弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 第1 上告代理人浦田益之の上告理由について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条
1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,理由の不備・食違い
をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,上記各項に規定す
る事由に該当しない。
 第2 上告代理人浦田益之の上告受理申立て理由について
1 本件は,被上告人が,上告人に対し,運転手付き建設重機の借上げの代金等及
びこれに対する遅延損害金(以下「本件代金等」という。)の支払を求める事案で
ある。
 2 本件訴訟の経緯は,次のとおりである。
 (1) 第1審(平成15年11月28日判決言渡し)は,上告人に対し,被上告
人への本件代金等として123万6564円及びこれに対する訴状送達の日の翌日
である平成12年10月22日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による
遅延損害金の支払を命じた。
 (2) 原審において,上告人は,次のとおり主張した。平成15年12月3日,
岐阜南税務署の担当職員(以下「担当職員」という。)は,被上告人が滞納してい
た源泉所得税等を徴収するため,第1審判決によって上告人が支払を命じられた被
上告人の上告人に対する本件代金等債権を差し押さえたことから,上告人は,同月
16日,担当職員に対し,123万6564円及びこれに対する平成12年10月
22日から平成15年12月16日まで年6分の割合による遅延損害金23万37
61円の合計である147万0325円を支払った。
 (3) そして,原審において,上告人は,担当職員が作成した上告人あての平成
15年12月3日付け債権差押通知書(以下「本件債権差押通知書」という。)及
び同月16日付け領収証書(以下「本件領収証書」という。)を書証として提出し
,これらの取調べがされた。本件債権差押通知書には,差押債権として,第1審で
認容された本件代金等の遅延損害金である「金1,236,564円に対する平成
12年10月22日から支払済みまで年6分の割合による金員」との記載が,本件
領収証書には,担当職員が被上告人に係る差押債権受入金として147万0325
円を領収した旨の記載がある。なお,本件訴訟において,本件代金等の元本債権が
差し押さえられた旨の記載がされた債権差押通知書等の書証の提出はない。
 3 原審は,本件代金等の額を122万6745円及びこれに対する平成12年
10月22日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金である
と認定した上,上告人の上記2(2)の主張につき,上告人が,担当職員に対し,本
件代金等として123万6564円及びこれに対する同日から平成15年12月1
6日まで年6分の割合による金員の合計額である147万0325円を支払ったこ
とが認められるが,担当職員が差し押さえたのは,本件代金等債権のうち遅延損害
金債権のみであったことが明らかであるとし,上記支払は,差押債権である123
万6564円に対する平成12年10月22日から平成15年12月16日まで商
事法定利率年6分の割合による遅延損害金である23万3761円に係るものにつ
いてのみ弁済の効果が生じ,その余の123万6564円については,弁済の効果
を主張することはできないとした。その結果,原審は,上告人に対し,上記有効な
弁済額23万3761円を本件代金等の元本122万6745円に対する平成12
年10月22日から平成15年12月16日まで商事法定利率年6分の割合による
遅延損害金である23万1854円に充当し,その残額1907円を上記元本に充
当した残元本122万4838円及びこれに対する上記支払の日の翌日である同月
17日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を命じ
た。
 4 しかしながら,原審において,上告人は,第1審判決によって上告人が支払
を命じられた被上告人の上告人に対する本件代金等債権を,平成15年12月3日
に担当職員が差し押さえたと主張し,同日付けの本件債権差押通知書及び同月16
日付けの本件領収証書を書証として提出していたことに照らすと,本件債権差押通
知書につき,本件代金等債権のすべてが差し押さえられた旨の記載があるものと誤
解していたことが明らかである。そして,原審は,上告人が,担当職員に対し,本
件代金等として123万6564円及びこれに対する平成12年10月22日から
平成15年12月16日まで年6分の割合による金員の合計額147万0325円
を支払ったことを認定するところ,本件領収証書によれば,担当職員は,被上告人
に係る差押債権受入金として同金額を領収しているものである。このような事情の
下においては,原審は,当然に,上告人に対し,本件代金等の元本債権に対する担
当職員による差押えについての主張の補正及び立証をするかどうかについて釈明権
を行使すべきであったといわなければならない。原審がこのような措置に出ること
なく,同差押えの事実を認めることができないとし,上告人の同債権に対する弁済
の主張を排斥したのは,釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず,原審
の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れな
い(なお,原審が,本件代金等を算定するに当たり,上告人が被上告人のために立
替払したと主張する軽油等の代金額を被上告人の債権額として加算していることに
も問題がある。)。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記部分を原審に差し戻
すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 徳治 裁判官 島
田仁郎 裁判官 才口千晴)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛