弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を次のとおり変更する。
     被控訴人は控訴人に対し、金一二万八、九六〇円およびこれに対する昭
和四五年五月一日から右支払済みまで、年五分の割合による金員を支払え。
     控訴人のその余の請求を棄却する。
     訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。
     この判決は、金員の支払いを命じた部分に限り、仮に執行することがで
きる。
         事    実
 第一 控訴人の求めた裁判
 原判決を取消す。
 被控訴人は控訴人に対し、金一二万八、九六〇円およびこれに対する昭和四四年
五月一日から右支払済みまで、年五分の割合による金員を支払え。
 訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。
 との判決および仮執行の宣言
 第二 控訴人の請求の原因
 一 被控訴人は、昭和四三年八月一七日から同四四年一月五日までの間に二一回
にわたり、訴外Aの経営するクラブ「ルイ」(以下本件クラブという)で、合計金
一八万二、九三〇円相当の遊興飲食をしたが、そのうち金五万三、九七〇円を支払
つたのみである。
 控訴人は、同クラブでいわゆるホステスをしていたが、同四三年八月ごろAとの
間で、被控訴人の遊興飲食代金債務につき連帯保証契約をした(以下本件連帯保証
契約という)ので、同四四年四月三〇日被控訴人の右遊興飲食残代金一二万八、九
六〇円をAに弁済し、同日被控訴人に右弁済金の支払いを請求した。
 よつて控訴人は被控訴人に対し、右連帯保証債務の履行による求償権に基づい
て、右弁済金一二万八、九六〇円、およびこれに対する支払いの請求をした日の翌
日である昭和四四年五月一日から右支払済みまで、民法所定の年五分の割合による
遅延損害金の支払いを求める。
 二 なお原判決では、本件連帯保証契約は、クラブの経営者であるAが使用者と
いう優越的な立場を利用して、単に客の接待係として雇用したにすぎないホステス
である控訴人に不当に不利益をしいて、その負担において一方的に利益を得る不公
平な契約であることなどを理由として、右契約は善良の風俗に反し無効である旨判
断しているが、本件では、控訴人は被控訴人と懇意な間柄で、代金は必ず支払つて
もらえると信じていたので、被控訴人が前記遊興飲食代金の支払いの猶予を得る際
には、その都度控訴人からAに申出て、被控訴人には支払能力がある旨などを告げ
て相談し、被控訴人が支払わないときは控訴人が支払いの責任を負う旨申入れて、
本件連帯保証契約をしたものであり、右契約は控訴人とAとの間の従属的な雇用関
係に基づいてなされたものではないから、公序良俗には反しない。
 三 仮に本件連帯保証契約が善良の風俗に反し無効であるとしても、控訴人は昭
和四四年四月三〇日被控訴人の遊興飲食残代金一二万八、九六〇円をAに弁済した
ので、右弁済は第三者の弁済として有効であり、これによつて被控訴人は法律上の
原因なくしてAに対する右遊興飲食残代金債務を免れて不当に右と同額の利得を
し、控訴人は右と同額の損失を受けたが、控訴人は同日右弁済をした旨を被控訴人
に通知した。
 よつて控訴人は被控訴人に対し、右不当利得金一二万八、九六〇円およびこれに
対する被控訴人が悪意になつた日の翌日である昭和四四年五月一日から右支払済み
まで、民法所定の年五分の割合による法定利息金の支払いを求める。
 第三 証拠関係(省略)
 第四 被控訴人
 被控訴人は、公示送達による呼出しを受けたが、原審および当審における各口頭
弁論期日に出頭しなかつた。
         理    由
 一 原審における控訴人本人尋問の結果とこれにより真正に成立したと認められ
る甲一号証および弁論の全趣旨によれば、被控訴人は昭和四三年八月一七日から同
四四年一月五日までの間に二一回にわたり、いずれも数名の連れを伴つて自己の負
担で本件クラブにおいて、ホステスである控訴人を指名して接待にあたらせたう
え、合計金一八万二、九三〇円相当の遊興飲食をしたが、そのうち金五万三、九七
〇円を支払つたのみであるここ、および控訴人は、同クラブでホステスとして働く
ようになつた同四二年四月下旬ごろ、その経営者であるAに対し、控訴人が客から
指名を受けて接待にあたつたときは、その客の遊興飲食代金の支払いについても連
帯保証責任を負う旨を約定し、この約定は被控訴人の右遊興飲食のときにもなお有
効に持続されていたことが認められるけれども、控訴人が、その主張のように、同
四四年四月三〇日に被控訴人の右遊興飲食残代金一二万八、九六〇円を全額Aに弁
済した事実を認めるに足りる証拠はない。しかし前掲控訴人本人尋問の結果と弁論
の全趣旨によれば、控訴人は右連帯保証債務の履行としてAに対し、被控訴人の右
残代金一二万八、九六〇円を、同四四年四月以降毎月金一万円ずつ(最後の月はは
したの金額だけ)に分割して月々の給料から弁済し、遅くとも同四五年四月末日ま
でには全額の弁済を完了したことが認められる。
 他に以上の各認定を左右する証拠はない。
 <要旨>二 なお原判決説示のように、本件連帯保証契約が善良の風俗に反し無効
であるかについて判断する。前掲控訴人本人尋問の結果と弁論の全趣旨によ
れば、本件クラブのホステスとしての控訴人の収入は、一定の給料のほかに、客か
ら指名を受けたときの報酬である指名料などもあり、接客業の従業員以外の一般有
職女子の給与水準に比して高いと解されること、本件のような連帯保証契約は、ク
ラブやバーなどでは従来から一般に広く行われていて、控訴人もあらかじめこれを
承知のうえでホステスとして右クラブで働くに至つたものであること、控訴人は以
前に働いていた同種の店の客として被控訴人と知合であつたため、被控訴人が右ク
ラブでの遊興飲食代金の支払いの猶予を得る際には、その都度控訴人からAに申出
て、被控訴人には支払能力がある旨などを告げて相談していたことが認められ、か
つクラブなどの経営者としでは、ホステスのなじみ客の身元や支払能力などについ
では、その指名を受けて接待にあたつたホステスの識別に依存するほかない場合も
多く、このような場合にはホステスの保証があるときは客に遊興飲食代金の支払い
を猶予するのが一般であるとも考えられる。
 ところでクラブやバーなどでは、その経営者が客に対する遊興飲食代金の集金を
ホステスに委ねてその回収の責任を負わせる事例は必ずしも少くないし、その集金
が時に右経営者や他の従業員によつてなされる場合でも、前記のような諸般の事情
をしんしやくすれば、本件のようなホステスの連帯保証契約が、直ちに経営者に一
方的に不当な利益を与え、ホステスに過酷な負担をしいる公正でないものであると
断ずることはできない。もつともこのような契約が、経営者の使用者としての優越
的な立場から強制的になされるとか、このような契約があることによりホステスの
転退職が著しく制約されるなどして人身の自由が拘束されるような事情があれば、
これを無効とすべきであろうけれども、本件ではこのような事情があることをうか
がわせる証拠は全く存在しない。その他本件連帯保証契約を無効とする特段の事情
は見いだしがたいから、右契約は有効である。
 三 以上の理由により、控訴人の本訴請求は、連帯保証債務の履行による求償権
に基づいて被控訴人に対し、金一二万八、九六〇円およびこれに対する遅くとも右
債務の履行を完了した日の翌日であり、かつ本件訴状送達の後であることが記録上
明らかな昭和四五年五月一日から右支払済みまで、民法所定の年五分の割合による
遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の
遅延損害金の請求部分は失当として棄却すべきである。よつてこれと判断を異にす
る原判決を主文のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九
条、九二条ただし書、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して、主文の
とおり判決する。
 (裁判長裁判官 丹生義孝 裁判官 倉増三雄 裁判官 富永辰夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛