弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人玉柳実の上告理由第一点(1)、(2)について。
 民法四二四条にいう「債権者ヲ害スル」か否かは、債務者の単なる計数上の債務
超過のみならずその信用等の存否をも考慮して判断すべきものであることは、所論
のとおりである。けれども、所論の点に関し原判決の引用する第一審判決は、昭和
二九年七月当時における債務者訴外Dの積極財産としては、原判示(甲)「E」旅
館の土地建物及び該旅館営業に附随する什器ならびに判示(乙)松山市大字aの不
動産があるのみで、当時の(甲)の土地建物の価格は営業用什器、暖簾代を含めて
三百万円であり、(乙)の不動産の価格は七十万円位であつた事実を認めているの
である。ところで、一般に暖簾というときは、一定の営業から生ずる無形の経済的
利益を指すのであるから、判示「暖簾代」にはいわゆる信用が含まれている趣旨で
あると解される。してみれば、原判決には所論のような審理不尽、条理違反等の違
法はない。論旨は採用できない。
 同(3)について。
 詐害行為の成立には債務者がその債権者を害することを知つて法律行為をしたこ
とを要するが、必ずしも害することを意図しもしくは欲してこれをしたことを要し
ないと解するのが相当である。されば、原判決の引用する第一審判決が「無資力の
債務者訴外Dがその実兄である被告(上告人)のため前示(甲)不動産につき本件
抵当権を設定したことは同訴外人が右設定により原告(被上告人)その他の債権者
の債権を害することを知つてこれをなしたものと推認すべきである」と判示したの
は正当であつて、論旨引用の昭和八年五月二日の大審院判決に示された見解は、当
裁判所の採用しないところである。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 詐害行為取消権は、詐害の原因たる債務者の法律行為を取り消し、受益者又は転
得者がなお債務者の財産を保有するときは直接これを回復し、これを保有しないと
きはその財産の回復に代えてその賠償をさせ、もつて債務者の一般担保権を確保す
ることを目的とするものである。そして、その財産の回復義務は受益者又は転得者
が詐害行為によつて債務者の財産を脱漏させたために生じた責任に基因するもので
あるから、その財産を他人に譲渡したからといつてこれを免れるものではなく、ま
た財産譲渡の結果利得の残存すると否とを問うものでもないと解さなければならな
い。本件は、債務者訴外Dが昭和二九年七月八日原判示(甲)不動産につき上告人
のためになした抵当権の設定が詐害行為であると主張されているものであるところ、
原判決の確定した事実によれば、右不動産については、その後抵当権の実行による
競売の申立がなされ、訴外Fは昭和三〇年三月一日競売代金二百三十一万五千円で
競落許可決定を得た上、先順位抵当債権を本件抵当債権百五十万円とともに譲り受
け、これら譲受債権をもつて競落代金を完納したものであり、本件抵当債権の配当
分は先順位抵当債権額を控除した結果百四万七千四百二十五円となつたというので
あるから、本件抵当権の設定が取り消されるときは、被上告人はその債権元本四十
五万円及びこれに対する遅延損害金を右配当分から総債権者の利益のために弁済を
うけうるのであり、この場合被上告人は訴外Fが悪意であれば、同人から直接右金
員の弁済を請求することができるが、同人に抵当債権を譲渡した上告人に対しても
また利得に代る賠償として右債権額の限度内の金員の支払を求めることができるも
のといわなければならない。されば、これと同趣旨に出でた原判決は正当であり、
論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛