弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
       理   由
 上告代理人田邊匡彦,同安部千春,同林健一郎,同幸田雅弘,同梶原恒夫,同蓼
沼一郎,同仁比聰平の上告受理申立て理由(同第六を除く。)について
1 原審の適法に確定した事実関係等によれば,(1) 本件各出向命令は,被上
告人が八幡製鐵所の構内輸送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務を協力会社であ
る株式会社日鐵運輸(以下「日鐵運輸」という。)に業務委託することに伴い,委
託される業務に従事していた上告人らにいわゆる在籍出向を命ずるものであるこ
と,(2) 上告人らの入社時及び本件各出向命令発令時の被上告人の就業規則に
は,「会社は従業員に対し業務上の必要によって社外勤務をさせることがある。」
という規定があること,(3) 上告人らに適用される労働協約にも社外勤務条項
として同旨の規定があり,労働協約である社外勤務協定において,社外勤務の定
義,出向期間,出向中の社員の地位,賃金,退職金,各種の出向手当,昇格・昇給
等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられ
ていること,という事情がある。
 【要旨】以上のような事情の下においては,被上告人は,上告人らに対し,その
個別的同意なしに,被上告人の従業員としての地位を維持しながら出向先である日
鐵運輸においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる本件各出向命令を
発令することができるというべきである。
 本件各出向命令は,業務委託に伴う要員措置として行われ,当初から出向期間の
長期化が予想されたものであるが,上記社外勤務協定は,業務委託に伴う長期化が
予想される在籍出向があり得ることを前提として締結されているものであるし,在
籍出向といわゆる転籍との本質的な相違は,出向元との労働契約関係が存続してい
るか否かという点にあるのであるから,出向元との労働契約関係の存続自体が形が
い化しているとはいえない本件の場合に,出向期間の長期化をもって直ちに転籍と
同視することはできず,これを前提として個別的同意を要する旨をいう論旨は,採
用することができない。
2 本件各出向命令が権利の濫用に当たるかどうかについて判断する。
 原審の適法に確定した事実関係等によれば,被上告人が構内輸送業務のうち鉄道
輸送部門の一定の業務を日鐵運輸に委託することとした経営判断が合理性を欠くも
のとはいえず,これに伴い,委託される業務に従事していた被上告人の従業員につ
き出向措置を講ずる必要があったということができ,出向措置の対象となる者の人
選基準には合理性があり,具体的な人選についてもその不当性をうかがわせるよう
な事情はない。また,本件各出向命令によって上告人らの労務提供先は変わるもの
の,その従事する業務内容や勤務場所には何らの変更はなく,上記社外勤務協定に
よる出向中の社員の地位,賃金,退職金,各種の出向手当,昇格・昇給等の査定そ
の他処遇等に関する規定等を勘案すれば,上告人らがその生活関係,労働条件等に
おいて著しい不利益を受けるものとはいえない。そして,本件各出向命令の発令に
至る手続に不相当な点があるともいえない。これらの事情にかんがみれば,本件各
出向命令が権利の濫用に当たるということはできない。
 また,上記事実関係等によれば,本件各出向延長措置がされた時点においても,
鉄道輸送部門における業務委託を継続した被上告人の経営判断は合理性を欠くもの
ではなく,既に委託された業務に従事している上告人らを対象として本件各出向延
長措置を講ずることにも合理性があり,これにより上告人らが著しい不利益を受け
るものとはいえないことなどからすれば,本件各出向延長措置も権利の濫用に当た
るとはいえない。
3 以上のとおりであるから,所論の点に関する原審の判断は,正当として是認す
ることができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 亀山継夫 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 滝井繁
男)

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