弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主          文
1 本件申立てをいずれも却下する。
2 申立費用は申立人の負担とする。
事実及び理由
第1 申立ての趣旨
1 被申立人が,平成15年5月2日付けでした,申立人の平成8年度決算分ない
し平成10年度決算分に係る貸借対照表のうち「中科目名,小科目名,当該科目の
金額及び注記並びに固定資産明細表,借入金明細表及び基本金明細表」以外の部分
を開示するとの決定は,本案事件の判決が確定するまで,その効力を停止する。
2 被申立人が,平成15年5月2日付けでした,申立人の平成11年度決算分な
いし平成13年度決算分に係る資金収支計算書,資金収支内訳表,人件費支出内訳
表,消費収支計算書,消費収支内訳表及び貸借対照表のうち「中科目名,小科目
名,当該科目の金額(補助金収入のうち国及び地方公共団体からの補助金に係る小
科目名及びその金額を除く。)及び注記並びに固定資産明細表,借入金明細表及び
基本金明細表」以外の部分を開示するとの決定のうち,「補助金収入のうち国及び
地方公共団体からの補助金に係る小科目名及びその金額」以外を開示する部分は,
本案事件の判決が確定するまで,その効力を停止する。
第2 事案の概要
 本件は,申立人が被申立人に対し愛知県私立学校経常費補助金等の交付を申請し
た際に添付した申立人の計算書類について,第三者から愛知県情報公開条例に基づ
き開示請求を受けた被申立人がその一部を開示する旨の決定をしたところ,その大
部分を不服とする申立人が,当該決定部分の取消しを求める本案事件に係る訴えの
提起に付随して,その判決確定まで同部分の効力の停止を申し立てた事案である。
1 前提となる疎明事実(末尾に当該事実を一応認める根拠となる疎明資料等を記
載する。)
(1) 申立人の被申立人に対する補助金等交付申請
 申立人は,愛知県私立学校経常費補助金交付要綱及び愛知県私立高等学校授業料
軽減借入金償還(債務負担行為)交付要綱に基づき,被申立人に対し,平成11年
8月1日(後記のとおり,この日を境として,行政文書公開に関する条例の適用が
異なっている。)前までに,申立人の平成8年度決算分ないし平成10年度決算分
に係る貸借対照表(以下「本件文書1」という。)等を,平成11年8月1日以降
に,申立人の平成11年度決算分ないし平成13年度決算分に係る資金収支計算
書,資金収支内訳表,人件費支出内訳表,消費収支計算書,消費収支内訳表及び貸
借対照表(以下「本件文書2」といい,本件文書1と併せて「本件文書」とい
う。)等をそれぞれ添付して,補助金等の交付を申請し,被申立人はそのころその
決裁の手続を終えた(審尋
の結果)。
(2) 本件文書の開示請求
 A学園B高等学校教職員組合執行委員長C(以下「本件開示請求者」という。)
は,平成15年3月26日,愛知県情報公開条例(平成12年3月28日愛知県条
例第19号。疎甲1。以下「新条例」という。)5条に基づき,同6条1項所定の
方法により,「学校法人A学園(申立人)の平成3年度から平成5年度までおよび
平成11年度から平成14年度までの資金収支計算書,消費収支計算書ならびに平
成3年度から平成14年度までの貸借対照表(高等学校分),但し,平成14年度
に関しては決算見込みとする。」の開示を請求した。そこで,被申立人が同月31
日,電話で本件開示請求者に対し,開示請求の対象文書を確認したところ,資金収
支計算書及び消費収支計算書には学校・学部等別の内訳表を含み,貸借対照表は法
人全体分と高等学校
分の両方の開示を請求する趣旨であるとの回答がされた(疎甲12及び13の各
1・2,疎乙1の1・2,2。以下,上記請求を「本件開示請求」という。)。
(3) 本件文書の一部開示決定
 被申立人は,平成15年4月8日,本件開示請求の対象となる文書のうち,申立
人の平成3年度分から平成13年度分までの貸借対照表(高等学校分)並びに平成
14年度決算見込分の資金収支計算書,消費収支計算書(各内訳表を含む。以下,
断らない限り同じ。)及び貸借対照表(法人全体分及び高等学校分)については被
申立人において取得していないため,また,平成8年度以前に取得した申立人の平
成3年度分から平成5年度分までの資金収支計算書及び消費収支計算書並びに平成
3年度分から平成7年度分までの貸借対照表(法人全体分及び高等学校分)につい
ては保存年限経過後の廃棄による不存在のため,いずれも不開示とすると決定し,
同日付けでその旨を本件開示請求者に通知する一方,残る対象文書(申立人の平成
11年度から平成1
3年度までの資金収支計算書及び消費収支計算書並びに平成8年度から平成13年
度までの貸借対照表(法人全体分))につき,新条例12条2項に基づき,開示又
は不開示の決定をするための期間を同年5月9日まで30日間延長するとともに,
同条例15条1項に基づき,申立人に対し,同年4月23日までに意見を提出する
よう求めた(疎乙2)ところ,申立人は,同月10日,「学園内のB高等学校教職
員組合が,学園の財務資料を充分な理解がないまま勝手に解釈して悪用する虞があ
るため」として,その開示に反対する旨の意見書を提出した(疎乙3)。
 これを受けて,被申立人は,本件文書を,新条例附則(平成12年3月28日公
布)9項,愛知県公文書公開条例の一部を改正する条例(平成11年7月16日愛
知県条例第42号。疎甲2)附則2項,同条例による改正前の愛知県公文書公開条
例(昭和61年3月26日愛知県条例第2号。疎甲3。以下「旧々条例」とい
う。)2条2項により,同条例6条が適用となる本件文書1と,新条例7条が適用
となる本件文書2とに区分して特定した上,平成15年5月2日,本件文書1のう
ち「貸借対照表の中科目名,小科目名,当該科目の金額及び注記,固定資産明細
表,借入金明細表及び基本金明細表」(以下「本件不開示情報1」という。)は旧
々条例6条1項3号に該当し,本件文書2のうち「資金収支計算書,資金収支内訳
表,人件費支出内訳表,消
費収支計算書,消費収支内訳表及び貸借対照表の中科目名,小科目名,当該科目の
金額及び注記(補助金収入のうち国及び地方公共団体からの補助金に係る小科目名
及びその金額を除く。),固定資産明細表,借入金明細表及び基本金明細表」(以
下「本件不開示情報2」という。)は新条例7条3号イに該当するとして,これら
の部分を不開示とする一方で,本件文書1のうち本件不開示情報1以外の部分(以
下「本件情報1」という。)及び本件文書2のうち本件不開示情報2以外の部分
(以下,そのうち「補助金収入のうち国及び地方公共団体からの補助金に係る小科
目名及びその金額」部分を「本件情報3」と,それ以外の部分を「本件情報2」と
いい,本件情報1と本件情報2を併せて「本件情報」という。)を開示すると決定
し(以下,それぞれ「
本件開示決定1」「本件開示決定2」という。),同日付けでその旨を本件開示請
求者及び申立人にそれぞれ通知した(疎甲13の1・2,疎乙4)。
(4) 申立人の異議申立てとその帰すう
 申立人は,本件開示決定2のうち本件情報3を開示する旨の部分には服する一方
で,本件開示決定1及び本件開示決定2のうち本件情報2を開示する旨の部分(以
下,まとめて「本件各開示決定」という。)を不服として,平成15年5月19日
付けで,行政不服審査法6条1号に基づき,被申立人に対し,本件各開示決定の取
消しをそれぞれ求める旨の異議申立て(以下「本件各異議申立て」という。)とと
もに,その執行停止の申立てをしたため,被申立人は,同月21日,同法48条の
準用する同法34条3項(疎乙5の関係箇所に「第34条第2項」とあるのは明ら
かな誤記と認める。)に基づき,本件各異議申立てに対する決定のあるまでの間,
本件各開示決定の執行を停止するとともに,新条例19条に基づき,愛知県情報公
開審査会に対し,本
件各開示決定の当否を諮問し,同日付けでこれらの旨を本件開示請求者に通知した
(疎乙5)。なお,本件情報3については,本件開示請求者の求めにより,同年6
月12日,その写しが同人に郵送された(疎乙6)。
 愛知県情報公開審査会は,同年12月2日,被申立人に対し,本件各開示決定は
妥当である旨答申し,被申立人はこれを受けて,同月5日付けで,本件各異議申立
てを棄却する旨決定する(疎甲5,6,7の1・2)とともに,新条例19条3項
の準用する同条例15条3項後段に基づき,その旨及び本件情報の開示は同月22
日以降写しの郵送により実施する旨を申立人に通知した(疎甲12の1・2)。
(5) 本案事件に係る訴えの提起等
 申立人は,平成15年12月8日,本件各開示決定の取消しを求める趣旨の本案
事件に係る訴えを提起するとともに,本件申立てをした(当裁判所に顕著な事
実)。
2 本件の争点と当事者の主張(要旨)
 本件の争点は,本件各開示決定についていわゆる広義の執行停止を申し立てた本
件申立てに,行政事件訴訟法25条2項の積極要件が存し,かつ,同条3項の消極
要件が存しないか否かであって,申立人及び被申立人の主張(要旨)は,以下のと
おりである。
(申立人の主張)
(1) 本件情報の法人等情報該当性と回復の困難な損害の存在
 新条例7条3号イは,「法人…に関する情報…であって,」「公にすることによ
り,当該法人…の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるも
の」を不開示情報としているところ,その解釈及び運用は,事業者の生産・技術・
販売上のノウハウ,経理,人事等の内容で,公にすることにより,事業者の事業活
動が損なわれると認められる情報のほか,事業者の名誉侵害,社会的評価の低下と
なる情報や,結社の自由を保障し,組織秩序を維持するため,社会通念上,団体内
部事項とされる情報のように,公にすることにより団体の自治に対する不当な干渉
となる情報等,必ずしも競争上の概念でとらえられないものを含むものである。
 大科目である本件情報は,経理情報に当たり,中・小科目を統括したものとして
最も重要な科目であるところ,財務分析はこれに記載された金額でされるから,本
件情報から学校法人である申立人の規模,資金調達,資金の流れ,財産の状況,支
払能力,信用能力,収支,支出の実態などの経営状況や,学校運営の状況,方針等
が明らかに読み取れ,公にすることにより申立人の事業活動が損なわれるものであ
ることは明らかである上,単年度決算書類の開示にとどまらず,連続年度の決算書
類を開示することにより,申立人の経理内容等が一層判明するものとして,上記の
不開示情報に当たる。また,学校法人に対して多額の公的助成がされていることだ
けから,部門別及び学部・学科別の財務状況を記載した資金収支内訳表及び消費収
支内訳表についても
情報の開示が社会的に要請されているとは到底いえず,「私立大学の経営に関する
指針」にも,その開示については特に定められていない上,この内訳表まで開示し
た先例も存在しない。
 本件情報が開示されることにより,申立人の設置する高等学校の赤字が判明する
ところ,これまでにも教職員らが組合活動の一環として,経理情報を曲解して宣伝
してきており,本件情報の開示により,申立人の名誉は著しく侵害され,社会的評
価は低下して回復し難いものとなり,少子化による厳しい大学経営の現状と相まっ
て,申立人に計り知れない損害を生じさせるほか,団体内部事項が流出する結果,
結社の自由の侵害も招くものである。
 名誉の保護,団体結社の自由,財産権行使の自由等の法人の権利は,安易に公共
の要請に譲歩してはならない性質のものであり,本件各開示決定は,学校法人の公
共性を過度に強調し,新条例7条3号イの解釈を誤るものである。
(2) 公共の福祉への重大な影響の不存在
 これら申立人の被る不利益及び損害に比して,本件開示請求者において本件情報
の開示を本案事件の判決まで延ばされた場合に重大な不利益を受ける事情はなく,
その開示を求める差し迫った必要性もないところ,その開示の執行停止によって,
公共の福祉に重大な影響を及ぼすことがないことはいうまでもない。
(3) まとめ
 よって,申立人は,被申立人に対し,本件各開示決定の効力の停止を求める。
(被申立人の意見)
(1) 本件情報の不開示事由非該当性と回復の困難な損害の不存在
 本件文書のうち,中科目及び小科目,並びに貸借対照表の小科目についての更に
詳細な事項である固定資産明細表,借入金明細表及び基本金明細表については,学
校法人である申立人の経営状態又は財産状態等の細部まで表すものであるから,当
該科目を公開すれば,その経営方針や経営戦略をうかがい知ることができ,その権
利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるが,本件各
開示決定において開示するとした本件情報は,大科目に係る部分であるところ,大
科目については,これが公開され,学校法人の経営規模,資産運営規模,収支の均
衡状態等を把握することができたとしても,更に中科目,小科目までを分析しなけ
れば,その経営方針や経営戦略を知ることはできないから,本件各開示決定により
申立人の権利,競争
上の地位その他正当な利益を害するおそれはない。
 よって,申立人に回復の困難な損害が発生するおそれはなく,本案も理由がない
とみえるというべきである。
(2) 公共の福祉への重大な影響
 情報公開請求権は,憲法を淵源として条例上認められた権利であって,これを停
止すれば公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。また,一度行政不服審査
法による執行停止により不利益を受けた本件開示請求者が,更に行政事件訴訟法に
よる執行停止のため重ねて不利益を受けるのも公共の福祉に重大な影響を及ぼすお
それがある。
(3) まとめ
 よって,本件申立てはいずれも却下されるべきである。
第3 当裁判所の判断
1 法人等情報該当性の判断基準
 まず,本件申立ての「本案について理由がないとみえる」(行政事件訴訟法25
条3項)か否かを検討するに,申立人は,本件情報1及び本件情報2がそれぞれ旧
々条例6条1項3号及び新条例7条3号イにいう,「法人…に関する情報…であっ
て,…公開する(公にする)ことにより,当該法人…の(権利,)競争上の地位そ
の他正当な利益を害すると認められる(おそれがある)もの」(丸括弧内は新条例
の規定。以下,旧々条例の規定と新条例のそれとを区別せずに「法人等情報」とい
う。)に該当する旨主張する(旧々条例について明確な主張がないが,新条例につ
いてと全く同旨の主張をする意思が明らかである。)。
 この点,ある情報が法人等情報に当たるためには,当該情報が開示されることに
よって当該法人等の(権利,)競争上の地位その他正当な利益が害されることを要
することは旧々条例6条1項3号及び新条例7条3号イの文理上も明らかであり,
ここにいう「正当な利益が害される」とは,当該法人等が主観的に知られたくない
と考えるだけでは足りず,開示によって客観的に生ずることの見込まれる不利益を
当該法人等に帰せしめることが社会通念上も不当視されることを要するものと解さ
れる(最高裁判所平成13年11月27日第三小法廷判決・集民203号783頁
参照)。
2 本件情報についての検討
 これを本件についてみると,本件情報は,申立人の決算貸借対照表並びに決算資
金収支計算書・同内訳表・人件費支出内訳表及び決算消費収支計算書・同内訳表の
うち,各中科目,小科目名及びその金額並びに固定資産明細表,借入金明細表及び
基本金明細表以外の部分の情報であり,換言すれば,これら文書の大科目名及びそ
の金額であると解される(なお,人件費支出内訳表については「計」欄のみが大科
目部分に当たる。疎甲5,6,7の1・2。)ところ,本件情報を用いて申立人,
又は各内訳表によってその設置する各学校・学部別の概括的な財務状態を認識する
ことは可能であると一応認められる(疎甲8,9)が,他方,中科目,小科目名及
びその金額をも開示する場合とは異なって,他の学校法人との競争上重点を置く支
出費目等,その経営
上の独自の詳細なノウハウまで看破することができることにつき一応も認めるに足
りる疎明資料はない(疎甲8,9号証において「経営ノウハウ」として言及されて
いる事項も,実質的には概括的な財務状態にすぎない。)。
 そして,審尋の結果によれば,申立人も,この概括的な財務状態が明らかになる
ことにより申立人の名誉が毀損され,社会的評価も低下する旨を主張しているもの
と解されるが,学校法人は,その公益的な役割の重要性から,公的な補助金を受け
ることができる反面,一般の公益法人(民法51条参照)にも増して,決算貸借対
照表及び決算収支計算書等により常にその客観的な財産状態を明らかにして,経理
の健全性を確保すべきことが法令上要求されている(憲法89条後段,私立学校法
47条,59条,私立学校振興助成法5条4号,6条,14条,学校法人会計基準
(昭和46年文部省令第18号)2条,6条,15条等参照。なお,同基準は省令
であって,いわゆる外部拘束性を有する。)ことをも考慮すると,概括的な財務状
態が開示されること
により申立人が受けると見込まれる影響をもって,これを申立人に帰せしめること
が社会通念上も不当視されるべき客観的な不利益であるとはいえない。
3 申立人のその余の主張について
(1) 次に,申立人は,本件情報が,単年度でなく連続年度のものであることによっ
て,申立人の経理内容等が一層明らかになる旨主張するが,ここにいう「経理内容
等」は上に述べた概括的な財務状態にすぎず,これを連続させたからといって,格
段に詳細な分析が可能になるとは考えられないから,これを開示することが客観的
な不利益であるとはいえないことは既述したところと同様である上,単年度の会計
書類の開示請求があった場合にその開示が認められるのに,連続年度のそれを開示
請求すると開示が認められないとすれば,同一の情報について,請求の仕方いかん
によって結論が変わることになり,情報の性質のみに着目して不開示事由を定めた
新条例7条,旧々条例6条の趣旨を没却するから,開示請求者の権利を不安定にす
る上記主張は到底採
り得ないものといわねばならない。
(2) また,申立人は,本件情報が,申立人の法人全体分の経理情報ばかりでなく,
資金収支内訳表及び人件費収支内訳表並びに消費収支内訳表を含むことから,その
開示により学校・学部等別の経理情報も明らかになることをもって申立人の権利を
害する趣旨の主張もするが,これらについても,大科目名及びその金額のみを開示
した場合に,当該学校・学部において競争上重点を置く支出費目等,その経営上の
独自の詳細なノウハウまで看破することができることにつき一応も認めるに足りる
疎明資料はなく,1校のみを設置する学校法人や単科大学のみを設置する学校法人
について2に述べたところを検討した場合と比較すれば明らかなとおり,学校・学
部別等であれ,大科目名及びその金額を開示することによる不利益が客観的なもの
であるとはいえない
から,申立人の上記主張は採用することができない。
(3) さらに,申立人は,本件開示請求者の属性に着目した主張もするが,既に述べ
たとおり,新条例7条,旧々条例6条は,情報の性質のみに着目して不開示事由を
定めており,開示請求者がだれであるか,あるいは開示対象文書の利用目的がいか
なるものであるかを問うことなく,開示請求の許否は画一的に決すべきであるか
ら,開示請求者の属性を論ずるのは失当である。
4 結論
 以上のとおり,本件情報は,不開示事由である法人等情報に該当しないと判断す
るのが相当であるから,本件各開示決定の効力の停止を求める本件申立ては,行政
事件訴訟法25条3項の「本案について理由がないとみえるとき」に当たり,その
余の点につき判断するまでもなく,いずれも理由がない。
 ちなみに,申立人は,本件情報の開示を本案判決まで延ばされても本件開示請求
者において重大な不利益を受けるなどの事情にはなく,その開示を求める差し迫っ
た必要性もない旨主張するが,直ちにそのように言いきれるか疑問が残る上に,そ
もそも開示が遅れることによる開示請求者の不利益の有無が上記の結論を左右する
ものでもないというべきである。
 よって,本件申立てをいずれも却下することとし,申立費用の負担につき行政事
件訴訟法7条,民事訴訟法122条,61条を適用して,主文のとおり決定する。
  平成15年12月18日
    名古屋地方裁判所民事第9部
          裁判長裁判官   加藤幸雄
             裁判官   舟橋恭子
             裁判官   平山 馨

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