弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告人の上告理由は別紙記載のとおりである。
 上告理由第一は、本件土地は昭和二四年八月D土地区画整理組合による土地区画
整理のため換地を受けた土地であるから農地ではなく宅地である旨を主張するので
ある。
 原判決はこの点について、本件土地は昭和二〇年頃から小作地であつて、換地処
分があつても換地は法律上従前の土地とみなされ、換地前の賃借権等は換地後も存
続し、本件買収計画当時耕作されていたのであるから宅地ではなく農地であつた旨
を判示しているのである。しかし本件土地について区画整理が行われた当時は、土
地区画整理は都市計画法一二条によつて「其ノ宅地トシテノ利用を増進スル為」耕
地整理法に従つて行われたのであつて、そして耕地整理法四五条によれば、地方長
官の土地区画整理組合設立の認可があれば、区域内の土地所有者は、その意思如何
にかかわらずその組合員とされ、その土地について区画整理が行われるのである。
換言すれば土地区画整理事業は、国の公権力の作用として、所有者の意思にかかわ
りなく当該土地を宅地とすることが適当と認めて施行されるものといわなければな
らない。かくしてひとたび公擁力をもつて宅地とすることを適当としながら、ひと
しく公権力をもつてこれを農地として買収しようとすることは矛盾があるとのそし
りを免れない。(組合員は組合費の負担を受け換地に際しては減歩されるのが通例
である。かゝる犠牲を強要されながら、後に農地として買収されることは酷と言わ
なければならない。)
 もとより土地区画整理施行区域に編入されたからといつて農地が直ちに買収不適
地になるのではなく、都道府県知事の指定があつてはじめて買収から除外されるべ
きものであることは自作農創設特別措置法五条四号の規定上明らかであり、かつ右
の指定するかしないかは知事の裁量に属するけれども(昭和二八年二月二〇日第二
小法廷判決、民集七巻二号一八〇頁参照)、耕地整理法三一条によれば、規約に別
段の規定のない限り、工事完了後でなければ換地処分はできないのであつて、本件
土地について換地が行われた以上、一応宅地化の工事も完了しているものと推測す
るに難くないのである。自作農創設特別措置法二条一項は農地とは耕作の目的に供
される土地をいう旨を規定しているけれども、同法の立法趣旨にかんがみ、当裁判
所の判例は、現に耕作されている土地でも必ずしも常に農地と認めなければならな
いものとはしていないのである(昭和二八年五月二八日第一小法廷判決民集七巻五
号五八六頁参照)。本件土地について、前述のように換地処分が行われた事実が認
められ、しかも前述のように土地区画整理事業が公権力の作用として行われるもの
であるにかかわらず、原判決が本件土地には古くから賃借権者があり現に耕作され
ている故をもつて直ちに農地と認定したのは法令の解釈を誤つた違法があるものと
いわなければならない。論旨が本件土地が換地を受けたため宅地となつた旨を主張
するのは理由があり、他の論点に関して判断を加えるまでもなく原判決は破棄を免
れず、そして、本件買収計画の適否を判断するについては、さらに、本件土地が右
計画当時換地処分が既に行われていたにもかかわらずなお換地前と同様に農地と認
めるべき状態にあつたかどうかを審理するを相当と認め本件を原裁判所に差戻すこ
ととし、裁判官一致の意見で民訴四〇七条一項により主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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