弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成15年(行ケ)第316号 審決取消請求事件(平成15年12月10日口頭
弁論終結)
          判           決
       原      告   株式会社技術トランスフアーサービス
       訴訟代理人弁理士   秋   山       敦
       同          城   田   百 合 子
同          丹   下   園   美
       被      告   特許庁長官 今 井 康 夫
       指定代理人      高   橋   厚   子
同          伊   藤   三   男
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   特許庁が不服2000-498号事件について平成15年5月30日にした
審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は,平成10年7月31日,「パテントマップくん」の文字を標準文字
により横書き一連に書してなり,指定商品を第9類「理化学機械器具,測定機械器
具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,
電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラ
ス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,レコード,メトロノ
ーム,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地
用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練
用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,乗物の故障
の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知器,
ガス漏れ警報器,盗難警報器,事故防護用手袋,消火器,消火栓,消火ホース用ノ
ズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,消防車,自動車用シガーライター,保安
用ヘルメット,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,磁心,抵抗
線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画
済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,
自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の
機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイ
ムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計
算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチエック装置,計算尺,ウエイトベル
ト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用
機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,家庭用テレビゲームおもち
ゃ,検卵器,電動式扉自動開閉装置」とする商標(以下「本願商標」という。)に
ついて,商標登録出願(商願平10-64906号)をしたが,平成11年12月
1日に拒絶の査定を受けたので,平成12年1月14日,これに対する不服の審判
を請求した。
   特許庁は,同請求を不服2000-498号事件として審理した上,平成1
5年5月30日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本
は,同年6月20日,原告に送達された。
 2 審決の理由
   審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願商標は,引用商標,すなわ
ち,「パテントマップ」の片仮名文字と「PATENT MAP」の欧文字を二段
に横書きしてなり,指定商品を第9類「コンピュータ用プログラムを記憶させた電
子回路・同磁気テープ・同磁気カード・同磁気ディスク・同光ディスク」及び16
類「雑誌,書籍,新聞」とする商標登録第4251185号商標(平成9年11月
7日登録出願,平成11年3月19日設定登録)と「パテントマップ」の称呼を共
通にする類似の商標であり,かつ,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と
同一又は類似の商品を含むものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に
該当するとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決は,本願商標と引用商標の類否判断を誤った(取消事由)ものであるか
ら,違法として取り消されるべきである。
 2 取消事由(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)
 (1) 審決は,「本願商標は,その構成文字全体に相応して『パテントマップク
ン』の称呼を生ずるほか,前半の『パテントマップ』の文字部分に相応して『パテ
ントマップ』の称呼をも生ずる」,「他方,引用商標は,前記構成よりなるもので
あるから,その構成文字に相応して『パテントマップ』の称呼を生ずる」として,
「本願商標は,引用商標と『パテントマップ』の称呼を共通にする類似の商標とい
わざるを得ない」(審決謄本2頁の3の第2~第4段落)と判断したが,誤りであ
る。
  (2) 本願商標は,以下のとおり,全体を一つの商標として把握し,一連一体不
可分のものとして認識されるべきものであるから,引用商標と非類似の商標であ
る。
  まず,外観について,審決は,「本願商標は,前記のとおり,『パテント
マップくん』の文字よりなるところ,構成中前半の『パテントマップ』の文字部分
が片仮名文字で書され,後半の『くん』の文字部分が平仮名で書されていることか
ら,視覚上分離して看取され,『パテントマップ』の文字に『くん』の文字を付し
たという印象を与えるものである」(同第1段落)と判断したが,本願商標は,片
仮名7文字と平仮名2文字の「パテントマップくん」の文字を横書き一連に書して
なるものであり,全体で9文字と,それ自体分離しなければならないほど長い文字
数のものではなく,構成文字の書体も標準文字により同一の間隔で配列されてお
り,前半の「パテントマップ」の文字と後半の「くん」の文字の間にスペースを有
するものでもないから,全体がまとまりよく一体不可分のものとして認識される。
  次に,観念について見ると,「パテント」の語は特許・特許権を,「マッ
プ」の語は地図を意味し,「○○マップ」の語は「多くの複合語を作る語」であっ
て,「パテントマップ」は特許地図の意味を持つ一連一体としての語であり,一つ
の意味を持つものとして認識されているが,本願商標は,「パテント」「マップ」
「くん」の各個別の語句を区切って形成されたものではなく,上記のとおり一つの
概念である「パテントマップ」に対する愛称として擬人化した「くん」が一連一体
として構成され,「パテントマップ」とは異なる「パテントマップくん」という一
つの造語として認識される。
  さらに,称呼について,審決は,「これに接する取引者・需要者は,『く
ん』の文字部分を省略し,それ自体が自他商品の識別標識として看者の注意を強く
引く前半の『パテントマップ』の文字部分のみを捉え,これより生ずる称呼をもっ
て取引に当たる場合も決して少なくない」(同第1段落)と判断したが,本願商標
は,上記のとおり,一連一体とした標準文字で構成されており,「パテントマップ
クン」と称呼しても格別冗長であるとはいえず,語呂よくよどみなく一連に称呼す
ることができるものであって,「パテントマップクン」の称呼のみが生ずると見る
のが自然であり,これを分離して「パテントマップ」と「クン」という称呼が個別
に生ずるとするのは,本願商標の構成からして,不自然な分離判断といわざるを得
ない。
(3) 実際の取引においても,本願商標の「パテントマップくん」は,引用商標
の「パテントマップ」とは異なるものとして明確に識別され,特定の商品を示す単
独の商標として十分に自他商品識別機能を果たしているから,両者が商品出所の誤
認混同を生ずるおそれはないのであり,両商標の類否判断に当たっては,このよう
な取引の実情が考慮されるべきである。すなわち,特許庁のホームページの「特許
情報提供事業者リスト集」「5.パテントマップ作成サービス」(甲14)中にお
いて,原告は「手間をかけずにマップを作成できるソフト『パテントマップくん』
も販売致しております」と,中央光学出版株式会社は「お手軽にパテントマップが
作成できるソフトウエア『TECRES』と『パテントマップくん』を販売してお
ります」と,日本アイアール株式会社は「その他パソコンでパテントマップを作成
する専用ソフト『パテントマップくん』の販売も行っております」と表示して,い
ずれも「パテントマップ」とは別に括弧書きで「パテントマップくん」を使用して
いるのに対し,他の情報提供業者は,この商品表示を使用していない。また,知的
財産に関連する者を需要者として想定した記事や広告(甲15~19
)などにも,「パテントマップくん」が「パテントマップ」と識別,区別された独
立の商標として使用されている。
(4) 本願商標及び引用商標の指定商品と同一又は類似の「電子応用機械器具及
びその部品」の分野において,対比される商標の構成中に同一の文字を含むもので
あっても,「くん」の文字の有無により別異の商標として登録されているものとし
ては,「メンテ」に関する「メンテ」と「メンテくん」,「投資」に関する「投資
ゲーム」と「投資くん」,」「ワイヤレス」に関する「ワイヤレス/ファックス/
キャリヤピジョン」「Mr.ワイヤレス」「WIRELES STALK/ワイヤ
レス トーク」と「ワイヤレスくん」がある。また,文字の種類が異なるにもかか
わらず,「くん」や「ちゃん」の語の有無により,非類似の商標として登録すべき
ものとした審決例として,「タイトル」を引用例とする「タイトルくん」(昭和6
2年審判第22512号,甲20),「ジャンボー/JUMBO-」を引用例とす
る「ジャンボくん」(平成4年審判第22754号,甲21),「ゴロチャン/五
郎ちゃん/ごろちゃん/GOROCHAN」を引用例とする「ゴロ」(昭和53年
審判第9097号,第9098号,甲22),「チャレンジ」を引用例とする「チ
ャレンジくん」(昭和59年審判第7331号,甲23),「ピコ」
を引用例とする「ピコちゃん」(昭和61年審判第6184号,甲24),「エル
ちゃん」を引用例とする「ELLE」(平成2年審判第8772号,甲25),
「コロッケ」を引用例とする「コロッケくん」(平成6年審判第11833号,甲
26),「DRUM/ドラム」を引用例とする「ドラムくん/ドラム君」(平成1
1年審判第7457号,甲27)などがあり,審決に至らずに非類似商標として登
録され,その商標権が現に併存し,あるいは過去に併存した例としては,「フロン
トくん」と「FRONT」,「リサイクルくん」と「RECYCLE」,「チャー
ジくん」と「チャージ」「チャージ/Charge」「CHARGE」などがあ
る。
第4 被告の反論
 1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
 2 取消事由(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
 (1) 一般に,簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては,取引の目印となる商標を
構成する文字,図形の各部分又はその総括した全体を通じて最も印象の強い部分を
もって商品の出所を識別することが少なくない。商標は,その採択者の意図にかか
わらず,常にその構成部分全体の名称によって称呼,観念されるとは限らず,当該
商標の各構成部分がそれぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われ
るほど不可分的に結合しているとは認められない場合には,しばしば,その一部だ
けによって簡略に称呼,観念され,一個の商標から二つ以上の称呼,観念が生ず
る。本願商標は,「パテントマップ」の片仮名文字と「くん」の平仮名文字とい
う,文字の種類を異にするものの結合からなる商標であり,「特許の地図」の意味
合いを想起させる「パテントマップ」の語に,擬人化して愛称的に表現する「く
ん」を付したものと認識し,かつ,「パテントマップ」の語に「くん」を付したこ
とによって,別異の観念を想起させるともいえず,前者が要部の語であるから,全
体の称呼が9音で冗長にわたることも考慮すると,「パテントマップ」の文字部分
と「くん」の文字部分とは,それらを分離して観察することが取引上不自然
であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められない。したがって,本
願商標は,「パテントマップ」の称呼及び「特許の地図」の観念を生じ,引用商標
とは称呼及び観念を共通にする類似の商標というべきである。
  (2) 「くん」の文字は,「尊敬すべき目上の人などに付けて呼ぶ語。同輩や同
輩以下の人の氏名の下に添える語」(広辞苑第五版)であるばかりでなく,事物に
対して愛称的に呼ぶ場合も用いられる語であって,例えば,身近な商品や子供向け
商品を擬人化し,愛称的にその名称を付す場合にも用いられるものである。原告
は,「くん」の語を含む商標の審決例及び登録例を挙げ,これらが別異に登録され
ている以上は,本願商標も同様に登録されるべきである旨主張するが,構成する文
字数や称呼の長さ,対比する商標中の「くん」を除いた文字が一致しない商標や,
「くん」を含まない商標との併存例であり,本件とは事案を異にするばかりでな
く,本願商標の登録の適否は,本来,引用商標との類否判断をもって決せられるべ
き事柄であるから,他の審決例及び登録例の判断事例を本件に画一的に当てはめる
ことはできない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
 (1) 本願商標は,「パテントマップくん」の文字を標準文字により横書き一連
に書してなり,片仮名文字で表された「パテントマップ」に平仮名文字で表された
「くん」を付加した構成からなるものと認識される。一方,引用商標は,商標公報
(甲3)のとおり,「パテントマップ」の片仮名文字と「PATENT MAP」
の欧文字を太字体で二段に横書きしてなるものであり,その構成文字に相応して
「パテントマップ」の称呼を生ずるものと認められる。
    両商標の構成文字中,「パテント」「PATENT」の語が「特許」ない
し「特許権」を,「マップ」「MAP」の語が「地図」を意味するものであること
は一般に容易に理解されるところであり,また,「マップ」の語は,平成6年9月
10日三省堂初版発行「コンサイスカタカナ語辞典」(甲4)にあるとおり,「ド
ライブマップ」,「ロードマップ」など「○○マップ」のような複合語を作る際に
しばしば用いられることが広く知られている。さらに,「くん」の語は,岩波書店
発行「広辞苑第五版」(甲5)に「尊敬すべき目上の人などに付けて呼ぶ語。同輩
や同輩以下の人の氏名の下に添える語。主に男性に用いる」とあるように,人の氏
名の下に添えて親しみや敬意を表す愛称や敬称としての通常の用例のほかに,例え
ば,魚肉加工品の「甘タラくん」(乙1-3),魚介乾製品の「短足くん」(乙1
-4),電球型蛍光灯の「ぴかいちくん」(乙1-8),デジタルカメラの「でじ
かめくん」(乙1-9)など,身近な商品や子供向けの商品などを擬人化し,親し
みや可愛らしさなどを表した事物の愛称としての用例のあることも,広く知られて
いるものと認められるが,一般に,商標の構成部分中にこうした愛称
や敬称の類が使用されている場合に,当該部分は,独立した一語としての機能を有
しない接尾語として,識別力を欠くか又は希薄であることが明らかである。
    そうすると,本願商標の指定商品に係る取引者,需要者がこれに接すると
きは,その構成中,「パテントマップ」の文字部分に最も注意を引かれ,これが
「特許の地図」ないし「特許権の地図」を意味するものと理解すると見るのが自然
であるから,本願商標の構成部分中の中心的な自他商品識別力を有する要部は,上
記文字部分であって,「パテントマップ」の称呼を生じ,本願商標は,要部におい
て,引用商標と称呼及び観念を共通にするというべきである。さらに,両商標を全
体的に観察しても,本願商標の構成文字全体に相応する「パテントマップクン」9
音の称呼中7音が引用商標と同一であって,相紛らわしく,互いに聴き誤るおそれ
があり,称呼において類似し,また,「パテントマップ」の語に「くん」を付加し
たことによって,別異の観念を想起させるとはいえないし,外観上の差異も,引用
商標の上段部分については本願商標の構成文字中末尾の「くん」の2文字の有無に
すぎず,同下段部分の相違を考慮しても,要部における上記共通性をしのぐほどの
特段の差異を取引者,需要者に印象付けるものではない。
  (2) 原告は,本願商標は,全体を一つの商標として把握し,「パテントマッ
プ」とは異なる「パテントマップくん」という一つの造語として一連一体不可分の
ものとして認識されるのであり,これを分離して「パテントマップ」と「クン」と
いう称呼が個別に生ずるとするのは,本願商標の構成からして,不自然な分離判断
といわざるを得ず,本願商標からは「パテントマップクン」の称呼のみが生ずると
主張する。
  確かに,本願商標は,全体の構成文字が9文字で,その書体も標準文字に
より同一の間隔で配列されており,前半の「パテントマップ」の文字と後半の「く
ん」の文字の間にスペースやハイフンがあるわけでもないから,全体がまとまりよ
く認識されることは,原告の主張するとおりであるが,本願商標は,片仮名文字で
表された「パテントマップ」に平仮名文字で表された「くん」が付加した構成から
なるところ,前者は「特許の地図」ないし「特許権の地図」を意味するものと理解
するのが自然であり,後者はその愛称であって,識別力を欠くか又は希薄であり,
前者が本願商標の構成中の中心的な自他商品識別力を有する要部であると認められ
ることは,上記のとおりである。そうすると,「パテントマップ」の語が一つの造
語であるとしても,これに付加結合された「くん」の愛称を「パテントマップ」の
文字部分から分離して観察することが取引上不自然と考えられるほど不可分的に結
合しているとはいえないから,原告が主張するように,本願商標の「パテントマッ
プくん」の構成が,「パテントマップ」とは異なる一連一体不可分の一つの造語と
して認識されるとか,本願商標からは「パテントマップクン」の称呼
のみが生ずるということはできず,前示のとおり,要部の文字部分に相応して「パ
テントマップ」の称呼をも生ずるというべきである。したがって,原告の上記主張
は失当である。
  (3) 商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標がその外観,観念,
称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考
察すべきであり,かつ,当該商品の取引の実情を明らかにし得る限り,これも参酌
して判断すべきところ,原告は,実際の取引においても,本願商標の「パテントマ
ップくん」は,引用商標の「パテントマップ」とは異なるものとして明確に識別さ
れ,特定の商品を示す単独の商標として十分に自他商品識別機能を果たしているか
ら,両者が商品出所の誤認混同を生ずるおそれはないとして,両商標の類否判断に
当たっては,このような取引の実情が考慮されるべきであると主張する。
    証拠(甲14~19)によれば,① 原告は,平成10年4月16日付け
及び平成11年4月15日付けの日刊工業新聞紙上に,自社製品の特許情報解析ソ
フト「パテントマップくん」の販売宣伝広告を掲載したこと,② 平成12年9月
20日日本知的財産協会発行「知財管理9(50巻9号)」の「市販特許マップソ
フトの機能比較」という記事,平成13年2月28日ダイヤモンド社発行「パテン
トマップ超入門2001年版」及び同年6月25日日本知的財産協会研修部発行
「特許情報(活用法)2001年度C9Bコーステキスト」中には,原告の製作販
売に係る特許マップソフト「パテントマップくん」が同業他社製品とともに紹介さ
れていること,③ 特許庁のホームページの「特許情報提供事業者リスト集」,
「5.パテントマップ作成サービス」[更新日 平成15年11月18日]」に
は,42社の特許情報提供事業者のサービス内容が各事業者から提供された情報に
基づいて掲載されており,その中で,原告は「手間をかけずにマップを作成できる
ソフト『パテントマップくん』も販売致しております」と,原告の代理店である中
央光学出版株式会社は「お手軽にパテントマップが作成できるソフトウエア
『TECRES』と『パテントマップくん』を販売しております」と,同じく日本
アイアール株式会社は「その他パソコンでパテントマップを作成する専用ソフト
『パテントマップくん』の販売も行っております」と表示していることが認められ
る。
    しかしながら,商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは,
その指定商品全般についての一般的,恒常的な取引事情であるから(最高裁昭和4
9年4月25日第一小法廷判決・取消集〔昭和49年〕443頁参照),指定商品
の一部について当該商標が現在使用されている具体的な使用態様などの個別的,一
時的な事情は,対比される両商標が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあ
るか否かの判断要素として重視することは必ずしも相当ではない。本件について見
ると,上記認定事実によっても,原告及びその代理店の業務に係る特許情報解析ソ
フトないし特許マップソフト「パテントマップくん」は,本願商標の指定商品中の
「電子応用機械器具及びその部品」に含まれること,本願商標ないしこれと社会通
念上同一と認められる商標が,審決時において,上記商品に係る商品表示ないし商
標として使用され,同商品が専門雑誌等にも紹介されていることを認め得るにとど
まるのであって,それだけでは,本願商標の広範な指定商品全般について,一般
的,恒常的に本願商標の「パテントマップくん」が使用され,引用商標の「パテン
トマップ」とは異なるものとして明確に識別され,特定の商品を示す単
独の商標として自他商品識別機能を果たしているということができないことは当然
である。そうとすれば,本願商標と引用商標が上記のとおりその要部において称呼
及び観念を共通にすると認められる本件においては,上記認定事実があるからとい
って,両商標が同一又は類似の指定商品に使用された場合に,その取引者,需要者
において商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがないと認めるに足りず,他
に,商品出所の誤認混同を生ずるおそれがないといえるような事情を認めるに足り
る証拠もないから,原告の上記主張は採用の限りではない。
  (4) さらに,原告は,本願商標及び引用商標の指定商品と同一又は類似の「電
子応用機械器具及びその部品」の分野において,対比される商標の構成中に同一の
文字を含むものであっても,「くん」の文字の有無により別異の商標として登録さ
れているものがあり,また,文字の種類が異なるにもかかわらず,「くん」の語の
有無により非類似の商標として登録すべきものとした審決例及び登録例があるとし
て,その具体例をるる指摘し,本願商標も同様に登録されるべきである旨主張する
が,本願商標の商標法4条1項11号該当性は,本件における引用商標との類否判
断により決せられるべきものであって,対比される商標の具体的な構成等を異にす
る他の審決例や登録例は,以上の判断を左右するものではないから,原告の上記主
張は採用することができない。
  (5) 以上に検討したところを総合すれば,本願商標と引用商標が同一又は類似
の指定商品に使用された場合に,その取引者,需要者において商品の出所につき誤
認混同を生ずるおそれがあるといわなければならず,本願商標は,引用商標に類似
する商標というべきであって,これが商標法4条1項11号に該当するとした審決
の判断に誤りがあるとはいえない。
 2 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
   よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 岡  本     岳
    裁判官 早  田  尚  貴

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