弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐々木祿郎の上告趣意第一点は、第一審判決摘示の犯罪事実第一について、
原審のした判断は、法令の適用を誤まり、事実を誤認し、大審院の判例に相反する
ものがあると主張するが、第一審の確定した事実によれば、被告人は、原判示Aが
煙草の密耕作を行つたことを聞知し、これを奇貨とし、同人より金品を喝取しよう
と企て、Bと共謀の上、Bを刑事に仕立てて、右A方に赴き、同人に対し、原判示
のごとく申し向け、同人をしてこの儘放置すれば、煙草の密耕作で検挙されるもの
と畏怖させ、更に、同人に対し、「新聞社への口止料を出せ」と申し向け、若しこ
れを拒絶するにおいては、検挙に至るものと感得畏怖せしめ、よつて原判示の如く、
他人と共謀の上又は単独にて、同人から金品を喝取したというにあり、なる程被告
人の施用した手段の中には虚偽の部分があり、原判示Aがその虚偽の事実に欺かれ
たことは、まさに所論のとおりであるが、その虚偽の部分も同人に畏怖の念を生ぜ
しめる一材料となり、その畏怖の結果として原判示金品を被告人等に交付する決意
をするに至つたと認められる以上、縦令その施用手段中に虚偽の部分があつても、
全体としてそれは詐欺罪をもつて論ずべきではなく、恐喝罪をもつて論ずべきもの
であることは所論指摘の大審院判決(昭和五年(れ)第七八五号、同五年七月一〇
日、刑集九巻八号四九七頁以下)並びに当裁判所第二小法廷判決、(昭和二三年(
れ)第一二四一号同二四年二月八日、刑集三巻二号八三頁以下)の趣旨とするとこ
ろである、されば所論はひつきよう原事実審の事実の認定を論難するに帰し、採る
を得ないし、引用の大審院判決(昭和四年(れ)第一三一三号、同五年五月一七日、
刑集九巻五号三〇三頁以下)は、事案の内容を異にする本件に適切妥当ならず、所
論判例違反の主張は前提を欠き、採用に値しない、第二点は、違憲をいうも、結局
は、量刑不当の主張に帰し(なお刑の執行猶予の言渡を取り消されることなくして
猶予の期間を経過し、刑の言渡がその効力を失つても、その言渡を受けたという既
往の事実そのものを量刑の資料に参酌しても違法でないことは、昭和二九年三月一
一日第一小法廷判決、刑集八巻三号二七〇頁の趣旨とするところであるし、大赦令
により赦免され、刑の言渡の効力を失つた前科を量刑当否の判断の資料に供しても
違法でないことは、同三二年六月一九日第二小法廷決定、刑集一一巻六号一六九五
頁の判示するところである)刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べ
ても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三三年六月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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