弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主   文
被告人を禁錮4年6箇月に処する。
未決勾留日数中120日を上記の刑に算入する。
      理   由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成15年6月23日午前10時40分ころ,業務として大型貨物自動車を運
転し,愛知県豊田市a町地内東名高速道路上り線308.3キロポスト付近を,bインター
方面からcインター方面に向け時速約90キロメートルで進行中,長時間運転したことに
よる疲労等に加えて,高速道路上での単調な運転操作が継続したため精神の緊張を欠
いて眠気を催し,前方注視が困難な状態になったのであるから直ちに運転を中止し,眠
気を解消させてから運転を再開すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,前記
状態のまま運転を継続した過失により,同日午前11時10分ころ,同県豊橋市d町地内
の東名高速道路上り線262.4キロポスト付近の追越車線を前記速度で走行中に仮睡
状態に陥り,約300メートル進行した同県新城市e地内の東名高速道路上り線262.1
キロポスト先の追越車線上において,道路工事による渋滞のため進路前方で一時停止
あるいは低速走行中のA(当時20歳)が運転し,B(当時48歳)及びC(当時26歳)が同
乗した普通乗用自動車後部に自車前部を衝突させ,上記自動車を押しつぶしながらこ
れを乗り越えて,その前方に停止していたD(当時54歳)が運転しその妻であるE(当時
48歳)が同乗した普通乗用自動車後部に自車前部を衝突させ,その衝撃によって上記
D車両を前方に押し出し,以下玉突きの状態で,同車両をその前方に停止していたF
(当時52歳)が運転する大型貨物自動車後部に衝突させて,上記D車両を挟圧するな
どしながら上記F車両を前方に押し出し,同車両をその前方に停止していたG(当時30
歳)が運転する普通乗用自動車後部に衝突させ,その衝撃によって上記G車両を左前
方に押し出して,その左前部を走行車線上に停止していたHが運転する普通乗用自動
車右側部に衝突させ,更に,上記F車両をして右側部を中央分離帯に設置されたガード
レールに衝突,接触させながら前方に押し出し,同車両を上記G車両の前方の追越車
線上に停止していたI(当時32歳)が運転する普通乗用自動車後部に衝突させ,その衝
撃によって上記I車両を左前方に押し出し,その左前部を走行車線上に停止していたJ
が運転する大型貨物自動車右側後部に衝突させ,更に,上記I車両の右側部をその前
方の追越車線上で停止していたK(当時24歳)が運転する普通貨物自動車後部に衝突
させ,その衝撃によって同車両を前方に押し出し,その前方で停止していたL(当時33
歳)が運転する普通貨物自動車後部に衝突させ,上記D車両の燃料タンクを損壊して同
タンク内のガソリンを流出させてこれに引火炎上させ,その火を同車両及び上記A車両
等に燃え移らせ,よって,そのころ,同所で,別紙被害者一覧表記載のとおり,上記A,
B,D及びEの4名を開放性脳挫傷,焼死等により死亡させるとともに,Cほか10名に入
院加療約3か月間から全治約2日間までを要する全身熱傷等の各傷害をそれぞれ負わ
せた。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
1 罰条        被害者毎に刑法211条1項前段
2 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条
   (犯情の最も重い被害者Dに対する罪の刑で処断)
3 刑種の選択     所定刑中禁錮刑を選択
4 未決勾留日数の算入 刑法21条
(量刑上特に考慮した事情)
1不利に働く事情
 ・ 被害は,上記のとおり,A,B,D及びEを,開放性脳挫傷,焼死等により  いずれ
も死亡させるとともに,Cほか10名に全治約2日間から入院加療約3  か月間までを
要する全身熱傷等の各傷害をそれぞれ負わせたもので,まことに  重大で取り返しが
つかない結果に至っている。亡くなった方のうち,Aは被害  当時20歳の若者であり春
秋に富んだ将来があったもの,B,D及びEは人生  の盛りの時期にあったものである
ところ,いずれも健康で本件の事故に遭わな  ければ残された人生をそれぞれに有意
義に過ごすことができたはずであり,被  告人の不注意な運転により突然その前途を
奪われた無念さは察するに余りある。  怪我を負った方々についてもそれぞれに理不
尽な苦痛を強いられているもので  あり,特にCは事故状況からみて九死に一生を得
られたというほかなく,傷害  も重篤でその苦痛及び精神的な衝撃の大きさは余人の
想像を超えるものがある  と思われる。
 ・被害者らは渋滞のために停止又は低速走行を余儀なくされていたもので全く  落
ち度はない。渋滞中の高速道路という逃げ場のない場所で突然予期せぬ事故  に巻
き込まれた被害者らの恐怖感の大きさは言語を絶するものと思料される。
 ・ 大型貨物の職業運転手である被告人が,高速運転中に重大事故に至ることの  
必至な居眠り運転に及んだものであるところ,自動車の運転者は互いに他の交  通関
与者が交通ルールに従った行動することを信頼することが許され,相互に  信頼に応
えることによって交通の安全は維持され,内包する事故の危険を現実  化すること防
止されて高速度交通機関としての有用性を発揮しうるのである。  被告人は容易にな
しうる回避措置を怠って大型貨物自動車の危険性を現実化さ  せたものであって過失
の態様としても悪質である。
・度々自己の不注意による事故を発生させていたのにその教訓を生かすことな  く,
居眠り運転をして多重追突事故に及んだもので,交通ルール軽視の態度が  著しい。
・本件事故の原因及び状況に照らすと突然大切な家族を被告人の不注意により  
奪われた遺族を中心に被害感情が未だに厳しいのも無理からぬところである。
2酌むべき事情
・ 反省の気持ちが深まっている。
・手紙により,または姉の協力を得て,謝罪の気持ちを表している。
・せめてもの償いである保険金については被告人の運転車両の保険により支払  
われることが見込まれる。
・前科がない。
(求刑 禁錮5年)
平成16年1月16日
名古屋地方裁判所刑事第5部
   裁 判 官   伊  藤   新  一  郎

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