弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 被告人本人の上告趣意第一点について。
 論旨は原判決の違憲をいうけれども、北緯二九度以南、北緯二七度以北の南西諸
島が外国とみなされていた当時、免許を受けないで日本内地から同地域へ、若しく
は同地域から日本内地へ貨物を密輸出し若しくは密輸入した罪については、その後
右地域がわが国に復帰し外国とみなされなくなつても刑の廃止があつたものと、い
えないことは既に当裁判所の判例の趣旨とするところであるから昭和二八年(あ)
第三七一号同三〇年七月二〇日大法廷判決、判例集九巻九号一九二二頁参照)犯罪
後の法令により刑の廃止があつたことを前提とする所論違憲の主張はその前提を欠
き採用することができない。
 同第二点について。
 論旨としては違憲をいうが、その実質は結局事実誤認と単なる法令違反の主張を
いでないものであつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人川崎秀男の上告趣意について。
 所論は事実誤認と量刑不当の主張に外ならないから刑訴四〇五条の上告理由に当
らない。
 よつて刑訴四〇八条、一八一条により後記裁判官の少数意見を除くその余の裁判
官一致の意見で主文のとおり判決する。
 裁判官真野毅、同小谷勝重、同藤田八郎、同河村又介、同谷村唯一郎、同小林俊
三、同垂水克己の少数意見は本件において被告人が密輸出、若しくは密輸入をした
とされている奄美大島は北緯二九度以南、北緯二七度以北の南西諸島であつて本件
犯行当時においては、関税法の適用については外国とみなされていたのであるが、
昭和二八年一二月二五日以降は、外国とみなされなくなつた。かかる場合において
は右地域が外国とみなされていた間に右地域に密輸出し若しくは右地域より密輸入
した罪については、犯罪後の法令により刑の廃止があつたものと解し、被告人に対
しては刑訴四一一条五号により原判決を破棄し同法三三七条二号を適用して被告人
を免訴すべきものであること昭和二七年(あ)第四三四号同三〇年二月二三日大法
廷判決(判例集九巻二号三四四頁参照)、昭和二八年(あ)第三七一号同三〇年七
月二〇日大法廷判決(判例集九巻九号一九二二頁参照)、昭和二八年(あ)第一六
一一号同三一年五月二三日大法廷判決記載の真野、小谷、藤田、河村、谷村、小林、
垂水各裁判官の少数意見のとおりである。
 裁判官小林俊三はこの点に関し前記昭和二七年(あ)第四三四号事件の大法廷判
決記載の同裁判官の意見と同一の意見を附加する。
  昭和三一年七月四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

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