弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人長崎祐三の上告趣意について
 第一は、違憲をいうが、原判決は、所論の如く、国家法益が常に個人法益に優先
する旨の判断をしたものでないことは、その判文上明らかである。したがつて、違
憲の主張は前提を欠き、適法な上告理由とは認められない。
 第二は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に
当らない。
 検察官の上告趣意について
 第一点および第二点中判例違反をいう点は、引用の判例は本件に適切ではないか
ら、前提を欠き、その余の論旨は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑
訴四〇五条の上告理由に当らない。
 なお、弁護人長崎祐三同朴宗根および検祭官の各上告趣意補充書は、いずれも期
限後に提出されたものであるから判断を加えない。
 職権をもつて調査すると、原審は、被告人らが昭和三五年一一月一五日午後八時
三〇分頃佐賀県東松浦郡a町大字bc海岸に不法に入国または上陸したという本件
出入国管理令違反の所為を肯認した上、これを以て刑法三七条一項但書にいわゆる
過剰避難と認定しているが、その前提として、被告人Aの身体、自由に対する現在
の危難について、大要次のように判示している。
 すなわち、昭和三五年三月に行なわれた韓国大統領副統領選挙の結果、李承晩が
大統領に就任したが、その後勃発したいわゆる四月革命によつて李承晩政権が崩壊
し、李承晩を党首とする自由党の要職にあつた被告人Aは、同年五月二三日大統領
副統領選挙法違反の嫌疑で逮捕収監され、次いで同法違反および前記選挙に関する
虚偽公文書作成同行使被告事件により身柄拘束のままソウル地方法院に起訴され、
同年七月一六日糖尿病、高血圧病のため保釈を許可され、B病院において療養中も
引続き審理を受け、判決言渡期日は同年一〇月二五日と指定された。しかし、四月
革命関係者の革命特別立法要求デモに基づき、前記選挙に関し不正行為をなした者
等の処罰を目的とする「民主叛逆者に対する刑事事件臨時処理法(特別法の制定ま
で関連犯罪者の裁判を中止し、拘束期間の延長、釈放者の再拘束ができる旨を規定
する)」が制定公布されたため、同被告人に対する前記被告事件の公判手続も中止
されたほか、憲法の改正および「不正選挙関聯者処罰法」、「特別裁判所および特
別検察部組織法」等の革命立法の制定も迫り、その結果、被告人Aの保釈が取り消
されて再収監された上、いわゆる革命裁判による苛酷な刑罰に処せられることが必
至とみられる状勢となつた。同被告人はそうなれば、病状も悪化するに相違ないと
考え、かかる災難を免れるため国外脱出を決意し、妻の被告人C、秘書の被告人D
と相謀り日本への密入国を企てるに至つたのであり、右のような一連の事態は、刑
法三七条一項にいわゆる被告人Aの身体、自由に対する現在の危難に該当する、と
いうのである。
 しかして、記録によれば、被告人Aが昭和三五年六月韓国ソウル地方法院に大統
領副統領選挙法違反等被告事件について身柄拘束のまま起訴され、保釈を許可され
てB病院において病気療養中も同法院の審理を受けていたことは、原判示のとおり
であるが、いわゆる革命立法は、被告人らが日本に密入国をした同年一一月中旬頃
は、当時既に施行された前記「民主叛逆者に対する刑事事件臨時処理法」を除き、
その他の各法案は、漸くその内容が新聞に報道された程度であつたことが証拠上明
らかである。
 したがつて、被告人Aが原判示のような事情の下において、前記「民主叛逆者に
対する刑事事件臨時処理法」を除く一連のいわゆる革命立法の施行時期が切迫し、
保釈も取り消された上いわゆる革命裁判によつて重刑に処せられることを予想して
いたとしても、これを以て刑法三七条一項にいう現在の危難と断定することはでき
ない。その他記録を仔細に検討しても、被告人Aの身体、自由に対する現在の危難
を肯認できる資料がない。
 されば、被告人Aに対する現在の危難を肯認し、これを前提として被告人らの本
件所為を過剰避難に当るとした原判決には、証拠によらないで事実を認定した違法
ないしは重大な事実誤認があり、これらは判決に影響を及ぼすものであるから、原
判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴四一一条、四一三条本文により、裁判官全員一致の意見で主文のと
おり判決する。
 検察官 玉沢光三郎公判出席
  昭和三九年八月四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    田   中   二   郎
 裁判官石坂修一は海外出張のため署名押印することができない。
         裁判長裁判官    柏   原   語   六

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