弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役三年に処する。
     ただし、この裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。
     原審および当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、検察官が提出した東京地方検察庁検事伊藤栄樹名義および
弁護人山崎素男の各控訴趣意書に記載されたとおりであり、これらに対する答弁
は、弁護人山崎素男および東京高等検察庁検事安西温の各答弁書に記載されたとお
りであるから、それぞれこれを引用し、これらに対し次のとおり判断する。
 検察官の控訴趣意第一(法令の解釈適用の誤りの主張)について
 論旨は要するに、原判決が、本件公訴事実中兇器準備集合罪に関する訴因につい
て、共謀による共同正犯の成立を否定し、被告人につき同罪の幇助犯と認定したの
は、法令の解釈適用を誤つたものであつて、その誤りは判決に影響を及ぼすことが
明らかであるから、原判決は破棄を免れないというのである。
 よつて検察官の右所論にかんがみ、原判決文を検討すると、いわゆる米ソ両大使
館襲撃事件の公訴事実(昭和四六年四月三日付起訴状記載のもの)につき、原判決
は、兇器準備集合以外の各訴因については、いずれも共謀共同正犯の成立を認めた
が、「被告人は、AことAほか数名と共謀のうえ、第一、A1ほか一名において、
1 昭和四四年九月三日午後九時四八分ころ、東京都港区赤坂一丁目一〇番所在の
在日アメリカ合衆国大使館付近路上において、同大使館の財産および警察官の身体
等に危害を加える目的をもつて、火炎びん数本を所持し、もつて他人の財産・身体
に対し共同して害を加える目的で兇器を準備して集合し、第二Bほか一名におい
て、1 前同日午後九時四八分ころ、同都港区麻布狸穴町一番地所在の在日ソヴイ
エト社会主義共和国連邦大使館付近路上において、同大使館の財産等に危害を加え
る目的をもつて、前同様の火炎びん数本を所持し、もつて他人の財産、身体に対し
共同して害を加える目的で兇器を準備して集合し」たとの各兇器準備集合の共同正
犯の訴因に対しては、原判決は、第二の一、(一)、(二)として、A1、A2に
おいて前記米国大使館付近路上において、またB、Cにおいて前記ソ連大使館付近
路上において、いずれも共同加害の目的で兇器を準備して集合したものであること
を認めながら、第二の二として、「被告人は、前同日午後八時ころ、同都港区ab
丁目c番d号D大学E寮において、右(一)、(二)の各犯行の用に供せしめる意
図をもつて兇器である火炎びんの製造をA1に指示し、よつて同人をして右各犯行
の用に供された火炎びん一二本位を作成せしめ、もつて右各犯行を容易ならしめて
これを幇助し」たと認定して、兇器準備集合罪について、共謀による共同正犯の成
立を排斥し、更に被告人につき、同罪の幇助犯と認定した理由について、原判決
は、同罪の(幇助犯と認定した理由)なる項の中で、被告人が本件各兇器準備集合
の「犯行前数日の間になされたD大学E寮での共謀に参画すると共に、A1、Bら
の前掲犯行の用に供せしめる目的をもつて、同人らと意を通じたうえ兇器である火
炎びんの製造をA1らに指示したものである。」との事実を認定しながら、「自ら
はA1ら及びBらが、それぞれ兇器を準備して集合した米国大使館付近路上及びソ
連大使館付近路上には赴いていない事実が認められる。」としたうえ、「そこで刑
法二〇八条の二第一項の兇器準備集合罪の要件について按ずるに、共同加害の目的
に関しては広く共同正犯と認められる形態によつて加害行為をなす目的があれば足
りると解するにしても、実行行為の点については少くとも、二人以上の者が他人の
生命・身体・財産に対し兇器を使用して害を加える目的をもつて一定の時刻に一定
の場所に集つたという構成要件的状況下において、自らもその集合体に参加すると
いう行為に及ぶことを要すると解するのが相当であり、実行の相談を目的として集
合したに止まる場合は、右の構成要件的状況を欠如するものであつて、右法条には
いまだ該当しないというべきである。」との判断を示し、続いて、被告人の所為
は、「いまだ兇器準備集合罪の共同正犯には該当せず、幇助犯と認めるのが相当で
ある。」と結論づけて、被告人に対し兇器準備集合罪の共同正犯を排斥し、軽い幇
助犯を肯定しているのである。すなわち原判決は、右のように、被告人がBらによ
る兇器準備集合の各犯行前数日の間になされたD大学E寮における共謀に参画した
と判示し、本件兇器準備集合罪を含む建造物侵入、放火等の各犯罪の実行につい
て、被告人が共謀した事実を認めながら、兇器準備集合罪についてのみ幇助犯と認
定し、本件各兇器準備集合についての謀議と同一機会に行われた同一の謀議に基づ
くその余の公務執行妨害、傷害、放火未遂、建造物侵入未遂、放火予備の各罪につ
いては被告人に対し共謀による共同正犯の成立を肯定し、その各共謀の点につき刑
法第六〇条を適用していることが判文上明らかである。
 そこで本件につき兇器準備集合罪の共同正犯を排斥し、同罪の幇助犯の成立を肯
定した原審の判断の当否につき考察する。先ず記録によると、原判決は、いわゆる
ソ連大使館襲撃事件につき、実行正犯であるB、Cの両名が加害の目的をもつて火
炎びんを携え同大使館へ接近したという一個の行為について、被告人が右両名との
同一機会における謀議に参画したことに関する罪責に対し、放火予備罪については
共謀共同正犯と、兇器準備集合罪については幇助犯とそれぞれ認定するというよう
に相異なる評価をしたうえ、右両罪が観念的競合の関係にあるとの判断のもとに、
刑法第五四条第一項前段を適用していることが明らかであるが、しかし同一機会に
おける同一の謀議に基づき同一機会に行われた数個の犯罪につき、実行行為に加わ
らなかった共同謀議に参画した者の刑責を問ううえで、右の謀議に関して、ある罪
に対する関係では共謀共同正犯の成立要件を充足するものとし、他の罪に対する関
係では幇助犯にとどまるとする解釈は、その両者の罪につき本質的に相異なる評価
をしなければならないという合理的理由のない限り、論理的に矛盾があるものとい
う<要旨>べきである。ところで、刑法第二〇八条の二第一項の兇器準備集合罪(以
下、本罪ということがある。)における「共同シテ」という要件は、構成要
件たる行為そのものに関する要件ではなく、目的の内容たる加害行為に関するもの
であり、広く共同正犯と認められる型態によつて、加害行為をなす目的があれば足
り、その加害行為を現場において共同して行なう目的は必要としないと解すべきで
あるから、本罪は共謀共同正犯の形をとる場合をも含む趣旨であると解するのが相
当である。もとよりこの場合、右共謀の内容、謀議における犯人自身の地位、分
担、役割等に徴し、共謀共同正犯の成立に必要な謀議に参加した事実が認められな
ければならないことは当然であり、この事実が認められる以上、たとえ当該犯人が
その集合体に参加しなかつたとしても、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪
を行なつたという意味において、共同正犯の刑責を負うべきものである。そして本
件の場合、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人は本件米ソ両大使館の襲撃を計
画したF団の副議長の地位にあつて、昭和四四年八月三一日に川崎市内のG会館に
おいて、「H」なる名目で約四〇名ないし五〇名が集まつて開かれたI団と右F団
とのJ集会に出席して、司令者からの指名紹介により、その席上同F団を代表して
K外相の訪米・訪ソ阻止の実力闘争を断固として闘い抜かなければならない旨のア
ジ演説を行い、同日の集会でK外相訪米訪ソ阻止行動の決死隊の参加者約一〇名が
希望申し出によつて選ばれ、決死隊員らによつて同日夜火炎びんによる襲撃の場所
とされたL空港の下見がなされた後の集合場所(e)について、被告人が決死隊員
らに教示していること、次いで同年九月一日の夜および翌二日の朝から昼すぎころ
までにわたつて被告人の居室であつたD大学E寮三〇五号室で開かれたL空港襲撃
についての決死隊員らによる会合に被告人はいずれも出席し、その際攻撃の目標に
本件米ソ両大使館をも加える旨の変更がなされたこと、そして同月二日午後右E寮
三〇五号室で火炎びんを製造する際、被告人はAを呼び出して、同人に被告人の右
居室で火炎びんを製造するように指示し、同日夜右Aの指導のもとにA2らととも
に火炎びん約四〇本の製造にあたり、被告人自らもその製造に加担し、同夜右Aら
が行つた火炎びんの燃焼時間などの効果確認のための実験の結果の報告を受けてい
ること、また同月三日朝右E寮の付近に機動隊員の姿などを認めるや、機動隊員に
よる自己の居室などの捜索による火炎びんなどの発見、ひいては本件米ソ両大使館
襲撃の各犯行計画の露見をおそれ、被告人の指示により、Bらとともに一旦製造し
た火炎びんの中味を水洗便所などに放流し、ガソリンの臭いのするびん、バケツな
どを洗剤で洗い、ボロ切れをゴミ箱に捨てるなどの証拠隠滅工作をなしたこと、そ
して同日昼ころ前記Aを再び被告人の居室である前記E寮三〇五号室に呼び寄せ、
第二回目の火炎びん製造を命じ、更に同日夕刻ごろM文化会館で開かれていたN同
盟とO共闘との集会に出席し、指名されて本件に関するアジ演説をしたのち、同会
館から右Aの自動車に火炎びん製造に使用するためのガソリンを積載させて前記E
寮三〇五号室に戻り、同室にいたA1に対し、米ソ両大使館襲撃用の火炎びんを作
るように命じて、右A1に火炎びん十数本を製造させていること、更に本件犯行当
夜ソ連大使館襲撃担当の決死隊員B、同Cを途中において激励したほか、米国大使
館襲撃担当の決死隊員A1、同A2がその犯行実行のため、右E寮を出発するに際
し、同寮において右両名を激励して送り出していることをそれぞれ肯認することが
できるのであつて、以上認定の諸事実に徴すれば、本件共謀における被告人の役割
は、原判決が(判示第二の幇助犯と認定した理由)の項中に摘示しているような実
行行為者であるA1、Bらと意を通じたうえ、単に火炎びんの製造を右A1らに指
示したにとどまるものではなく、被告人は本件事前謀議にむしろ主謀者として参画
して、犯罪実行の中心的役割を果していたものであり、自己の仲間である右A1、
Bらが米ソ両大使館を火炎びんをもつて襲撃するため、右両大使館付近路上に右火
炎びんを所持して集合するにつき、他の者と謀議したことが明らかであるから、被
告人自身は、A1らおよびBらがそれぞれ兇器を準備して集合した米ソ両大使館付
近路上には赴かなかつたとしても、本罪に関する前記のような説示に照らせば、被
告人の所為は、原判決の説示、認定するような単なる幇助犯にとどまるものではな
く、当然共謀共同正犯の理論により、兇器準備集合罪の共同正犯に該当すると解す
るのが相当であつて、共同正犯の刑責を問うことは少しも不合理ではなく、その他
に兇器準備集合罪についてとくに共謀共同正犯の適用を排除する合理的理由はない
ものというべきである。
 してみれば、被告人に関する兇器準備集合罪の事実につき、共謀による共同正犯
の成立を認めず、被告人自身が集合体に参加しなかつたという事実をとらえ、単に
同罪の幇助犯が成立するに過ぎないとし、刑法第六二条第一項を適用処断した原審
の判断は、刑法第二〇八条の二第一項および刑法総則たる同法第六〇条の各解釈適
用を誤つたものであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。そし
て原判決は、右の幇助犯と放火予備とを観念的競合の関係にあるものとして、重い
放火予備罪の刑で処断することとし、更に右の罪と公務執行妨害などの各罪とを刑
法第四五条前段の併合罪として、同法第四七条、第一〇条を適用処断しているか
ら、結局原判決は全部破棄を免れない。検察官の右論旨は理由がある。
 (なお弁護人は答弁書において、本件においては、被告人が共謀に参画した事実
自体が存在しないから、この点に関する検察官の主張は、本件については無用の議
論であると主張するが、前記説示のとおり被告人は本件兇器準備集合の犯行の謀議
に参画したものと認められるものであるから、弁護人の右主張は失当というほかは
ない。)
 弁護人の控訴趣意第一点(訴訟手続の法令違反の主張)について
 なるほど記録上、Aが原審において証人として喚問されたのは昭和四六年一二月
一四日であり、同人の検察官調書が作成されたのは同年三月一日、同月四日、同月
一〇日であることが認められるので、本件各行為がなされた時から最初の検察官調
書が作成されるまで、すでに約一年六か月の期間が経過していることが窺えるが、
しかし右Aの検察官調書が所論のように記憶に基づかずに検察官の誘導によつて作
成されたものであると認めうる資料はなく(なお同人は原審、当審各公判におい
て、同人の検察官調書が作成された時には、事件に対する記憶は殆どなかつた旨論
旨に沿うような供述をしているが、この点に関する同人の各公判供述はいずれもに
わかに信用できない。)、また同人の検察官調書については、同人の原審公判にお
ける証言と比較し、右証言が曖昧であつて到底信用しがたいものであるのに対比し
て、前者は相当詳細に本件当時における同人および被告人ならびに他の仲間らの行
動について供述しているものであつて、その供述内容を全体的に観察するときは、
十分に首肯するに値するものであり、とくにいわゆる信用すべき特別の情況が存す
ることを認めるについて妨げとなるものは見あたらないので、同人の検察官調書
(三通)はいずれも刑事訴訟法第三二一条第一項第二号の要件を満たしているとい
うことができる。従つて右各調書は証拠能力を有するものとして、同条項により証
拠として採用しうるものであるから、これらの調書を証拠として採用し、事実認定
に供した原判決には、何ら所論のような訴訟手続の法令違反は存しない。論旨は理
由がない。
 弁護人の控訴趣意第二点(訴訟手続の法令違反もしくは事実誤認の主張)につい

 よつて原判決文を調査すると原判決は(証拠の標目)中に証人A1の原審公判に
おける供述および同人の検察官調書(六通)を掲げながら、証人A2の原審公判に
おける供述を掲げていないのであるから、原判決は所論も認めるとおり、右A1の
検察官調書(および同人の原審公判供述)を事実認定に供しながら、右A2の原審
公判供述を排斥しているのである。しかし全体的にみて、右A2の原審公判供述よ
りも、A1の検察官調書および同人の原審公判供述が信用しうるに足るものである
ことは、前記Aの各検察官調書の供述内容などと対比してみても明らかであつて
(この点は更に当審における事実取調の結果ことに当審証人A3の公判証言などに
よつてみても、右証拠の評価に誤りはない。)、所論のように右A1の供述が事実
に反し、証拠価値のないものであり、一方A2の供述が他の証拠によつても裏付け
られる証拠価値の高いものであるなどとは到底いえない。そして証拠の取捨選択に
ついての判断は原審の専権に属するところであるから、原審がA1の前記各供述を
証拠として採用し、これに反するA2の公判供述を排斥したからといつて、所論の
ように原判決が明らかに証拠の証価を誤り、自由心証主義の合理的な限界を超え、
証拠裁判主義を規定した刑事訴訟法第三一七条に違反するものとはいえない。従つ
て原審がA1の前記各供述を証拠価値があるものとして、同人の供述どおりの事実
認定をして、被告人に兇器準備集合罪(ただし原判決は同罪の幇助犯と認定してい
るが、同罪の共同正犯と認むべきことは前記説示のとおりである。)としての責任
を問うたのは正当であつて、原判決には所論のような訴訟手続の法令違反もなけれ
ば、事実の誤認もない。論旨は理由がない。
 弁護人の控訴趣意第三点(原判示第一に関する事実の誤認もしくは法令適用の誤
りの主張)について
 しかし原判決挙示の関係証拠によれば、原判示第一の事実、すなわち被告人がB
ほか数名と共謀のうえ、一、の公務執行妨害、傷害、放火未遂、建造物侵入未遂な
らびに二、の放火予備の各犯行に及んだ事実を肯認するに十分であり、とくに被告
人がその事前謀議に参画し、共同正犯としての刑責を負うべきことは、検察官の控
訴趣意第一に対する判断において説示したところから明らかであつて、記録を調査
し、かつ当審における事実取調の結果を参酌しても、右判断を左右するに足りな
い。所論中、被告人は、昭和四四年八月三一日から同年九月二日午前まで、決死隊
員が「謀議」を重ね、最終的に米ソ両大使館を襲撃することの合意に達し、実行担
当者を決定するまでの一連の謀議には全く関与していないし、また右の合意成立後
の被告人の行動を検討しても、この合意にその後加わつた形跡は全くなく、被告人
が前記A1らによる米ソ両大使館に対する襲撃を知つたのは、決死隊員の間でこの
ことがすでに決定され、まさに実行に移されようとした時であり、更に被告人と実
行行為者との関係も、被告人がその実行行為者らを指導するような立場になかつた
との主張については、右各所論に沿うような被告人およびA3の原審、当審各公判
供述部分ならびにA2の原審公判証言部分は前記各証拠と対比していずれもにわか
に信用しがたいところであつて、採用できない。しからば前記第一の各事実につ
き、被告人を共謀による共同正犯と認定した原審の判断は正当として是認すべきで
あり、原判決には所論のような事実の誤認もしくは法令適用の誤りはない。論旨は
理由がない。
 よつて検察官の量刑不当の控訴趣意に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七
条第一項、第三八〇条により原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書により、本件に
ついて更に次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 原判決の認定した(罪となるべき事実)のうち、第二の一、(一)、(二)およ
び二を第二として、次のように変更して認定するほかは、第一の一、二および第三
については、原判決と同一であるから、これを引用する。
 第二、 被告人は前記第一冒頭掲記と同様の企図をもつて、Bほか数名と共謀の
うえ
 一、 A1、A2において、昭和四四年九月三日午後九時四八分ころ、前記米国
大使館付近路上において、共同して同大使館の財産および警察官の身体等に危害を
加える目的をもつて兇器である火炎びん数本を所持し、もつて他人の財産、身体に
対し共同して害を加える目的で兇器を準備して集合し
 二、 B、Cにおいて、前同日午後九時四八分ころ、前記ソ連大使館付近路上に
おいて、共同して同大使館の財産等に危害を加える目的をもつて兇器である火炎び
ん数本を所持し、もつて他人の財産、身体に対し共同して害を加える目的で兇器を
準備して集合し
た。
 (証拠の標目)(省略)
 (法令の適用)
 被告人の判示各所為中、第一の一の公務執行妨害の点は刑法第九五条第一項、第
六〇条に、傷害の点は同法第二〇四条、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号(刑
法第六条、第一〇条により昭和四七年法律第六一号による改正前のものを適用、罰
金等臨時措置法の適用については以下同じ。)、刑法第六〇条に、放火未遂の点は
同法第一一二条、第一〇八条、第六〇条に、建造物侵入未遂の点は同法第一三二
条、第一三〇条、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号、刑法第六〇条に、第一の
二の放火予備の点は同法第一一三条(第一〇八条)、第六〇条に、第二の一、二の
各兇器準備集合の点は各同法第二〇八条ノ二第一項、罰金等臨時措置法第三条第一
項第一号、刑法第六〇条に、第三の犯人隠避の点は同法第一〇三条、罰金等臨時措
置法第三条第一項第一号に各該当するところ、右第一の一の公務執行妨害と傷害な
らびに第一の二の放火予備と第二の二の兇器準備集合とは、いずれも一個の行為で
数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により、
それぞれ一罪として、前者については重い傷害罪の刑で、後者については犯情の重
いと認める兇器準備集合罪の刑で処断すべく、以上の各罪については、所定刑中い
ずれも懲役刑(ただし放火未遂罪については有期懲役刑)を選択し、第一の一の米
国大使館に対する放火および建造物侵入の点はいずれも未遂であるから、各同法第
四三条本文、第六八条第三号によりそれぞれ法律上の減軽をなし、以上は同法第四
五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により最も重い傷害罪
の刑に法定の加重をした(ただし短期については減軽された放火未遂罪の刑のそれ
による。)刑期の範囲内において被告人を処断すべきところ、本件各犯行の罪質、
動機、態様、ことに本件のうち米ソ両大使館襲撃事件については、国際法上我が国
との互恵関係のうえに築かれた二大国の外交使節団が執務する公館たる施設ならび
に同公館に居住する外国人に対し火炎びん等を用いて不法な攻撃を加えた国際信義
にも反く重大な犯罪行為であり、国際社会における我が国の信用を失墜させた悪質
な犯行というべきであり、更に本件は度重なる謀議を重ね、組織の者らによって敢
行された計画的犯行であること、従来の被告人の組織内での地位ならびに活動経
歴、すなわち被告人はかつてP党Q派R県委員会に所属し、そのさん下のN同盟の
同盟員として、その大衆組織の一つであるF団の副議長の地位にあつたもので、し
かも本件は右F団が中心となり、右N同盟さん下のI団所属の労働者も加わつてな
された犯行の一環として敢行されたもので、被告人が決死隊員に加わらなかつたの
は、組織の温存、建直しの任務を果すという目的があつたからであって、被告人が
原審、当審各公判において供述しているような、被告人の父親の心臓手術に立会う
必要からでは必らずしもなかつたとみられうること、また被告人は右組織のリーダ
ーとして、仲間ないしは同志との連絡もしくは協議の場所として、自己の居住する
D大学E寮三〇五号室を利用していたものであり、更に前記認定説示したような本
件各犯行に至るまでの間にとつたと認められる被告人の言動などからして、被告人
は積極的に本件に加功したものとみられうるし、また自己の居室であつた右E寮三
〇五号室を本件各犯行の実行計画の準備等の場所に使用していたものと窺えること
(なお被告人が謀議に参加するに至った経緯については、原判決がいうように、被
告人が当時居住していた前記E寮三〇五号室が被告人が関知しない間に実行正犯者
らによって謀議の場として選ばれたことによるいわば受動的立場における偶然によ
るものであって、普通にみられる主犯格の者が謀議をこらし、配下の者に実行々為
を分担遂行せしめるといつた型態のものではないなどとは到底いえない。)、また
第三の犯行についても、被告人が隠避したSは悪質な指名手配されていた重罪犯人
であって、被告人も十分これを承知して同人と直接接触し、同人の逃走を容易なら
しめるうえに必要な資金を提供しているもので、その犯情も悪質であるとみられる
こと(なおこの点も原判決がいうように、受動的な立場において行動しているとは
必らずしもいえない。)等に徴すれば、被告人の刑責は決して軽視を許されないも
のといわなければならない。しかし他面、本件各犯行は個人的利益を目的としたも
のではないこと、被告人はなんらの前科を有しないこと、また原判決も指摘してい
るとおり、被告人は本件各犯行後の昭和四六年暮ころから、いわゆるO共闘の活動
のあり方に疑義を抱き、右共闘がT派と連合した後はこれと訣別を決意し、その組
織を離れるに至つたこと、本件後被告人は在学中であったD大学から放校処分を受
けていること、原審において保釈後被告人は一旦妻Uが身を寄せていた同女の実家
である愛媛県宇和島市のV方に身を寄せたうえ、その後間もなく山口県下関市に居
住する母Wの許に帰り、同市内の材木店に勤務していたが、その後右V方にあつて
病気療養中であつた妻Uが、在学中のX大学に復学のため、昭和四八年二月上京し
たのに伴つて被告人も上京し、一時職に就いたのち、更に原判決後の同年六月Y株
式会社に入社し、爾来同社の社員として平凡な市民生活を送つており、その後昭和
四九年六月女児が産まれたが、前記組織との接触はなく、再び本件のような犯行に
出るおそれはないものと認められること、その他記録ならびに当審における事実取
調の結果によつて認められる被告人に有利な諸事情をも参酌したうえ、被告人を懲
役三年に処し、前記情状に鑑み、被告人に対し刑の執行を猶予するのを相当と認
め、刑法第二五条第一項第一号によりこの裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶
予し、原審および当審における訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項
本文を適用して、主文のとおり判決する。
 《なお被告人の本件控訴は前記のように理由がないが、本件は検察官、被告人の
双方から控訴の申立があつたものであつて、検察官の控訴だけを理由があるとし
て、原判決を破棄するのであるが、この場合主文に被告人の本件控訴を棄却する旨
の表示をすべきでないことは、昭和四二年一一月二八日最高裁判所第三小法廷決定
(刑集二一巻九号一、二九九頁)の趣旨に照らし明らかであるから、とくに主文に
おいて右の言渡をしない。》
 (裁判長裁判官 石田一郎 裁判官 菅間英男 裁判官 柳原嘉藤)

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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
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経験不問です。

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写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
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