弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小泉英一上告趣意第一点について。
 原判決はその挙示する証拠及びそれらの証拠によつて認定した論旨摘録の如き間
接事実を綜合して被告人等の判示犯行事実を認定したものである。論旨は被告人等
がA某と共謀した事実を認むべき証拠はないと主張するのであるが、原判旨は、「
被告人をはじめA某等数名のものは本件犯行の現場でBとCとの間に喧嘩口論の始
まつた際、それぞれCと友人関係があり且つB及びその配下のものが被告人等に暴
行を加えようとする気配があつたので、茲に相共力してB等に対し暴行をしようと
決意して、判示の如き暴行傷害を加えた」というのである。そしてこの原審の事実
認定は(所論間接事実の認定をも含めて)その証拠の内容に照らし、これを肯認す
るに難くないのである。裁判所が証拠により或る間接事実を認め、次いでその事実
に基ずき直接事実を推認したとしても何等証拠法則に違背するものでないことは多
言を要しないところであり(昭和二三年(れ)七九九号同年一一月一六日第三小法
廷判決集二巻一二号一五四九頁参照)、また、伝聞証拠と雖も旧刑事訴訟法の下に
おいてはその間接的証拠なるの故を以て直にその証拠能力又は証拠力を否定すベき
でないこと勿論であるから(昭和二四年(れ)二三六五号同年一二月三日第三小法
廷判決集三巻一二号一八七〇頁参照)、原判決には所論のような違法はない。論旨
は理由なきものである。
 同第二点について。
 記録によれば、原審が弁護人のなした証人D及びBの喚問申請を却下したことは
所論の通りである。しかし、その立証せんとした所論の事項に関しては原審におい
て既に審理をなしていることが窺われるのであつて、右証拠申請を却下したからと
て、必ずしも不合理に被告人のためにする立証の途を阻止したものとは認められな
い。所論は事実審たる原審がその裁量権の範囲内で適法になした証拠調の限度に関
する裁定を非難するに帰着し採用に値しない。
 同第三点について。
 証人訊問に関する訴訟費用を刑の言渡を受ける被告人に対し負担せしめたとして
も、憲法三七条二項に違背するものでないと解すべきことは当裁判所大法廷の判例
とするところである(昭和二三年(れ)三一六号同年一二月二七日大法廷判決集二
巻一四号一九三四頁参照)。右と反対の見地に立つ論旨には賛同することはできな
い。
 よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年三月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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