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平成17年(行ケ)第10232号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成17年5月11日
判決
原       告   電気化学工業株式会社
同訴訟代理人弁護士熊倉禎男
同辻居幸一
同高石秀樹
同訴訟代理人弁理士浅井賢治
被       告   特許庁長官 小川洋
同指定代理人   宮坂初男
同一色由美子
同宮下正之
主文
     1 特許庁が異議2003―70183号事件について平成16年9月
17日にした決定のうち,「特許第3305526号の請求項1ないし2,6ない
し7に係る特許を取り消す。」との部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 事実及び理由
1 原告の請求
 主文第1項と同旨
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
 原告は,発明の名称を「導電性樹脂組成物」とする特許第3305526
号(平成7年1月26日出願,平成14年5月10日設定登録。以下「本件特許」
という。登録時の請求項の数は7である。)の特許権者である。
 本件特許に対し,請求項1ないし7のすべてにつき,特許異議の申立てが
あり,特許庁は,この申立てを,異議2003―70183号事件として審理し
た。原告は,この審理の過程で,平成15年2月28日,本件特許の出願に係る願
書に添付した明細書の訂正をすることについて審判を請求し,同年5月6日,訂正
を認めるとの審決がされた。また,原告は,同年8月18日,上記明細書の訂正の
請求をした。特許庁は,上記異議事件につき審理し,その結果,平成16年9月1
7日,この訂正を認めた上で(以下「本件第1訂正」という。),「特許第330
5526号の請求項1ないし2,6ないし7に係る特許を取り消す。」との決定を
し(以下「本件決定」という。なお,請求項3ないし5に係る特許については維持
するとされた。),同年10月12日にその謄本を原告に送達した。
(2) 本件決定の理由
 要するに,本件特許の請求項1,2,6,7に係る発明はいずれも特許出
願前に頒布された刊行物に記載された発明であるから特許法29条1項3号(ただ
し,平成11年法律第41号による改正前の規定。同号につき,以下同じ。)の規
定に該当する,したがって上記各請求項に係る特許はこの規定に違反して登録され
たものである,というものである。
(3) 訂正審判の確定
 原告は,本訴係属中に,本件特許の出願に係る願書に添付した明細書の訂
正をすることについて審判を請求した。特許庁は訂正2005-39006号事件
としてこれを審理し,平成17年3月1日に訂正(以下「本件第2訂正」とい
う。)をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,同審
決は確定した。
(4) 本件第1訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲
「【請求項1】(A)ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂の少なくとも1
種類から選ばれた熱可塑性樹脂,(B)カーボンブラック及び(C)オレフィン系
樹脂からなるIC包装用導電性樹脂組成物において,(a)前記(A)熱可塑性樹
脂100重量部に対し(B)カーボンブラック5~50重量部を含有し,かつ,前
記(A)熱可塑性樹脂と(B)カーボンブラックの合計量100重量部に対し,1
90℃,荷重2.16kgの条件で,0.1g/10分以上である(C)オレフィ
ン系樹脂1~30重量部を含有してなり,かつ,(b)導電性樹脂組成物をシート
状に形成したときの表面固有抵抗値が102
~1010
Ωであることを特徴とする,ポ
リフェニレンエーテル系樹脂を含まない,カーボンブラックの脱離が抑制されたI
C包装用導電性樹脂組成物。  【請求項2】(A)ポリスチレン系樹脂又は
ABS系樹脂の少なくとも1種類から選ばれた熱可塑性樹脂,(B)カーボンブラ
ック,(C)オレフィン系樹脂及び(D)相溶化剤からなる導電性樹脂組成物にお
いて,(a)前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し(B)カーボンブラック
5~50重量部を含有し,かつ,前記(A)熱可塑性樹脂と(B)カーボンブラッ
クの合計量100重量部に対し,190℃,荷重2.16kgの条件で,0.1g
/10分以上である(C)オレフィン系樹脂1~30重量部及び(D)相溶化剤1
~30重量部を含有してなり,かつ,(b)導電性樹脂組成物をシート状に形成し
たときの表面固有抵抗値が102
~1010
Ωであることを特徴とする,ポリフェニレ
ンエーテル系樹脂を含まない,カーボンブラックの脱離が抑制されたIC包装用導
電性樹脂組成物。
【請求項3】(C)オレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂であることを特徴
とする請求項1記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項4】(C)オレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂であることを特徴
とする請求項2記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項5】(D)相溶化剤がスチレン-ジエンブロック共重合体に水素添
加した樹脂及び/又はポリオレフィンにスチレンをグラフト共重合した樹脂である
ことを特徴とする請求項2記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項6】請求項1~5のいずれか一に記載のIC包装用導電性樹脂組成
物よりなるIC包装用の成形品。
【請求項7】請求項1~5のいずれか一に記載のIC包装用導電性樹脂組成
物よりなるIC包装用のシート。」
(5) 本件第2訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲(下線部が本件第1訂正
後のものと比較した場合の訂正箇所である。)
「【請求項1】(A)ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂の少なくとも1
種類から選ばれた熱可塑性樹脂,(B)カーボンブラック及び(C)エチレン-酢
酸ビニル共重合体を除くオレフィン系樹脂からなるIC包装用導電性樹脂組成物に
おいて,(a)前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し(B)カーボンブラッ
ク5~50重量部を含有し,かつ,前記(A)熱可塑性樹脂と(B)カーボンブラ
ックの合計量100重量部に対し,190℃,荷重2.16kgの条件で,0.1
g/10分以上である前記(C)オレフィン系樹脂1~30重量部を含有してな
り,かつ,(b)導電性樹脂組成物をシート状に形成したときの表面固有抵抗値が
102
~1010
Ωであることを特徴とする,ポリフェニレンエーテル系樹脂を含まな
い,カーボンブラックの脱離が抑制されたIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項2】(A)ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂の少なくとも1種
類から選ばれた熱可塑性樹脂,(B)カーボンブラック,(C)エチレン-酢酸ビ
ニル共重合体を除くオレフィン系樹脂及び(D)相溶化剤からなる導電性樹脂組成
物において,(a)前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し(B)カーボンブ
ラック5~50重量部を含有し,かつ,前記(A)熱可塑性樹脂と(B)カーボン
ブラックの合計量100重量部に対し,190℃,荷重2.16kgの条件で,
0.1g/10分以上である前記(C)オレフィン系樹脂1~30重量部及び
(D)相溶化剤1~30重量部を含有してなり,かつ,(b)導電性樹脂組成物を
シート状に形成したときの表面固有抵抗値が102
~1010
Ωであることを特徴とす
る,ポリフェニレンエーテル系樹脂を含まない,カーボンブラックの脱離が抑制さ
れたIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項3】(C)オレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂であることを特徴
とする請求項1記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項4】(C)オレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂であることを特徴
とする請求項2記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項5】(D)相溶化剤がスチレン-ジエンブロック共重合体に水素添
加した樹脂及び/又はポリオレフィンにスチレンをグラフト共重合した樹脂である
ことを特徴とする請求項2記載のIC包装用導電性樹脂組成物。
【請求項6】請求項1~5のいずれか一に記載のIC包装用導電性樹脂組成
物よりなるIC包装用の成形品。
【請求項7】請求項1~5のいずれか一に記載のIC包装用導電性樹脂組成
物よりなるIC包装用のシート。」
3 当裁判所の判断
 上記の当事者間に争いのない事実によれば,本件決定は,本件第2訂正前の
特許の請求の範囲(本件第1訂正後の特許請求の範囲)請求項1,2,6,7の記
載に基づいて上記各請求項に係る発明を認定し,これを前提に特許法29条1項3
号の規定に違反して特許されたものと判断して上記各請求項につき特許を取り消し
たものであるところ,本件決定の取消しを求める本訴係属中に,当該特許に係る特
許請求の範囲の減縮を含む訂正の審判が請求され,特許庁はこれを認める審決(本
件訂正審決)をし,これが確定したものである。
 そうすると,本件決定は,結果として,本件第2訂正前の請求項1,2,
6,7について判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったことになり,この
誤りが上記各請求項についての決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。し
たがって,本件決定は,上記各請求項に関する部分につき取消しを免れない。
 以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,訴
訟費用については,本件訴訟の経過にかんがみ,これを原告に負担させるのを相当
と認め,主文のとおり判決する。
  知的財産高等裁判所第3部
  裁判長裁判官    三  村  量  一
 裁判官      若  林  辰  繁
       裁判官   沖  中  康  人

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