弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人庭山英雄、同瀧康暢の上告趣意のうち、憲法三六条違反をいう点は、死刑
制度が憲法の右規定に違反するものでないことは当裁判所の判例(最高裁昭和二二
年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁)のと
おりであるから、理由がない。憲法三八条二項違反をいう点は、記録を調べても被
告人の自白の任意性を疑うべき証跡は認められず、憲法三八条三項違反をいう点は、
被告人の自白が原判決の是認する第一審判決の掲げるその余の証拠により十分補強
されているものと認められるから、いずれも前提を欠き、その余は、事実誤認、量
刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。
 被告人本人の上告趣意のうち、死刑に関して違憲をいう点は、前記のとおり理由
がなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な
上告理由に当たらない。
 なお、所論にかんがみ記録を調査しても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは
認められない。付言すると、本件は、被告人が、約六年半の間に、二件の殺人と二
件の強盗殺人等を犯したという事案である。まず、被告人は、昭和五九年一一月、
香川県香川郡内の店舗で店番をしていたA(当時六四歳)の応対ぶりに立腹し、包
丁を用意して同店に赴き、同女を多数回突き刺して殺害したほか、同女が管理して
いた現金約五万円を窃取した(第一審判決判示第一の殺人、窃盗)。その後、被告
人は、昭和六三年三月、徳島市内の暴力団事務所において、後輩の組員であるB(
当時二一歳)の言動に立腹し、電気コードで同人を絞殺した(同判示第二の殺人)。
また、平成元年六月、東京都武蔵村山市内の工場の寮において、期間従業員として
働いていた同僚のC(当時一八歳)が帰郷することになった際、同人が蓄えていた
金を奪う目的で洗濯用ロープで同人を絞殺した上、現金約一二〇万円を強取し、そ
の後、同人の死体を千葉県市川市内の排水溝に遺棄した(同判示第三の強盗殺人、
死体遺棄)。さらに、被告人は、平成三年三月、当時働いていた風俗営業店の営業
権を確保する資金欲しさから、それまでも金を借りるなどして世話になっていた伯
父Dの不在を見計らって神奈川県藤沢市内の伯父宅を訪ね、その妻E(当時六三歳)
を洗濯用ロープで絞殺した上、現金、郵便貯金証書、預金通帳等を強取し、同女の
死体を伯父宅の床下に遺棄した。次いで、右証書を用いて郵便局から現金三二四万
円余を騙取し、更に右通帳を用いて銀行から現金を騙取しようとしたが、支払停止
措置が採られていたため、その目的を遂げなかった(同判示第四の強盗殺人、死体
遺棄、有印私文書偽造、同行使、詐欺、詐欺未遂)。以上の各犯行は、いずれも罪
質が悪質であり、とりわけ各強盗殺人は、動機に酌量の余地がなく、犯行態様が冷
酷、非情、残虐であって、結果も重大である。これらの事情に加え、各遺族の被害
感情、社会に与えた影響等に照らすと、前記第一及び第二の各罪については自首が
成立すること、被告人が捜査段階及び第一審公判において素直に全事実を認め、反
省の態度を示していたことなど被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、被
告人の罪責は誠に重大である。したがって、被告人を前記第一の罪について懲役一
二年に処するとともに前記第二ないし第四の罪について死刑に処した第一審判決を
是認した原判決の科刑は、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
 よって、刑訴法四一四条、三九六条、一八一条一項ただし書により、裁判官全員
一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官津田賛平 公判出席
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)

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