弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差戻す。
         理    由
 被告人A弁護人村上信金の上告趣意第二点について。
 原判決が、その事実認定の証拠として、本件発生当時烏山警察署の司法主任とし
てその捜査に当つたBに対する原審における証人訊問調書中の同人の供述記載を挙
示していることは、所論のとおりである。
 ところで、原判決は右供述を証拠として挙示するにあたり「その隙にAは相手に
痛いめをあわせ品物を取つて逃げてしまおうと考え持つていた匕首で肩に斬付けた
が相手は騷いで逃げたAも下の方に逃げたが人が来たので引返し自転車につけてあ
つた品物をとつて逃げたという様にいつており」との供述に引続いて、「品物を強
奪すべくやつたというように印象に残つている」との供述を附加しているので、右
原判決引用の供述記載を一見すると、同証人は被告人が警察において本件強盗の犯
意を自白した結果、該自白に基いて本件事案は強盗なりとの印象を得たものの如く、
原審において供述したものであり、原判決も亦かかる趣旨の供述として之を証據と
したものの如く認められる。
 ところが記録について、前記訊問調書を調べて見ると原判決摘録の犯意を自白し
たという部分の末尾の方はAが「品物をとつて逃げたと言う様に申していたと記憶
します」となつており、しかも該供述部分の直前(記録五二一丁裏以下)には、原
判決も挙示するように「Aは被害者を見かけ品物が欲しいと思つたので話しかけ自
分の家に行つてくれれば全部買うといつて連立つて来たがその間自分の家ではいい
暮しをしている様な自慢話をしたが家に連れて行くとばれるので離れて逃げてしま
おうと考え云々」との供述があり、又その直後(記録二五二丁裏以下)には裁判長
から「証人のAに対する聴取書(同証人が本件捜査の当時作成した聴取書を指す)
によると品物を取つて逃げるためにやつたと言う様になつて居ない様だが」と問わ
れ且右聴取書中の該当部分(記録八〇丁裏以下)を読みきかされたのに対し、証人
は「その様に申していたと記憶します」と答えて居り、更に「始めから取る気なら
同方向に逃げる必要はなかつたでしょう私はAの言う通りに調書をとつた様に記憶
します」と述べている。そして、右聴取書中には被告人が強盗の犯意を自白したよ
うな供述記載は全くない。して見ると、結局、被告人が犯意を自白した様に記憶す
ると言う証人の原審における供述部分は極めて不確かな記憶の供述であつて、しか
も、それはその直後に裁判長から聴取書を読みきかされ、前記のとおり訂正したも
のと認めるのを相当とする。従つて、以上の各供述は不可分の供述であるから、訂
正前の供述のみを取つて証拠とすることはできないばかりでなく、他方において原
判決が摘録する「品物を強奪すべくやつたというように印象に残つている」との供
述部分は、前の供述とは別に、証人訊問の最後において裁判長から「念のため、今
一度訊くが、証人が作成した聴取書には品物をとらうとして傷けたと言う様になつ
ていないのだがその点はどうか」と問われたのに対して答えたものであり(記録二
五五丁裏)、しかも、該供述に引続いて証人は更に「意見書もその様に扱つたとい
う様に記憶します」と述べているのであるが、同証人の作成した意見書(記録一丁
以下)には、その末尾に「強奪したるものなり」との文言が使用されているものの、
事実の記載としては単に「買取る意思なく嘘言を弄した事より一撃を加えて逃走せ
んと……所持の匕首を以て同人の頸部を刺突し」と記載されているに止まり、品物
をとらうとして傷付けた旨の記載のないことはまさに所論のとおりである。従つて、
右「印象に殘つている」云々の証人の供述部分は被告人が証人に対してしたという
前記自白の供述とは全く関係のない、単なる捜査官の意見の陳述に外ならないこと
極めて明かであるから、かかる供述はこれを証拠とすることは到底許されない。蓋
し、右は本件強盗の犯意があつたか否かと言う事実に関するものでありかくの如き
事実は裁判所が適法な証拠に基いて認定すべきものであることは勿論であるからで
ある。
 以上の次第であるから、原判決がその事実認定の証拠として原審証人Bの前記供
迷を採用したことは違法であり、しかも原判決の証拠説明を通覧するに、右供述は
原判決が被告人の本件所為を強盗傷人なりと認定した決定的な証拠の一として之を
挙示したものであることを十分に窺えるから、右の違法は判決に影響なしと言うこ
とはできない。従つて本点論旨はその理由があり他の論旨につき説明するまでもな
く、原判決は破棄を免れない。
 よつて刑訴施行法二条、舊刑訴四四七条、四四八条の二に従い主文のとおり判決
する。
 この判決は全裁判官一致の意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二六年三月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判長裁判官塚崎直義は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    霜   山   精   一

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