弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     抗告人Aの本件抗告はこれを棄却し、同Bの本件抗告はこれを却下す
る。
     抗告費用は抗告人等の負担とする。
         理    由
 抗告人Aの本件抗告理由の要旨は、頭書の不動産引渡命令で引渡を命ぜられてい
る物件は、昭和三六年七月一四日相手方が競落してその所有権を取得したが、これ
より先抗告人等は昭和三五年七月以降前所有者Cとの間の賃科を一ヶ月金二、〇〇
〇円とする賃貸借契約に基きその占有使用を継続して現在に及んでいる。
 従つて抗告人等は借家法第一条に基き新に所有者となつた相手方に対し賃借権を
対抗しうるものであるから本件引渡命令は不当であると云うのである。
 よつて按ずるに、一件記録によれば、本件引渡命令の目的物件はもと申立外Cの
所有であつたこと、同人に対する債権者中小企業金融公庫は右物件に対する昭和三
四年七月二〇日登記にかかる第一審抵当権に基き競売申立をなし昭和三五年一〇月
四日競売申立の登記次いで同月一二日右Cに対し競売開始決定の送達がなされたこ
と、昭和三六年七月一四日右物件は相手方に対し競落許可になり、同年八月一八日
相手方に於て所有権取得登記をなしたこと、相手方は昭和三六年九月一五日付の右
Cに対する不動産引渡命令を得て執行に着手したところ、抗告人等が本件家屋に居
住しており執行吏は右Cに対する引渡命令を以てしては執行をなし得ないものとし
て執行を中止したこと、よつて相手方は抗告人等に対し不動産引渡命令を求め、原
審は神戸地方裁判所姫路支部昭和三六年(ヲ)第四九四号として昭和三六年一〇月
三〇日本件不動産引渡命令をなし同年一一月一日抗告人Aに送達告知せられたが、
抗告人Bに対しては送達不能となつたことが明らかである。
 抗告人Aは昭和三五年七月以降前所有者Cとの間の賃貸借契約に基き占有使用を
継続し現在に及んでいると主張するが、原審におけるC、抗告人A各審尋の結果
中、同抗告人の主張に副う部分は、記録中の昭和三五年一〇月五日付執行吏D作成
の不動産賃貸借関係取調報告書に徴し、たやすく信用し難く、却て右C審尋の結果
の一部によれば、抗告人等は昭和三六年八月頃Cから本件家屋の占有移転を受けて
これに居住し始めたものと認めるのが相当である。
 而して凡そ家屋に対する抵当権設定登記(本件においては昭和三四年七月二〇
日)後にその家屋につき引渡を受けた(民法第三九五条の賃借権の登記は借家法と
の関係では引渡と読替えられる。)賃貸借も、それが民法第六〇二条に定められた
期間内のものであるときは、(本件においては賃貸借期間についての主張立証なく
この点不明であるけれども、一応期間の定めのない賃貸借を主張するものとし、且
つかかる賃貸借は短期賃貸借に該当するとの前提に立つこととする。)同法第三九
五条により抵当権者に対抗することができるか、それが<要旨>ためには右引渡は販
売開始による差押の効力発生前に完了することを要件とする。蓋し若しその引渡を
受けた時期(本件では昭和三六年八月中)が競売申立登記または販売開始決
定の債務者への送達(本件では昭和三五年一〇月四日、同月一二日)より後である
ときは、右登記または送達による差押の効力に妨げられ、引渡を受けたこと即ち占
有権の承継取得を以て、抵当権者に対抗することができず、従つてまた抵当権実行
の結果抵当家屋を取得した競落人にも対抗することができないからである。結局抗
告人Aが本件家屋の占有権を承継取得したのが本件家屋に対する差押効力発生後で
あることは右に説明したところから明らかであり、抗告人Aは、賃貸借による本件
家屋の占有権の承継を抵当権者従つて競落人たる相手方に対抗し得ないものである
から、同人に対し、賃借権を対抗するに由なく、本件引渡命令は適法である。
 なお抗告人Bに対しては本件引渡命令の送達は不能に帰したこと記録上明らかで
あつて他に同人に対し適法にこれが告知せられた形跡を認めるに足る資科もないか
ら、同人に対しては未だ本件引渡命令は効力を生じていないものであり、同人のな
した本件抗告は不適法であるからこれを却下する。
 よつて抗告費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用し、主文
のとおり決定した。
 (裁判長裁判官 田中正雄 裁判官 宅間達彦 裁判官 井上三郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛