弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人木村一八郎の上告理由第一点および第二点について。
 論旨は、原判決が、本件選挙に使用された補充選挙人名簿につき、それに登録さ
れた選挙人の登録申請書の記載事項に不備、不実があつたとしても、その申請は無
効ではなく、右名簿の作成手続に違法はない旨を判示したのを、選挙法令の解釈を
誤つものといい、また、事実右名簿の調製にあたり登録資格の審査の行なわれなか
つたことを理由として、右名簿を無効と主張する。
 補充選挙人名簿の登録については、基本選挙人名簿と異なり、申請主義をとつて
いるが、それは申請をまつて申請者につき資格を審査して登録するというだけのこ
とであつて、その資格審査が当該市町村選挙管理委員会の職権によつて独自に行な
われることは、基本選挙人名簿の登録の場合と同様であり、一定の記載事項を備え
た登録申請書の記載によつてのみ審査しなければならないものではない。従つて、
所定の記載事項に不備、不実のある申請書による登録申請でも、申請者の申請意思
の表示と認めうるものであれば、これを無効と解すべきではなく、当該市町村選挙
管理委員会がそのような申請に基づいて補充選挙人名簿を調製したとしても、右作
成の手続に違法のないことは、原判示のとおりである。また、本件補充選挙人名簿
の調製にあたつて登録申請書につき資格審査のなされなかつた事実は、原審におい
て主張されなかつたところであるのみならず、そのような事実のないことは、その
申請者中登録を拒否された者も相当数存すること(論旨によれば、申請者三五五名
中登録された者三一六名)からも窺われ、論旨は、結局、右名簿の調製にあたつて
資格審査が杜撰であつたことを非難する以上のものとは認めがたい。しかも、補充
選挙人名簿も、また、法定の縦覧手続を経て名簿の確定日に至れば、たとえ資格審
査が杜撰であつたため、名簿の内容に誤載があつたとしても、名簿そのものは有効
に成立するものと解するのを相当とする。してみれば、補充選挙人名簿の無効を本
件選挙の無効原因とする上告人の主張を排斥した原判決の判断は、正当といわなけ
ればならない。
 論旨は、いずれも理由がない。
 同第三点および第四点について。
 論旨は、原判決が、鑑定人Dの鑑定の結果を採用せず、投票のすりかえを推認し
うべき諸事実を看過し、本件選挙に選挙事務従事者Eによる投票の偽造およびすり
かえのあつた旨の上告人の主張を排斥したこと、その他町選挙管理委員会の職員が
候補者Fに有利に、同Gに不利に選挙事務の取扱いをした事実を認定しなかつたの
を失当として非難する。
 しかし、原判決は、前示鑑定の結果と証人Eの証言を併せ考え、かつ挙示の各証
拠に基づき投票のすりかえ等の不正行為の行なわれたと認むべき余地のない旨詳細
説示しているのであり、その他の事実認定についても所論の違法は認めがたい。論
旨は、ひつきよう、原審の専権に属する採証ないし事実認定を非難するに帰し、す
べて採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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