弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
原判決を取り消す。1
被控訴人の請求を棄却する。2
(略語等は,原則として,原判決に従う。)第2事案の概要
本件は,矢板市内において競輪事業の場外車券売場を建設しようとした被控1
本件道路占用訴人が,矢板市長に対し,道路法32条に基づく道路占用許可申請(
許可申請本件道路工事施行承認)及び同法24条に基づく道路工事施行承認申請(
)をしたところ,矢板市長が本件道路許可申請及び本件道路工事施行承認申請申請
()につきそれぞれ不許可及び不承認とする処分()をした本件各申請本件各処分
ため,被控訴人が,控訴人に対し,本件各処分の取消しを求めるとともに,本件各
処分により,本訴の提起等を余儀なくされたと主張して,国家賠償法1条1項に基
づき,弁護士費用1000万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求
めた事案である。
原審は,本件各処分は,道路管理者としての裁量を逸脱又は濫用したもので2
違法であるとして,本件各処分の取消しを求める被控訴人の請求をいずれも認容し,
被控訴人の損害賠償請求については,控訴人に対して200万円及びこれに対する
遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容した。
当裁判所も,原審と同様に,被控訴人の本件各処分の取消しの請求については,
これをいずれも認容し,損害賠償の請求については,原審が認容した限度でこれを
認容すべきものと判断した。
前提事実並びに争点及び当事者の主張は,以下のとおり訂正するほか,原判3
決の事実及び理由の「第2事案の概要」1及び2(原判決2頁15行目から10
頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決3頁14行目「140」を「14」と改める。(1)
原判決6頁5行目末尾に改行の上,次のとおり加える。(2)
「エ本件道路占用許可申請に関し,占用申請物件であるCSB管を接続しようと
するα産業団地内の側溝と申請道路との間には,控訴人所有の土地(現況緑地)が
あるが,被控訴人がした当該土地についての市有財産の借受申請について控訴人は
不承認としているため,被控訴人は,当該土地を借り受ける見込みが立っていない。
さらに,接続しようとしている下水道施設(U型側溝)についての放流協議につい
ても不同意としている。したがって,本件道路占用許可申請の申請物件は,放流先
が未確定の排水管のための占用許可申請である。
なお,α産業団地内の排水設備及び本件道路占用許可申請の申請物件は,下水道
法における公共下水道の排水設備ではない。したがって,控訴人は,同法11条に
定める排水に関する受忍義務規定の適用を受けない。
以上のとおり,被控訴人の排水計画そのものが実現不可能な申請であるため,本
件道路占用許可申請は許可することができない。」
原判決9頁14行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。(3)
「(オ)控訴人は,本件各処分と同一日に,控訴人所有地について市有財産借受申
請の不承認と下水道施設への放流協議の不同意を行ったが,下水道法11条によれ
ば,同法10条により排水設備を設置しなければならない者は,他人の土地又は排
水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは,
他人の土地に排水設備を設置し,又は他人の設置した排水設備を使用することがで
きるとされており,控訴人は,土地所有者として当然受忍しなければならない公有
財産使用許可申請までも承認できないとしたものである。
もとより,本来上記申請は,内容に問題がなければ承認せざるを得ない性質のも
のであるにもかかわらず,控訴人は,「開発目的である施設は,市民への影響およ
びまちづくりへの影響の視点から,本市には設置すべきではない。」という市有財
産の管理上の問題とかけ離れた理由により不承認とした。
また,放流協議は,下水道法10条により義務的に排水設備を被控訴人が設ける
について,どのようなものをどこに接続させて排水させるかを確認するにすぎない
ものであるのに,控訴人は,上記と同様の理由により,「下水道施設への接続使用
は認めない」という下水道法に明らかに違反する意思を表明したもので,法律上は
無意味である。
以上によれば,本件道路占用許可申請について,放流先が未確定であり,実現不
可能であるから許可することはできないという控訴人の主張は失当である。」
第3当裁判所の判断
当裁判所の判断は,以下のとおり訂正するほかは,原判決の事実及び理由の1
「第3争点に対する当裁判所の判断」1から3まで(原判決10頁5行目から2
2頁9行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決18頁17行目「信号サイクル」から18行目「可能なもので,」ま(1)
でを削る。
原判決19頁4行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。(2)
「(エ)控訴人は,本件道路占用許可申請に係る排水管を敷設するための控訴人所
有地についての借受申請を不承認とし,また,下水道施設への放流協議について不
同意としているため,本件道路占用許可申請は,実現不可能な排水計画に基づくも
ので,許可することはできない旨主張する。
この点に関し,確かに,前記のとおり,本件土地及びその周辺はいずれも公共下
水道の事業認可区域には含まれていないため,控訴人が下水道法11条に基づく排
水に関する受忍義務を負うということはできない。
しかしながら,控訴人は,上記借受申請の不承認の際に,その理由として,「開
発目的である施設は,市民への影響及びまちづくりへの影響の視点から,本市には
設置すべきではない」ことを挙げるのみであり(甲30),本件において,市有財
産の管理の観点から被控訴人による下水道施設及びそれに至るまでの間の控訴人所
有地の使用を拒むべき具体的な理由が示されていない以上,上記不承認及び不同意
をもって,本件道路占用許可申請の拒否事由とすることはできないというべきであ
る。」
控訴人は,本件道路占用許可申請は,競輪事業の施行者たる他の地方公共団2
体が自己の行政区域外において競輪事業を行って収益を得ることを目的とするもの
で,公共性の原則に適合しない,場外車券売場の設置は,将来の道路計画や周辺地
区の土地利用計画に反し,計画性の原則に適合しない,また,交通の安全を阻害す
るもので,安全性の原則にも適合しないと主張する。
しかしながら,本件道路占用許可申請は,土地の利用に当たって必要となる排水
管の敷設のためのものであり,建設される施設が他の地方公共団体の収益を目的と
するものであったとしても,そのことから直ちに本件道路占用許可申請が公共性の
原則に適合しないということはできず,また,本件道路占用許可申請に係る道路の
占用自体が道路計画や土地利用計画に反する,あるいは,交通の安全を阻害すると
は認められないから,控訴人の上記主張は採用することはできない。
控訴人は,本件道路工事承認申請についても同様に,道路の機能上の効果を低下
させる,道路の交通に支障を及ぼす旨主張するが,本件道路工事承認申請に係る工
事内容自体に照らせば,控訴人の上記主張は採用することはできない。
次に,控訴人は,場外車券売場が設置された場合には,県道β線と市道γ線の交
差点の混乱のみならず,一方通行的道路におけるUターン誘導による混乱など,申
請箇所周辺でも混乱が生じる,被控訴人が今後駐車場の容量を増加させることによ
り,実走試験(乙9)以上の深刻な渋滞発生を招く懸念が極めて強い等主張する。
しかしながら,被控訴人は,警備員あるいは誘導員を配置して混乱を防ぐことを
計画していること(甲68,a証人)(控訴人は,県道β線から市道γ線に入る前
から誘導することは,場外車券売場に入ろうとする車両を識別することが困難であ
るから,有効に行うことはできない旨主張するが,誘導の方法として,入場予定車
両を識別して,個々の車両ごとに対応する方法以外の有効な方法があり得ないか否
かについては明らかではない。),被控訴人は,駐車場の増設の方法として,周辺
に駐車場を確保し,シャトルバスを運行することを計画しており(甲68,b証
人),場外車券売場内の駐車場を増設する可能性が高いと認めるに足りる証拠はな
いことに照らすと,控訴人の上記主張はいずれも採用することができない。
さらに,控訴人は,平成17年5月17日の意見交換における発言,同年7月1
3日付けの土地利用事前協議の回答書における記載,同年12月の市議会定例会に
おける矢板市長の発言は,いずれも本件各申請に関してされたものではないから,
これらをもって,矢板市長が違法性を認識しながら本件各処分を行ったと認定する
ことはできない旨主張する。
しかしながら,上記発言等の内容及び平成17年4月に提出された土地利用に関
する事前協議書において,道路を市道γ線に接続乗入れする旨記載されている(甲
3)こと,同年6月1日付けの土地利用に関する事前指導事項の中で本件進入路と
市道γ線との取り付け部について協議することとされていた(甲73)ことに照ら
しても,被控訴人から道路法24条の道路工事施行承認申請がされることは予期し
得たこと,被控訴人は平成17年11月24日に本件各申請と同様の申請を行った
こと(甲13,14,59,b証人)に照らせば,矢板市長が本件各処分をした際
に違法性を認識していたと認めることができるというべきであり,控訴人の上記主
張は採用することができない。
よって,被控訴人の本件各処分の取消しを求める請求はいずれも理由があり,3
損害賠償の請求は,控訴人に対し200万円及びこれに対する遅延損害金の支払を
求める限度で理由がある。
第4結論
以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,本件控訴を棄
却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官一宮なほみ
裁判官土屋文昭
裁判官小野瀬厚

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