弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告指定代理人青木義人、同堀内恒雄、上告代理人仁科哲の上告理由について。
 原審は判決理由の冒頭に述べた各事実を確定した上、甲第一、二号証と当事者間
に争のないところと綜合して、甲第一号証契約書第九条、第四条、第八条の趣旨を
述べ、「かような条項を含む甲第一号証の約定事項全部を統一的に考えると、控訴
人(被上告人)がまず第一回分納金の支払をすますならば、被控訴人はただちに目
的物件ひきわたし義務を履行すべきものと定めるものであるといわなければならな
い。」と判示し、また、「契約当時本件の土地建物内にはずい分たくさんのいわゆ
る賠償機械があつたことは本件の弁論の全趣旨からあきらかであり、甲第一号証契
約書の第一一条からみても、控訴人(被上告人)が前記『申請の目的』のために本
件物件を使用するには、まず、みぎ賠償機械をどこかへ運びだしてしまわなければ
ならないことは、売主である被控訴人(上告人)の担当機関たる関東財務局の係員
も、また買主である控訴人の代表者も、ともによくこれを知つていたことであるこ
とが認められる。」とし、更に進んで、「しかし同時に両者とも、賠償機械の移転
はもちろんのこと本件物件を控訴人の占有支配にうつすことが、後にあきらかにな
つたようにきわめて困難であることはつゆ知らず、ひきわたしについては前記の契
約書第四条で十分と考え、賠償機械はたやすく他へ運び去ることができるものと考
えていたことは、当審証人D(第一、二回)同Eの証言によつてみとめられるとこ
ろであつて、それだからこそ、前記のように、第一回分納金支払と同時に本件物件
は控訴人にひきわたされたこととし、かつ控訴人はひきわたしの日から『申請の目
的』にしたがつて使用すべきことと約定したのであると解せられる。すなわち本件
契約は、第一回分納金支払さえすれば控訴人は本件物件を現実にその支配のもとに
おき、すぐにも賠償機械の移転をし『申請の目的』にしたがつて使用するための工
事にとりかかることができるということを前提としてとりきめられたものと認める
のが相当である。したがつて、本件契約中の被控訴人は控訴人が本件契約の義務を
履行しないときは無条件で契約を解除することができるとの特約(契約書第九条)
もまた前述の物件ひきわたし、使用可能を前提とするものと解せられ、この前提が
そなわらないかぎり、控訴人が代金を支払わないからといつて被控訴人から無条件
に契約を解除することはできないとしなければならない。もしこれを反対に解する
ならば、契約当事者双方の地位はなはだしくつりあいのとれないものとなり、とく
べつの事情のないかぎりかような意味の契約をするはずはないというべきであり、
本件においてとくべつの事情のあることはみとめられない。前説示のとおり解する
のが相当である。」と判示しているのである。すなわち、原審は、原審が証拠上認
定した事実関係の下においては、特別の事情のない限り原判示が説明するような契
約当事者双方の地位がはなはだしくつりあいのとれない契約をするはずはないとい
うべきであり、本件において特別の事情あることは認められないと判示しているの
である。しかし、原審が確定した事実関係の下においては、甲第一号証の契約の条
項が明示する第一一条並びに第九条その他の各条項と対比してみると、原審が前記
のように本件において特別の事情あることは認められないとした判示は未だもつて
その理由を尽したものとは到底認められない(判示が右にいう前提云々の事項は本
件契約の要点と認むべく、従つて、もし真に右前提云々の事項が本件契約の内容を
なしているならば、甲第一号証の契約書の中にその点に関し言及した何らかの措辞
があるべきを当然と認むべきところ、右甲第一号証を見るにその点に関する何らの
文詞がなく、これによつてみれば、本件契約には前示前提云々に関する事項は、右
証書中にこれを特に掲げなかつたことについて特別の事情のあつたことの証明がな
い限りは本件契約の内容をなし、従つて上告人において右前提事項を遵守しない限
りは上告人において判示のように契約解除ができないものであるとは容易に考え難
いところである。)。従つて、被上告人が第一回分納金を支払う以前に上告人にお
いて使用可能な状態を実現し引渡しをすることが上告人の義務であつた如くたやす
く判断した原判決には、本件契約の解釈につき審理を尽さない違法ありといわなけ
ればならない。従つてまた原審が、本件契約は原判示のような趣旨の契約であると
の前提に立つて、「以上の事情をかんがえると、被控訴人(上告人)の本件契約解
除の意思表示は一見控訴人の代金支払義務不履行にもとづく正当なもののようであ
るけれども、実は被控訴人が、控訴人の第一回分納金の支払いあり次第ただちに被
控訴人の義務としてなすべき本件土地建物の引渡が当時不可能なことを十分知りな
がらあえてなしたもので、控訴人の代金納入がおくれたのにつけこみ、これをいい
ぐさにして、一般民衆の福祉を目的とするとしてした本件売買契約の趣旨をみずか
ら破つたものといわざるを得ないのである。すなわち、みぎ契約解除の意思表示は
民法第一条第二項にしめされる信義誠実の原則に反するものであつて、無効のもの
となすべきこともちろんである。」と判示している点(右のように本件売買契約の
趣旨を上告人においてみずから破つたものといわざるを得ないといい得る程に、判
示にいわゆる一般民衆の福祉云々の点が右契約の内容となつていたであろうか。甲
第一号証を卒直に見て、どの条項からも右の点が本件契約の内容となつていたこと
を窺い知るべき何らの文詞も見当らない。もし原判示のいうとおりとすれば、右契
約書中に右に関しての何らかの文詞が当然あるべきものと考えられる。)も、判決
に影響を及ぼすことの明らかな違法あるに帰する。
 されば論旨は結局理由があり、原判決は破棄を免れない。(そしてこのことは、
原審が認定したように、本件売買は住宅難緩和に役立たせる目的で、代金調達は金
融機関からの借入れによることは上告人も承知し、その予想の下に事を運んでいた
ものであること、ところが、賠償機械が存在しその移動が不可能なため、住宅建設
工事着手の見込がたたず、金融機関においても被上告人に対する融資をちゆうちよ
し、本件第一回分納金の納期も何回か延期せられていたこと、それが昭和二六年一
〇月ころになつて賠償指定解除の見込が確定的となり、漸く同年一二月末ころ融資
が可能となつたこと等の事実が認められるとしても、同様である。)
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛