弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は、被告人の負担とする。
         理    由
 被告人本人の上告趣意について。
 所論は事実審の裁量に属する刑の量定を非難するに止まり刑訴四〇五条の上告適
法の理由に該当しない。また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは
認められない。
 弁護人前野順一の上告趣意第一点第二点について。
 所論第一は控訴審が覆審であつて事件の実体について真実発見のたあ再度事実の
取り調べをなすべきことを前提として主張するものである。しかし、現行法上控訴
審はいわゆる事後審として認められているのであつて控訴審における事実の取調は、
第一審判決の当否を判断するに必要な範囲にかぎられるのであり、その必要の有無
は刑訴三九三条一項但書の場合を除き裁判所の裁量に委ねられているのである。そ
れ故所論第一はその前提において採用できない、そして裁判の審級制度については、
憲法同局八一条の場合以外は法律を以て適当に定あ得るものと解すべきことは、当
裁判所判例の屡々示したところである。されば現行刑訴法が控訴審を覆審とせず事
後審とし、前示の如く規定したからとて、これを目して違憲であるということはで
きない。論旨第二の理由なきことは既にこの点において明白である。
 よつて同四〇八条、一八一条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判
決する。
  昭和二六年九月六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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