弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
被告人A弁護人福田栄一、同金末多志雄の上告趣意及び被告人B弁護人竹中半一郎
の上告趣意は末尾添附の書面記載のごとくであつて、これに対する当裁判所の判断
は次のとおりである。
 弁護人福田栄一、同金末多志雄の上告趣意第一点について。
 原審は、被告人の自白を唯一の証拠として原判示事実を認定したものではなく、
被告人の原審公廷における供述の外、右供述を補強するに足るC提出の事実始末書
の記載をも証拠として引用しているのである。すなわち、原審は被告人の自白を唯
一の証拠として犯罪事実を認定したのではないから憲法第三八条及び刑訴応急措置
法第一〇条第三項に違反するかどうかの問題を生ずる余地がない。されば論旨は理
由がない。
 同第二点について。
 原審は、その挙示する証拠によつて、被告人がコルト式小型拳銃一挺及び同実包
一個を隠匿所持した事実を認定したのである。そして、右拳銃につき故障のあつた
ことの述べられていない本件においては、いやしくもコルト式小型拳銃である以上
弾丸発射の機能を有することはおのずから推知されるのであるから、原審が右の事
実につき所論の法規を適用処断したことには何の違法はなく論旨は理由がない。
 弁護人竹中半一郎の上告趣意第一点について。
 所論のC作成に係る事実始末書中に「Dちやん」とあり、「Eちやん」とあるの
は、被告人等の原審公廷における供述を参照すれば原判示のA並びにBを夫々指し
示していることは明瞭であるから、原判決が所論のように「判示関係部分に照応す
る事実顛末の記載」と示したことは少しも差し支えなく原判決には所論のように虚
無の証拠によつて犯罪事実を認定した違法又は審理不尽の違法はない。
 同第二点について。
 当該裁判所の公判廷における被告人の自白が憲法第三八条第三項及び刑訴応急措
置法第一〇条第三項の自白に含まれないことは当裁判所の判例として示すところで
ある(昭和二三年(れ)第三九七号事件昭和二三年七月二九日言渡当裁判所大法廷
判決)又刑事訴訟法施行法第二条によれば本件には新刑事訴訟法の適用はないので
あるから被告人の自白に関する同法の規定の適用もない。されば、原審が所論の事
実を原審公判廷における被告人の供述によつて認定したことを目して所論のように
憲法並びに法律の規定に違反するとする論旨は理由がない。
 同第三点について。
 判決書に被告人の住居を記載するのは、被告人の氏名、年齢、職業等の記載と相
まつて被告人の同一性を特定するためである。されば、原判決が被告人の住居とし
て「三百九十二番地」と記載したことが仮りに所論のように「三百九十三番地」の
誤記であるとしても、これがために前記の特定を害するわけではないから原判決に
は所論のような違法はなく論旨は理由がない。
 よつて、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項刑事訴訟法施行法第二条、旧
刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 以上の中、弁護人竹中半一郎の上告趣意第二点についての前段の意見に関し裁判
官井上登に反対意見のある外その他の点については裁判官全員の一致した意見であ
つて、裁判官井上登の反対意見は昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日言渡
当裁判所大法廷判決に示すとおりである。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二四年二月一五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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