであ
って,類否判断に影響を及ぼす程のものではない。
(2) 原告が主張するショルダブロックの先端部についての差異は,当該部分を
他から切り離して比較する場合においていえることであって,個々の要素が緊密に
結合されたトレッドパターンの比較においては,微弱なものである。また,帯状胴
部(残余部)についても,中央部に比して注目されにくい部位であるなど,原告が
主張する差異が視覚に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。
 原告は,ショルダブロックと中央ブロックとの間の溝について,本願意匠
と引用意匠で顕著な相違がある旨主張するが,本願意匠のそれも,その幅員の程度
の差はあれ,視覚的にも溝と認識されるものであるから,引用意匠とその態様にお
いて共通するものである。そして,その溝を周辺の溝より幅狭としたものは,本件
出願前にも既に見られる態様であるから(乙2,3号証),特に新規なものではな
く,トレッド全体の中で観察すれば,中央ブロックとショルダブロックを区画し,
周方向にジグザグ状の縦溝を形成している点で共通しており,その差異は両意匠の
類否判断を左右する程のものではない。
 原告の主張は,ブロック間の溝のみ,あるいは,トレッドパターンの一部
を過大に評価し,両意匠の支配的部分を占め,両意匠の特徴と基調を形成している
共通点を過小評価するものであって,失当といわざるを得ず,本願意匠と引用意匠
が類似するとした審決の認定判断に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 共通点の評価について
 原告は,審決が認定した共通点(1)ないし(3)は,いずれも公知意匠において
普通に見受けられるものであって,何らの特徴のないものであり,類否判断の要素
として評価することはできないと主張する。
 甲3ないし6号証によれば,自動車用タイヤに係る意匠において,トレッド
中央に傾斜した同形の中央ブロックを一列に配するとともに,その両側に略多角形
のショルダブロックをそれぞれ一列配した構成とし,その中央ブロックを横長のブ
ロックとし,ショルダブロックを中央ブロックに隣接する側が三角状である帯状の
ものとし,その列を上下にずらせて配列している形態のもの(以下「公知意匠」と
いう。)が引用意匠及び本願意匠の出願前に意匠登録(昭和58年3月23日登録
第602628号(甲3号証),昭和63年7月13日登録第745549号(甲
4号証),平成3年8月30日登録第823147号(甲5号証),平成4年1月
30日登録第836506号(甲6号証)。甲5号証以外のものは,いずれも原告
が意匠権者である。)されていたことが認められる(なお,原告引用の甲7号証
は,引用意匠及び本願意匠の各出願後に意匠登録されたものである。)。
 そうすると,本願意匠と引用意匠の構成態様のうち,上記のような形態はそ
の出願前公知のものであったということができるが,意匠は,各構成部分が有機的
に結合して,全体的に一つのまとまった美感を奏するものであるから,意匠の構成
態様のうちのある部分が公知のものであることは,必ずしもそれが意匠の特徴を示
す要素となり得ないことと結びつくものではない。また,上記公知意匠が,取引
者,需要者にとって普通に見られる周知のものとなっていたとまでいえるかどうか
はともかく,仮に周知であったとしても,それが当該意匠全体の支配的部分を占
め,意匠的まとまりを形成し,見る者の注意を強く惹くものであるときは,なお意
匠上の要部と認められるのであって,意匠のうち周知の部分は当然に意匠の要部と
なり得ないということもできない。
 そして,本願意匠及び引用意匠における,中央ブロックの具体的な形状(略
俵形状あるいは偏平六角形状)や配列(上下の間隔を詰めて配列していること)
は,上記公知意匠にはみられない特徴であり,これら中央ブロック列の態様と,こ
れに嵌合するように配列されたショルダブロック列の態様は,意匠の支配的部分を
占め,見る者の注意を惹きやすい部分を構成するものとして,公知意匠にみられる
構成態様と密接に絡まって意匠全体としての美感を形成しているということができ
るのであって,審決が認定した両意匠の共通点は,全体的なまとまりを持った意匠
的特徴を示しているものとして,両意匠の類否判断において重要な要素として評価
せざるを得ないものというべきである。
 したがって,審決認定の共通点は,見る者の注意を惹かないものであり,類
否判断の要素として評価することができない旨の原告の主張は,採用することがで
きない。
2 主要な構成態様について
(1) 原告は,審決は,本願意匠と引用意匠の凸出部の態様の一面のみを認定判
断し,凹陥部について明確な認定判断をしていないと主張する。
 しかし,審決は,本願意匠と引用意匠との対比において,ブロックの形
状,その配列の態様と共に,ブロック相互の間隔や各ブロック間に形成された溝の
幅等についても着目して,両意匠の共通点,差異点を認定しているものであり,原
告が主張する凸出部と凹陥部を,ブロックと溝という表現で認定していることは明
らかであって,凹陥部について認定判断していないものではなく,原告の上記主張
は失当である。また,本件のような自動車用タイヤにおけるブロックと溝の関係
が,いわば図と地の関係にあることは,原告主張のとおりであるから,ブロックの
形状や配列についての認定は,とりもなおさず各ブロック間の溝の形状等を示すも
のでもあるし,しかも,意匠の類否の判断においては,見る者の注意を強く惹く部
分を中心に,両意匠を全体的に観察してその視覚的印象の異同により,類否を判断
すべきものであるところ,本件のような多数のブロックが配列された自動車用タイ
ヤにおいては,通常,溝によって区画され図形化されたブロック(凸出部)の方
が,細長の溝部(凹陥部)よりも見る者の注意を惹くものというべきであるから,
本件において,審決が,ブロック(凸出部)の態様等を中心に意匠の形態を検討し
ているとしても,意匠の類否の判断の方法として何ら適切さを欠くものではないと
いうべきである。
(2) 原告は,本願意匠の凹陥部は,中央ブロック列周縁が条線状の溝で目立た
ないことから,各ショルダブロック間のみに,直線状で太幅の溝が等間隔で上下に
並列した凹陥図柄として現れているのに対し,引用意匠は,左右の縦溝に,中央ブ
ロック列間に斜平行して設けられた細溝が連通した網状を呈する凹間図柄として現
れているとして,両意匠における凹陥図柄の相違は極めて顕著である旨主張する。
 しかし,本件出願に係る意匠登録願に添付された図面(甲2号証,乙1号
証)によると,本願意匠における溝(凹陥部)も,各ブロックの間に連続して形成
されており,この溝があることによって,上下に連続した中央ブロック(凸出部)
と,その左右両側に三角状をなして嵌合する形で配列されたショルダブロック(凸
出部)とを形成し,これらがまとまりを持った意匠的効果を生みだしているもので
あることは否定できず,たとえ細幅の溝であっても,ブロックを画する形で形成さ
れている以上,ブロックと共にこれを見る者の注意を惹く部分であることは明らか
であり,中央ブロック周縁の溝は目立たないものとして凹陥図柄を構成しないとす
ることはできない。本願意匠及び引用意匠において,各ブロックと溝との関係から
醸し出される全体的な視覚的印象は,その溝幅の大小という差異にかかわらず強い
類似性を呈しているというべきであり,原告の主張は,本願意匠の全体に連続して
形成された溝を,ショルダブロックの上下の太幅の部分のみに限定した図柄として
とらえ,細幅の部分を無視するものであって,採用することができない。
 また,原告は,本願意匠の凸出図柄は,中央ブロック列の左右にショルダ
ブロックの先端部が略密着して,きつく編み込んだ網代編状を呈するものであり,
引用意匠のそれは,縄目状の中央ブロックの縦帯と左右のショルダブロックによる
扇面繋ぎ様縦帯とが,完全に分離並列した態様を呈すると主張する。
 しかし,本願意匠と引用意匠において,凸出部である中央ブロック列とシ
ョルダブロック列との関係は,これを全体的に観察した場合,いずれも横長の胴部
が膨出した俵状ないしはビヤ樽状のブロックが上下一列に密着,連続して形成され
ている中央ブロック列と,その両側に中央寄りを三角状にしたショルダブロックが
嵌合するように形成され,中央ブロックの左右両側にジグザグ状の模様を呈するに
至っている点で共通しているものであり,そこから醸し出される美的印象を共通に
しているというべきであって,中央ブロックとショルダブロック間の溝幅の点に差
異があるとしても,両意匠の凸出部の態様として,原告が主張するように,本願意
匠がきつく編み込んだ網代編状で,引用意匠は完全に分離並列した態様を呈すると
いうほどの明瞭な印象差を生じているとはいえず,原告の上記主張も採用できな
い。
 以上のとおり,本願意匠と引用意匠について,原告が主張する凹陥図柄及
び凸出図柄に着目して観察しても,両意匠のそれらの図柄に顕著な相違があるとい
うことはできず,前記のとおり,審決は,凸出部だけでなく凹陥部についても着目
して共通点及び差異点を認定し類否判断をしているのであるから,原告が主張する
ように,審決が主要な構成態様を看過して類否判断をしているということはできな
い。
3 類否判断について
(1) 本願意匠と引用意匠を対比すると,両意匠の共通点は,審決が共通点(1)
ないし(3)として認定しているとおりであり,両意匠に係る物品が自動車用タイヤで
あることからすると,意匠としての支配的部分を占め,視覚的に見る者の注意を惹
きやすい中央部のブロック列や,該ブロックに嵌合するように配列された左右のシ
ョルダブロック列の態様等は,それによって一つのまとまりを持った意匠的効果を
奏する部分であり,そのうちでも特に中央ブロックの配列が上下の間隔を詰めた連
続性のある形を示している点は,前記のとおり,公知意匠にみられない特徴的な部
分といえる。そして,それら両意匠に共通する中央ブロック列及びショルダブロッ
ク列の配列上の態様は,各ブロック全体の基本的な配置構成の共通性と相まって,
両意匠の強い類似性を示しているものということができる。
(2) これに対し,両意匠の差異点は,審決が差異点(1)及び(2)として認定して
いるとおりであると認められるところ,その差異点(1)のうち,中央ブロックの形状
については,本願意匠のそれは胴部がやや膨出した略俵形状をなしており,引用意
匠のそれは胴部が角張った偏平六角形状をなしている点で,仔細に観察すると相違
しているものの,全体的な形状としては,いずれも横長の胴部が膨出した俵状ない
しビヤ樽状を呈しているものとみることもでき,その形状に大きな相違はないとい
える。
 次に,差異点(1)のうち,中央ブロックの上下ブロック間の溝幅が,本願意
匠がごく細幅であるのに対し,引用意匠はやや幅広のものである点については,あ
る程度離れた位置から観察した場合や斜めから観察した場合には,その溝幅の相違
はさほど目立つものとは認められない程度のものであり,本願意匠と引用意匠にお
ける中央ブロックの配列の態様は,いずれも俵状ないしビヤ樽状のブロックが上下
一列に密着,連続した外観を呈するという点で,見る者に類似した印象を与えるも
のということができ,両意匠における上記溝幅の違いは,その全体的な印象の中で
ごく微細な差異にとどまるものということができる。
 また,差異点(2)については,本件出願に係る意匠登録願に添付された図面
(甲2号証,乙1号証)によると,本願意匠におけるショルダブロックと中央ブロ
ックとの間の三角状部分における溝幅は,中央ブロックの上下に形成された溝より
さらに細いことが認められるが,そのようなごく細幅の溝であっても,その溝の存
在によって,ショルダブロックの形状が区画され,その中央寄りを三角状として中
央ブロックと嵌合するような形を形成し,中央ブロックの左右両側にジグザグ状の
模様を呈するに至っている点で,引用意匠と共通しているものであり,両意匠を全
体的かつ離隔的に観察した場合,上記溝幅の差異は,両意匠の前記の全体的な共通
点から受ける美感を異ならせるものとまでは認めることができない。
 なお,原告は,本願意匠のショルダブロックは,中央ブロックに接する先
端部を万年筆のペン先様とし,その残余部を水平状に形成しているのに対し,引用
意匠のショルダブロックは,変形扇面形様で,右上に傾斜した斜状に形成されてい
る点で相違しているとも主張しているが,その点は,中央ブロックに隣接する三角
状の先端部を有し,ショルダ部からサイド部にかけて帯状に形成されているという
点で共通する中での差異であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにと
どまるといわざるを得ない。
(3) 以上のとおりであり,本願意匠と引用意匠に共通する中央ブロック列及び
ショルダブロック列の配列上の態様は,各ブロック全体の基本的な配置構成の共通
性と相まって,視覚的印象としての両意匠の強い類似性を示しているものというこ
とができるのに対し,その差異点はいずれも微弱なものであるから,両意匠は類似
するというべきであり,本願意匠が意匠法3条1項3号に該当するとした審決の認
定判断に誤りはない。
4 したがって,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,審決に,これを取
り消すべき誤りは認められない。
 よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行
政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
   裁判長裁判官     佐  藤  久  夫
   裁判官     若  林  辰  繁
   裁判官     沖  中  康  人

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