弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 東京高等検察庁検事長佐藤博の上告趣意及びこれに対する弁護人新谷春吉の答弁
並びに弁護人松本正雄、同遊田多聞及び同新谷春吉、同清瀬三郎の各上告趣意は末
尾に添えた別紙記載のとおりである。
 東京高等検察庁検事長佐藤博の上告趣意について。
 本件公訴事実の要旨及びこれに対する原判決判示の要旨は所論摘示のとおりであ
る。しかして所論は第一として右原判決判示の麻薬取締規則(以下規則と記す)第
四六条第三号の解釈適用について争うので考えてみるに、同規則は第三条に麻薬取
扱者の定義を掲げ、第四条に各業務種類別の免許を要求して麻薬取扱者の範囲を限
定した上第四三条以下等においてはその取扱者をして常に麻薬の所在及び異動を明
確にさせて、いわゆる無籍麻薬が存在しないように慎重を期しているのであつて、
第四六条は麻薬使用者に対し一二月三一日現在で一月三一日までに年末に現在した
麻薬の品名及び数量の報告書提出を命じその間何等の制限条件も定めていないので
あるから年末に現在する麻薬が規則第二条に定める麻薬である限り、その現在する
に至つた事情の如何を問わないものといわなければならない。それ故たとえ原判決
判示のような事情の下に発見された麻薬であつても、麻薬使用者である被告人が同
条所定の報告書を厚生大臣に提出するに当つては、これを数量中に加算しなければ
ならないものと解せられるのである(昭和二三年(れ)第二五五号同年七月一七日
第二小法廷判決参照)。されば原判決がこれと異なる見解の下に本件公訴事実につ
いて規則第四六条は適用されないと判断したのは法令の解釈適用を誤つた違法があ
り、この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから論旨は理由があり原判決
は破棄を免れない。
 次に所論は第二として前記本件公訴事実は被告人が前記麻薬を不法に所持してい
たという規則第四二条違反の事実をも包含するものであると前提して原判決の判断
遺脱の違法を主張するのである。しかし右公訴事実中にはなるほど所論のように「
所持していた」旨の語句は記載されてはいるが、それは前記規則第四六条所定の報
告をしなかつたという公訴事実の内容である麻薬が現在していたという具体的要件
を説明したものであつて所論のように規則第四二条違反の事実としての摘示とは解
し得られない。蓋し規則第四六条所定の報告をしなかつたという事実と規則第四二
条の不法所持の事実とは全く別個の事実であるから、仮に所論の事由にょり麻薬取
扱者である被告人の麻薬所持をも不法所持として規則第四二条違反の事実として起
訴するのであるならば所論正当なルート以外から入手したものであるとか、或いは
自己の業務の範囲外の目的を以つて所持するものであるとかの要件事実を掲げなけ
ればならないわけであり、本件公訴事実のように単に被告人の麻薬所持の事実を記
載したからといつて、到底所論規則第四二条違反の事実を別個独立の事実として起
訴したものと認めるわけにはいかない。のみならず規則第四二条は麻薬取扱者の麻
薬所持を認め別に何等の制限も条件も附していないのであるから、これは一般に所
持と認められる凡ての場合を指すものと解せられ所論のように正当なルートから入
手して所持している場合のみとか、自己の業務の範囲内の目的で所持している場合
に限るとかと、限定して解釈することはできないのである(前掲当裁判所判決参照)。
従つてこれと同旨に出たものと認められる原判決は正当であつて所論の違法はなく
論旨は理由がない。
 弁護人松本正雄、同遊田多聞、同新谷春吉、同清瀬三郎の各上告趣意について。
 麻薬取締規則第二三条は「麻薬取扱者でなければ麻薬を製剤、小分、販売、授与
又は使用することはできない」と規定し直接麻薬取扱者の所為については何等の制
限も加えていないのである。もつとも同規則は前叙のように麻薬取扱者の範囲を限
定し第二九条以下等において第三条に定める各取扱者の業態別にその行為について
個別的な制限を規定し殊に第三四条以下においては麻薬使用者の業務行為に厳格な
規則を加えてはいるのである。しかしながらそれだからといつて直ちに前記何等の
制約もない規則第二三条の規定を新らたに制定された麻薬取締法第三条等と同様麻
薬取扱者はその業務の目的以外のために所定の行為をしてはならない趣旨に帰着す
るものであると解釈することはできない。蓋し規則第二三条は直接には麻薬取扱者
以外の者の所定行為を禁止したものであり、ここにいわゆる麻薬取扱者が規則第三
条に定める麻薬取扱者以外の者でないことは同規則全般の趣旨に照し明らかである
から反面同規則にいわゆる麻薬取扱者は別段の定めがない限り第二三条所定の所為
を許されたものであるといわなければならない。しかして同規則は麻薬取扱者であ
る麻薬使用者の麻薬授与については特にこれを禁止処断する旨の規定をもうけてい
ないのであるから同規則の下においては所詮麻薬使用者である被告人の本件所爲を
処罰することはできないものという外はない。それ故右に反する見解の下に本件被
告人の判示所爲について、右規則第二三条を適用処断した原判決は法令の解釋適用
を誤つた違法あるものというべく、右違法は判決に影響すること明らかであるから
論旨は理由があり破棄を免れない。
 よつて刑訴施行法第二条旧刑訴第四四八条の二により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官塚崎直義を除き、その他の裁判官全員一致の意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与。
  昭和二七年三月二八日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判長裁判官塚崎直義は退官につき本件評議に関与しない。
            裁判官    霜   山   精   一

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