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大阪地裁平成19・2・5
316条の20第1項棄却
主文
本件請求を棄却する。
理由
第1本件請求の趣旨及び理由は,要するに,弁護人は被告人とA及びBとの間の監禁及び
殺人の共謀を争う主張を予定し,同人らの供述調書の信用性を争うものであるから,検察
官に対し,これに関連するA及びBについて作成された各取調べ状況記録書面の全て(以
下「本件各証拠」という。)の開示を求めるというものである。
第2当裁判所の判断
1一件記録によると,弁護人が,平成19年1月18日,刑事訴訟法316条の20第1項に基づ
いて検察官に対し本件各証拠の開示を請求したところ,検察官は,同月22日,主張関連証
拠の開示としては応じられないが,審理促進の見地から,本件各証拠のうち,不開示希望
調書の有無及び通数の記載部分(具体的には,司法警察員が作成した取調べ状況報告書中
の「逮捕又は勾留の理由となっている犯罪事実に係る不開示希望被疑者供述調書作成事実」
欄及び検察事務官が作成した取調べ状況等報告書中の「被疑者等がその存在及び内容の開
示を希望しない旨の意思を表明した被疑者供述調書等」欄の記載部分)を除いたものの任
意開示に応じた経緯が認められる。
2本件は,被告人が共犯者A及びBらと共謀の上,被害者を監禁し,殺害したという各
公訴事実によって起訴された事案である。検察官は,被告人がAとの電話等でのやりとり
を通じて共謀を遂げた事実を証明予定事実として明らかにし,これをA及びBの供述調書
などによって立証しようとしている。
これに対し,弁護人は,被告人とA及びBらとの共謀を全面的に争い,被告人とAとの
電話のやりとりについては,検察官の証拠予定事実記載の会話とは異なった内容のものを
主張することを明らかにし,A及びBの各供述調書の信用性を争っているが,その信用性
に疑いを生じさせる具体的な事情については,何ら主張していない。
3ところで,刑事訴訟法316条の20第1項の主張関連証拠の開示に関する規定は,弁護人
にいわゆる証拠あさりを認めるものではないから,同条による証拠開示が認められるため
には,主張と開示請求に係る証拠との関連性が具体的に認められる必要があると解すべき
ところ,弁護人は前記のとおり,A及びBの各供述調書には信用性がないと主張するのみ
であって,これら供述調書の信用性に疑いを生じさせる具体的な事情については何ら主張
していない。従って,弁護人の主張が上記のとおりの抽象的なものにとどまる以上,これ
と開示請求に係る本件各証拠(とりわけ,任意開示がなされなかった不開示希望調書の有
無及び通数の記載部分)との関連性はいまだ明らかにされていないものといわざるをえな
い。
4以上によれば,その余の要件を検討するまでもなく,本件請求は理由のないことが明
らかである。
よって,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・水島和男,裁判官・山﨑威,裁判官・村瀬洋朗)

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