弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告指定代理人D、同E各名義の上告理由第一点について。
 論旨は、所論充当配分が行政処分であることを強調し、ついで、充当により抵当
権者の実体上の権利関係に消長を及ぼすものでないとしても、国が不当利得の返還
義務を負うのではなくて、充当によつて不当に租税債務を免れた納税義務者と抵当
権者との間で利害が調整されるべき筋合のものである、と主張する。
 原判決は、充当処分が行政処分であることを否定したものではないから、論旨前
段は無用の論議であり(不当利得は、他の規定から生ずる結果が形式的に正当であ
るにもかかわらず、実質的に公平に反するときに、これを是正する制度であるから、
所論充当配分が形式的に争いえなくなつたことは、不当利得を否定する論拠となら
ない。)、論旨後段もまた独自の見解であり(特定の財産から国が徴収しえざる税
金を徴収することは、国について不当利得が成立することは疑がない。)、採用し
えない。
 同第二点について。
 論旨は、旧国税徴収法(明治三〇年三月二九日法律二一号)二条、三条について
の原判決の解釈を誤りであると主張し、仮に正しいとしても、Fが滞納した本件抵
当権設定後元年内に納期の到来した地方税に相当するG株式会社の国税は、被上告
銀行の本件抵当債権に優先すべきであると主張する。
 抵当不動産が譲渡された場合に、同法三条により抵当債権に優先すべき国税は、
抵当物件の差押の際の所有者の滞納国税(その納期のいかんを問わない。)であつ
て、抵当権設定者の設定前に納期の到来した国税および設定後一年間に納期が到来
した国税のうち抵当物件の競落代金の配当のさい滞納されている金額に相当するも
のであると解すべきことは、昭和三二年一月一六日当裁判所大法廷判決(民集一一
巻一号一頁)の判示すところであり、この点についての原判決の解釈は正当である。
また仮にFの所論地方税額が抵当債権に優先するとしても、原判決の確定したその
額は一四〇、四八〇円であり、したがつて抵当債権に優先する租税合計は二〇二、
四九六円となるところ、これを公売代金一五〇万円から差引いても、なお一、二九
七、五〇四円が余ることとなるから、第二順位である被上告銀行の抵当債権一、二
八〇、〇五〇円が全額弁済さるべきことに変りはない(原判決が被上告人の請求中
一、二一八、〇三四円のみを認容し、被上告人の附帯控訴を容れなかつたのは誤で
ある。)。したがつて、所論は判決に影響を及ぼさない無用の論議に帰する。論旨
はすべて排斥を免れない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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