弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主         文
1 被告は,原告に対し,171万5237円及びうち168万9547円に対す
る平成15年6月27日から支払済みまで年21.9パーセントの割合による金員
を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決主文第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
被告は,原告に対し,168万9547円及びこれに対する平成15年5月21日
から支払済みまで年21.9パーセントの割合(年365日の日割計算)による金
員を支払え。
第2事案の概要
1 請求原因の要旨
貸金業者である原告は,平成14年6月21日,訴外Aとの間で金銭消費貸借契約
を締結し,同月25日,Aに180万円を貸し渡した(以下「本件金銭消費貸借」
という)。同月24日,被告は原告に対して,Aの債務を根保証した(以下「本件
根保証契約」という)。
本件は,原告が被告に対し,保証債務の履行を求めている事案であるが,原告は,
支払済みの金員についてはその都度貸金業法43条が適用されるとの主張を併せて
している。
2 前提となる事実
以下の事実は当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨によって認定するこ
とができ,この認定の妨げとなる証拠はない。
(1) 被告は,貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)原告は,業としてAとの間で金銭消費貸借契約を締結し,平成14年6月21
日,以下の内容が記載された借入証書を作成した(甲2)。
貸付金額   180万円
支払方法  平成14年7月から毎月26日に元利均等5万6580円を支払う
(なお最終支払時は5万6451円)
弁済期限   平成19年5月26日
利率     年28.0パーセント(年365日の日割計算)
遅延損害金  年28.0パーセント(年365日の日割計算)
特約     Aが一回でも支払いを遅滞したときは,当然に期限の利益を喪失す
る。
(3) 平成14年6月25日,原告は,Aに対し,180万円を交付した(甲8)。
(4) 原告は,Aに対し,本件金銭消費貸借契約後遅滞なく,貸金業法17条1項所
定の書面を交付した(争いはない)。
(5) 原告は,被告に対し,平成14年6月24日に本件根保証契約の内容を説明す
る書面(貸金業法17条2項)を交付した(甲16,17)。
(6) 原告は,被告に対し,平成14年6月24日に本件根保証契約の内容を明らか
にし,かつ本件金銭消費貸借関係の内容を明らかにする書面(貸金業法17条3,
4項)を交付した(甲15)。
(7) 原告は,Aから別紙顧客台帳記載のとおりの弁済を受けた都度,遅滞なく貸金
業法18条1項所定書面を同人に交付した(甲4の1ないし10,甲7の1ないし
10)。
(8) Aは,平成14年8月26日に支払うべき元利金の返済を怠った(この認定を
覆すに足る証拠は,被告から提出されていない。)。
3 被告の主張
(1) 平成14年6月24日以前において,被告は原告からの電話で保証内容の説明
を受け,保証人となることを承諾した。したがって本件根保証契約は平成14年6
月24日以前に口頭で成立しており,被告は,本件根保証契約成立前に保証契約の
内容を説明する書面の交付を受けていない。甲2,15,16,17号証の各書面
は本件根保証契約成立後,熊本空港まで訪れた原告の担当者と被告との間で作成さ
れたものであり,被告は,本件根保証契約成立前に交付されなければならない本件
根保証契約の内容を説明する書面(甲16,17)を,契約成立後に受領したので
ある。
(2) 本件金銭消費貸借に対する返済は,Aの銀行口座からの自動引落によってなさ
れており,このような支払方法は,Aが元本,利息への充当額を知らないままなさ
れることから,Aが利息として任意に支払ったものとは認められない。
(3) Aが平成14年8月26日に支払うべき元利金の返済を怠ったとしても,原告
はその後も月賦による返済を異議なく受領していたから,平成14年8月26日に
期限の利益を喪失したとの主張は信義則に反する。
第3 当裁判所の判断
1本件根保証契約の成立時期
被告は,すでに原告からの電話において根保証契約が成立したと主張する。確かに
根保証契約は,当事者の意思の合致のみで成立する。しかしながら,諾成契約であ
っても,契約当事者の意思を慎重に確認し後日の紛争を回避するため契約書面を作
成することは取引社会において通常行われており,かつ望ましいものといわなけれ
ばならない。本件においても,電話で根保証契約の意思を確認した原告が,平成1
4年6月24日に熊本まで赴き,被告の根保証人となるべき意思を最終確認し,本
件根保証契約の内容を説明し,本件根保証契約を締結し,17条1,2項書面を交
付したと解するのが相当である。
2 自動引落との主張について
本件貸付に対する返済がAの口座からの自動引落によりなされたものと認めるに足
る証拠はなく,逆に甲5号証の1ないし10によればAが振込送金をしていたこと
が認められる。被告の主張はその前提を欠き理由がない。
3 期限の利益を喪失していないとの主張について
借入証書(甲2)には,債務者が一回でも支払いを遅滞したときは,当然に期限の
利益を喪失する旨の特約があり(甲2第5条1項),かつ,Aが平成14年8月2
6日の支払を怠ったことが認められる。しかしながら,同月28日の返済の際,原
告は,次回お支払日として平成14年9月26日を指定し,かつ次回請求額の内訳
として遅延損害金ではなく利息額と明記していることが認められる(甲4の2)。
しかも,このような指定及び明記は,被告が弁済をした都度なされているのである
(甲4の3ないし10)。してみると,原告は,上記特約にもかかわらず,Aの弁
済の都度期限の利益を再度付与していたものと解するのが相当である。そしてAは
平成15年5月20日に最終の弁済をしており,その際原告は同年6月26日を次
回支払日と指定して
いるのだから,Aが期限の利益を失ったのは,平成15年6月26日を経過した時
点と解すべきこととなる。
4 21.9パーセントの遅延損害金を年365日の日割計算として請求している
ことについて
出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条は閏年の場合の特則
を設けているが,利息制限法にはこのような特則はない。したがって,年365日
の日割計算とすることは利息制限法4条,1条に違反することとなる。
5 Aが期限の利益を失った日及び年365日の日割計算の点を除き,原告の請求
はすべて認めることができる。よって,原告の請求は,168万9547円並びに
これに対する平成15年5月21日から同年6月26日まで利息制限法の範囲内で
ある年15パーセントの割合による利息2万5690円(1,689,547×0.15÷365×
37=25690)及び168万9547円に対する同年6月27日から支払済みまで年2
1.9パーセントの割合による遅延損害金を支払えとの限度で理由があるので主文
のとおり判決する。
名古屋簡易裁判所
裁 判 官   下   村   資   樹
別紙省略

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