弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審の未決勾留日数中六十日を原判決の刑に算入する」との
部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中二八日を本刑に算入する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 福岡高等検察庁検事長草鹿浅之介の上告趣意は末尾添付の別紙記載のとおりであ
る。
 職権により調査するに、記録によれば、被告人は本件につき起訴前である昭和三
二年一二月五日勾留状の執行を受け、爾来第一審並びに原審を通じて勾留を継続さ
れているものであるが、これよりさき、被告人は昭和二八年六月二三日福岡地方裁
判所において窃盗罪により懲役五年(未決勾留二一六日算入)に処せられ、同判決
は同年一〇月三一日確定し即日右刑の執行を受け、その後昭和三二年一一月二五日
仮出獄を許されたが、右刑の刑期満了予定日であつた同三三年三月二八日までの期
間中に右仮出獄を取消されたため、更に本件被告事件について勾留中の同年同月二
六日から右仮出獄取消による残刑の執行を受けることとなり、その刑期は同年七月
二七日に満了すべき筋合であつたところ、被告人は本件第一審の判決に対し同年二
月二六日控訴を申立て、原審はこれに対し同年六月三〇日控訴を棄却するとともに
原審における未決勾留日数中六〇日を第一審判決の本刑に算入する旨の判決を言渡
したものであることが明認できるのである。
 してみれば、原判決が第一審判決の本刑に算入した原審における未決勾留日数中、
前記控訴申立の日より別件につき仮出獄の取消による残刑の執行を受けるに至つた
日までの二八日間を除くその余の期間は前示確定刑の執行と重複執行されていたこ
とが明らかであり、右のように刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入する
ことは不当に被告人に利益を与えることとなり違法であるといわねばならない。(
昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、集一一巻一四号三
三七七頁参照)それ故、原判決中前記未決勾留日数を算入した部分は結局刑法二一
条の適用を誤つた違法があり刑訴四一一条一号により破棄を免がれない。
 よつて同四一三条但書により原判決中「当審の未決勾留日数中六十日を原判決の
刑に算入する」との部分を破棄し、刑法二一条に則り原審における未決勾留日数中
二八日を本刑に算入することとし、その余の部分に対する上告は上告趣意として何
らの主張がなく従つてその理由がないことに帰するから、刑訴四一四条、三九六条
により主文三項のとおり上告を棄却すべきものとし主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 高橋一郎公判出席
  昭和三三年一一月七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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