弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原決定を次のとおり変更する。
1検察官に対し,Aの胃や小腸を始めとする各消化器の内容物について記載され
た捜査官の手控えの開示を命ずる。
2主任弁護人のその余の証拠開示命令請求を棄却する。
理由
本件即時抗告の趣意は,主任弁護人作成の即時抗告申立書,上申書及び被告人意
見書各記載のとおりであるから,これらを引用する。
論旨は,要するに,原決定が,刑訴法316条の15に基づく証拠開示の対象を
検察官の手持ち証拠に限定した上,別紙目録記載の証拠(以下「本件資料」という。)
のうち,捜査官の手控えは備忘録の類であり,検察官に送致又は送付する場合に添
付すべき関係書類及び証拠物とは認められず,検察官の手持ち証拠中に本件資料は
存在しない旨の検察官の回答に疑問を生じさせる事情はうかがえないとして,本件
証拠開示命令請求を棄却したのに対し,備忘録等の体裁をとるものであっても,そ
の実質において捜査書類と大差のないものもあり,後に捜査書類としての体裁を整
えて証拠請求される場合もあるのに,捜査機関の恣意的な体裁の選択により証拠開
示の対象外とされるのは不当であり,少なくともその記載内容において特段の加工
なしに証拠としての役割を十全に果たす程度のものである限り,備忘録等も検察官
に送致すべき捜査書類に含まれ,証拠開示の対象となると解すべきであって,原決
定は,証拠開示の対象の範囲についての解釈を誤り,かつ,この点につき理由不備
の違法があるとして,その取消しと本件資料の開示命令を求める,というのである。
そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果も併せて検討する。
検察官は,本件において,栄養学の専門家であるBの検察官に対する供述調書(甲
26。以下「B調書」という。)により,Aの死亡時刻を立証しようとしているが,
B調書における同人の供述は,捜査機関から提供を受けたAの胃等の内容物に関す
る情報を前提として,専門的知見に基づき,食物の滞胃時間等から同人の死亡時刻
を推認するものであることがうかがわれる。そうすると,上記の胃等の内容物に関
する情報は,B調書においてAの死亡時刻を推認する上で不可欠の前提となるもの
であり,この点についての供述録取書等は,検察官がB調書により直接証明しよう
とする事実の有無に関する供述を内容とするものであると解するのが相当である。
ところで,B調書が前提とするAの胃等の内容物は,検察官が別途証拠請求して
いる医師C作成の鑑定書(甲24)における記載内容とは必ずしも整合しておらず,
この点に関し,検察官は,第9回期日間整理手続期日において,Aの剖検に立ち会
った捜査官は何らかの手控えを作成していると思われる旨回答し,上記鑑定書とは
別の資料の存在を示唆しており,これに基づく情報がBに提供されたものと思われ
る。このような経緯にかんがみれば,Aの胃等の内容物に関する情報が記載された
捜査官の手控えは,B調書と共に当然検察官の下に送致されることが想定される捜
査書類といえるのであって,これを,現に検察官の手許にないことのみをもって,
刑訴法316条の15に基づく証拠開示の対象から除外されるものと解すべきでな
い。
なお,刑訴法316条の27第2項は,あくまでも証拠開示の裁定に当たっての
判断材料の提供に関して定めたものであり,同規定が提示を求めることができる一
覧表の範囲を検察官の保管する証拠に限っていることをもって,証拠開示の対象に
ついても,現に検察官が保管するものに限定されると解する必然性はないといわな
ければならない。
以上によれば,本件において,Aの胃等の内容物について記載された捜査官の手
控えは,被告人以外の者の供述録取書等であって,検察官が特定の検察官請求証拠
により直接証明しようとする事実に関する供述を内容とするもので,検察官の下に
送致されるべき捜査書類であるが,これを,現に検察官の手許にないことを理由に,
検察官の手持ち証拠に該当しないとして本件証拠開示命令請求を棄却した原決定に
は,刑訴法316条の15に基づく証拠開示の対象の範囲についての解釈に誤りが
ある。
そして,上記の捜査官の手控えは,B調書の証明力を判断するために重要性が高
く,被告人の防御の準備のために開示の必要性も認められ,また,その性質上,こ
れを開示することによって具体的な弊害が生じることも想定し難いから,刑訴法3
16条の15第1項6号に定める供述録取書等に該当するというべきである。
なお,原審記録によれば,本件証拠開示命令請求に係るその余の捜査書類等は,
存在しないものと認められる。
論旨は,Aの胃や小腸を始めとする各消化器の内容物について記載された捜査官
の手控えの開示を求める限度で理由がある。
よって,刑訴法426条2項により,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・門野博,裁判官・村田健二,裁判官・水上周)
別紙目録
Aの胃や小腸を始めとする各消化器の内容物について記録した捜査資料(剖検に
関する報告書等のほか,捜査官の備忘録等を含む)

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