弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 被告北海道営林局長(昭和四五年七月五日当時札幌営林局長)が昭和四五年七
月四日に別紙第一目録記載原告番号1ないし18の原告Aら一八名に対して行なつ
た同目録処分欄記載の各懲戒処分は、いずれもこれを取消す。
二 被告恵庭営林署長が昭和四五年七月四日に別紙第二目録記載原告番号1ないし
28、30ないし49の原告Bら四八名に対して行なつた同目録処分欄記載の各懲
戒処分は、いずれもこれを取消す。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
(原告ら)
 主文同旨
(被告ら)
一 原告らの請求はいずれもこれを棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
(請求原因)
一 当事者
1 別紙第一目録記載の原告らは被告札幌営林局長に(その後北海道営林局長に変
更以下被告営林局長という)、同第二目録記載の原告らは被告恵庭営林署長(以下
被告営林署長という)に各任用され国有林野事業に従事し、同時に全林野労働組合
(以下全林野という)に加入していた。そして右原告らの昭和四五年四月三〇日当
時における職務内容は次表記載のとおりであつた。
<19763-001>
<19763-002>
2 被告営林局長は別紙第一目録記載原告らの任免権者であり、被告営林署長は被
告営林局長の命を受け国有林野事業を執行するもので別紙第二目録記載原告らの任
免権者である。
二 本件懲戒処分
1 被告営林局長は昭和四五年七月四日第一目録記載の原告らに対し、また被告営
林署長は右同日第二目録記載の原告らに対し、それぞれ右各目録の処分欄に記載の
とおり減給あるいは戒告の各処分を行なつた。
2 その処分の理由とするところは、原告らは昭和四五年四月三〇日、一斉に職務
を放棄しあるいは職務を放棄せしめたというものであつた。
三 本件争議行為
1 国有林労働者の身分と処遇
(一) 林野庁所属の職員は、「行政機関の職員の定員に関する法律」に基づくい
わゆる定員内職員(約四万人)とこれ以外のいわゆる定員外職員(約三万六〇〇〇
人)とに大別され、国有林野事業職員就業規則により、定員内職員は主として事務
的、技術的職務を担当し、定員外職員は主として現場作業に従事している。そして
定員外職員はその雇用される期間によつて区分され、年間継続して雇用される「常
用作業員」と、年間六ケ月を超えて雇用される「定期作業員」それに年間六ケ月以
下の期間雇用される「臨時作業員」とに分れている。
(二) しかして常用作業員は勿論のこと定期作業員といえどもその圧倒的多数は
その勤続年数一〇年を超えており、国有林野事業における専業的かつ基幹的労働者
といわねばならない。
 しかしその実態に反し、制度としては、常用および定期作業員は局所的な事業の
必要によつて雇用されるいわゆる臨時的雇用にすぎないとされており、常用作業員
も二ケ月間雇用その年度末まで更新していくことにより通年雇用となつているので
ある。そして定期作業員は毎年雇用、失業が反覆され、失業期間中は「失業者の退
職手当」という名目の手切れ金で最低生活を余儀なくされている。
(三) その賃金や職場環境についてみるに、その賃金は同一労働態様にある月給
制技能職者に較べ著しく低額であり、またその支払も定額日給あるいは出来高給で
あつて不安定な状態にある。また賃金のほか諸手当、年休等の諸権利については定
員内職員と差別され、冷遇されている。そしてその作業環境は屋外作業を主とし、
家族と別居して(山泊)作業に従事しあるいは遠距離の通勤を余儀なくされてい
る。しかもその作業は近年の急速な省力化、機械化、要員未補充によつて労働が強
化され、かつ重筋肉、長時間労働となつている。そのため労働災害は多発し、特に
死亡、重傷災害が高率を示している。
2 処遇改善をめぐる交渉経過
(一) 国有林労働者の闘いは、定員内外職員の賃金大幅引上げと定員外職員に対
する処遇改善、差別撤廃を中心として行なわれ、その結果林野庁との間で昭和四一
年三月二五日「雇用安定等に関する議事録抄」(通称三・二五確認)と同年六月三
〇日「雇用安定等について」(通称六・三〇確認)のいわゆる二確認がかわされ
た。この三・二五確認は「国有林経営の基本姿勢として、直営直傭を原則とし、こ
れを積極的に拡大し、雇用の安定をはかることを前提とする」というものであり、
六・三〇確認はその内容をより具体化し、国有林の現場労働者の雇用と処遇につい
て「①失業、雇用の反覆状態にある従来のあり方を是正し、臨時的雇用制度を抜本
的に改めること。②それまでの当面措置として、事業の通年化等をはかり常用化を
積極的にすすめるとともに処遇の改善をはかること。③職場環境改善、厚生施設等
の拡充をはかること。④これらの問題について、組合と十分協議し、意志の疎通を
はかつてゆくこと。」というものであつた。
(二) しかし当局は右二確認の実施に誠意を示さず、昭和四二年度には定期作業
員の常用化が僅かにすすめられたに止まつた。そこで全林野は更に闘争をすすめ、
同四三年秋には機械要員の定員化と一七八五名の常用化が実現し、さらに当局との
間で「①基幹要員については通年雇用する。②常勤性を付与する。③常勤性にふさ
わしい処遇にする。」との確認がかわされた。
(三) しかして昭和四四年度には約四三〇〇名の常用化しか実現せず、全林野は
同年秋「①白ろう病絶減。②臨時雇用制度の抜本改善。③月給制費金体系の改善」
等を要求し、中央段階での団体交渉を行なつた。交渉は当局が具体的対策を示さな
いままに進められたがようやく同年一二月六日、白ろう病に関し「①チエンソーの
使用時間については一日二時間連続三日、月四〇時間を限度として下部で協議す
る。②白ろう病のため転職した者の収入二年間、実収入の八五%を保障する。」と
の処遇改善については「①祝日の有給化については四五年度実施の方向で努力す
る。②機械要員の定員化は昭和四四年度四〇〇名残りは四五年度当初に繰り入れる
方向で努力する。③常勤性付与は四五年度実施をはかるべく今後全庁あげて努力す
る。④生理休暇の有給化は四五年一月中に考え方を示めす。」との回答がなされ
た。
(四) しかし昭和四五年になつて解決をみたのは機械要員の定員化実施のみであ
つた。当局の態度は、チエンソーの使用時間について下部段階の協議をすすめよう
としなかつたし、また処遇改善について、昭和四五年度内の常勤性付与は見送る、
祝日の有給化は困難であるが尚検討する、生理休暇の有給化は一日のみ格付賃金の
六〇%を保障する。全員常用化は今までも進めてきている、とするものであつた。
3 本件争議行為の計画と実施
(一) 全林野は同年三月八日、九日の両日、中央委員会を開催し、当局の態度に
よつてはストライキで抗議することとして、同年三月二八日、四月三〇日、五月八
日にストライキを行なう計画をたてた。
 他方当局との交渉は続けられ、三月に入つてからは前記各要求に加えて月給制賃
金体系の改定と大幅賃上げ(月給制で月額金一万三〇〇〇円、日給制日額金一一〇
〇円)の要求が加えられた。
(二) 当局は同月二七日になつて「①常勤性付与については四六年度実施を目標
にし七月に説明したい。その際、重大決意に取組む。尚、これについて、組合側か
ら“期本姿勢の中に組合が要求した賃金をはじめ労働時間、休日、休暇、諸手当、
厚生施設等一切の労働条件について常勤性にふさわしい改善の具体案を示すべき”
と主張があり、当局は了承した。②祝日の有給化については、通年雇用者は全日有
給化にふみきつたが、今年は予算上困難なので今後二年間で実施する。従つて四五
年度は常用作業員七日、定期作業員三日とする。③山泊別居手当抜本改善とともに
七月までに回答する。④生理休暇については引き続き協議する。⑤常用化について
年齢規制は正しくない。下部を指導する。」との回答を示し、これを受けた全林野
は今後も団体交渉を強化することとして、三月二八日に予定したストライキを回避
した。
(三) 同年四月、当局と全林野はさらに交渉を続けた。当局は賃上げについて全
く回答を示さないままに推移し、同月二七日になつてようやく昨年同額(月給制月
額金四七七七円、日給制日額金二〇八円)の回答を示した。全林野は当局の再検討
を求め、進展のないまま二八、二九日を経過した。そして当局は同月三〇日午前七
時全林野に対し、ストライキ中止を条件として「民間の賃上げ動向を考慮する考え
であり、組合側で調停申請の手続きがとられた場合は、その考え方に立つて実質的
な解決が図られるよう対処する」と回答した。
(四) 全林野は、この回答について検討する一方、予定どおり四月三〇日、始業
時から全国一四の地方本部、四七七名がストライキに突入した。また職場集会は、
全国約二〇〇〇ヵ所、約三万名を越える組合員が参加して行われた。
 この全林野統一行動に、全林野札幌地方本部恵庭営林署分会所属の原告らが正当
な行為として、参加したものである。ストライキ突入は午前七時三〇分からであ
る。
 全林野は、当局の回答を約二時間にわたつて検討した結果①民間の賃上げ動向を
配慮することを明確にしたこと②事実上調停決着の考え方を明らかにしたこと③日
給制賃金についても右の考えで対処することを明らかにしたことなどの点を、かつ
ての自主交渉での回答になかつたものと評価し、結局九時六分ストライキの解除を
決め、指令した(その後五月一日調停を申請したが五月八日不調に終り、同日仲裁
手続に移行し、五月一九日結果として月給制六八二六円、日給制二九七円の賃上げ
にとどまつた。)。
四 本件懲戒処分の違憲性、違法性
1 公共企業体労働関係法第一七条一項は憲法第二八条違反である。
(一) 労働基本権は、労働者にとつてその生存権確保のための唯一不可欠の権利
であり、最大限に尊重さるべきものである。したがつて、他の人権との調整上労働
基本権特に争議権を制限せざるを得ない場合であつてもその制限は必要やむを得な
い限度にとどめ、かつこれに見合う適切な代償措置が講じられなければならない。
 いわゆる三公社五現業の職員も憲法による労働者であるところ、公共企業体等労
働関係法(以下公労法という)第一七条一項は右職員を対象としてその争議行為を
禁止している。しかし右職員の業務内容、性質は極めて多種多様であり、公共性の
強いものから私企業のそれと同じものもあるのである。かかる業務の多様性や公共
性の強弱を顧慮することなく、全ての職員について一切の争議行為を一律に禁ずる
ことは必要やむを得ない限度をこえており、さらに公労法の定める代償措置は右禁
止に見合つた適切のものといえない。従つて、同法第一七条一項は憲法第二八条に
違反するものである。
(二) 法令解釈の原則として合憲解釈の原則が認められているが、それも法律を
憲法に調和させて解釈しうる場合に適用があるのである。しかして公労法第一七条
一項は、その文理上あるいは社会的歴史的にみても、明らかに一切の争議行為を禁
じていると読む他はなく、制限解釈のうえ、合憲解釈の原則を容れる余地はない。
(三) また、公労法第一七条一項は、当初からいわゆる立法事実を欠き、あるい
は少くとも今日においては立法事実は消滅してしまつたのであつて、もはやその違
憲性は確定している。
2 国有林野労働者の争議行為は公労法第一七条一項の禁ずる争議行為に該たらな
い。
(一) 国有林野事業は、国有林野において林業を行なうところの企業活動に他な
らず、それは国家固有の機能によるものでもなければまた公権的行政を行なうもの
でもない。従つて、国有林野事業が国民生活といかに関連するかということは、林
業一般と国民生活との関連がどうかということと同義である。
(二) 昭和四四年における素材生産量に対する国有林生産量の割合は約二八・九
パーセントであり、しかも国産材の占める比率は約五〇・三パーセントであつた。
従つてわが国の木材需要の全体に占める割合からすると約一四パーセントにすぎな
いのである。しかも国有林における木材生産、販売はその六〇パーセントが立木の
ままの生産販売であるし、また製品化して販売を行なう場合においてもそのうち約
二〇パーセントは民間業者の請負であるから、国有林労働者が直接生産しているの
はさらに僅かなものである。
 そうすると、わが国の木材需要において国有林野事業が占める割合は独占的なも
のではないし、しかもその生産業務のすべてが職員の手で行なわれているものでは
ないから、争議行為による業務の一時的停滞が国民生活全体の利益を害することは
考えられない。
(三) また国有林野の公益的機能(水源かん養、国土保全)についても、その植
林計画から始まつて植林造林作業を行ない、その伐採期を迎えるまでには四〇ない
し五〇年の長きを必要とするのであるから、このような長期にわたる生育過程に対
し一時的な争議行為の影響を論議しても全く無意味である。
(四) 以上によると、国有林野事業における争議行為によりその業務の停廃があ
つたとしても、そのことが国民生活全体の利益を害し国民生活に重大な支障をもた
らすおそれがあるものではないから、争議権を制限することはできない。
(五) また第二目録の原告らは国公法上の任用、分限、保障に関する規定の適用
を受けず、処遇に関しても月給制職員に比しはるかに劣悪であり、自らの団結活動
により処遇改善を図つて行く以外に方法がなく、争議権を制限することはできな
い。
3 本件争議行為は公労法第一七条一項の禁ずる争議行為に該たらない。
(一) 本件争議行為は国有林労働者の賃上げ、労働条件および処遇の改善を目的
としてもので労働組合の目的の範囲内に属し、また暴力的行動は全くなく、単純な
労務不提供である。
(二) またその争議行為は始業時から約二時間にすぎず、また国有林野事業の作
業は相当な柔軟性があつて、結局業務阻害の程度は極めて軽微であつた。
(三) よつて本件争議行為に公労法第一七条一項を適用することはできないもの
である。
4 本件争議行為に国家公務員法第八二条(懲戒規定)を適用するのは違法であ
る。
(一) 国家公務員法は、公務員の非行中、第八二条所定の行為に対し免職を含む
不利益取扱を定めている。これは使用者としての国の利益を指揮命令権や職場秩序
を維持することで保護しようとするものであり、「国民生活全体の利益」保護を目
的としたものではない。
(二) しかし、公労法第一七条は「国民生活全体の利益」保護を目的として設け
られたものであるから、その違反行為に対しその制度の趣旨を異にする国家公務員
法第八二条を適用することはできない。公労法第一七条に反して「国民生活全体の
利益」が害された場合に、法は同法第一八条の適用を予定しているのであつて、国
家公務員法の適用を予定していないのである(そうでなければ、国家公務員法第九
八条二、三項と同趣旨の内容である公労法第一七、一八条を規定する必要がな
い)。
(三) 国家公務員法第八二条の懲戒制度は、使用者の指揮命令権を確保し、職場
秩序の維持を目的としたものであることは前述したとおりである。しかして争議行
為は本来、使用者の指揮命令権を排除し、業務の正常な運営を阻害するものである
から、使用者の指揮命令権が初めから及ばない争議行為について指揮命令違反のあ
るはずがないのである。
(四) 以上、争議行為は懲戒処分の対象とならない。仮に、原告ら公労法適用公
務員の争議行為に対し懲戒処分ができるとするならば、公労法適用公務員は国家公
務員法八二条の懲戒処分に加えて公労法第一八条の解雇をも受けることになり、よ
り労働者性の保障されている現業公務員の方が、非現業公務員よりも制裁を受ける
種類が多いという不合理な結果となるものである。
5 処分権の濫用ないし不当労働行為
(一) 本件処分と最近の処分と対比すると、その両者には質的な差異が認められ
る。というのは、昭和四九年春闘は全一日一〇日を含む一七波の争議行為を行なつ
たが単純参加者に対する処分は行なわれなかつたし、また昭和五〇年春闘は全一日
三回を含む五波の争議行為を行ない、同年秋には六日間連続のスト権奪還のストラ
イキを行なつたが、やはり単純参加者に対する処分はされていないのである。これ
に対し、本件争議はわずか二時間のストライキにすぎないのに、単純参加者の全員
について、戒告処分がされているのであつて、その衡平を欠いている。
(二) また林野庁当局は組合の要求に対し誠意ある団体交渉をしなかつた。その
詳細は請求原因第三項に記載したとおりである。当局は、四月二七日になつて初め
て回答したが、その内容は客観状勢と離れたものであつたし、「民間の賃上げ動向
を考慮する考えであり、組合側で調停申請の手続がとられた場合は、その考え方に
立つて実質的な解決が図られるよう対処する」との非公式回答すら、ストライキ当
日である四月三〇日の午前七時すぎに示されたのである。
 従つて、本件争議行為はやむを得ないものであつたし、また当局は組合が本件争
議行為に突入させるために誠意ある団体交渉を行なわなかつたと評価せざるを得な
い。全林野としても右の非公式回答を検討し、ストライキ中止決定をするまで一時
間余の時間を要するのは、組合民主々義の原則上当然である。
(三) (不当労働行為)
 当局の右行為は、全林野労働組合をストライキに突入させたうえ、本来処分に値
いしない単純参加者をも処分して、もつて組合弱体化を狙つたものという他はな
い。本件処分はまさに林野庁当局の不当労働行為意思に基づき為されたものである
から、労働組合法第七条各号に違背する不当労働行為として取消を免れないもので
ある。
(四) (処分権の濫用ないし裁量権の逸脱)
 国家公務員法第七四条は、懲戒が公正でなければならないとしているが、本件で
当局は不誠実な団体交渉の態度をとつたこと右記のとおりであり、結局当局は本件
処分においてクリーン・ハンドを有しないのである。
 のみならず、本件争議行為の目的、態様、規模、実害のないこと、および原告ら
の多くは日給制作業員で出来高給をもつて働いていたものであること、その他右に
述べた諸事情を考慮すると、当局の本件処分は処分権の濫用ないし裁量権の逸脱が
あり、取消を免れないものである。
五 よつて原告らは被告らに対し、本件懲戒処分の各取消を求める。
(請求原因に対する被告らの認否、主張)

1 請求原因一1、2の事実は次の事実を除き認める。
 原告らの作業場所欄に恵庭事業区三四九林班土場、三九四林班とあるのはいずれ
も恵庭事業区三九五林班の誤まりであり、また作業内容中第一目録記載14原告
(以下「目録」を略す)、第一17原告の作業内容はトラクターの修理であり、第
一17原告の作業場所は修理工場である。
2 第一9の原告(C)は昭和四六年四月三日退職した。
3 同二1、2の事実は認める。
4 同三1(一)の事実は認める。
 同1(二)の事実中、常用、定期作業員のうち多くの者の雇傭が事実上長期間続
いていること、しかし制度上は臨時的雇傭とされていること、定期作業員は毎年雇
用・失業が反覆され、失業期間中は失業者の退職手当名義で手当を受けていること
は認めるが、その余は争う。
 同三1(三)の事実中、常用、定期作業員の賃金が定額日給や出来高給として支
払われていること、右作業員の諸手当、年休等の諸権利が定員内職員と差があるこ
とは認めるが、その余はすべて争う。
 常用作業員は制度として有期雇用であるが必らず更新され実質的には期間の定め
のない雇用であり、また定期作業員も毎年一定期間の雇傭であるが、期間満了によ
り一旦退職しても翌年度には優先的に雇用を続ける建前で、いずれも安定した雇用
状態にある。
 また右作業員に対する賃金については「国の経営する企業に勤務する職員の給与
等に関する特例法」(以下給特法という)が適用され、一般職の国家公務員民間事
業の従業員の賃金その他の事情を考慮し、公共企業体等労働関係法八条に定める労
使協議の結課によつて決定される。月給制職員の賃金体系は年功序列的色彩が強い
のに対し、日給制職員のそれは職務給的応能的体系であり、基礎となる一日の標準
作業量は事業担当職員と作業員の折衝により決定される。その他の諸手当も支給さ
れ、休日・休暇・退職・安全衛生についても相当な制度が設けられ右作業員に対す
る処遇は決して不当なものでなく、その賃金水準は民間同種労働者のそれを上廻つ
ている。また近時各種作業の機械化が進められたため、重筋肉労働は軽減され、そ
の作業環境は好転して来ている。
 同三3(一)ないし(三)の事実は認める。
 同三3(四)の事実中全林野が昭和四五年四月三〇日にストライキを実施し、恵
庭分会員の原告らが、原告ら主張の時間から右全林野統一行動の右ストライキに参
加したこと、その後原告ら主張の調停が申立てられ次いで仲裁が行われ、仲裁裁定
がなされたことは認めるが、その余は争う。
5 同四は争う。
二 本件争議行為
1 本件争議行為の目的
 本件争議行為は、全林野が春闘統一行動の一環として昭和四五年度の賃上げを要
求するために計画したスケジユール闘争であり、かつ安保廃棄要求という政治的目
的も掲げた闘争である。全林野の要求は賃金の大幅引上げ以外はすべて昭和四五年
三月中に妥結され、原告が請求原因において主張する同年三月までの経過は本件争
議行為とは関係がない。
2 本件争議行為の規模
(一) 全林野は昭和四五年二月二日三日中央執行委員会を開き全林野の七〇年春
闘方針案の大綱を決定し、同年二月二五日に、自主交渉の最大の山場を四月下旬に
おき二時間~半日のストライキを配置することなどの案を全職場の討論におろし
た。
(二) 全林野札幌地方本部(以下札幌地本という)は、同年三月二、三日第四五
回札幌地本委員会を開き、前記四月下旬の自主交渉の山場に二~四時間のストライ
キを配置することを確認した。
(三) 全林野は、同月八日、九日第四八回中央委員会を開きさきに下部討論にお
ろした前記1の案を含む春闘方針を決定した。
(四) 全林野は公共企業体労働組合協議会の構成員であるが、同年四月七日全国
戦術会議において、四月三〇日および五月上旬の二波にわたるストライキについ
て、参加の範囲指導方法につき意思統一した。
(五) 札幌地本は同年四月一三日から二二日にわたりオルグを実施し、前項のス
トライキについて体制の確立をはかつた。
(六) 公労協は同月一八日に、四月三〇日に半日ストライキ、五月八日に全一日
のストライキを行うことを決定。全林野は同月二〇日に右の決定にそつて、四月三
〇日の拠点部分ストライキ等の体制強化指令を出した。
(七) 札幌地本は同月二四日戦術会議を開き四月三〇日のストライキの具体的行
動の決定および拠点分会は札幌地本の命令により定まるなどの決定を行なつた。
(八) 札幌地本は同月二七日に拠点分会を恵庭営林署分会に指定した。全林野は
四月二八日全地本に対して拠点部分に対しストライキに突入する指令をするよう指
令し、札幌地本も右指令を受け、恵庭分会に対しスト突入指令を出し本件ストライ
キが行なわれた。
(九) 右のとおり本件争議行為は全国的規模において計画的に行なわれたもので
ある。
3 本件争議の態様、原告らの果した役割
(一) 第一12ないし18、第二の1ないし49(29を除く)原告(以下二の
原告らという)はいずれも恵庭分会組合員であつて、内第二26ないし49の原告
は恵庭事業所前苗畑構内(以下苗畑という)において同年四月三〇日午前七時三〇
分頃から二時間職場集会に参加し各職務を放棄した。二の原告らのうちその余の原
告らは千歳製品事業所の二六九林班の山元工場(以下山元工場という)において右
同日同時刻頃から、第一13、16、第二1、3、5、8、10、11、13ない
し17、22の原告は二時間五〇分、第二25の原告は二時間二七分、第二27の
原告は二時間二〇分、第一14、第二24の原告は二時間、第二21の原告は一時
間五七分、第一15、18、第二2、4、6、7、9、12、18、19、20、
23の原告は一時間五〇分職場集会に参加し、各職務を放棄した。
 尚第一12の原告は恵庭分会委員長であつて四月三〇日本件争議行為に参加して
「スト決行中」の立看板を持ち行進し、職場集会では分会委員長として最後まで頑
張りたい旨挨拶をし、一時間二七分間職務放棄をした。
(二) 第一1ないし11の原告(以下一の原告らという)の本件争議行為当時の
組合における役職は別紙第三目録に記載のとおりであり、次のとおり前記各職務放
棄を企画しまた自ら指導した。すなわち、右1ないし11の原告は前項(二)(以
下前項を略す)の委員会に出席して同記載の提案、意思統一を行ない、1、3の原
告は(三)の委員会に出席して同記載の企画謀議に参画し、1の原告は(四)の会
議に出席して方針決定に関与し、1ないし11の原告は(七)の会議に出席して同
記載の企画謀議に参画し、1の原告は(八)の拠点分会指定およびスト突入指令を
し、2の原告は同月二七日、3、4、9の原告は同月二八日それぞれ恵庭分会に赴
き、2、9の原告は山元工場において、3、4の原告は苗畑において、早朝集会、
職場オルグ、スト参加者予定者打合せ会を通じストライキ体制を確立し、本件争議
当日はストライキ集会を自ら指導して争議行為を実施させた。
4 本件争議行為の影響
 国有林野事業は国土の保全、水源の涵養など森林のもつ公益的機能、重要な林産
物の持続的供給をはかるなどの経済的機能を最大限に発揮させながら公共の福祉を
増進させることを目的としており、事業の適切な管理運営が強く求められている。
したがつてすべての事業計画は長期かつ詳細綿密に相互に密接な関連をもたせなが
ら末端における最小単位の義務についてまで盛り込んで作成されており、またこれ
らの業務には季節的自然的な制約が多いから、一時的または一部の業務阻害でも連
鎖的に他に波及し、全体的な業務の遂行に回復し難い損害をもたらすのである。本
件職場放棄により恵庭営林署における国有林野事業の正常な業務は阻害され、全体
的業務の遂行に損害を与えた。
三 本件懲戒処分
1 一の原告らが前記職務放棄を企画して実施せしめ、あるいは、自ら指導した行
為は、公労法第一七条一項に該当し、かつ国公法第九九条に違反するので、被告営
林局長は、国公法第八二条一号、三号により原告ら主張の懲戒処分をした。
2 二の原告らが職場放棄をした行為は、公労法第一七条一項国公法第九六条一項
第九八条一項、第九九条および第一〇一条一項にそれぞれ違反するので、被告営林
局長は第一の12ないし18の原告に対し、被告営林署長は第二の1ないし49の
原告に対し、国公法第八二条各号により原告ら主張の各懲戒処分をした。
四 本件懲戒処分の合憲性、適法性
1 公労法第一七条一項は憲法第二八条に違反しない。
(一) 労働基本権は経済的基本権であつて、特に公務員にとつては、最低限の生
活を営むに足る労働条件確保を求める一般勤労者の場合と異なり生活水準の向上を
はかるための権利である。また労働基本権は一手段に過ぎない。国家は立法により
国民全体の利益との調和にたつて基本権の具体的内容範囲をきめるのであつて、争
議権を背景にした団体交渉が妥当でなく他に代るべき手段があるときは右基本権を
制限することも許され違憲ではない。公共企業体職員を含む公務員の場合には、次
に述べる公務員の地位の特殊性、職務内容の公共性、勤務条件決定等の特殊性があ
る一方適切な代償措置が定められているところからその基本権就中争議権を一律に
制限することも許されるというべきである。
(二) 公務員の地位の特殊性
 公務員は、国、公共団体を構成するものとして公法上の特別の勤務関係に服す
る。そうしてその勤務関係は一般の民間労働者と異なり使用者と経済的利害の対立
関係になく、窮極的な使用者というべき国民による信託と公務員の国民全体に対す
る奉仕という関係があるのみである。
(三) 公務員の職務の公共性
 公務員は国民全体の利益のために勤務し、その職務において職責を果たすことが
必要不可欠であつて、その停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか又は
そのおそれがある。
 国有林野事業についてこれをみると、わが国の林野面積は約二・五二八ヘクター
ルで国土面積の約六八パーセントを占め、そのうち林野庁所管の林野は約七四八ヘ
クタールでわが国林野面積の約三一パーセントに及んでいる。また国有林野の森林
総蓄積はわが国森林総蓄積の約四四パーセントを占めている。右の通り国有林野の
占める比重は大きく、更に国有林野は全国に分布し、その過半数はせき梁地帯に位
置して国土保全、水源かん養の重要な役割を果たすと共にその自然景観により国民
の保健休養に不可欠の機能を果たし、また国内需要の三〇パーセントにのぼる林産
物の安定供給をし、農山林の福祉の向上にも役立つている。これに対し、民有林野
は多く里山にあり過半数が零細小規模の個人所有である。
 以上の実情からみると、国有林野事業は、国土保全等国民生活の基盤を維持し、
国民経済と福祉向上を目的とする国の基本的施策の推進をその事業内容に本質的に
包含している点において民有林野と比較し得ない重要性を有し、国民生活全体の利
益と密接な関連性を持つものである。
(四) 公務員の勤務条件決定過程の特殊性
 国家公務員の勤務条件は法律および予算によつて決定され、政府は勤務条件の最
終的決定権を有せず、労使関係における最終的当事者としての充分な資格をもたな
い。このような立場による政府に対し、争議行為による圧力を加えることは政府の
処理し得ない事項についてその行為を要求することになり、国会において民主的に
行われるべき公務員の勤務条件の決定過程を歪曲するおそれもある。
 国有林野事業においても予算は国会の承認を要し、支出には使途制限があり、決
算は会計検査院による検査や国会への報告を要し、利益金の処分や留保制限があ
る。また右職員について団体交渉労働協約締結権が認められているが、法令給与総
額制による制約があり、労使の自主決定権は制限されている。
(五) 代償措置
 法は労働基本権の制約に見合う代償措置として勤務条件について詳細な規定を置
くと共に人事院を設け、人事院は公務員の勤務条件について、国会及び内閣に対し
勧告又は報告を義務づけられている。また公務員は人事院に対し、勤務条件に関し
て行政措置請求をし、あるいは不利益処分について審査請求をすることができる。
国有林野事業においては公共企業体労働委員会(公労委という)によるあつせん、
調停、仲裁の制度が争議行為禁止の代償措置として設けられ、当局は右制度の発足
以来賃金関係の仲裁裁定についてはこれを完全に実施している。
2 国有林野労働者のした本件争議行為は公労法第一七条一項の禁ずる争議行為に
該たる。
 前項に述べた理由から国有林野労働者の争議行為が公労法第一七条一項の禁ずる
争議行為にあたることは明らかであり、また本件争議行為は国民生活に与える影響
が大きいうえ前記のように政治目的をもつたいわゆるスケジユール闘争であつて違
法であり、同法条の禁ずる争議行為に該たることは明らかである。
3 本件争議に国公法第八二条を適用するのは適法である。
(一) 公労法第一七条は窮極的には国民生活全体の利益を保護するものである
が、直接的には正常な業務運営のための業務秩序確保を目的とする。また国公法第
八二条も国政の適正円滑な運用を図り国民全体の福祉ないし公共の利益を増進擁護
することを目的とするものであつて、両法条の保護法益は表裏一体の関係にある。
(二) 私企業の場合でも争議行為が違法なものであれば企業秩序違反の行為とし
て当該労務者はその責を負わなければならないのであつて、公務員の場合は争議行
為が禁止されているのであるからその争議行為について正当性の有無を問う余地が
なく、争議行為をした公務員は民事上の責任を負うべきである。
(三) 殊に公務員関係における秩序は地位の特殊性から様々な服務義務を公務員
に課しているのであつて、公務員の争議行為は、単なる国の業務維持職務秩序違反
にとどまらず公務員としての服務義務に違反する側面をもつ。
(四) なお公労法第一八条は第一八条違反の争議行為について国公法などの身分
保障に関する規定に拘らず解雇しても右規定に違反しないことを意味するにとどま
り、懲戒権者は国公法第八二条所定の各種懲戒処分を選択して処分することができ
るというべきである。
4 本件懲戒処分は相当で、不当労働行為に該たらず、処分権の濫用又は裁量権を
逸脱してなされたものではない。
(一) 本件懲戒処分は本件違法な争議行為について懲戒権者が、その態様、態
度、懲戒処分の効果とその態様その他諸般の事情を総合勘案して懲戒処分のうちい
ずれを選ぶかを慎重かつ公正に判断し決定してしたものであつて、不当労働行為意
思に基づき恣意的にしたものではない。尚その後の争議行為についての処分状況は
懲戒権者が裁量に当つて考慮し得る事項でない。
(二) 原告の大部分の者に対してなされた本件戒告処分は国公法上の懲戒処分と
して最も程度の軽いもので経済的に不利益を及ぼさず、右原告らがこの程度の処分
を受けることは当然であるというべきである。
(被告らの主張に対する原告の認否)
1 被告主張二(本件争議行為)1の事実中、本件争議行為は全林野が賃上げを要
求するために計画したものであることは認めるが、その余は争う。
2 同二2は認める。但し当局の態度によつてはストライキをすることとしたもの
である。
3 同二4は争う。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 原告Cが被告営林局長主張の頃退職した事実は、同原告において明らかに争わ
ず、また弁論の全趣旨によつても争つていると認められないからこれを自白したも
のとみなす。しかしながら、同原告は本件懲戒処分がなければ有するはずであつた
差額分の給料請求権等について救済を求めるためその前提として右懲戒処分の取消
を求める利益があるというべきである。
二 請求原因一1、2の事実(当事者)は、第一17、第二1、3、5、8、1
0、13ないし17、22の原告についての作業場所、第一14、17の原告につ
いての作業内容が右原告ら主張のとおりであるかどうかの点を除き当事者間に争い
がなく、弁論の全趣旨によると右作業場所、作業内容は被告ら主張のとおりである
ものと認められる。
三 二の原告らが昭和四五年四月三〇日始業開始時の午前七時三〇分から各職務を
放棄して職場大会に参加したことは当事者間に争がなく、右態様、職務放棄の時間
が被告主張二3(一)のとおりであること、一の原告らが被告ら主張の組合役員の
地位にあり、前記職務放棄に際し、被告ら主張二3(二)の役割を果たしたこと
は、同原告らにおいて明らかに争わず、弁論の全趣旨によつても争つていると認め
られないからこれを自白したものとみなす。
 次に請求原因二1の事実(本件懲戒処分の存在)、右各処分の理由は、二の原告
らについては、同原告らのした前記職務放棄行為(以下本件争議行為という)は公
労法第一七条一項に該たり、国公法第九六条、第九八条一項、第九九条、第一〇一
条に違反する、また一の原告らについては、同原告らの前記所為は本件争議行為を
企画して実施せしめあるいは指導したものでこの行為は公労法第一七条一項に該た
り、国公法第九九条に違反するというものであること、以上の事実もまた各当事者
間に争いがない。
四 本件懲戒処分の適否についての請求原因四1ないし4の主張に対する判断はし
ばらくおき、先づ本件懲戒処分が処分権の濫用にあたるかどうかについて以下判断
する。
五1(本件争議行為の背景)
(一) 請求原因三1(一)の事実(国有林野事業に従事する作業員の制度上の地
位・構成)同三1(二)、(三)の事実中常用、定期作業員の多くの雇用が事実上
長期間続いているが制度上は臨時雇用であること、定期作業員については雇用、失
業が反覆され、右作業員は失業期間中失業者の退職者名義で手当を受けているこ
と、常用、定期作業員の賃金は定額日給や出来高給として支払われていること、右
作業員の諸手当、年休等は定員内職員のそれらと差があること、は当事者間に争い
がない。
 右争いがない事実に、成立に争いがない甲一七ないし一九号証、二一、二四、二
七、二八、三一、三七、三八号証、乙二、三七号証、四一号証の一、二、五二、五
三号証、五四号証の一、二、五九号証の一、二、証人D、同E、同Fの各証言、原
告A、同G、同H、同I各本人尋問の結果(いずれも後記認定に反する部分を除
く)によると、次の事実が認められる。
(二) 国有林野事業の職員は、管理部門(全職員の二五パーセント)のほか育
林、製品生産(以上いずれも各二五パーセント)、種苗(九パーセント)、林道
(七パーセント)、治山(二パーセント)の各事業部門に分れて勤務しているが、
事業部門において管理普通職が二〇パーセント程度を占めるほかは、定員外職員が
その大多数を占め(育林は全職員の七九・六五パーセント、製品生産五七・一四パ
ーセント、種苗七七・三七パーセント、林道七七・三七パーセント、治山五五・三
三パーセント--昭和四六年度の統計であるが同四五年度において割合はほとんど
変わらない)、常用、定期作業員がその中の多数であること、これら作業員の多く
は伐木造材手、集材手、機械運転手などであつて、定員内技能職職員と同一態様の
仕事をしており、常用、定期作業員(定員外職員)は数、内容からみて国有林事業
における事業部門の基幹要員であるといえること、
 ところで、国有林は背梁山脈沿いの比較的奥地に存在し(標高六〇〇米以上四八
パーセント、民有林は二二パーセント、傾斜度国有林一五~三〇度三九パーセン
ト、三〇度以上三五パーセント、民有林は前者四三パーセント、後者二六パーセン
ト)、冬期間は積雪、寒気の厳しい箇処が多いこと、殊に伐木、集材等の作業に従
事する作業員は奥の作業現場までチエンソーなどの重い作業用具を運んでこれらの
作業(振動作業等)をすること、また山泊の必要がある箇処もあるなど、国有林野
事業に従事する作業員の作業環境はかなり厳しいこと、
 次に常用、定期作業員の賃金については、一般職の職員の給与に関する法律の適
用は受けず、法令上の制限はあるが、協約、団体、交渉により決定され前記のとお
り日給制(職種毎に格付賃金がきめられる)と出来高給制(作業別の単位作業あた
りの賃金にその者の出来高量をかけてきめる)の併用で支払われているところ、常
用、定期作業員の基準内平均賃金は定員内技能職員(月給制)の賃金に比べて低く
(昭和四四年度で単純平均すると、常用作業員は月給制技能職職員の七五・四パー
セント、定期作業員はその七一・三パーセント、平均すると月給制職員の賃金の七
二・六パーセント)、右日給制作業員については定期昇給がないため右賃金の較差
は年令が高くなるにつれて更に開くこと、もつともこれらの日給制作業員の賃金水
準は、同種企業(道有林、民有林)の作業員の賃金水準を上廻るが、全産業の賃金
水準と比較すると、その平均三〇-九九人規模の賃金水準をやや下廻る程度であつ
たこと、作業員が世帯主となつている世帯で生活扶助を受けているものもあつたこ
と(一〇確認で確認されている)。
(三) 国有林野事業における常用、定期作業員(定員外職員)の制度は、林野事
業には季節的作業が多く、作業員のほとんどが地元で臨時採用されていたことから
生み出されたものであつたが、その仕事内容は定員内技能職職員と同一態様のもの
であり、次第に勤務年数が長くなり、かつ専業的になつて来たため従前の意味はか
なり失われたこと、しかも他の公共林業体では定員外職員の定員化が順調に行なわ
れているのに対し、国有林野事業では定員外職員は基幹要員的な存在であるのに前
記処遇状態であつたため、これら定員外職員の雇用安定、これら職員を中心とする
国有林野事業作業員の処遇改善の要求が強くなされるに至つたこと、
(四) 全林野はかねてから林野庁に対し、これら定員外職員の雇用安定と定員内
職員との較差是正などを含めた国有林作業員の処遇改善を求め、林野庁も右交渉に
応じ団体交渉を重ねたこと、そうして両者間に昭和四一年に原告ら主張内容の通称
三・二五確認、六・三〇確認がなされ、基幹要員であるこれら定員外職員の臨時雇
用制度を抜本的にあらためるという基本姿勢が示されたこと、その後両者間に同四
二年五月二四日、定員外(日給制)職員の賃金について、次の事項を含むいわゆる
一〇確認がなされたこと、
(1) 日給制賃金は他産業の五~二九人規模の賃金と同程度となつていること、
単純平均では必ずしも平均賃金構成の諸条件の差異を示していない面もあるが、好
ましいことではないので、他産業五〇〇人以上の規模の賃金水準を努力目標として
改善して行きたいこと。
(2) また日給制職員と技能職月給制職員との賃金水準の比較は難しいが、同種
労働の職員の賃金水準が開くのは好ましくないので較差を縮めて行かなければなら
ないと考えていること。
(3) 物価指数の手法(組合資料)によつて算出すると基準内賃金は下つている
こと、生計費調査(当局資料)によつて総理府調査の都市労働者世帯と日給制職員
世帯とを比較すると、消費支出額からみて後者が低く、これは賃金改善をしなけれ
ばならない要因と認められること。
(4) 春闘においてその定期昇給部分は賃上げでないが、属人的には定期昇給を
含めた手取りがあることになるので、日給制職員の場合この点を勘案すべきこと。
(5) 生活扶助を受けている世帯があり、低額職種に多いことから右職種につい
て底上げを配慮することを考えていること。
(五) 国有林野に従事する作業員の処遇改善については以後徐々に進められ、原
告主張の改善はなされたものの各種の制約もあり常用化、定員化の実現は容易でな
かつたこと、
2(本件争議行為の目的・直接の経緯)
 請求原因三3(一)ないし(三)の事実、被告主張(二)の事実は当事者間に争
いがなく、右争いがない事実、前掲証拠によると、次の事実が認められ右認定を左
右し得る証拠はない。
(一) 全林野は昭和四五年のいわゆる春闘において、大幅賃上げと賃金体系の改
訂(日給制職員の賃金格差の解消)を重点目標にし、交渉を本格化して山場を作る
ため当局の態度によつてはストライキで抗議することを決め、被告ら主張の経過で
争議行為を企画準備する一方組合員の意見を集約し、同年三月一四日に林野庁当局
に対し月給制職員の賃金を月額一万三〇〇〇円、日給制職員の賃金を日額一一〇〇
円上げるよう要求し、両者はこれらの事項を重点対象として一二回にわたり団体交
渉をもつたこと、
 林野庁は、賃上げの必要は認めながら、他の公共企業体の交渉を見守り有額回答
をせずに全林野との交渉を重ねていたが、同年四月二七日に全林野に対し、経営実
情を考慮し、かつ事業の合理化および経費節減をすべきことを前提として月給制職
員について平均基準内賃金水準月額四七七七円、日給制職員について日額二〇八円
上げる旨昨年の仲裁裁定額と同一の回答をしたこと、
(二) 当時全国消費者物価指数は同四五年一月の対前年比七・八パーセント、同
年三月の対前年比八・三パーセント、農村消費者物価指数は同四五年一月の対前年
比五・六パーセント各上昇しており、また同年四月二七日当時民間企業の賃上げ状
況は私鉄交渉で七七〇〇円賃上げの回答をしていたほか、かなりのところで大幅賃
上げの妥結ないと回答(一万円を越える組合一〇四二組合)がされていたこと、尚
国有林野事業は昭和二二年から同四四年までは災害時を除いては黒字であり、林政
協力事業費として利益金処分をしていた時期もあつたが、同四五年度以降は赤字に
なつたこと、
(三) 全林野は、林野庁の回答は民間企業の賃上げ状況も前記一〇確認も反映し
ていないとして林野庁に対し再検討を求めると共に翌二八日、状勢が変らなければ
同月三〇日ストライキに突入することをきめ札幌地本を通じ恵庭分会など拠点分会
に本件争議行為突入への指令を出したこと、
(尚成立に争いのない乙第二七ないし三六号証によると、全林野は本件争議行為に
際し、右経済的要求事項とあわせて安保廃棄という政治的要求事項も掲げているこ
とが認められるけれども、右要求事項が本件争議行為の主目的でなく、争議行為の
機会を利用して政治的意思ないし要求を表明しているにとどまるものと認められ
る。したがつて、本件争議行為がいわゆる政治ストであるとは認め難い。また前認
定の経過に照らすと、全林野においてあらかじめ予定した争議計画を固執し、必要
がない場合でもこれを実行するものであつたことは証拠上認められない)。
3(本件争議行為の規模、態様、影響)
 前掲証拠、証人Eの証言により成立を認める乙四五、四六号証、四七号証の一な
いし八、成立に争いのない乙八、一三、三七、三九、四〇、六〇、六一、七一、七
二号証、原告J本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。
(一) 全林野は同年四月三〇日午前七時三〇分から二の原告らを含む一四分会の
組合員を本件争議行為に突入させたこと、林野庁は、同月二八日長官名で、また被
告署長名で、同職員に対し争議行為をせぬよう警告すると共に、当日右署長は右原
告らに職場大会を解散して職場につくよう命令を出したが、右原告らはこれに従わ
なかつたこと、
 一方林野庁は同日午前七時になり全林野に対し、原告ら主張のとおり、スト中止
を条件として1昨年を上廻つた民間の賃上げ動向を考慮する考えであり、調停にお
いてもその考えで解決されるよう対処する2日給制賃金についても一〇確認を尊重
し、かつ前述の方向に対処して誠意をもつて努力する旨の第二次回答をしたこと、
全林野は時間的余裕もないまま本件争議行為に入つたが、それと併行して右回答を
検討した結果、同日午前九時六分その中止を決定し、各争議中の分会に各地本を経
て通知をしたこと、
 二の原告らのうち第二26~28、30~49の原告ら二五名は恵庭苗畑事業所
に勤務するいずれも女子定期作業員(育苗手)で、その頃は原告ら主張の苗畑作業
に従事していたが、恵庭分会委員長第一12原告と共に苗畑構内の職場大会に参加
したこと、その余の二の原告ら三一名は千歳製品生産事務所に勤務する常用作業員
二五名、定員内職員(運転手)六名で、その頃は原告ら主張の伐木集材、丸太生産
等の作業に従事していたが、山元工場の職場大会に参加したこと、また一の原告ら
は前認定のとおり全林野の指令に基づき、本件争議行為に関与したが、当日は専従
役員を除き、それぞれ勤務していたこと、
(二) 二の原告らの職務放棄、一の原告らの企画指導はいずれも全林野の指令に
基づき行なわれたものであるところ、右放棄は単純な職務不提供の形で行なわれ、
その間暴力沙汰はなく、また就労する他の職員に対して妨害をしなかつたこと、本
件職務放棄の時間は平均二時間五分程度であり、右原告らは前記中止命令を受けた
後間もなく復帰し作業にかかつたのであつて、その後各作業計画の変更もなく、右
時間程度の不就労による影響は皆無とはいえないまでも軽微であること(育苗作業
は林業の中では時期的制約のある作業ではあるが、右適期は農業ほど短かくない、
また国有林事業の作業員は日曜、および雨天に就労しない)、
(三) 本件争議行為当時、林野庁所管の国有林は、国土面積の六八パーセントを
占める森林面積の三一パーセント(北海道においては森林面積の五七・六八パーセ
ント)を占め、同庁所管の森林総蓄積量は我が国森林資源の四五パーセントを占め
ていること、国有林野事業は右森林を管理し、国土保全、水資源の涵養、国民の保
健休養、その他大気浄化、自然保護などの公益的機能をになう一方木材を中心とす
る林産物の需給および価格安定などの経済的機能をあわせもち、独立採算制をと
り、両機能を調和させながら長期的な計画のもとに作業をし、事業を発展させてい
ること、しかしながら、右事業は各分野とも具体的工事のかなりの部分を民間事業
に請負わせていること、原告らの多くは右民間企業の労務者同様末端の仕事をして
いるものであること、
(四) 全林野は翌五月一日調停を申請したが不調になり、仲裁に移行、同月一九
日月給制賃金六八二六円、日給制賃金二九七円増額の仲裁裁定がされたこと、右裁
定において、日給制作業員賃金と月給制職員との較差については、職務内容、雇用
形態に差があり、賃金体系も異なるため必ずしも同一でなければならないとは考え
ないが、当面現在の較差を縮少する方向で措置することが妥当であるとされ、尚林
野庁当局も数年来努力しているが、尚相当の開きがあり右開きを縮少したい考えで
あることを右仲裁段階でも明らかにしていること、
六 以上認定の事実によつて認められる、本件争議行為の目的(前認定の国有林野
事業に従事する職員殊に作業員に対する処遇を背景にして全林野が林野庁に対し、
右職員の賃金引上げ、日給制職員の月給制職員との賃金較差の是正、またそれらに
ついての努力をすることを求めることを目的としたものであること)本件争議に至
るまでの経緯、交渉経過、争議行為の態様(午前約二時間の単純な職務不提供で暴
力沙汰、他の職員に対する妨害をしてないこと)争議行為の影響が軽微であるこ
と、国有林野事業は公共性のある事業ではあるが、かなりの部分を民間事業に肩代
りをし、原告らは公務員であるが、その多くは賃金体系についても別個の扱いを受
けている、右民間事業の作業員同様の末端の従業員であること、更に原告らがこれ
まで処分を受けたことは証拠上認められないことなど、これら諸般の事情を考慮す
ると、本件争議の規模を考慮に入れても尚本件各懲戒処分は酷に過ぎ、著しく妥当
を欠くものというべきで、処分権の濫用になるものと認める。
七 よつて、その余の事項について判断するまでもなく本件懲戒処分は違法であ
り、これらの取消を求める本訴各請求は理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の
負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を適用し、主文のとおり判決する。
<19763-003>
<19763-004>
<19763-005>
<19763-006>
<19763-007>
 第三目録
原告第一目録番号 処分当時の組合役職
1 地本 委員長
2 地本 副委員長
3 地本 書記長
4 地本 特別執行委員
5 地本 会計長
6~8、10、11 地本 執行委員
9 地本 書記次長
12 分会 委員長

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