弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
一 原告の被告盛岡市長に対する不作為の違法確認の訴え及び処分取消しの訴えを
いずれも却下する。
二 原告の被告盛岡地区広域行政事務組合消防長に対する不作為の違法確認の訴え
及び処分取消しの訴えをいずれも却下する。
三 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実及び理由
第一 請求
一 (主位的請求)
1 原告と被告盛岡市長との間で、原告が被告盛岡市長に対して別紙同意及び協議
申立目録一、三ないし六記載の書面をもつてなした同意及び協議申立に対し、被告
盛岡市長が何らの処分もしないことが違法であることを確認する。
2 原告と被告盛岡地区広域行政事務組合消防長との間で、原告が被告盛岡地区広
域行政事務組合消防長に対して別紙同意及び協議申立目録二記載の書面をもつてな
した協議申立に対し、被告盛岡地区広域行政事務組合消防長が何らの処分もしない
ことが違法であることを確認する。
(予備的請求)
1 原告が、被告盛岡市長に対して別紙同意及び協議申立目録一、三ないし六記載
の書面をもつてなした同意及び協議申立に対し、被告盛岡市長がなした別紙不同意
目録一、三ないし六記載の同意及び協議しない旨の処分を取り消す。
2 原告が、被告盛岡地区広域行政事務組合消防長に対して別紙同意及び協議申立
目録二記載の書面をもつてなした協議申立に対し、被告盛岡地区広域行政事務組合
消防長がなした別紙不同意目録二記載の同意及び協議しない旨の処分を取り消す。
二 (一に対する予備的請求として)
1 被告盛岡市長は、原告に対し、原告が別紙同意及び協議申立目録一、三ないし
六記載の書面をもつてなした同意及び協議申立に対して同意及び協議せよ。
2 被告盛岡地区広域行政事務組合消防長は、原告に対し、原告が別紙同意及び協
議申立目録二記載の書面をもつてなした協議申立に対して同意及び協議せよ。
三 被告盛岡市は、原告に対し金七四五八万円及び内金六七八〇万円に対する平成
三年三月三一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 原告の主張
一 不作為の違法確認及び処分取消し請求について
1 原告は、盛岡市上田字黒岩地区の山林一〇万八九三二・〇四平方メートルにつ
いて、都市計画法(以下「都計法」という。)二九条所定の開発許行為許可の申請
の事前準備として、右開発行為に関係がある公共施設の管理者であり、かつ右開発
行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することになる被
告盛岡市長及び同盛岡地区広域行政事務組合消防長に対し、都計法三二条に基づ
き、別紙同意及び協議申立目録記載の各同意及び協議(以下「本件申立」とい
う。)を求めた。
これに対し、被告盛岡市長及び同盛岡地区広域行政事務組合消防長は、別紙不同意
目録記載のとおり、同意できないとの回答をしてきた。
2 右の同意及び協議は、これがなされれば、都計法所定の開発行為の許可申請が
可能になるのに、これがなされなければ右申請が不可能になり(現に、原告は、平
成二年九月四日岩手県知事に対して開発行為許可申請書を提出したが、平成三年一
月二一日付けをもつて、都計法三二条に規定する同意を得たことを証する書面及び
協議の経過を示す書面の添付がないことを主な理由として不受理処分となつてい
る。)、所有権の行使である開発行為が制限されることになるのである。従つて、
右の同意及び協議は、不作為の違法確認の訴えあるいは処分取消しの訴えの対象と
なる「行政庁の処分その他公権力の行使」にあたる行為である。
3 しかしながら、被告盛岡市長及び同盛岡地区広域行政事務組合消防長が同意及
び協議をしないという理由は、いずれも法的根拠がないものであり、同意及び協議
をしないのは違法である。また、1記載の同意しないとの回答を本件申立に対する
拒否処分と考えれば、これも拒否する法的根拠のない違法な処分である。
二 作為請求について
原告の本件申立の内容は、都計法三三条一項各号及びその他関係法令に適合するも
のであつて、都計法三二条よりすれば、被告盛岡市長及び同盛岡地区広域行政事務
組合消防長は、これに同意しかつ協議すべき義務があり、仮に、これら同意等が私
人としての行為と同じ性格であるとするならば、原告は、民法四一四条二項ただし
書により、同意及び協議をすることを求めるものである。
三 損害賠償請求について
盛岡市長その他被告盛岡市の担当職員により、法的根拠なく同意及び協議をしない
という違法な取扱がなされた結果、原告は、開発行為許可申請に関する書類として
五〇〇〇万円、交通費として六〇〇万円及び宿泊費として一八〇万円の支出を余儀
なくされており、また精神的苦痛を被つているところ、その慰謝料としては一〇〇
〇万円が相当である。
そして、原告は、本件について訴訟委任した弁護士との間で、認容された金額の一
割を報酬とすることを合意している。
よつて、被告盛岡市は、原告に対し、国賠法一条一項に基づき、損害賠償として七
四五八万円及び内六七八〇万円に対する右不法行為のなされた後の日である平成三
年三月三一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う
義務がある。
第三 当裁判所の判断
一 不作為の違法確認及び処分取消し請求について
1 処分取消しの訴え及び不作為の違法確認の訴えの対象となる処分とは、公権力
の主体としての行政庁が、その優越的な地位に基づく公権力の行使として行う行為
であつて、直接国民の権利義務に影響を及ぼすような性質のものを言う。
2 そこで、本件で問題となつている同意及び協議が右にいう処分にあたるかを検
討する。
(一) 都計法三二条は、「開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発
行為に関係がある公共施設の管理者の同意を得、かつ、当該開発行為又は当該開発
行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で
定める者と協議しなければならない。」と定め、また、同法三〇条二項は、開発行
為の許可(以下「開発許可」という。)の申請書に同法三二条に規定する「同意を
得たことを証する書面」及び同条に規定する「協議の経過に関する書面」を添付す
ることを要するとし、同法三三条一項は、開発許可の申請手続がこの法律等の規定
に違反していないと認めるときは、都道府県知事は開発許可をしなければならない
としている。したがつて、少なくとも都計法三二条所定の「同意」が得られなけれ
ば、適法な開発許可の申請ができないことになる。
(二) しかしながら、まず、都計法三二条の同意の対象となる公共施設について
考えると、同法四条一四項及び同法施行令一条の二には同法における公共施設の定
義規定がおかれ、それによれば、公共施設とは、道路、公園、下水道、緑地、広
場、河川、運河、水路及び消防の用に供する貯水施設をいうとされ、同法三二条は
これをそのまま受けているから、同条の対象となる公共施設は、右規定に掲げられ
たものがこれにあたることになる。そして、都計法は、「都市の健全な発展と秩序
ある整備を図り」(一条)という観点から法的規制を行う法律であるところ、右各
公共施設についても、例えば道路については単に「道路」として、道路法上の道路
とはしていないなど、特別な定義規定を置いていないことからして、同法三二条の
同意の対象となる公共施設については、私人が管理する場合も含めていると解され
る(因みに、同法三九条は、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される
公共施設について、私人が管理することを予定している。)。
そして、右のとおり私人が管理する公共施設についての管理者の同法一二二条の同
意に関して、右私人を公権力の主体である行政庁とするとの規定は、明文のものは
もちろんその趣旨を窺わせるものもない。一方国若しくは地方公共団体又はその機
関が公共施設の管理者である場合について、私人が管理者である場合と区別して同
意を扱つていると解されるような規定はおいていない。むしろ同法三二条は、「同
意」という行政法規の一般用語例からして公権力の行使という性格を有していると
は言い難い用語を用いているとともに、開発許可に関しては、同法三〇条において
申請手続を、同法三三条において開発許可の基準及び開発許可の申請が右基準に適
合する等適法な場合における許可権者である都道府県知事の許可の義務を、同法三
五条において不許可処分の場合の通知等の手続を、同法五〇条、五二条において開
発許可に関する開発審査会への審査請求とこれを処分取消しの訴えの前置とするこ
と等、それをするについての要件や、それをなさなかつた場合の事後手続等に関す
る規定をおいているのに対し、同法三二条の同意については、右のような規定を欠
いているのであつて、都計法は、三二条の同意が処分であることを窺わせるように
は規定していないのである。
(三) 以上によれば、都計法においては、同法三二条の同意について、国若しく
は地方公共団体又はその機関が公共施設の管理者である場合を、私人が管理者であ
る場合と特に区別するような位置づけをしておらず、公権力の行使である処分とし
ての性格を付与していないというほかない。
また、同法三二条の協議については、同条及び同法施行令二三条によれば、その相
手方に当然私人が含まれ、また、都計法の規定の仕方については(二)で述べたこ
とがそのまま当てはまるほか、(一)で述べたとおり、開発行為の許可申請書に
は、「協議の経過を示す書面」の添付は要求されているが、協議が整うことまでは
開発許可の要件とはされておらず、右書面には、誠意をもつて協議を申し入れた
が、公共施設の管理予定者が合理的な理由もなくこれに応じなかつたような場合
は、そのことを記載しておけば法の要求するところは満たされると考えられるか
ら、誠意をもつて協議の申し入れをしている限り、開発許可の申請をすることはで
き、公共施設の管理予定者が協議に応じないこと自体は開発許可の申請をするにつ
き何らの影響を与えるものでもないから、都計法においては、同法一二二条の協議
についても公権力の行使である処分としての性格は付与されていないということに
なる。
3 したがつて、都計法三二条の同意及び協議は、不作為の違法確認の訴え及び処
分取消しの訴えの対象となる処分に該当しないから、原告のこの点に関する訴えは
不適法なものであり、却下を免れない。
二 作為請求について
原告は、原告の本件申立の内容は、都計法三三条一項各号及びその他関係法令に適
合するものであつて、都計法三二条よりすれば、被告盛岡市長及び同盛岡地区広域
行政事務組合消防長は、これに同意しかつ協議すべき義務がある旨主張する。しか
しながら、原告の主張するところの都計法三三条一項各号及びその他関係法令は、
いずれも開発行為の許可に関する基準であつて、これらが同意ないしは協議をすべ
き義務の根拠となるような規定の仕方はしておらず、都計法その他関係法令におい
て、都計法三二条の同意及び協議それ自体の義務の発生及びその要件を定めている
と解しうるものを見出すことはできない。
従つて、原告の本訴請求のうち、同意及び協議を求める部分については、その余の
点を判断するまでもなく理由がない。
三 損害賠償請求について
原告の損害賠償請求は、施設管理者としてなすべき同意及び協議が違法になされな
かつたことを前提としていると解されるところ、同意及び協議をすべき法的義務が
あるとは言えないことは前述のとおりであり、それをなさないことが違法であると
は言えないから、原告のこの点に関する請求も、その余の点を判断するまでもなく
理由がない。
(裁判官 高橋一之 井上 薫 阿部浩巳)
別紙
同意及び協議申立目録
一、平成二年二月一六日付け、被告盛岡市長に対する下水道(汚水)に関する協議
同意書(同日付け盛岡市建設課第四-七号)
二、同日付け被告盛岡地区広域行政事務組合消防長Aに対する消防水利に関する協
議申出(同日付け盛岡消防署第四三七一号)
三、同日付け被告盛岡市長に対する水路に関する協議同意書(同日付け盛岡市都市
河川課第一-二〇号)
四、同日付け被告盛岡市長に対する公園に関する協議・同意書(同日付け盛岡市都
市計画部公園緑地課第二-五号)
五、同日付け被告盛岡市長に対する道路に関する協議書(同日付け盛岡市建設部道
路管理課第一七-一二号)
六、平成二年三月七日付け被告盛岡市長に対する水道施設建設等申請書(平成二年
三月二九日付け元盛都第一四九号)
別紙
不同意目録
一、被告盛岡市長が原告に対して平成二年三月二六日付け元盛建第四-七号を以て
なした同意できないとの処分。
二、被告盛岡地区広域行政事務組合消防長Aが原告に対して同月二八日付け盛広盛
消収第四三七一号を以てなした同意できないとの処分。
三、被告盛岡市長が原告に対して同月二九日付け元盛河第一-二〇号を以てなした
同意できないとの処分。
四、被告盛岡市長が原告に対して同月二八日付け元盛緑第二-五号を以てなした同
意できないとの処分。
五、被告盛岡市長が原告に対して同月二九日付け元盛道管第一七-一二号を以てな
した同意できないとの処分。
六、被告盛岡市長が原告に対して同日付け元盛都第一四九号を似てなした同意でき
ないとの処分。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛