弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
○ 事実及び理由
第一 原告の請求
被告が原告に対し平成二年六月二五日付第一号でした建築基準法六条四項の規定に
よる適合しない旨の処分を取り消す。
第二 事案の概要
一 (争いのない事実、甲七、乙七の1、2により認められる事実)
1 原告は、平成二年二月五日、別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地」と
いう。)をAから買い受け、同年三月三〇日、所有権移転登記を了し、本件土地上
に建物を建築するため、同月一五日、藤代町農業委員会に対して農地法五条一項三
号の規定による農地転用の届出をし、同月二六日、同委員会から右届出が受理され
効力を生じた旨の通知を受けた(争いのない事実)。
2 原告は、本件土地上に別紙物件目録二記載の建物(以下「本件建物」とい
う。)を建築するため、平成二年四月二三日、被告に対し、本件建物の確認申請
(以下「本件確認申請」という。)をした(争いのない事実)。
3 被告は、本件確認申請の審査に当たり、接道の関係で本件土地に本件建物を建
築するには都市計画法二九条の規定に基づく開発行為の許可が必要ではないかとの
疑義が生じたため竜ケ崎土木事務所の都市計画担当者に照会したところ、本件土地
に建物を建築するには都市計画法二九条による開発許可が必要である旨の連絡を受
けた(甲七、乙七の1、2)。
そして、本件確認申請には都市計画法二九条に適合していることを証する書面が添
付されていなかつたため、被告は、都市計画法二九条に抵触することを理由に、原
告に対し、平成二年六月二五日付第一号をもつて適合しない旨の通知をした(以下
「本件処分」という。)(争いのない事実)。
4 そこで、原告は、平成二年八月一三日、茨城県建築審査会に対し本件処分につ
いての審査請求をしたが、同年九月一二日付で右審査請求は棄却された。
二 (争点)
原告は、本訴において、本件土地に本件建物を建築するには都市計画法二九条の開
発許可が必要であるとの被告の判断は誤りであり、本件処分には右判断誤りの違法
がある旨主張して、本件処分の取消を求めるものである。
これに対し、被告は、被告のする都市計画法二九条の開発許可の要否についての審
査は、同条項の定める開発行為の許可権者(以下「開発許可権者」という。
)がこれをどう判断しているかを審査するという形式的な審査にとどまるものであ
り、本件処分においても、右形式的審査により、開発許可権者が本件土地に建物を
建築するには開発許可が必要である旨判断していることを確認し、これに基づき本
件処分をしたものであつて、本件処分には原告主張の違法はない旨主張する。
したがつて、本件の争点は、建築主事である被告に都市計画法二九条の開発許可の
要否について実質的な審査権があるか否かである。
第三 争点に対する判断
一 建築基準法六条一項は、その建築「計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設
備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであるこ
と」を建築主事の確認の対象と定め、同法施行規則一条七項は、その建築計画が都
市計画法二九条以下の諸規定に適合していることを証する書面を建築確認申請書に
添付することを要求している。
したがつて、建築基準法により、その建築計画が都市計画法二九条に適合している
か否かについても建築主事の審査の対象とされていることは明らかである。
一方、都市計画法二九条は、都道府県知事を開発行為の許可権者と定め、都市計画
法施行規則六〇条は、建築確認を申請しようとする者はその建築計画が同法二九条
以下の諸規定に適合していることを証する書面の交付を都道府県知事に求めること
ができる旨定めている。
したがつて、都市計画法が、同法二九条の開発許可の要否についての判断を開発許
可権者である都道府県知事に委ねていることも明らかである。
そして、都市計画法が、都道府県知事を同法二九条の開発許可権者と定め、開発許
可の要否についての判断も右開発許可権者に委ねていること、建築基準法施行規則
一条六項、都市計画法施行規則六〇条の規定により、建築確認申請書の添付書類と
して都道府県知事の交付する当該建築計画が都市計画法二九条に適合していること
を証する書面が要求されていること、建築主事が都市計画法二九条の開発許可の要
否を独自に検討して開発許可権者の判断と異なる判断をすることができるとする
と、開発許可権者が当該建物の建築について開発許可を要するものと判断している
にもかかわらず建築主事が開発許可を不要と判断したために開発許可のないまま建
築工事が進められることとなつたり、逆に開発許可権者が開発許可を不要と判断し
ているにもかかわらず建築主事が開発許可を要するものと判断したために開発許可
を受けなければ建築ができないこととなつたりして極めて不合理であること等から
すると、都市計画法二九条の開発許可の要否について建築主事が実質的に審査する
ことを建築基準法は予定しておらず、この点についての建築主事の審査は、開発許
可権者が開発許可を必要と判断しているか否かを審査するという形式的、外形的な
審査にとどまるものと解するのが相当である。
二 原告は、本件建物の建築には都市計画法二九条の開発許可が不要であるのに被
告が開発許可を要するものと判断したのは誤りであり、本件処分には右判断誤りの
違法がある旨主張するが、前記のとおり、被告には都市計画法二九条の開発許可の
要否についての実質的判断権はないのであり、被告は、開発許可権者である茨城県
知事から事務委任を受けている竜ケ崎土木事務所長(茨城県事務委任規則一一条、
別表第2第33、27、(1))のこの点についての判断を同土木事務所の開発許
可担当者に確認したところ、開発許可を要すると判断していることが判明したた
め、開発許可権者の右判断に基づき本件処分をしたものであつて、都市計画法二九
条の開発許可の要否についての被告の形式的、外形的審査には何らの違法も認めら
れない。
三 よつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につ
き行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 矢崎秀一 山崎まさよ 神山隆一)
別紙
物   件   目   録
一 土地
1 茨城県北相馬郡<地名略>
畑    一七〇平方メートル
2 同所<地名略>
畑    六・二三平方メートル
二 建物
木造瓦葺二階建居宅
床面積  一階 四八・四四平方メートル
二階 三四・七八平方メートル

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